ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

すごい人のすごい話  

すごい人のすごい話
荒俣宏



荒俣宏氏は、博覧強記の人として知られている。

しかし博識というのは結果であり、
膨大な蔵書と読書量というのは手段である。
時間と資金と場所と記憶力があれば、物理的には誰でも可能だろう。

荒俣氏が異なるのは、その好奇心である。
幅広く、オリジナルな好奇心があってこそ、それを知ろうとする意欲が発生する。
好奇心がないところに、博覧強記はあり得ない。

その好奇心を満たす方法が読書だと思っていたが、
ナマの人間から学ぶという方法も荒俣氏が取っているのは知らなかった。

いや、未知のことを知るためにはいかなる手段でもとるという、
荒俣氏のエネルギーには圧倒されるばかりだ。

で、本書はその荒俣氏の「押しかけ弟子入り」を側で聴く体験ができる一冊となっている。

収録された人は15人。
その分野が幅広いことはもとより、
「ハゲ研究」という、おそらく知的興味というよりは荒俣氏の極私的興味に基づくピンスポットな分野でさえも、その筋の第一人者から学ぼうというスタンスは恐れ入る。

ノンフィクション好きは結構好みの分野が偏ってくると思うが、
新しいワクワクする世界を知る入門書として、最適である。

これだけ様々な分野から「すごす人のすごい話」をつまみ食いできるのは滅多にないし、
それを全て深い関心をもって聴いていく荒俣氏も、やはりすごい人である。



【目次】
第1章 新しいからおもしろい、未知と未踏
I 竹村公太郎さんと楽しむ土地からの発想
 公益財団法人リバーフロント研究所代表理事 竹村公太郎さん
II 西成活裕さんと体を張って実験する渋滞学
 東京大学先端科学技術研究センター教授 西成活裕さん
III 高田礼人さんと追跡する「変わり者」ウイルスの戦略
 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 国際疫学部門教授 高田礼人さん
IV 板見智さんと検証するハゲの噂
 大阪大学大学院医学系研究科教授 板見智さん

第2章 知れば知るほどすごい、日本の底力
I 鈴木一義さんと発掘する幕末大名の幅広い知性
 国立科学博物館理工学研究部 科学技術史グループ長 鈴木一義さん
II 林公義さんと推理する天皇陛下の自然学
 横須賀市自然・人文博物館 専門委員 林公義さん
III 船曳建夫さんと聴き惚れる演歌の神髄
 文化人類学者 船曳建夫さん
IV 町山智浩さんと解析するコミック王国アメリカの影響力
 映画評論家・コラムニスト 町山智浩さん

第3章 生き物は生き物に学べ、生命の叡智
I 鈴木晃さんと発見するオランウータンの高度な社会
 オランウータンと熱帯雨林の会理事長 鈴木晃さん
II 小松正之さんと誇る日本人の深いクジラ愛
 政策研究大学院大学客員教授 小松正之さん
III 福岡伸一さんと再確認する生命の無常と有情
 生物学者 福岡伸一さん
IV 浜辺祐一さんと覚悟を決める「人の死に方
 都立墨東病院救命救急センター部長 浜辺祐一さん

第4章 挑戦して悔いなし、人生の壁と坂
I 迫慶一郎さんと乗り込む中国での街づくり
 建築家・SAKO建築設計工社主宰 迫慶一郎さん
II 四至本アイさんと突破する近代日本の大きな障害
 コラムニスト 四至本アイさん
III 早坂暁さんと白装束で巡る死出の旅路
 脚本家 早坂暁さん

【メモ】
p23
秀吉は最終的に配下の武将に土地を分けられなくなっ朝鮮に出兵したが、
家康は関東平野を肥沃にし、「内なる土地」を作った。

p28
忠臣蔵の四十七士が葬られた泉岳寺は、江戸で唯一家康が創建した寺。
そこに葬るには、間違いなく幕府の同意が必要だった。

p57
渋滞を解消するために新しく道を作ると、それまで車を持っていない人まで利用することがある。
「誘発交通」、予測不可能。

p104
人間の体毛に季節変動が全くないわけではないが、他の動物のように顕著でない。
なぜそうかは不明。
唯一の例外は、1歳前後の新生児脱毛。この時だけすべての頭髪が抜け落ちる。

p137
青は世界中で好まれるが、それが大衆レベルで最も使われたのは日本。
ペルシャンブルーはとても高価だった。
それをなぜ浮世絵に大量に使えたのかはわからない。

p187
日本の歌の特徴に、男が女に、女が男になって歌うというのがある。欧米では考えられない。

p262
愛媛県西予市の明浜町には「鯨塚」という供養塔がある。天保の大飢饉のときに浜へ打ち寄せられた鯨を食べて救われた住民が建てたもの。
表には「鱗王院殿法界全果大居士」と、殿様につけるような戒名がある。
この文字は、第七代宇和島藩主伊達宗紀(むねただ)の書という。

長門の向井岸寺清月庵にある「鯨墓」
鯨を殺したとき胎内から出た70数体の退治に全て戒名をつけ、海を向けて埋葬している。
この寺には1000頭もの鯨の戒名をつけた過去帳もあり、毎年法要が営まれている。

p402
関ヶ原のときも遍路は歩いていた。
「太平洋戦争末期の昭和二〇年。うちのそばに大きな遍路宿があって、宿帳が残っているんです。昭和二〇年は完全な空白。唯一、お巡りさんが、スパイや徴兵忌避の人間が遍路になってまぎれていないかを調べに来た。でも、そのころはお遍路さんは一人も来なかったそうです。これを知ったとき、ぼくは、ああ、あの戦争で日本は国の底をさらうようにして戦ったんだと思いました。底力なんてものじゃない、底の底をたたいて戦争をした。」
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