ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

街路樹を楽しむ15の謎  

街路樹を楽しむ15の謎
渡辺 一夫




「15の謎」っていいつつ、謎なんて書いてないじゃないか-と思っていたら、
収録種が15種だった。
なるほど15種の紹介なのね。
タイトルに凝りすぎというか、ひねりすぎというか、もう少しストレートでもいいんじゃないだろうか。

内容は、それぞれの街路樹について、どのような「街路樹としてのメリット」があり、
活用されてきたかの歴史や、現状を説明していくもの。
思いのほか、街路樹にも栄枯盛衰や流行り廃りがあるんだなあというのが実感。

社会が変化していくにつれて、求められる街路樹の特徴も変わっていくのだな。

進化論的に興味深かったのは、ヤマボウシとハナミズキの種子散布の違い。

また、イチョウは種子散布者がほとんどいないために、野生化しない(野生個体は絶滅近くになっている)というのも、言われてみると確かにそうだ、というものだった。
やはり恐竜時代の何かが散布者だったのだろうか。

あと、自然界に完全純白の花はほとんどない、というのも興味深い。
本書ではそれは黄色い色素が多少でもある、という説明だったが、
紫外線色で昆虫が花を認識しているのもあるのではないだろうか。
というか、黄色を発色するフラボンやフラボノールって、紫外線色的に働きはないのだろうか?

そう思ってWikiを見てみると、
フラボノール類は「植物の紫外線防御ならびに花色(英語版)に寄与している」とあるし、
フラボンも「植物体を太陽の紫外線から守る役割をしている。」とある。

紫外線防御ってことは、紫外線反射なので、やはり紫外線色を示すのではないだろうか。

すなわち、黄色を発色し、あわせて紫外線を反射して防御する、のではなく、
積極的に紫外線色を発色するために存在しており、紫外線が感知できない人間は黄色として認識する、
という方が、性質的には正しいんじやないかな、と思う。
このあたり、より詳しい情報が欲しいところである。


類書として「樹木ハカセになろう」(レビューはこちら)があるが、と重複はあまりなく、両方あわせて楽しめると思う。カラー図版が少ないのが残念である。




【目次】
ケヤキ(欅)―スリムな樹形のケヤキには、意外な使い道があった
ナンキンハゼ(南京櫨、南京黄櫨)―ロウが採れるかわいい実が引き起こした騒動とは?
イチョウ(銀杏)―全国植栽本数ナンバーワンに君臨する街路樹のエリート
ソメイヨシノ(染井吉野)―街路樹としては欠点だらけ。でも大人気のわけは?
キョウチクトウ(夾竹桃)―好き嫌いが分かれる、美しくて毒のある木
ハナミズキ(花水木)―人気が急上昇した日米友好のシンボル
ニセアカシア(別名ハリエンジュ)―国土を救ったヒーローも、今では侵略者扱いに…
コブシ(辛逸)―花の色香は、なぜ生まれたか?
シダレヤナギ(枝垂柳)―平城京にも植えられた、多芸多才な街路樹
ポプラ(別名セイヨウハコヤナギ)―倒れても、思い出に残るユニークな姿
プラタナス(別名モミジバスズカケノキ)―おしゃれな街路樹っは手間ひまお金がかかる
ヤマボウシ(山法師)―サルが作った、とろりと甘い果実
トチノキ(栃ノ木)―栄養たっぷりの大きな実も、街路では悩みのタネに
タブノキ(椨の木)―酒田大火を体験した火伏せの木
ナナカマド(七竃)―赤い実が美しい、北海道でもっとも植えられている街路樹

【メモ】
p36
野生のイチョウはほぼ絶滅に近い。
日本に移入されて相当の年数がたつが、イチョウが野生化して山野で増えたという事例は聞かない。
ギンナンを植えれば正常に育つので、最大の理由は種子散布する動物が少ないためと考えられる。

p67
ハナミズキは、街路樹に適した性質を持っているが、近年ヤマボウシと交雑させ、病気に強い品種も作成されつつある。(ヤマボウシもハナミズキもミズキ科ミズキ属)
しかし日本では、ハナミズキや、ハナミズキ×ヤマボウシが多く植えられると、
在来種であるヤマボウシとの遺伝子攪乱も危惧される。

p77
ニセアカシアは薪として有用なため昔はよく植えられたが、近年ではむしろ「要注意外来生物リスト」に入れられている。
しかし日本のニセアカシアがなくなると、日本の養蜂業界が大きな打撃を受ける。日本産ハチミツの約4割をニセアカシアが占めており、長野県では約7割を占めている。

p78
クズ:
アメリカでは1870年代に南部を中心に導入されたが、1950年代以降各地で激しく繁殖し、「侵略的外来種」として扱われている。

p84
コブシの花弁を白く見せているのは、特定の色素ではなく、花弁に含まれるたくさんの空気(気泡)。
また一見純白だが、わずかに黄色味を帯びている。
黄色の源はフラボンやフラボノールといった物質であり、これらの物質が混じらない純白の花は自然界にはほとんど存在せず、存在しても子孫を残せない。
なぜなら、昆虫はフラボンやフラボノールのない完全に純白な花を認識できず、従って花粉を運んでもらえないため。
(→紫外線色との関係はどうなっているのだろう?)

p97
シダレヤナギは生命力が強く、枝を切ってさしておくと容易に根がでる。
オスとメスの木があるが、日本の街路樹はほとんどがオスで、種子ができない。
つまり日本のシダレヤナギの多くは、1000年以上にわたり挿し木で増やされたクローン。

p131
ハナミズキの実はヤマボウシよりもずっと小粒で、単果が房状に集まっている。
その実は赤くて食べられそうだが、青臭くて食べられない。

ヤマボウシの実はいくつかの果実が集まって癒着している複合果。また甘い。

ヤマボウシは本州、四国、九州、朝鮮半島に分布。
ハナミズキは北米に分布。

一説によると、両者の祖先は広く北半球に分布していたが、
ユーラシア大陸にヤマボウシタイプの突然変異が埋まり、それをユーラシア大陸のサルが食べて
散布したため、赤く、甘い実になった。
一方北米多陸では、サルが赤色を認識しなかったり、分布域が重ならなかったりしてサルが食わず、
鳥が食べて散布したため、単果で甘くないタイプが存続している、という。
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