ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

戦国大名と読書  

戦国大名と読書
小和田 哲男



戦国時代初期の永生3年。
若狭の戦国大名・武田氏の家臣である粟屋親栄(あわやちかひで)は、
かつて源氏物語の講釈を受けていた三条西実隆に、
出陣先から、源氏物語の「帚木」巻の註を書写し、送るよう依頼した。

地方の一武将であっても、源氏物語を読み、
しかも戦地であってもなお学ぼうとしていた。

親栄は、翌年に討死している。

彼らにとって、読書はどれほど身近なものだったのか、
僕は何も知らなかった。

例えば、江戸時代の寺子屋などをみても、
日本人の読書(勉強)好き、勤勉さというものは、歴史的にも長く、かなり独自性あふれるもの。
これほど庶民が読書をする国はない、と以前何かで見た記憶もある。

また、前野良沢先生(この方はどうしても「先生」とつけたくなる)や、
杉田玄白らによって開かれた江戸時代の蘭学。
それを受け継ぎ、学ぶ人々の努力は様々な書籍で知ることができる。

だが、戦国大名はどうだったのか。
何となく皇室・公家は文化、戦国大名らは武道と、
すっぱり決めつけていたが、実はそうではない。

本書では、戦国大名はもとより、様々な武将が、
何を、どのように読み、学んでいたかを紹介する。
言われてみると、これまであまり注目されなかった側面を明らかにする本である。

登場するのは、徳川家康など有名な武将から、地方の武将まで様々。
時代的には戦国時代~おおむね江戸時代初期までである。

様々な武将の教育係を務めた禅僧、
また禅寺で読まれていた書籍など、通常の歴史書では触れられない内容が多く、
歴史好きにはとても楽しめると思う。


【目次】
1 教育者としての禅僧の役割
2 どのような書物を読んでいたか
3 実践に応用された「武経七書」
4 戦国武将にとっての占筮術
5 幅広く読まれていた中国の典籍
6 『平家物語』と『太平記』
7 武将たちはなぜ王朝古典文学を読んだのか
8 漢詩・和歌と戦国武将
9 徳川家康の愛読書と印刷出版事業

【メモ】
p14
武将子弟の寺入りの場合、禅宗が選ばれることが多かった。
「禅儒一致」禅宗と儒教は根っこで繋がっているという意味。
禅宗で教える儒学が、戦国武将の政治理念とされていった。

p025
今川義元と徳川家康の教育係
=「太原崇孚(たいげんそうふ)または雪斎(せっさい)」、同じ人物

p44
「甲陽軍艦」によると、山本勘助は
宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)という「五音」の占い(五行思想に基づく)を行った。
また「ゑぎ・さご・すだ、来りやう、行やう」を見たという。
「ゑぎ」はカラス、「さご」はトビ、「すだ」はハト。
合戦時にこれらの飛び方で占っていた。
この三種の鳥は「軍鳥」などとも呼ばれた。

p56
「実語教」「童子教」は漢文だが難しくないため、初等教育でよく用いられた。

「実語教」
 山高きがゆえに貴からず、木有るをもって貴しとす。 など。

「童子教」
 口は是れ禍の門 舌は是れ禍の根 など。

p66
「四書」大学、中庸、論語、孟子
「五経」易経、書経、詩経、礼記、春秋
 は必読書

p73
「武経七書」孫子、呉子、尉繚子(うつりょうし)、六韜、三略、司馬法、李衛公問対
よく読まれていた。

p119
足利学校
 上杉憲実が鎌倉円覚寺の僧快元を迎え、学則を定め、学校として整備した。
 戦国時代には3000人の生徒がいた。
 全て禅僧だが、一般人が入学したいときには剃髪し、卒業すれば還俗して構わなかった。

p186
若狭の戦国大名武田氏の家臣 粟屋親栄(あわやちかひで)
 三条西実隆(公家)から、何日も源氏物語の講釈を受けている。
 また、出陣先から源氏物語の「帚木」巻の註を書写してくれるよう依頼したりしている。
 三条西実隆も「陣中不相応之儀歟」と驚いている(「再昌草」永正三年閏十一月六日条)。
 なお、親栄は、翌永正四年六月二十七日、一色義有軍と戦って討死している。

p220
関ヶ原の合戦時、家康が陣取った「桃配山」は、
かつて壬申の乱の時、大海人皇子がここで将兵に桃を配り、大友皇子を打ち破った場所。
この故事を知っていたから、ここに陣取るパフォーマンスができた。

p228
家康は、長い戦乱で書籍が散逸していたことから、買い集めたり、書写したりして保存に努めた。
天皇家や公家、寺院が持つ貴重書の謄写も行った。
その時、三部書写し、禁裏、江戸城、駿府城の駿河文庫に1部ずつ保存し、万一の際に備えた。

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