ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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♪鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670  

♪鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670
永井 真人



久しぶりの全種図鑑なのに、なぜ続くのか。
2月10日発売の「決定版 日本の野鳥650」(レビューは3月20日に掲載)と2冊あわせて7,980円である。
こちらの本は奥さんに一言告げて入手したが、「決定版 日本の野鳥650」は黙って発注した。怖い限りである。

さて、野鳥図鑑なんて何冊もいらないだろう、と一般の方は思うだろうし、
鳥屋には「図鑑に頼っているうちはダメ」という意見もある。
しかしデジカメが普及して以降、識別知見の増加は恐ろしいものがあり、
もはや自力で最新の知見を網羅するのは不可能といっていい。
まず最新図鑑を入手し、それをベースに力を養う方がメリットが多い。これが複数買う理由である。

ところでデジカメが普及して以降、図鑑は写真による全種図鑑が主流となった。
全種図鑑と抽出図鑑の違いは依然レビューしたが、
こと野鳥にかけては、よほど最初でない限り、抽出図鑑を購入するメリットはない。
素直に全種図鑑を手に取るべき。だから、質の良い全種図鑑が新しく刊行されるのは、嬉しい限りである。

ところでその全種図鑑の先駆けは、「日本の野鳥 (山渓ハンディ図鑑)」であった。
薄い紙にして、野外使用を念頭に置いていて、どちらかと言えば「種」の識別に力点がある。(レビューはこちら)

また、バードウォッチング誌「BIRDER」の面目をかけて造られた全種図鑑として
日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版 (ネイチャーガイド)」と、
日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版 (ネイチャーガイド)」(レビューはこちら)がある。
デジカメ普及を追い風に、できるだけ大きい写真を用いて、性・齢や亜種の識別にも力をいれたもの。
写真が大きく、説明も簡潔で使いやすいので、僕は観察会ではこちらを用いて説明している。

今回の図鑑は、これらと同じ写真図鑑であるが、大きく異なる点がある。
それは、 
 写真が全て野鳥のみの切り抜きになっていること
である。

こうした手法は近年の流行りらしく、「日本の昆虫1400 (1) チョウ・バッタ・セミ (ポケット図鑑)」でも用いられている(レビューはこちら)。

このメリットは、環境のノイズに左右されないこと、また識別点を矢印等で説明しやすくなることだろう。
簡単に言えば、「細かく説明しやすい」、と言ってよい。

だが一方で、大きく二つの情報が失われている。

一つは、その種が生息する「環境」のイメージが得られないこと。
背景が写っていれば、同じ水辺の種でも、開けた水面か狭い水面か、
山野の鳥なら草地か農耕地か、草原が森林かがわかる。
そうした情報が、一切得られない。

もう一つは、「大きさ」の情報。
背景があれば何となくの大きさがイメージできるが、それが不可能となる。

ここから逆に、本書は全くの初心者ではなく、
ある程度「環境」と「大きさ」のイメージが掴めている層に向いていることが分かる。

もちろん初心者でも使えないことは無いが、
少なくとも全くの初心者は、この図鑑のみで識別するのは難しいだろう。

しかしながら、それらの不足を補って余りあるほど、
本書は類似種との検討を行うにあたって、これまでになく極めて使いやすい図鑑となっている。


1種につき複数の写真を使用し、かつポイントとなる部分は比較写真を掲載。
さらに1種あたりのページ数にこだわらず、バリエーションが多い種は贅沢にページを使用している。
(例えばチュウヒには3ページ使用し、写真は17枚使用。
さらにチュウヒ、ヨーロッパチュウヒ、ハイイロチュウヒ各種の♀の「顔盤比べ」がある。)
これらによって、各種について「どの識別点が重要か」が一目でわかる。これはとても便利である。
決定版 日本の野鳥650」(レビューはこちら)を初め、これまでの図鑑とは一線を画しており、
フィールドで使う図鑑としてはかなり有用だろう。迷う方には、正直、僕はこちらをお勧めする。
 
著者の♪鳥くんこと永井真人氏は、デジカメ普及時代を代表する鳥屋。
カモメ観察ノート」(レビューはこちら)のとおり、
最初はカモメ屋さんのイメージが強かったが、ついに全種図鑑である。

監修は山階鳥類研究所の茂田良光氏。
日本における鳥類標識調査では第一人者と言って良い方であり、
本書の内容に信頼がおける。と偉そうなことを言っているが、個人的に存じ上げており、お世話になっています。

というか、本書もいいんですが、
むしろ茂田さんが細かい野鳥図鑑を書いてくれればと思うのですが。


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