ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

となりのツキノワグマ  

となりのツキノワグマ
宮崎 学



四国にも少数だがツキノワグマがいる。

2002年に、四国自然史科学研究センターが3例目の撮影に成功していたのは知っていた。
四国で3例目となる野生状態のツキノワグマの撮影に成功

今回調べてみたら、四国自然史科学研究センターはWWFと共同で、
2013年1月には、3頭にGPSと無線を組み合わせた発信機付きの首輪を装着したり、
四国のツキノワグマ絶滅防げ/首輪にGPS装着

2013年6月には推定13歳の雌1頭と子グマ2頭を撮影したという。
四国でツキノワグマ撮影 環境団体「確実に繁殖」

こうしたきちんとした基礎調査の積み重ねによって、
初めて実効的な保護もできるし、しもし将来問題が発生したとしても、適切な個体数管理の方策が検討できる(四国のツキノワグマがそこまでいくかは微妙だが)。

いずれも剣山系らしいが、ハードな調査だと思う。
僕も鳥類のソウシチョウ対策で、四国自然史科学研究センターの方には数年お世話になったことがあるが、
皆さんの粘り強い活動には毎回驚かされた。
堅実かつ着実な調査活動に敬意を表したいし、もっと知られてよい団体であると思う。
ここで紹介しておきたい。

NPO法人四国自然史科学研究センター


さて、ツキノワグマだが、本州ではその生息域が拡大していること、
それは山林の荒廃が原因であると言われている。

それに対し、写真家・宮崎学氏は、独自の無人撮影調査等から、
少なくとも長野県ではそれほど減少しておらず、むしろ個体数は増加していると推測している。

本書はその無人撮影の成果をはじめ、宮崎氏のこれまでのツキノワグマ調査の数々が紹介されている。
これを読むと、なるほどまさに「となりの」というほど人間に密接した場所に生息していることが実感できる。

宮崎氏は語っている。
「少なくとも、関東・甲信越の山々を見るかぎり、決して「荒廃」などしていないし、近い将来、ツキノワグマが絶滅するとは思えない。なぜなら「荒廃」とは、林業という経済面から見た場合に言えることであって、林業不振で間伐や枝打ちが行われずにきた今日の山野は、そこに暮らす野生動物にとって、絶好のすみかとなっているからである。」

実際に多数のカメラを設置し、長年調査してきた方からの言葉と、
本書に収録された写真を見ると、この言葉はかなり現実感がある。

ライチョウの残る高山にも、ツキノワグマは進出している。
(「二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ」 レビューはこちら)

少なくとも本州中部においては、
ツキノワグマの個体数は一度しっかり調査する必要しなければ、
保護も管理も誤った方向にいくのではないだろうか。


なお、山は実は荒廃していない、というのは、
おそらく香川や四国も同じではないかと思っている。

例えば香川県では、マツ枯れや里山の荒廃が言われて久しい。
しかし戦前までは薪炭林として伐採されていたので、今よりも樹木は貧弱だったはずだ。
(江戸期の版本(讃岐国名勝図会や金毘羅参詣名所図会)を見ると、山並みには岩肌が描かれ、少しだけ樹木が描かれている。省略しているのもあるだろうが、広重の「六十余州名所図会 讃岐 象頭山遠望」http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1308357を見ると明らかに山肌が見えており、山全体が樹木に包まれた現在とは全く異なることがわかる。)
また戦時中は、松根油を取るためにマツの植林が推進されたと聞いている。
現在のマツは、当時一斉に植林されたマツの衰えによる部分も大きいだろう。

その後は手入れがされていないため、いわゆる「里山」としては荒廃しているだろうが、
鳥を見るために山野を歩いている目で見ると、動植物はかなり豊かになっている。
おそらく自然環境としてはここ数百年で最も豊かなのではないだろうか。

「里山」というキーワードが言われて久しいが、
すでに人が山野を主要なエネルギー・食糧源として利用する状況ではない。
過去と同じ「里山」は有り得ない。

どこを里山とすべきか、そしてどこを「里山でない山に戻す」か。
その判断も重要になってくるのではないだろうか。


【目次】
1章.20年後のけもの道
2章.クマのグルメガイド
3章.森の改変者
4章.忍び寄るクマたち
5章.檻
6章.クマは何頭いるのか?
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category: 哺乳類

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