ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱  

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱
スペンサー・ウェルズ



人類は、農耕を開始して以降、劇的に生物的にも変わっている。
第1章では、人間に対する自然選択は、
ヒトゲノムにおける遺伝子変異の痕跡から、
農耕が始まって以降に、その大部分があったことを示す。
農耕栽培という生産手段を得て定住生活を始めたことで、人間の生態的変化は加速し、
そしておそらくそれに伴って文化的変化も加速しているのだろう。

それは決してプラスの面だけでなく、マイナスの面もある。
生物としてのヒトが、環境・文化面の変化に対応しきれていないのだろう。

それどころか、その「対応しきれない」部分を、
ヒトは遺伝子組み換えなどの技術を応用して突破しようとしいる。

ヒトは通常の生物とは全く異なる進化・発達をとげているが、
その生物的側面は、進化の歴史から独立できるものではない。

そのひずみを詳らかにするのが、本書である。

ただ前半はそうした側面が強く非常に興味深かったのだが、
中盤以降、ちょっと焦点がぼやけているように感じた。

「農耕栽培以降のひずみ」というより、
一般的なヒトの問題になっているようだ。もちろんそれもヒトの進化史の延長線上に生じた問題とはいえ、
もう少し進化的・選択的側面からのケース説明などがあってもよかったかと思う。


【目次】
第1章 地図にひそむ謎
(イリノイ州シカゴ/遺伝子のビーズ/変曲点/副産物をふるいにかける/なぜそうしたのか?)
第2章 新しい文化が育つ
(ノルウェー、スタヴァンゲル/空っぽの罠/決壊したダム/山と谷/重複の重要性/社会のガン)
第3章 体の病
(ドリウッド/倹約遺伝子型と贅沢な暮らし/三つの波/ゲノムと環境/炭水化物と虫歯/テネシーの話へ戻ろう)
第4章 心の病
(オーストリア、マリア・グギング/言語障害/火山とマクロ突然変異/現代の暮らしの通奏低音/未来へ向けて)
第5章 遺伝子テクノロジー
(ダービシャー/加速する傾向/干し草にひそむ針/望むのも慎重に/ウイルスと、アリと、嫌悪)
第6章 熱い議論
(ツバル/京都議定書問題の最前線/キャップを手にして/熱い議論/夏のない年/必要は発明の母/海へ戻る)
第7章 新しいミトスへ向かって
(タンザニア、エヤシ湖/囚人、メタ倫理学、強欲/原理主義/フェイスブックと狩猟採集/多くを望まない)


【メモ】
p14
ヒトゲノムにおける強い自然選択が起こった部位を調べたところ、数百個見つかった。
そしてどれもが、過去1万年、350世代程度の間に生じている。
1万年前といえば、農耕を開始した時代である。

p17
8-5万年前の期間は、ヒトの形跡はほとんど残っていない。
遺伝子解析の結果でも、この時期にヒトの集団が激減したことがわかっている。
6万年前頃に何かが起こり、人口が増加に転じた。

p21
熱帯から紫外線量の少ない高緯度地方に進出したときに、ヒトは、肌の奥で十分なビタミンDを合成するため、肌の黒い色素を減少させた。

p22
乳糖(ラクトース)を代謝できる酵素ラクターゼ
ヒトの赤ちゃんでは機能するラクターゼ遺伝子を持っているが、幼児期を過ぎるとオフになり、大人は乳糖を代謝できなくなる。

ただし、家畜のミルクを補助的食品として用いたヨーロッパでは、90%以上が幼児期以降もラクターゼ遺伝子を機能させる変異遺伝子を持っている。
その他の地域では、大人になると乳糖不耐症になる。

p28
ある地域のデータ
旧石器時代の平均年齢:男35.4歳(身長178cm)、女30.0歳
新石器時代(農耕開始):男33.1歳(身長約160cm)、女29.2歳
→農耕のライフスタイルが、結果的に不健康にしている

p35
陸生の動物や植物の栽培は新石器時代の初期に飼養・栽培された種に由来している。
しかし魚、水生植物はごく最近開始。97%が20c初め、1/4はここ10年程度。
養殖漁業は新たな革命。

p55
C3植物:全植物の95%程度
   炭素の選り好みをするため、炭素13を嫌う。
   よって植物体中の炭素12が多い。
C4植物:6500万年前に誕生、トウモロコシ、キビ、サトウキビなど
   炭素の選り好みをしない。
   よって植物体中の炭素12に対する炭素13の比率が多い。

p63
多くの植物は倍数体
遺伝子の重複で、バックアップ用のコピーができることによって選択に余裕が生まれ、結果的に進化論的変化が早まる=1970「遺伝子重複による進化」大野乾(すすむ)

p88
太平洋の中の島嶼への移住=何週間もの生理的ストレス=倹約遺伝子型が有利、カロリー消費の低い者が生き残る
住み着いた後、最近の食生活→倹約遺伝子型が逆に働き、カロリー消費が低く肥満

p97
旧石器時代から現代までの三つ死亡率の波
1外傷  新石器時代の幕開けまで
2感染症 20世紀以前
3慢性病 近年

p109
虫歯 旧石器時代人にはほとんどない
新石器時代に急増

p112
ハチミツ:産業革命以前 ビタミン、ミネラル等もある
ショ糖:産業革命以後、甘いカロリーはあるが何の足しにもならない

近年の化学調味料や天然エキス、糖類はどれも、かつてはそのままで消費されていた食品に入っている。
中でも糖類は、「淡泊な」食品に味を足す。

p114
甘い味:専用の受容体がある。=食べら可能性として認識するため
苦い味:専用の受容体がある。=有害な可能性として認識するため

よって子供の頃は素直に甘い味を好む。
コーヒーなど苦みを受け入れるまでには時間を要する。

糖類はこうした進化の弱点をつくので、その魅力に抗しがたい。



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