ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

NHKスペシャル 超常現象―科学者たちの挑戦  

NHKスペシャル 超常現象―科学者たちの挑戦
梅原 勇樹,苅田 章




「超常現象」という言葉に対して、肌から拒否反応を起こす人もいるし、頭から受け入れる人もいる。
物足りないのは、どうして科学的に突き詰めないのかという点だ。
「信じるか信じないか」という言葉がよく使われるが、この言葉はかなり感覚的かつ個人的だ。
ノストラダムスの大予言が普及していた1990年代ならともかく、もう2010年代。
そろそろそんな低レベルな議論は終わらせてほしい。
少なくとも、多くの人が「理解できない現象が起こった」と認識した事例が在る。
それら全てを「気のせいだ」と断じるのは、極めて短絡的な判断であり、思考停止ですらある。
むしろ、そうした「気のせい」ですます行為が、この問題を精査する機会を奪い、
逆に延々と人類を煩わせる結果となっている。

少なくとも、その「理解できない現象」をモデル化して検証し、
心理的な錯覚(トリックも含む)なのか、
既知のメカニズムによって発生した現象なのか、
未知のメカニズムが介在しているのか、を明らかにするべきではないだろうか。
何時まで経っても「有るのかな、無いのかな」では進歩がない。

注意すべきは、「未知のメカニズム」があったとしても、
それがそのまま霊や超能力の存在に直結するものではないという点だ。
現時点の人間が、全ての物理的メカニズムを理解しているという方がおこがましくて、
まだまだ知らない現象・メカニズムは多いはずだ。
それを解明していくのが科学であって、既知の知識だけで説明するのは科学ではない。

そんな考えに対して、本書は近いスタンスである。取り上げるテーマは、霊、生まれ変わり、念力(PK)、透視やテレパシー(ESP)。お馴染みの「超常現象」である。

これらの超常現象に対して、

超常現象とは、現代科学では説明ができていないだけであって、いつかは必ず合理的な説明がつけられる自然現象や物理現象である(p8)


というスタンスの科学者に対する取材や、同行した検証事例が主となっている。

例えば心霊現象に対しては、
ネズミに備わっている天敵を察知した際の体温低メカニズムが人間にもあり、それが「霊を見た」という恐怖心によって発動した結果、霊に対して冷気を感じるという現象に繋がっている可能性や、
人間が「顔」認識に特化していることから、顔のパターンに近いシミなどを無意識化で「顔」と認識し(パレイドリア効果)、それを霊と感じている可能性などを指摘している。

これらは、「霊という錯覚」を説明する正しい説明と思う。
もちろん、霊現象の全てをこれらで説明できるものではないが、こうした客観的な検討の積み重ねが、より大きな超常現象の理解につながるのだろう。

その点、次に取り上げられる「生まれ変わり」は、錯覚や先入観等で説明つかない事例も多く、本書ではメカニズムの検証までに至っていない。正直な姿勢だと思う。

また超能力に対しても、十把一絡げに「超能力」と扱うのではなく、次のように整理して、それぞれの事例・研究状況を紹介している。
・ESP 透視やテレパシー、予知といった特殊な知覚能力
・PK  物理現象を伴う能力。
  マクロPK PKのうち、金属を曲げたり、物体を動かす能力
  ミクロPK サイコロの出目確率を変化させたり、コインの表裏の確率を変化させるような影響力

このうち、ESPについては、最新の「量子もつれ」というリアルな科学的知識を踏まえた紹介となっている。
量子もつれとは、二つの量子の片側に刺激を与えると、もう一方の量子(何千キロ離しても)にも影響が及ぶ状態のこと。オカルト的な話のようだが、現時点ではこの状態が実験的に生み出され、現象の存在は確認されているとのこと。人間の脳や近くに、このメカニズムが関与しているのではないか、という仮説を紹介している。
もちろんこんな状態を生じるには莫大にエネルギーが必要だろうが、こうした一般的な科学知識の延血用では理解できない状態がありうるという点は、ESPの理解に役立つだろう。

また、ミクロPKについては、乱数発生機に対する無意識化の影響を紹介している。これも(極めて)多数の人間が同時に特定の感情を共有した際に、乱数発生確率に偏りが生じるという「現象」は確認されている。
それがどこまで信頼できる「現象」なのかという検証も必要だが、複数の研究者による複数の事例があることから、現象そのものは存在しそうだ。とすれば、そのメカニズムの解明が必要となるだろう。


超常現象がなければ、別にそれで困らない。
世界は既存の科学知識の延長上で、これからも発展するだろう。

ただ、もし霊という状態があれば。
生まれ変わりというシステムがあれば。
ESPという他者との交感メカニズムがあれば。
PKにより、ごく微小でも人の精神が物理的な影響を及ぼす可能性があれば。

超常現象が実在すれば、世界は大きなパラダイムシフトを起こす。
この可能性がある以上、「気のせいだ」などという思考停止ではなく、
超常現象を素直に検証する体制は必要だろう。
きちんと検証したうえで否定できるのなら、それでも良い。以降は不要な労力が損なわれずに済む。

でなければ、何時まで経ってもエンターティメントとしての霊・超能力のTV番組に付き合うことになる。
それほど無意味に浪費はない。
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