ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

恐竜絶滅 ほ乳類の戦い  

恐竜絶滅 ほ乳類の戦い
NHK「恐竜」プロジェクト



恐竜が絶滅した原因は、隕石だろう。僕が子供の頃は仮説の一つだったが、年々これを補強する材料は得られても、否定する材料は出てこない。
ただ、隕石によってなぜ恐竜というグループ「のみ」絶滅し、哺乳類、一部の爬虫類、そして最近は恐竜の子孫ともされる鳥類などが生き残ったのか、という説明はまだまだ十分ではない。

隕石による被害が地球規模であれば、他のグループの生存確率も同様に低くなる。
しかし地球規模でなければ、恐竜は一部で残れたはずだ。

とすると、その災害は「地球規模」であり、哺乳類や爬虫類、鳥類は、その災害を生き残ることが可能となる「理由」を、その時点でもっていたということになる。

本書はその「理由」についてとりあげた、NHKスペシャル番組のノベライズである。

僕は番組は後編の途中からしか見ていなかったし、印象も薄かったのだが、
本書はかなり丁寧なつくりであり、十分楽しめた。
最新の学説入門としては、最適ではないだろうか。

さて、「理由」のポイントは、繁殖戦略と、潜在的な多様化の可能性である。
詳しく説明すると楽しみがなくなるのだが、
抱卵と胎盤という繁殖戦略によるメリット、まずこれがカギとなる。

その中で恐竜が消えた後、哺乳類VSワニ、哺乳類VS鳥類という構図が生じた。
この戦いは最終的に哺乳類の勝利となることは、現在の僕ら自身が良く知っている。

しかしその前に、有胎盤類VS有袋類という戦いがあった、という視点は全くなかった。
現在有袋類は、ほぼオーストラリアのみに生存するため、つい有胎盤類VS有袋類は戦いにもならず、
たまたま有胎盤類がいなかったオーストラリアのみ「古い生き物」である有袋類が生き残った、と考えがちだが、
実はオーストラリアにもかつては有胎盤類が存在し、かの地では有袋類が勝ったという。
また、南アメリカでの有胎盤類VS有袋類の戦いも、有胎盤類の楽勝とはいえ、
それは長い地質年代スケールの綾によって、たまたま有胎盤類の方が強く進化したに過ぎない。
もし大陸移動が異なるパターンだったら、この戦いの結果はどうなっていたかわからない。

ただ、それでもヒト的生物は、有袋類からは出現しなかっただろう、と本書では推測されている。

この地球の歴史を見ると、ヒトが進化したのは奇跡的に様々な偶然が組み合わさった結果であり、
また他の生物も、その歴史の上に現在存在していることに気づかされる。

「恐竜以後」はついつい見過ごされがちだが、
哺乳類とヒトにとっては、その時代の方が重要だったともいえる。
最新の進化史をオールカラーのビジュアルとともに楽しめる一冊だった。

なお、DVD、ブルーレイもある。
NHKオンデマンド(http://www.nhk-ondemand.jp/)では、有料視聴も可能なようである
(「恐竜絶滅」で検索)。




【目次】
◎プロローグ:ほ乳類の歴史、最大の分岐点 ◎第1章:恐竜大繁栄への道のり ◎第2章:恐竜vsほ乳類 それぞれの生き残り戦略 ◎第3章:巨大隕石衝突という大異変 ◎第4章:天下を賭けた三つ巴の争い ◎第5章:「ポスト恐竜」は、ほ乳類の手に ◎第6章:有胎盤類vs有袋類 激化するほ乳類戦争 ◎終 章:そして、人類誕生へ・・・

p30
火星と木星の間にある小惑星帯において、
約1億6000万年前、直径160kmの大型の小惑星に、直径60kmの小惑星が3km/secで衝突。直径1km以上の破片が約10万個以上発生した。それがバティスティーナ小惑星群。
このうちの一つが、恐竜の絶滅につながった隕石となった。

p38
恐竜の誕生は約2億3000万年前
哺乳類の誕生は約2億2000万年前
ほぼ同時期に誕生したが恐竜が反映したのは、それなりの理由がある

p44
スーパーサウルスなどの長い首=哺乳類型の呼吸では酸素不足となる
→鳥類と同じ気嚢を持っていた(実際は恐竜が先に気嚢を持ち、鳥に受け継がれた)

p54
哺乳類は恐竜が眠る「夜」にニッチを見出した
=優れた聴覚の発達
・小型であること =夜に得られる程度の食料で内温性を維持するためには、大きくなれない
・ずんぐりした体格 =熱放散を避ける
・体表の毛=熱を維持する

p60
熱帯のゾウ=逆に膨大な熱をためこむため、哺乳類には珍しく体表に毛がない

→大型の恐竜は、外温性でも熱をため込めた(慣性恒温性)の可能性がある

p62
中国で発見されたシノサウプテリクス、羽毛恐竜
体表に羽毛がある理由=哺乳類の毛と同じ、熱の維持 =内温性と考えられる
外温性なら、羽毛は熱の獲得に邪魔になるだけ

p72
トリボスフェニック型大臼歯
食べ物を切り刻んですり潰すことに適応した歯、これがあれば多少の例外はあるが、
哺乳類(有袋類、有胎盤類)
有胎盤類:上下ともに3つが基本
有袋類:上下ともに4つが基本

