ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

妻と飛んだ特攻兵 8・19 満州、最後の特攻  

妻と飛んだ特攻兵 8・19 満州、最後の特攻
豊田 正義



特攻という行為そのものを賛美するつもりはない。
しかし、当時の個々の隊員それぞれが、それぞれの想いを抱きつつ命を捨てた行為を、愚かなことと簡単に断じることは僕にはできない。

時代の重み、その世代の限界というものは確かにあり、それが後世の者が、後世の情報を前提に評価することは極めて困難だと思う。

もちろん、当時からしても、戦術的な無意味さは認識されていただろう。
しかし、それをもって、特攻した個々の隊員への批判に置き換えるのは筋違いだと思う。
文字通り命を捨てた人の想いは、その人の全人生を知らなければ、第三者が評価することはできないと思う。

さて、しかし僕も「特攻」といえば知覧基地からのものと思っていた。

だから、本書の表題には驚かされる。
「妻と飛んだ」-そんなことがあり得るのだろうか。
「8.19満州、最後の特攻」-なぜ終戦後なのか。なぜ満州なのか。

カバーには、まだ若い軍人と、その妻と思われる女性が写された写真が使用されている。
なぜ、この二人が特攻したのか。

日本人が知らない、しかし知っておくべき歴史が、本書に籠められている。

谷藤徹夫少尉(当時22歳)は、満州で、妻の朝子さん(当時24歳)と、
終戦後の満州で特攻した。
それは軍の命令ではなく、
所属隊の有志11名による、独自の特攻。相手はソ連の戦車隊。
特攻隊としての名は、「神州不滅特攻隊」であった。

それは「神州」日本や天皇を無批判に崇拝した行為ではなく、
当時の、終戦時の満州にあって、どうしても抑えられない義憤によるものだった。

彼らがどのように散ったのかは知る由もない。
それどころか、終戦後20年以上、その死は「自滅」とされていた程だ。
しかし当時の戦友・上官により、その「特攻」が語られるようになった。
その時初めて、妻の朝子さんは「戦没者」として認定されるに至った。

しかし現在に至るまで、この史実はほとんど認識されていなかったと思う。

本書では、満州国と関東軍という谷藤徹夫少尉を取り巻く環境について、
その歴史が紐解かれる。

また一方で、谷藤徹夫少尉と、
同郷の親友であり、同じく特攻に散った二瓶秀典大尉との交流という、個々人の歴史も詳細に語られる。

これらが複雑に絡み、時代の結果として谷藤徹夫少尉は特攻を選んだ。

この事実を認識し、その上で繰り返さないことこそが、
谷藤夫妻の想い応えることになると思う。

永遠の0」(レビューはこちら)もまた特攻を扱っている。フィクションではあるが、フィクションならではの感動により、多くの方の高評価を得て、映画化までに至っている。

本書は、事実である。

「永遠の0」を読んだ方のうち、一人でも多くの方が本書を手に取ることを願う。





【目次】
第1章 開戦―東條内閣、倒閣へ動く
第2章 結婚―航空将校となり、満州へ赴く
第3章 満州―関東軍、謀略をめぐらす
第4章 帝国―皇帝・溥儀、傀儡となる
第5章 夫婦―飛行教官として教え子を見送る
第6章 特攻―谷藤徹夫、朝子と征く

【メモ】
p21
終戦から23年後、元上官が遺族に対し、隊員の妻も同乗して特攻した旨の証明書を書き送っていた。

p226
大西瀧治郎中将は「特攻の創始者」等と呼ばれるが、大西がルソン島で特攻を提案する6日前、大本営の電報に「神風特攻隊」「敷島隊」「朝日隊」という具体的な特攻隊の名称を挙げ、体当たり攻撃を行うごとに部隊名を挙げて大々的に発表せよ、というものがある。
大西の独断での提案ではないことが確認できる。

p310
自主的に結成された神州不滅特攻隊は、軍の記録上存在しない「幻の特攻」であるため、戦没者とも認められていなかった。


p324
満州で同じ舞台だった戦友たちにより神州不滅特攻隊の名誉は回復された。しかし、この史実はあまりにも知られていない。

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category: 戦争

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

 コメントありがとうございます。
 重要な日付に気づかせていただき、ありがとうございました。
 現時点から見れば「終戦後」と言えますが、当時の感覚はおそらく停戦直後。恐ろしい程の混乱だったと思います。
 そうした状況の中にあれば、一方的に日本人居留民に対するソ連軍の蛮行を看過できなかった谷藤少尉らによる特攻は、少なくとも、当時の「国民を守る」という意識にあった最前線の兵士としては当然達しうる結論だろうと考えます。
 谷藤少尉の行為の行為については、その評価云々以前に、もっと広く知られるべきと思います。
 改めて、お二人をはじめ、戦没された方々のご冥福をお祈りします。

BIRD READER #- | URL
2016/08/21 11:32 | edit

今日は谷藤徹夫少尉と奥さんのご命日です。
弱い立場にある避難民を見捨てられなかった優しい心、正義感に思いをはせ、謹んでご冥福をお祈りいたします。

YKM #qjqIFHjw | URL
2016/08/19 22:36 | edit

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