ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

右?左?のふしぎ  

右?左?のふしぎ
Henri Brunner



自然界における対称性・非対称性というのは、以前から気になっていたテーマ。
一見、動植物は全て対称な雰囲気があるが、実はそうではない。

それを紐解くためには、まず「対称性」とは何か、という点から考える必要があるが、
これが僕には、なかなか難しい。
長らく「生命世界の非対称性―自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書)」を読み返しているが、今のところ、正直まだぴったりと理解できていない。

本書も非対称性の本かなと思いながら手にしたが、
自然界に限定せず、文化的な右・左にも着目したものであり、通読する分には楽しい。
カラー写真・図版も多く、
一度読んでおいて損はない、興味深い一冊である。

特に、右巻き・左巻きという問題には多くの事例が割かれており、
自然界の事例はもとより、
古代建築における円柱、神社の注連縄などなど、
話題としても興味深いテーマが取り上げられている。

ただ、「なぜそうなのか」という点には深く立ち入っていないので、
本書を手掛かりに、より様々な分野に進むことになるだろう。
(ただあまり類書はないようだが。)

それにしても、例えば薬ひとつにしても、
その分子レベルでの非対称性によってサリドマイドのような事件が発生したことを考えると、
自然界には恐ろしく複雑な仕組みが存在しているのだと驚かされる。

文化にしても、生物にしても、
ついついその左右の違いや対称性・非対称性の問題は、軽く見過ごしがちだ。
しかし、やはり全ての在り方には理由があるという観点でいなければ、
おそらく正しく理解することはできないだろう。



【目次】
I.手のひら対称性(掌性)とは
01 手足に見る原像と鏡像
02 アルファベットにみる原像と鏡像
03 手のひら対称性(掌性)をもつモノの世界ともたないモノの世界
04 鏡文字
05 原像と鏡像の現象の意味
06 原像と鏡像――右と左
07 燃える家
08 日常生活,政治および言語における右と左
09 右と左は対等なものか否か?
10 螺旋の右巻き・左巻きはどうのように定義されるか?
11 捻れた円柱――鏡像対称性が保持されている場合
12 捻れた円柱――鏡像対称性が欠けている場合
13 円柱――コンピュータで処理すると
14 上に向かって開いた祭壇
15 カタツムリの殻はどれも右巻き?
16 エスカルゴ――右巻きと左巻きの比は20,000:1
17 カタツムリの殻は――たいがいは右巻きで,まれに左巻き
18 ヒンズー教のヴィシュヌ神
19 工業技術における手のひら対称性(掌性)
20 つる植物
21 原像と鏡像は対等なものか否か?
22 眠っている犬,象のキッス,豚の尻尾
23 サボテンと樹木にみる手のひら対称性(掌性)
24 花々に見る対称性と手のひら対称性(掌性)
25 ドゥーダーシュタットからモニュメント・ヴァレーへ
26 ほとんどすべてが反時計回り
27 階段の間と螺旋階段
28 高気圧と低気圧,浴槽の渦
29 イッカクと一角獣
30 タコノキ属の木――パンダヌス・スピラリス
II.手のひら対称性(掌性)が現れるのはなぜか?
31 自然界に見る手のひら対称性(掌性)の起源
32 ゲーテと螺旋化傾向
33 原子・分子レベルにおける右と左
34 四つの相異なる頂点要素をもつ正四面体構造
35 アミノ酸――生命の文字
36 アミノ酸の手のひら対称性(掌性)
37 右でも左でもない――画一性こそ重要
38 砂糖は右旋性
39 左旋性ステーキと右旋性ステーキ
40 物質代謝――右旋性・左旋性の原因
41 遺伝によってきまる右巻き・左巻き
42 右巻き・左巻きは遺伝によるとも限らない
43 葉序
44 カロフィシーン――4億年前から今日まで
45 歴史的ハイライト
46 右旋性/左旋性現象に関する自然科学的進展
47 パスツールの発見のビオによる審査
48 ファント・ホフとル・ベル
49 左手に左の手袋,右の手袋
50 コンテルガンの悲劇
51 サリドマイドの復帰
52 制御されていない化学合成――1:1の混合物
53 制御下での化学合成――右旋性か左旋性かどちらかその一方
54 酵素と化学触媒
55 回復期の患者のためのアミノ酸カクテル
56 医薬品における右旋性と左旋性
57 “ラセミ移行"――右旋性・左旋性混合物からの移行
58 殺虫剤,殺真菌剤,化学除草剤
59 添加物による飼料の改良
60 食品添加物
61 芳香剤
62 生命の起源と右旋性・左旋性問題
III.手のひら対称性(掌性)の例をさらに探せば
63 手のひら対称性(掌性)の例をさらに探す
64 蛇状書法と左右交互書法
65 鏡の国のアリス
66 対をなす原像と鏡像
67 綱とヘソの緒――手のひら対称性(掌性)の中の手のひら対称性(掌性)
68 螺旋と二重螺旋
69 右向きの水晶と左向きの水晶
70 バネ,冷却管,弦
71 チョコレートのカタツムリやナッツ入りカタツムリ
72 手のひら対称性(掌性)のさまざま
73 工業技術におけるプロペラ
74 音楽における転回
75 古い文化や秘儀にみる渦巻き
76 お釈迦様の巻き毛は左巻き
77 甲殻類と鰈類
78 昆虫と繊毛虫
79 カタツムリをさらに詳しく見れば
80 右利きと左利き
81 利き目の右・左
82 右側と左側
83 逆位
84 “ボディーランゲージ"にみる掌性
85 縞模様のネクタイ
86 書物の背表紙
87 手のひら対称性(掌性)という視点
IV.付録――対称性と手のひら対称性(掌性)
88 対称要素
89 非対称
90 クラスaの手のひら対称性(掌性)とクラスbの手のひら対称性(掌性)


【メモ】
p31
エスカルゴ 右巻き:左巻き=20,000:1

シャンク貝:
自然界では大多数が右巻き、
左巻きは世界中の博物館で20~30個程度。
しかしヒンズー教のヴィシュヌ神が持っているシャンク貝は左巻き。

p98
1956年、サリドマイドを含む医薬品コンテルガン、グリューネンヴァルト社
サリドマイド分子のうち、右旋性と左旋性が1:1で混在(コンテルガン)。

人間のタンパク質は、左旋性のアミノ酸のみで選択的に構成されている。
このため、左旋性のサリドマイドは分子レベルで不適合を起こし、奇形を発症した。

p110-111
近年では、目的通りに作用する分子ユートマーとその鏡像体ディストマーの概念が確定し、
正しい分子のみを作成している。
そのため、過去に原像と鏡像が1:1で認可された薬品については、
FDAでは、原像のみに成分を変更する「ラセミ移行」という認可の短縮手続きが設けられている。

p130
出雲系神社の注連縄は右旋性、伊勢系のは左旋性。

p153
仏像の巻き毛(螺髪)は左巻き

p168
ネクタイをしている人から見て左から右に下がる→ヨーロッパ式
右から左に下がる→ヨーロッパ式



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