ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ミクロの森: 1㎡の原生林が語る生命・進化・地球  

ミクロの森: 1㎡の原生林が語る生命・進化・地球
デヴィッド・ジョージ・ハスケル


野鳥観察では、よく「マイ・フィールドを持ちましょう」と説明する。
珍しい野鳥がいなくてもいいので、とにかく1年を通して観察できる場所。マイ・フィールド。
そこへ通いつづければ、1日のうちの野鳥の動き、1年を通した動き、
夏鳥・冬鳥・留鳥の入れ替わりなどが見えてくる。
そうして得た感覚は、どんなフィールドへ行っても応用がきくものだ。

例えばスズメ1羽であって、
単独なのか、群れなのか。1日のうちで個体数は変わるか。
鳴き声は、餌は何か。飛翔方向はどちらから、どこへ行くか。

またスズメという種としても、どうして茶褐色なのか。
なぜ(少なくともヒトの眼には)雌雄同色なのか。
なぜあの嘴の形状なのか。どうしてツバメのように翼がとがっていないのか。
そして、そもそもなぜスズメがそこにいるのか。

こうしたことを追求していくと、生態学、生物地理学、そして鳥類以外の
動植物まで考えなければならない。

全ての生き物は繋がっていて、そこに在る理由がある。

それを知れば、「たかがスズメ」という意識は薄れ、
スズメを同じ一つの命として感じることができる。
それこそが、保護の第一歩だと思う。

さて、筆者はマイ・フィールドをテネシー州の山中の原生林に求め、
半径が約1㎡の範囲に設定。その範囲を「曼荼羅」と名付けた。

曼荼羅での丁寧な生き物(時には無生物)の観察から、
様々な知識・経験を踏まえて、
思索は命のつながりや歴史の流れへと展開する。

劇的なドラマがあるわけではない。
しかし、生き物ずきのフィールドワーカーなら、
誰もが感じたことがあるだろうフィールドでの喜び、驚き、
全てが繋がっているという感覚を、本書は体験させてくれる。

1月1日から12月31日まで、43章の物語が収録されている。
1日の記録である各章は4~6ページ程度で、長くはない。

ただ、そこに集約された内容の密度は、濃い。
簡単に読み進めることはできないし、また、そうした読み方をするものでもないだろう。

1日に数章読んでも良いし、
また、1年の同じ日に、同じ章を読むのも良い。

いずれにしても、じっくり読むことをお勧めする。

「庭園、都会の木々、空、野原、郊外に棲むスズメの群れ-すべてが曼荼羅なのだ。」p307

本書はリード環境図書賞、全米アウトドア図書賞、2013年ピュリッツァー賞「一般ノンフィクション」部門最終候補作。

【メモ】
p131
「命という織物に対する木の貢献の少なくとも半分は木が死んでからのものだから、森の生態系の健全性を測る一つの物差しは、木の残骸の多さということになる。」

p174
「森の生命の多くの部分は、厳密に観察したとしても、私たちの目には見えない」

p224
ヒメコンドルの血液には多数の白血球があり、極めて高い消化能力がある。
炭疽菌とコレラウイルスは、コンドルの消化管を通過すると死ぬ。
その土地から病原菌を駆除する能力では、コンドルの右に出るものはいない。

p259
二色覚をもつヒトが生まれる頻度は全男性の2~8%(遺伝的変化が生じるのは男性染色体)。
これは、二色覚が進化における不適応であった場合に予測される出現率よりもはるかに多い。
状況によっては、進化が味方していることを示唆している。
また、南米大陸のサルにも、同じ種の中に二色覚と三色覚の個体がいて、一緒に生活しているものがある。この場合、二色覚は全個体の半分以上に及ぶ。
薄暗い部分では三色覚よりも二色覚の方がより適応している。
逆に、明るい場所で赤い実を見つけるには三色覚が適応している。
森は様々な光の状態があるので、こうした二色覚と三色覚が併存しているのかもしれない(どんな光の状態でもいずれかのグループが餌を見つける)。

p284
ほとんど全ての植物が菌根菌を根かそのまわりに持っている。
ほとんどの場合、地中で栄養分を吸収するのは菌糸で、根はそのネットワークとの連結部。

p307
「庭園、都会の木々、空、野原、郊外に棲むスズメの群れ-すべてが曼荼羅なのだ。」

「期待は持たずに出かけること。/五感を積極的に開放しておくことだけを望むことだ。」
「瞑想のやり方を真似て、繰り返し繰り返し、意識を今この瞬間に向けること。」
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