ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ファーブルが観た夢 地球生命の不思議な迷宮  

ファーブルが観た夢 地球生命の不思議な迷宮
森 昭彦



ファーブルは、日本では「昆虫記」の作者として有名だが、祖国フランスではそれほど知られていないらしい。生家を訪れるのも日本人が多い、というのを何かで読んだ覚えがある。

どうして日本でファーブルが親しまれているか、僕にはまだよく分からない。

もしかしたら、日本は特に昆虫が多いため、じっくり調べなければその昆虫の種はもとより、生態等がわからない。そこで昆虫愛好者は自ずと地道な学究肌となる。
その結果、地道に観察を重ね、見たもののみを材料として考察していくというファーブルのストイックさに親近感を抱くのではないだろうか。

タイトルからも推測できるように、著者のスタンスも、ファーブルがある。
身近な庭園において、ファーブルが追った昆虫(同種ではないが、同科や同属など)を自らの眼で観察する。
そしてファーブルの苦労や感動に思いを馳せるとともに、昆虫の不思議な営みを見つけていく。

取り上げる種はジガバチ、ヤママユ、オトシブミ、センチコガネ、トックリバチ。
ヤママユ以外は、頑張れば郊外で出会うことも可能だろう。またジガバチやトックリバチは公園や庭でも出会うかもしない、かなり身近な昆虫である。

しかしこれらが、とてつもなく興味深い生態を持っていることを、著者はファーブルのように長時間の地道な観察体験をもとに紹介してくれる。おかげでもし今度これらの昆虫に出会ったら、これを見る目は確実に変わるだろうし、その時の昆虫の行動に対して、様々な推測を抱き、感じることも多いと思う。

本そのものも、つくりは丁寧であり(全ページがカラー)、文章は個性とウイットに富む。しかし鼻につくようなものではなく、軽やかに楽しめる。読んでいて気持ちが良い。

思いがけない良書であり、生き物好きにとっては、とても楽しめる一冊だろう。

我が家の庭でもジガバチを見かけたことがあるし、トックリバチの巣も、いろいろな場所で出会った記憶がある。だがこれまで、その不思議さや驚くべき生態を楽しむことはできていなかった。

本書のおかげで、次の出会いが楽しみになった。


【目次】
序章 生命と叡智の起源
第一章 本能の美しき迷宮-ジガバチ
第二章 夏の夜のシルクロード-ヤママユ
第三章 ちいさな揺りかごのつくり方-オトシブミ
第四章 豊穣の聖域「王家の谷」へ-センチコガネ
第五章 ツボをこさえて幾千万年-トックリバチ

【メモ】
p47
ジガバチ 地面に穴を掘り、産卵する。
最初に穴を準備するが、その入り口を埋め戻し(適当に土をかけるのではなく、大きな石の粒を入れ、隙間を小さな粒で埋める)た際に、最後に表面に目印となるものを使う。枯葉の切れ端、枯れ枝などを使うが、筆者は1度だけサファイア色の花がらを集めてきた物がいた。ハチによって好みや発想の柔軟さがある。

p60
ジガバチは地上を歩いて、イモムシの糞を探し、そこから獲物を見つける。
イモムシは糞をするとき、葉の端まで行って行うか、失敗しても口で運んで投げ捨てる。糞によって天敵に見つからないよう発達した行動だが、ジガバチはこれを利用している。

p72
ジガバチに寄生するヤドリニクバエ
卵胎生であり、ジガバチの巣の中に産み落とす。

p83
獲物を運んでいる道中に、獲物を取り去る→取り戻そうと周囲を飛び回るが、獲物を視界から隠すと諦めて飛び去る。
獲物を飼ってから、戻ってきたら巣穴が壊されていた場合
行動は、「巣穴を掘る→獲物を捕る→巣穴に戻って獲物を入れる」という順番になっている。
巣穴があるべき様々な場所を探す。筆者が観察したのは2時間48分探していた。
この時点での混乱は、修正不可能。

