ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

謎の古代豪族 葛城氏  

謎の古代豪族 葛城氏
平林 章仁



司馬遼太郎の「街道をゆく 1」に、「葛城みち」という章がある。
一言主命という土着の神(とそれを崇める部族)と天皇(とその率いる部族)と関わりから、
葛城という地に住む部族の独立性と盛衰を概観している。
この章から、葛城氏というものに若干の興味を持っていた。

本書は、その葛城氏に注目し、諸文献をもとにその実像に迫る書である。
記紀等の内容から、ヤマト王朝の職務は内容に応じて氏族に分散していたが、
特に葛城氏は、対外交渉、特に現地に赴いての交渉だったと考えという。

それは、葛城氏の祖とされる葛城襲津彦の所伝が全て朝鮮半島関連であることから類推され、
葛城氏の地域基盤は内陸ながら、広大な河川・海上交通網を掌握していたという。

その影響力から、5世紀は、葛城家の女性が最も多く天皇家に入内した。
むしろ、葛城氏と関係のない天皇の方が少なく、第15代応神天皇から第25代武烈天皇までの11代のうち、第20代安康天皇と武烈天皇を除く9代までが、葛城氏の女性を母もしくはキサキとしていたほどである。

その葛城氏が、忽然と衰退してしまう。
それは、天皇家が葛城氏との関係を断ち、対外交渉権を得ようとしたことが主原因である。
しかし天皇家と葛城氏の勢力均衡も破綻し、また天皇家による対外交渉もうまくゆかず、王権が弱体化したという。

遥かな古代のことゆえ、著者の研究による推測も大きいと感じるが、
諸文献を踏まえた丁寧な展開には、さほど無理を感じない。

また、確かに天皇家と葛城氏の姻戚関係とその消滅は、
大きな歴史的意味を持っているのだろう。

大和王朝との関わりではどうしても出雲王朝に目がいきがちだが、
葛城氏をはじめ、他の諸部族との関わりもやはり興味深い。

こうした視点からの古代史論が盛んになることを、もっと期待したい。


【目次】
第一章 葛城氏の誕生
第二章 天皇家と葛城氏の女性
第三章 葛城氏の権力基盤
第四章 遺跡から見る、渡来人との関係
第五章 葛城氏の滅亡
第六章 葛城氏滅亡後のヤマト王権
第七章 神話・神社に隠れた、葛城氏の痕跡
終 章 新たな謎と今後の課題

【メモ】
p145
第三者の侵入を拒絶するような特別な聖域を、アジールという。
アジール=
世俗権力の干渉や世俗法の適用を受けない特権を保証された特別な場所で、墓・神社・寺院・教会など。アジールを支配するのは宗教的秩序のため、世俗の法が適用されない。

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