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殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件  

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件
清水 潔



「北関東連続幼女誘拐殺人事件」といっても、知らない方の方が多いと思う。
現在連続事件とみなされているのは、次の5事件。

(1)1979年 栃木県足利市 5歳女児
(2)1984年 栃木県足利市 5歳女児
(3)1987年 群馬県新田郡尾島町(現・太田市) 8歳女児
(4)1990年 (足利事件) 栃木県足利市 4歳女児
(5)1996年 (失踪事件) 群馬県太田市 4歳女児

これらの事件には、次のような共通点がある。また犯行は半径10キロの範囲内。
・被害に遭ったのが4歳から8歳までの児童
・パチンコ店が行方不明の現場(3事件)
・河川敷で死体遺棄(3事件)
・金曜、土曜、日曜および祝日に事件が発生(4事件)
これがなぜ未解決なのか。
なぜ宮崎勉による「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」や、
「酒鬼薔薇聖斗」による「神戸連続児童殺傷事件」ほど認知度が低いのか。

それは、この事件が未だ、「連続誘拐殺人事件」としてきちんと捜査されていないためだ。

発生当時は、連続性が認められていた。
「足利事件」「菅家さん冤罪」などのキーワードは、記憶されているかもしれない。
(4)1990年のこの事件で、警察は菅家さんを(1)1979年、(2)1984年の事件でも逮捕。
ところが検察で、嫌疑不十分として不起訴になっている。

だが世間では、容疑者報道か菅家さんを(1)(2)(4)の犯人として認知。
そして菅家さんが(4)の事件で有罪となり、
事件は「何となく」解決したイメージとなってしまった。

しかし、著者清水潔氏の丁寧で徹底的な取材により、
実は菅家さんが冤罪であることが判明する。(4)の事件も未解決となったのだ。
(なお、著者はむしろ(1)~(5)が連続事件であり、未解決であると確信したため、
 菅家さんの冤罪を晴らした。)

著者は当時始まったばかりのDNA鑑定の齟齬、警察による不利な証拠の隠滅、
マスコミの「調べない報道」などを追及しながら、
真犯人と思しき人物にまで到達している。

だが、本書刊行時、まだ警察による捜査は行われていない。

この事件を再捜査すれば、警察の当時の捜査方法や、
当時のDNA鑑定の信憑性(中には既に死刑執行されたものすらある)が問題になるため、
警察は手をつけないように放置しているようだ。

だが、5人もの子供が犠牲になっているのだ。
もちろん人数が問題にはならない。たった一人であっても、徹底的な捜査は必要だ。
しかし、菅家さんを冤罪にしたことで、捜査が完全にストップしている。放置と言っていい。
それは被害者と、被害者の遺族にとって、余りにもひどい。

様々な問題はあるだろう。DNA鑑定を疑うことで、新たな冤罪の発覚もありうる。
しかしそれよりも、まずは「この犯人」を逮捕すること。それが警察の仕事だろう。

おそらく個々の刑事・警察官には、この事件を解決したい人もいると思う。
組織がそれを抑えているならば、
その組織を動かせるのは、いわゆる世論しか残っていない。

本書を著者が刊行したのも、様々な働きかけをしたが事態が動かないためゆえと思う。
ならば、一人でも多くの人が本書の存在を知り、できれば読み、
そのうねりが、改めて再捜査を求める動きとなることを願う。

今この時、日本人が読むべきノンフィクションというのがあるとすれば、
本書である。

【目次】
第1章 動機
第2章 現場
第3章 受託
第4章 決断
第5章 報道
第6章 成果
第7章 追跡
第8章 混線
第9章 激震
第10章 峠道
第11章 警鐘

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category: 事件・事故

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