ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

里山昆虫記―さぬきの里・山・池  

里山昆虫記―さぬきの里・山・池
出嶋 利明

里山昆虫記




20年くらい野鳥は追いかけているし、香川県の野鳥関係文献はほぼ全て目を通しているので、野鳥であればその個体数の増減や、いつが初確認か、またどんな種が見られなくなったか、だいたい分かる。
子どもが生まれてからフィールドに出る回数はめっきり減ったが、それでもたまの観察時に、出会た野鳥
香川県の自然史においてどういう位置づけにあるかがわかるというのは、楽しいものだ。

一方、興味はあるのだが、植物・昆虫・魚類などには門外漢。
特に昆虫の場合、捕まえてじっくり確認しないとわからないものが多く(という印象があり)、
識別すら覚束ない。

しかし、野鳥ですらその個体数や分布は年々変化している。
昆虫や植物の移り変わりを知ることができれば、もっと自然を見る目は変わってくるだろう。

その手がかりとして、最適なのが地域限定の文献である。

動植物は、その地域ごとに長年追っかけている人がいるものだ。その人が書いた文献なら、
その地域での各種の位置、変遷などがよくわかり、全国単位の図鑑よりももっと深い理解ができる。

本書は2005年1月16日から2008年3月16日まで、四国新聞に連載された「さぬきの昆虫誌」を書き改めたもの。著者は瀬戸内むしの会会長、香川県での昆虫分野を代表する一人であろう。
目次の各標題ごとにほぼ5種がまとめられ、全部で153種の昆虫について語られている。
残念ながら初掲載日が収録されていないが、ほぼこの3年間の香川県における昆虫の分布状況や、
リアルタイムな変遷がコンパクトにまとめられている。

こうして通して読んでみると、都市化と温暖化の影響というのはかなりのものだ。

また子供の頃、オオミノガのミノとイラガのマユばかりだった記憶があるが、
ここ10年くらいはほとんど見かけなくなっていた。
これらの種についても掲載されており、やはり感覚は正しかったのかと思ったものである。

香川県に住む生き物好きの方には、特にお勧めしたい。
県内の全小中学校に置いておくべき、必須の本である。

また、こうした地域文献は、実は地域外に住む人にとっても有益である。
鏡のようなもので、「ではウチのトコロではどうなのだろう?」という疑問がわくし、
また地元のみの変化なのか、他地域での変化もあるのかを知る材料にもなる。

製本はしっかりとしており、全ページカラー。
読み応えもあり、持っておいて損はない一冊である。



【目次】
自然は変化している
どこかで春が
春・ため池
夏の陽光を浴びて
梅雨の晴れ間に
夏・ため池
秋は夏に隠れて
秋・ため池
小春日和の散策
寒さに耐える
冬に探索する
春を求めて
春来たりなば
初夏 讃岐山脈を歩く
草原を舞う
昆虫酒場の酔客
稲穂は垂れて
秋 讃岐山脈を歩く
晩秋の河川中流
冬 讃岐山脈を歩く
春へとうごめく
春の河川中流
新緑から深緑へ
渓谷は雨の季節
夏 讃岐山脈を歩く
海岸 夏の終わり
里の秋
晩秋のため池
温暖化の冬に
冬の里山
春よ来い!

 
【メモ】
p22 オオミノガ
1995年にハエの研究者が、福岡市内のオオミノガのミノから、日本にいなかった寄生バエを発見した。
発見の翌年には、福岡市内のオオミノガが食い尽くされた。
寄生バエは九州に広がり、1998年にこの情報を得て高松市内を確認したが、すでにオオミノガはいなくなっていた。
原因を特定することは難しいが、中国で街路樹を守るためオオミノガの天敵である寄生バエを大量に放ったようである。
それが何らかの方法で日本に入り込み、餌はあるが天敵のいない環境で爆発的に増加したらしい。

p42 ヨツボシトンボ
ヨツボシトンボやフタスジサナエ、トラフトンボが見られるのは水生植物の多い自然度の高い池。
水生植物が多ければ、トンボ以外の昆虫も多いはず。
しかしブルーギルはゲンゴロウ類なども餌にする。
ただしトンボのヤゴは水底でじっとしているため、食われにくい。
そのためブルーギルの多い香川県のため池では、水生植物が豊富で、ヨツボシトンボがいてもゲンゴロウ類のいない池がある。

p242 ヤコンオサムシ
イヌシデの自然林の残る大川山山頂では、アワオサムシ、オオオサムシ、ヒメオサムシの3種が知られていた。しかし10年前(本書は2005-2008の新聞連載)の調査で、3種以外に平野部や低山、中山地で見かけるヤコンオサムシが取れた。大川山山頂が荒れ始めているのではないか。

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