なお、同様に巣穴に獲物を入れるベッコウバチの一種は、獲物を狩ってから巣穴を掘る。
獲物を奪われる危険は高まるが、こうした致命的な混乱は起こらない。

p88
昆虫の20%以上はボルバキア細菌と共生しており、
共生微生物による生殖操作が存在する。
キチョウの幼虫に抗生物質を含んだ餌を与えて共生しているボルバキア細菌の活動を阻害し、感染個体を通常の1/10程度まで減らしたところ、多くが羽化できないか、羽化しても異常が生じた。
特に、外見で雌雄を識別する性標が失われたり、生殖器の雌雄の特徴が混合した「間性」が多発した。

p96
日本:昆虫だけでも3万種、その1/5(約6000種)が蛾。蝶は約250種。

p100
ヤママユ:野蚕
緑色の繭、最高品位の絹
ただし飼育から機織技術まで一貫してもっているのは日本だけ、全てを一か所で行えるのは長野県安曇野のみ(法令で保護されている)。

p110
バーティシリウム・レカニ(昆虫病原糸状菌)
高温多湿な森では、95%以上が感染していることがある

p114
繭の形成
最初は太く、ざらついているが、内側に使う糸は艶やかで柔らかい。
人間が天蚕糸を取るときも、外側は除かれ、内側の糸が集められる。
ヤママユの繭紡ぎは、三日三晩も続く。

最後に、シュウ酸石灰(たいていの植物に含まれている、ヒトの場合は尿路結石の原料)を含む尿を内壁に塗り、強度を高める。

p130
ヤママユの難しさ
長野県安曇野の有明地方では、飼育農家は8戸。平均年齢は70歳以上。
5万粒の卵→繭になるのは半分 年によれば30%
病気、ストレス、近年は猿害

p141
オトシブミ:ファーブルの近く3種のみ、日本は22種もいる

ゾウムシの仲間:約1億5千万年前に発生
世界には5700属3万種(推定20万種)、一つの科でこれほど分化したものはない
日本には1200種(推定2000種)

p180
ルリオトシブミの仲間:日本に6種、多くは地域限定や山地だが、カシルリオトシブミは平地で普通
1986も櫻井一彦氏と澤田佳久氏が別々に、ほぼ同時期に
・ルリオトシブミ属は糸状菌の胞子を運び、育てている
ことを報告。
ex)カシルリオトシブミ
 4月中旬に現れ、カシやコナラ、5月の最盛期には道端のイタドリにも
 ゆりかごは小さく、巻いたり巻かなかったり
 作成時、雌は葉の水脈をかじるが、この時湿り気があるこの場所へ糸状菌を植え付ける。
 この糸状菌の胞子は、メスの後ろ脚の付け根にあるポケットで培養されている。

p187
オトシブミが卵から羽化するまでは約20日間。
これほど短いが、年間に発生する回数は限られている。
=
ライフサイクルが、オトシブミを作れる樹木の新芽が動く時期にあわせているため。

p203
オーストラリアにはもともと牛などの草食動物はいなかった。
そのためカンガルーなどの有袋類の糞を分解する昆虫はいたが、牛馬の糞を分解する昆虫がおらず、
開拓時に問題が発生した。

そこで海外からフンコロガシを導入・放飼した。
放飼した地域は牧草の収穫量が80%上昇した。
またアメリカでの実験では、フンコロガシを導入した地域は、牛馬・人を刺すノサシバエの発生が98.4%減少した。

フンコロガシ=センチコガネ

p227
センチコガネにはダニ(ヤドリダニ類、イトダニ類、ハエダニ類)がついている。
これらのダニはセンチコガネが糞につくと離れ、糞の中の線虫、トビムシなどの微小動物や昆虫の卵を食う。肉食。

よって、ノサシバエの減少は、これらのダニによる成果。

p256
ドロバチ=いくつかの本や、ファーブルは乾いた土でないといけないと記載
しかし実際は、湿っている土も運ぶ

p258
トックリバチの巣(トックリ)外壁は凸凹、内壁はツルツル。
土を運ぶ状況から考えも、外壁は明らかにわざと凸凹にしている。

p263
トックリバチの巣のツボの口の返し=アリなどの侵入を防ぐため
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