ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

辞書を編む  

辞書を編む
飯間 浩明




三浦しおん氏の「舟を編む」が好評である。
こちらは新しい辞書、『大渡海』の編纂をめぐる小説であり、
映画化もされている。
ただ僕はフィクションにはちょっと手を出すココロのゆとりがないので、
同じく辞書編纂のノンフィクションである本書に手を出した。ひねくれ者なのである。
「辞書を編む」というタイトルがどうしても「売らんかな」という感じで好みではないのだか、
内容はとても満足できるものであった。
もっと本書独自のタイトルで良いのに、と僕は思うだが、
また出版社には出版社の都合があるのだろう。

さて本書は、「三省堂国語辞典」の編纂者の一人である著者・飯間氏が、
改訂第7版の編纂作業を通じて、
辞書を編纂するということがどのような作業であり、
いかなる苦心と楽しみがあるか、ということを綴っている。

辞典といえばどうしても「分厚いもの」「語数の多いもの」を評価しがちだが、
実際にはそれぞれの辞典ごとのスタイルがある。

また、利用者のニーズも千差版別。

自らのニーズにあった辞典を選ぶことこそ幸せなのだ、
その幸せを生み出すために、「三省堂国語辞典」も、
そのスタンスを変えずに改訂を続けているのだ、という筆者の思いがひしひしと伝わってくる。

当たり前のように存在し、改訂されている国語辞典について、
その舞台裏ではどのような苦闘があるのかを知ることができる、
知的にワクワクできる一冊であった。

なお、「博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話」(レビューはこちら)では、
OED(Oxford English Dictionary)が初めて編纂されるときの、
知られざるドラマを紹介している。
辞書編纂に興味が出た方にはお勧めである。





【目次】
第1章 「編集方針」
第2章 「用例採集」
第3章 「取捨選択」
第4章 「語釈」
第5章 「手入れ」
第6章 「これからの国語辞典」

【メモ】
p65
「チョベリバ」1996年頃話題となった言葉
若者自身が使っている例がさっぱり集まらず、このこ言葉が広く使われているか疑問の声が多く上がる
「こういう言葉が広まっている」と、根拠が曖昧なまま言われた言葉の嶺として有名

p160
百科項目の語釈にあたっては、採集した用例の情報及び専門資料のあたるとともに、
より日常感覚に近づくよう、自らその実物を見たり聞いたり、触ったりすることに努める

p219
「ら抜きことば」
現代日本語では、可能形とは別の次元で、可能表現に関する混乱が生じている。

p230
小型辞典の特色

・「岩波国語辞典」「明鏡国語辞典」
 その言葉が正しいか否か判断を求めたい人
・「新潮現代国語辞典」
 (明治以降)その言葉がいつから使われているか知りたい人
・「新潮国語辞典」「広辞苑」「大辞林」「大辞泉」「日本国語大辞典」
 (明治以前も含め)その言葉がいつから使われているか知りたい人
・「新明解国語辞典」
 その言葉について、その辞書なりの解釈を知りたい人
・「三省堂国語辞典」
 その言葉が、今広く使われているか確かめたい人

p252
これまでの辞書では、小型辞典なら6万語、大型辞典なら20万語などと分けて考えられていたが、
電子辞書の普及によって収録語数は同じ土俵になることになった

しかし、むやみに増加することで、
逆に追加すべき語か否かに対する選択基準が曖昧になったり、
適切な語釈か否かの検討も少なくなる懸念がある。

 
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: ノンフィクション

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/226-b4517a84
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム