ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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偽札百科  

偽札百科
村岡 伸久



ソウルで、200兆円分の偽造国債が見つかったというニュースがあった。
<産経新聞>
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130918/kor13091810010000-n1.htm

この事件では、額面5000億円のものが400枚あったとのこと。
額面5000億ってあるのかな、とちょっと調べてみたら、そもそも日本国債は2003年1月に電子化されているらしい。いやはや良かった。
しかし、もし100万円の偽造国債だったら、日本人でも騙される層はある程度いるんじゃないだろうか、と不安になった。

そもそも、紙幣を含む日本の金券に対して、僕らは「偽造なんてない」とかなり盲信している気がする。
実際にも日銀によるチェックは非常に厳しく、外国の偽造紙幣の流通状況に比較すると、格段に安全なのだろう。
しかし、それと「実際に流通していない」というのは別のはず。偽造紙幣は市中に出回るのだから、誰かが気が付かず、銀行に回収される機会がなければ、それは本物として流通してしまうのである。

そのために、様々な偽造防止技術-例えばホログラム、凸版印刷、マイクロ文字がある。

ただ、それを自分がきちんと把握し、チェックしているかというと別。
やはり両替機に通ったら本物、通らなかったら「まあ汚れているのかな」と納得して使うだろう。

本書は、その状況に警鐘を鳴らす一冊である。

帯に「絶対に「参考」にしないでください」と煽っているとおり、
かなり細かく偽札防止技術と、両替機などの真贋鑑定装置の仕組み、突破方法が記載されている。
まあ突破方法といっても、理論であって、実際にできるかどうかは別。
だから、かなり危険そうに見えるが、「参考」にしても偽造はできない。

ただ問題は、こうした理論上の突破技術が見出せることと、
それに比して(おそらく)現在の市販の紙幣真贋鑑定装置が、ちょっと技術的に停滞-というか、妥協しているという事実だろう。

詳しくは本書を読んでいただきたいが、
・紙幣の真贋鑑定は、一部分のサンプリングと、数種のセンサー、特定のパターンのみに頼っていること。
・汚れた紙幣も真札と鑑定するように設定すると、類似する偽札も真札と判定しかねなくなる。
 そこで日本で取っている対策は、判定する閾値をより狭くし、汚れた紙幣は排除すること。
 そのために、日銀は汚れた紙幣をどんどん回収して、新しい紙幣をどんどん出していること。
という2点は、かなり技術的な真贋鑑定ではないところにウェイトがあると感じられる。

逆に言えば、日本では「汚れた紙幣」は機械を通らないことがある。
そうすると、機械を通らない紙幣でも「真札」である という思い込みが成立する。
この結果、ある程度のクオリティがある「汚れた雰囲気の偽札」であれは、人-人間では流通しかねないだろう。

貨幣経済が成立するためには、真札が流通すること、
そして使用者が流通している紙幣を信用していることが必要である。
ただ、信用と「盲信」は違う。盲信はチェック機能が働かないため、いつの間にか偽札が紛れ込む可能性がある。

本書はわりとキワモノ的雰囲気を出しているけれども、
日本ではあまり表立って問題視されない部分を指摘する、ちょっと珍しい本であった。


【目次】
はじめに
第一章 偽札について 法律、歴史、作り方
一、偽札とは
二、偽札の歴史
三、偽札の作り方 プロ編
四、偽札の作り方 素人編
第二章 紙幣とは 紙幣の特徴を知る
一、外国紙幣とは
二、紙幣の歴史
三、紙幣の作り方
四、偽札防止技術
第三章 紙幣識別機の構造
一、紙幣識別機とはなにか
二、自動販売機を開けてみる
三、ビルバリデータの搬送方法
四、紙幣識別機のセンサ
五、紙幣識別機の構造
第四章 本物と偽札の比較
一、人を騙す偽札
二、機械を騙す偽札
第五章 安全神話の崩壊
一、自動販売機大国ならではの犯罪
二、二千円札の発行と紙幣識別機の苦戦
三、自動販売機攻略
第六章 紙幣の問題点
一、偽造紙幣防止技術の問題点
二、技術へのこだわり
三、危険な偽造の実態
四、国とメーカ あとがき
付録 日本紙幣の紹介と各種機器のプロテクトについて

【メモ】
p149
CDS(偽造防止システム)
紙幣に印刷された模様(ユーリオン)を検出すると、最近のプリンタや複合機は印刷を中止する
 
p177
・日本においては紙幣の話題がタブー化している
→一般人が偽札の危険性を意識することが少なく、真贋を見分ける知識も持っていない
→両替機などの偽札検出技術を盲信している
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