ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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お線香の考現学―暮らしに根付くお線香の香り (香り選書)  

お線香の考現学―暮らしに根付くお線香の香り (香り選書)
鳥毛 逸平



我が家には今のところ、仏壇がない。
だからお線香には馴染みが浅く、
正直、うっすらとした「敬して遠ざける」といったところである。
たぶんその使われるシーンから、何とはなしにケガレを感じているのだと思うが、
もちろん「お線香」という品に、ケガレも何もない。

むしろ、自分がお線香について何も知らないから、そうした感覚を招くのだと思う。
無知こそ危険である。

本書は、そのお線香について、その種類、成り立ち、工法、製造法、使用方法など、
様々な観点から紐解くもの。

日常的に使うものではないにせよ、
日本の生活では必ずどこかで遭遇する身近なモノなのに、
これまで、自分が全く何も知らなかったことに驚いた。

特に、世界では竹を軸とした竹線香が一般的であるという。
(確かに香港などを舞台にした映画だと、そういうモノがよく映っていた。)
僕らが日常的に使っているお線香は、世界ではマイナーな部類。
そのお線香は、製造にかなりの熟練的技術を要し、
完全な工業生産はできないらしい。

それなのに、現在の効率化中心の日本において、
天然素材を吟味し、技術を伝承しつつ、
なお新しい工夫を凝らし、多種多様に発達させている職人、製造者の方々に、
感謝したい。
この方々があってこそ、様々な折々に、
僕らはお線香を変わらず使い続けられるのだ。

さて、最近はお線香だけでなく、お香(インセンス)も流行っている。
我が家も以前購入していたが、長らく放置していた。
だが、本書で紹介されていたある言葉に出会い、
もっと積極的にお香(お線香)に向き合おうと思った。

「お線香に火を着けようと思った時点で、
 その人の気持ちは鎮静の方向に向かっている。」


慌ただしい毎日だが、これからはこの言葉を思い出しながら、
お香(お線香)を日常に取り入れたいと思う。

【目次】
1 香について
2 お線香について
3 お線香の種類
4 お線香の原料
5 お線香の製造
6 お線香の特徴
7 お線香の雑知識

【メモ】
p55
竹芯を使用した竹線香は、日本では長崎以外では殆ど使われないが、世界ではむしろ一般的。
お線香は中国の北部と南部の一部、チベット、韓国、インドの一部、パキスタンくらい。
その他の中国、東南アジア、インド、中東、南アジアでは竹線香。
英語では日本の線香は「ジャパニーズ・インセンス」または「ジョス・スティックス」

p59
原料の種類、硬軟、粉砕方法、粒径、粒度分布などで線香は変わる。
表面が滑らかなものは燃えづらくなったり香りが出にくいため、技術を要する。
ザラザラしているのも折れやすくなる可能性がある。

p72-73
お線香の基材=椨(タブ)の木の樹皮から作った糊。
本来は樹皮が多く混ぜられるので色は茶色。現在の鮮やかな緑色は、高級感を出すための付加価値。

p76
お線香の熱カロリーは低く、よほどの可燃性素材でないと燃え広がらない。
畳を焦がして消える程度。
ただし助燃材を入れたものは危険性が増す。
2005年に大阪消防局では助燃材を使用禁止。

p94
沈香(フトモモ目ジンチョウゲ科アクイラリア属・ゴニュステュルス属・ギリノプス属の基原植物)
蟻や風などで樹皮が傷つくと樹脂化し、そこが香る。
稀にその樹脂化が進むものがあり、それは比重が重く水に沈むため、
「沈香」「沈水香木」「沈水香」「沈」などと呼ばれる。
樹脂化の進行は樹によって異なり、水に沈むほど良質なものは殆どない。

p96
伽羅 =沈香の最高級品(ただし違うものという説もある)。
沈香は常温では香りが薄いが、伽羅は常温でも香る。
伽羅の産地や最終方法は古来から隠されて不明。また最近は唯一採集できた場所から取れなくなり、
品質が変わったと言われる。

p98
白檀
ビャクダン科の常緑樹の幹・根の心材。ある程度香りがするようになるには30年以上、
よい香りになるのは60年以上の心材。

p106
お線香は不安定な天然材料を多く使用し、製造中も曲がったり、くっついたり、反ったり、折れやすいもの。
そのため完全な機械化は困難。

p114
糊分を多く入れれば折れにくいが、香りにくくなる。
高級品ほど香りを優先するため糊剤を減らすので、製造過程で折れやすい。職人の技術を要す。

p126
「上匂い」火をつける前に、お線香から発する香り
「焚き匂い」火をつけた時に発する香り
常温で発する香りと、燃焼時に発する香りを同じにするのは難しい。

p127
天然の香りはまだ成分が明確にされていないものも多い。
また成分ごとに、香りが気化する独自の沸点(発香温度)がある。
様々な発香温度の成分を組み合わせてお線香の香りを作っている。

p135
香十徳(黄庭堅という北宋の詩人(11世紀)が作り、日本へは一休宗純によって伝えられたという。)

感格鬼神 感は鬼神に格(いた)る - 感覚が鬼や神のように研ぎ澄まされる
清淨心身 心身を清浄にす
能除汚穢 よく汚穢(おわい)を除く - 穢れをのぞく
能覺睡眠 よく睡眠を覚ます - 眠気を覚ます
静中成友 静中に友と成る - 孤独感を拭う
塵裏偸閑 塵裏に閑(ひま)をぬすむ - 忙しいときも和ませる
多而不厭 多くして厭(いと)わず - 多くあっても邪魔にならない
寡而為足 少なくて足れりと為す - 少なくても十分香りを放つ
久蔵不朽 久しく蔵(たくわ)えて朽ちず - 長い間保存しても朽ちない
常用無障 常に用いて障(さわり)無し - 常用しても無害

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