p84
爬虫類が抱卵しない理由:外温生物だから
自分が熱を発しないため、卵を温めることができない
→抱卵性の恐竜=内温性と考えられる
産みっぱなし から 抱卵への進化

p86
恐竜の抱卵=哺乳類の胎盤
・どちらも母親の体温で胎児を温めるのは同じ。
一方危機的な状況下では、卵を捨てるという選択肢のある抱卵の方が、
親の生存可能性は高まる

p126
ドイツ、メッセルという町のメッセル・ピット
オイルシェール(油母頁岩)の産地、約4700万年前の生物化石が産する
オイルで保護されているため、特に昆虫の構造色は当時の色がそのまま残っている
(構造色の構造だけでなく、それが機能して色を確認できる)

p140
4700万年前(メッセル・ピット)の哺乳類に対する脅威
・ガストルニス 巨大な鳥 全長2m
(ディアトリマと別種と思われていたが、ディアトリマと同じ。
ディアトリマよりもこの名が先につけられていたため、この名が正しい)

p156
もう一つの脅威:ワニ
パンゲアが分裂し、海岸線を中心に湿地帯のような地域が増加。そこに適応した。
最も古いワニは1億5千万年頃。
恐竜や哺乳類が繁殖革命(抱卵と胎盤)していく間、ワニは水辺に適応していった。

p159
7300年万前のワニ:ディノスクス
頭だけで1.8m、体長は15mに達したという。恐竜も捕食していた可能性がある。

p172
パンゲア超大陸:2億年以上前に会誌
ローレシア大陸とゴンドワナ大陸に分裂
ゴンドワナ大陸はアフリカ、インド亜大陸、南米、オーストラリア、南極に分裂
ローレシア大陸は北アメリカ、ヨーロッパ、アジアに分裂

ヨーロッパは5000万年くらい前に島大陸の集団になっており、
アジアが広大な大きさを維持し続けていた

→哺乳類にとって競争が激しく、分化も進んだ
アジアが北米と地続きになったり、ヨーロッパとつながった際に、アジア産哺乳類が各地の哺乳類を駆逐し、現在の哺乳類の祖先となった

p184
広葉樹が広がった今から3500万年前
まだ1年草の勢力は少なく、草はそれほど多くなかった。

p197
5500万年前のオーストラリアで、ティンガマラと名付けられた哺乳類の奥歯が発見された。
異論もあるが、有胎盤類と考えられる。
とすると、オーストラリアでは有胎盤類が侵入しなかったのではなく、
有胎盤類と有袋類が競争し、有袋類が勝ったということになる。

p200
オーストラリアで有袋類が競争し、有袋類が勝った理由(推測)
気候の変動が激しく、胎児を抱えた母親は、胎児ともども死ぬ可能性が高い。
有袋類では袋の中の子が死ぬだけで、母親は生き延びることができる。
=抱卵と同じ戦略

p211
有胎盤類:今から約1億2500万年前、アジアで、エオマイアと呼ばれるグループから進化
有袋類:全く同じ時期・場所で、シノデルフィスと呼ばれるグループから進化。
それぞれが別進化の歩みをたどったが、似たような動物が出現している
=収斂進化

p213
約6500万年前以降、南アメリカ大陸では、有袋類・有胎盤類が共存・競争していた。
ただし有胎盤類は草食か雑食、南アメリカの有袋類は肉食だった。
ex)剣のような歯を持つティラコスミルス

p226
しかし、350万年前から260万年前にかけて、パナマ陸橋によって南北アメリカが繋がり、
北アメリカで進化した剣のような歯を持つスミロドン(サーベルタイガー)なども南アメリカに進出。

北アメリカの有胎盤類が、南アメリカの有袋類を駆逐した。

p231
有胎盤類が進化した北半球では、アジア、ヨーロッパ、アメリカがくっついたり離れたりしていた。
そのたる競争相手や捕食者も多く、激しい競争を勝ち抜くために
有胎盤類は大型化し、強くなった。
また、脳の大きさも大きくなった。

p239
受粉を風に頼る裸子植物の場合:樹木の間隔は広く、枝も張らない。
 密集すると、風が通らなくなるため。
風が不要な被子植物:樹木の間隔は狭く、枝も張る

→枝と枝が近接し、樹冠という生活空間が発生
→樹冠で生息する霊長類が進化
 死角があっても良いので、立体視できる眼が発達
 対向する指で物をつかむ

p241
アマゾンの森林:密林を作る木が細いため、霊長類(新世界ザル)はマーモセットのように比較的小型。
アフリカとアジア:樹木が太いため、大型のグループが進化。
アフリカ:ゴリラ、チンパンジー
アジア:オランウータン

しかしアフリカの森林が乾燥化しやすく、森を離れざるをえなかった霊長類が生じ、
人類へ進化した。

人類は、脳が大きい有胎盤類の中でも、特に脳を大きくすることで生き残りを図った哺乳類。

p249
有袋類が世界を占めていたら
・胎児が袋まで移動する必要があるので、水生の有袋類(クジラなどに相当するもの)は生じなかっただろう。
・胎児が袋まで移動するためには手で掴む必要があるため、手がヒレ状の動物(アザラシ、コウモリなどに相当するもの)は生じなかっただろう。
・最初に退治が口で乳を咥えるため(有胎盤類は胎盤で接続)、頭の発達が早くしっかりと骨化する。そのため、脳が大型化する動物(ヒトに相当するもの)は生じなかっただろう。
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