ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ  

なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ
デニス・マッカーシー



そうか、僕の興味があるのは「生物地理学」という分野であったのだ。

「生命の驚異的な多様性はどこかよくわからない場所で生まれるわけではない。
 場所はとても重要なのだ。
 分布について学習すると動植物の進化と特定の場所を結びつけて考えるようになり、その種の進化の背景を実感として理解することができる。
 さらに、環境はそこで起こっている進化による変化と分離した単なる消極的な背景ではなく、目に見えないながらも積極的に進化に参加し、変化への機械的な推進力を与えていることもわかる。」

全ての生物の在り方は、他の生物との関わりや、その場所にいる歴史抜きには語れない。

分布と多様性は、お互いに深く関係している。

おかげで、今身近なフィートルドにいる生物も、
その形や生態、なぜここにいるのか、という点で、大きなロマンを秘めている。

僕はそれを知りたいのだ。

南極にはシロクマはおらず、エンペラーペンギンがいる。
つい現在の視点から考えて、不毛の地である南極にエンペラーペンギンが進出したと思いがちだが、
実際は南極大陸が他の大陸から分断されたことにより急速に低温化し、
それまでの生物がエンペラーペンギン以外死に絶えたのである。
こうした長い地質学的時間をふまえた視点は、言われれば納得だがなかなか思いつかないものだ。

またガラパゴスにいるイグアナも、生物としては現在のガラパゴス諸島よりも長い歴史を持っている。
そこから、すでに沈んだ島の存在が見えてくる。

こうしたダイナミックな視野が開けるのも、生物地理学の利点である。

なによりも、本書によって、「なぜこの生物はこのような形態・生体で、なぜここにいるか」を紐解く視点が得られるだろう。それは多様性と外来種問題を考えるうえで、絶対に欠かせない視点である。


本書のタイトルは、最近多い「なぜ○○○○○は○○○なのか」というスタイルであり、
極めて安易である。

だからあんまり期待はしていなかったのだが、地史と進化史をリンクさせた、なかなか読み応えのあるものだった。

装丁もインパクトがなく、どうも出版元である化学同人が(ここはいい本を出すのだが)、ちょっと親しみやすさを優先させて、本書の持つテイスト伝えきれていない気がする。
装丁とタイトルだけで、雑学と思って手を出すような人には、たぶん歯が立たないだろう。

一方、進化史に興味がある方なら読んで損はない。
本書の内容は、装丁以上に有益なものである。


【目次】
序 あの偉大なる分野
第1章 ガラパゴスの啓示
第2章 メソサウルスの問題
第3章 ピグミーマンモスと謎の島々
第4章 世界を変えた火山の環
第5章 南アメリカの無惨な敗北と三畳紀のムカシトカゲ
第6章 魔法の水
第7章 エデンをめぐる戦い
第8章 生物と地球の偉大なる融合

【メモ】
pxiii
「物理学は今も重力(一般相対性理論)と電磁気(量子力学)を結びつける大統一理論を模索しているが、生物地理学はすでに生命(進化)と地球(プレートテクトニクスと地学)の大統一理論となりえたのだ。」

p30
ウォレス線:マレー諸島を走る二つの海峡を結ぶ線、東アジアの有胎盤哺乳類が姿を消す線
ウェーバー線:有袋類の西限
この二つの間の地域:ウォレシア アジアとオーストラリアに住む動植物が少ないながら共存している

p51
ガラパゴスのリクイグアナとウミイグアナは、遺伝子解析の結果、両方とも島よりももっと古い年代から存在していることが判明。
諸島:3-400万年前
イグアナ:1-2000万年前
実際は、今は水没している島がかつてあり、そこで進化した。島が沈み、また新しく形成される過程で移動していた。げ

p59
ガラパゴスフィンチ:
フィンチのヒナは父親から求愛ソングを学ぶ。ある集団が違う島に住むと、遺伝子だけでなく歌にもバリエーションが生じる。隔離された2グループの歌は急速に異なり、再びであった際は、求愛ソングによって繁殖隔離が発生する。つまり、それほど距離が離れていなくても、繁殖隔離と種分化が生じる可能性がある。

p63
太平洋上の島にはヤモリ、特にイエヤモリとオガサワラヤモリが基本的にどこにでもいる。
ヤモリの多くの種は、卵が海水に耐性があり、流木による分散がありうる。
またオガサワラヤモリは、単為生殖で繁殖する。すべての個体が雌のため、1匹流れ着けば繁殖できる。

p83
気候学では、オーストラリア大陸、特に南タスマニア海嶺が南極から分離したことが、始新世の終わり(3700万年前ごろ~3400万年前頃)に、突然世界の気温が低下した原因の一つと考えられる。南極大陸を囲む現在の配置が完成され、大陸に流れ込む暖かい海水の量は激減し、南極の海面温度は摂氏8度ほど低下した。
このとき、氷河も発生し、南極で生息していた有胎盤類・有袋類・爬虫類・鳥類・淡水魚類は死滅し、コウテイペンギンだけが残った。

p161
分子時計の分析では、ヒトにおいて、白い肌が生じたのは2万年以内。
金髪が生じたのは1万1000年ほど前。
青い瞳は6000-1万年前。

p178
我々は人類を、動きが遅く、弱々しくて無防備で、知恵だけで生きていると思いがち。
確かに個々の能力なら様々な動物に劣るが、
泳ぐこともでき、木登りもでき、また泳ぎ・木登りに負ける動物には走ることで勝てる。
人類は総合的な運動能力としては第一級の能力を持っている。

これは、人類が突出した均一性を維持している鍵。

陸上での移動能力が高く、放浪する本能があり、困難な障害に立ち向かい、新たな未知に挑む大胆さのおかげで、人類は長年遺伝的に隔離された地域ができなかった。
そのため大きな差異が出ていない。
これほど広い地域で同一性を保っている生物は、人間のほかに発見されていない。

p197
生物地理学で最も刺激的な新ジャンルは、ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で開拓した、思想・技術などの文明の産物への適用。

p198
「生物地理学から我々は、プロセスと場所の両方を表す「起源」という言葉を連想する。生命の驚異的な多様性はどこかよくわからない場所で生まれるわけではない。場所はとても重要なのだ。分布について学習すると動植物の進化と特定の場所を結びつけて考えるようになり、その種の進化の背景を実感として理解することができる。さらに、環境はそこで起こっている進化による変化と分離した単なる消極的な背景ではなく、目に見えないながらも積極的に進化に参加し、変化への機械的な推進力を与えていることもわかる。」

p206
「生物地理学の秘密にかかわっている者は、真実を発見することによって、生物多様性への本質的な理解を深めていく。」

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