ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ヒトの見ている世界 蝶の見ている世界  

ヒトの見ている世界 蝶の見ている世界
野島 智司



僕の大好きな、「他の生き物はどのように世界を見ているのか」というテーマの一冊である。
紫外線色や、ヒトが三原色を近くしているが、他の生物では…といった、
大好物の話題で満載である。

生き物好きの人でもあまり意識していないのが不思議なのだが、
「人間の視覚が全てではない」という現実は、実はものすごく大きいと思う。
それが分かっていないと、動植物の生態を、人間が感覚できる範囲内で把握し、解釈してしまう。
それは無意味なことである。

目の前を飛ぶモンシロチョウも、空を飛ぶ猛禽類も、全てヒトとは異なる知覚世界に生きている。
彼らが感知している世界と、僕らが感知している世界はイコールではない。
その事実を知ったとき、ヒトという存在の思い上がりを強烈に意識させられるのではないか。

少なくとも、僕は自分の周りの世界をよりリアルに知るために、
様々な生物の知覚を知りたいと思う。

そこで行き着いたのが、
紫外線色と構造色の重要性だ。

こうした新しい近く世界の入門書として、本書は非常に優れた一冊となっている。
ぜひ本書をスタートとして、様々な生物の驚くべき知覚世界を知っていただきたい。
関係書として、以下の本をお勧めする。


「鳥たちの驚異的な感覚世界」(レビューはこちら)


「モンシロチョウ -キャベツ畑の動物行動学」(レビューはこちら)


「モルフォチョウの碧い輝き―光と色の不思議に迫る」
(レビューはこちら)


【目次】
第1章 チョウや鳥には、私たちには見えない色が見えている!~世界はもっとカラフル
 世界はカラフル
 色って何だろう―虹は七色ではない
 紫外線を見る生き物たち
 色が苦手な哺乳類
 光を使わずにして「見る」生き物
 色の見え方は十人十色
第2章 目の前にあるのに「見えないもの」、目の前にないのに「見えるもの」―「見る」とはどういうことか
 ヒトの眼の仕組み
 光とは
 視覚の情報処理
 ヒトの見ている世界
第3章 カタツムリは触覚で、フクロウは音で世界を「見る」―多様な生き物の「見る」
 昆虫の「見る」
 鳥類の「見る」
 様々な生き物の「見る」
 生き物の見る世界
第4章 「眼の誕生」が生物たちの関係を一変させた?!―「見る」の進化
 視覚の誕生
 陸上生物の視覚の進化
 哺乳類の視覚の進化
 見る見られるの攻防戦
 生き物にとって「見る」の意味
第5章 「見えない世界」を思い描く、ということ―「世界」は一つではない
 生き物が世界を描く意味
 ヒトの世界の可能性
 多様な世界が共存することの意味

【メモ】
p24
ヒトを含む哺乳類  三種類の錐体細胞 大半の哺乳類は2色覚
魚類、鳥類、爬虫類、昆虫類 紫外線も見える種がある

p26
アゲハ 5種類の錐体細胞を持っている
シャコ 16種類の錐体細胞を持っている

p28
ハタネズミ:尿でマーキング:尿や糞が紫外線を反射
→チョウゲンボウは紫外線を見て狩りを行う
(スウェーデンの研究者、ビータラ)

p30
夜行性動物:光を効率的に利用する
ex)ネコ:フラッシュで目が光る
網膜の外側にタペタムという光を反射する細胞層があり、一度網膜に入った光を反射し、再度視細胞に当てる→少ない光を増幅する

p39
ヒトの性染色体 XX:女性 XY:男性
赤色を感じるために必要な赤型オプシンというタンパク質と、緑色を感じるために必要な緑型オプシンというタンパク質の遺伝子はX染色体上にある
よって、XXの女性なら、一方のXに異常があっても補われるが、
XYの男性の場合、Xに異常があると赤緑色覚異常となりやすい

なお最近、女性の中には色覚に必要な物質が通常の3種類ではなく、4種類ある人がいることがわかっている
(X染色体が2つあるために、一方に異常があると逆に色覚のバリエーションが増える)
その場合、赤型オプシンが増える。
これが色覚に反映されれば4色覚になるが、実際にそのような人がいるかは未確認。

p46
虹彩や網膜にはメラニン色素があり、この黒い色素が眼に入った光の乱反射を防ぐ。
人種によって色が違うのは、メラニン色素の濃度の違い。

p75
カメラ眼と複眼の模式図を掲載

p79
ミツバチは緑・青・紫外線の3色を感知している

p84
太陽からの光は一定の偏光パターンを持っており、太陽を中心とした同心円を描くように分布している。
(p83に模式図掲載)
ミツバチやアリはこのパターンを認識している。
ex)砂漠のアリ
 変更を使った方角と自分の歩幅の積算で現在位置を把握している

p90
鳥類:大きな眼球を持っている(外からはわかりにくい)ため、眼球そのものを自在に動かすことは不得意。
そのたるめ首を動かすようになった。

p92
鳥類:油滴(ゆてき)という色素の粒が視細胞にある。
色のフィルターとして機能。
ex)黄色い油滴があると、黄色が遮断される。
これによって、より緻密に色の識別ができているのではないか。

p93
鳥類学者:イートン
鳥類の9割が紫外線反射で雌雄を識別していると推定している

p99
鳥類の求愛に用いられる羽根は、他の羽根より紫外線反射率が高い場合が多いらしい。

p107
モグラの鼻の先端:アイマー器官と呼ばれる0.5mmほどの感覚器が敷き詰められていて、微弱な振動も感知する。

p109
神経生理学者:レトビンら
カエルの網膜にある神経節細胞:5つのタイプがあるが、それぞれが特定の刺激にのみ反応、
うち4つは動きのある刺激にのみ反応
→特定の形・特定の動きの情報のみが脳へ送られる

p114
カタツムリ:4回以上/secの動きは感知できないらしい

p132
アンドリュー・パーカーの「光スイッチ説」を紹介

p141
水中と空気注では光の屈折率が異なる
→空気中では薄いレンズでも像が結べ、十分気圧には耐えられるので、魚類のような頑丈な眼は持たなくてよくなった

p144
体温調節に優れた哺乳類は、恐竜に狙われにくい夜間に活動するようになり、
視覚を一部退化させ、代わりに明暗を感じる桿体細胞を増やし、少ない光を増幅させるタペタムを形成した。

p147
ネズミ以上コウモリ未満という生物の化石は見つかっていない。
よって、コウモリがどんな動物から、どのような状況で進化したかは分かっていない。

p149
新世界ザルは個体変異があるが、主に二色覚。
旧世界霊長類はヒトを含めて三原色の色覚が一般的。哺乳類は二色覚が多いので、旧世界霊長類が例外的。

赤色と緑色を感じる遺伝子は同じ染色体の近い位置にあるため、単一の遺伝子が突然変異を生じたと考えられる。

赤と緑色が見られるのは、果実の識別などに有利。

p155
ナナフシやシャクトリが擬態することから、捕食者である鳥の獲物の認識がいかに視覚に頼っているかがわかる。またひの擬態がヒトもだますことから、ヒトと鳥類の視覚が近いこともわかる。

p158
もし鳥類がいなかったり、これほど視覚に頼る生物でなかったら、昆虫などはこれほど多様化しなかったかもしれない。
昆虫の多様化は花だけでなく、鳥類の視覚の鋭さも影響している。

p160
ガにも鼓膜がある。鼓膜の位置は種によって異なる。ガ類の鼓膜は20kHzから50kHzに感受性、多くはコウモリの超音波の周波数帯に重なる。
よって、超音波を聞いて逃げている。

またヒトリガの仲間は、自ら超音波を発してコウモリの超音波を妨害している。いわばコウモリ版の隠蔽色(隠蔽音)。

p180
どんなに紫外線写真が発達しても、チョウの見ている紫外線がどのように感じられているかはヒトには分からない。紫外線写真はヒトの視覚にあわせて変換された画像。









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