ちょっとヨクナレ ~読書と日記~
自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録
日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ 
2013/05/23 Thu. 20:42 [edit]
日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ
図鑑は、大きく2つのポイントで分類できる。
1 掲載種: a)全種(もしくはほぼ全種)図鑑か、b)抽出種図鑑か。
2 図 : a)写真図鑑か、b)イラスト図鑑か。
メリット、デメリットを整理しよう。
1掲載種-a)全種図鑑
・メリット:
全ての種について、漠然としてでも知識がつく。
「目指す種はこの中にある」という確信と安心感。
・デメリット:普通種と希少種が混在するので、初心者は検索が困難。
分厚く重くなり、携帯性が低下。
1掲載種-b)抽出種図鑑
・メリット
検索しやすく、コンパクト。
・デメリット
どの種を掲載するかというセンスが悪いと、使い物にならない。
2図-a)写真図鑑
・メリット
馴染みやすい。間違いはない。
・デメリット
掲載個体が標準と思い込みやすい。
識別点がわかりにくい場合がある。
アングル・明るさなどの違いで、類似種と比較がしにくい。
2図-b)イラスト図鑑
・メリット
標準的な個体を示せる。
識別点がわかりやすい。
類似種との比較がしやすい。
・デメリット
間違っている場合がある。
その時点で知られていない識別点は、正確に描かれていない場合が多い。
これを踏まえて組み合わせると、図鑑の性格がわかる。
【1】a)全種図鑑--a)写真図鑑
資料価値は高い。中級者以降も使える。
製作(撮影)が大変。重くなりがち。
【2】a)全種図鑑--b)イラスト図鑑
類似種の比較がしやすく、初心者から中級者まで使える。
古くなる(新しい識別知見が増える)と資料価値が下がる。
【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑
どの種を掲載するかというセンスが正しければ、フィールドでの有用性は高い。
ただし類似種との比較が難しい。
【4】b)抽出種図鑑--b)イラスト図鑑
検索しやすく、最も初心者向け。
ただし、慣れると物足りなくなるのも早い。
言い換えると、【1】は中~上級者向け、【2】は初~上級者向け、【4】は初心者向けである。
中途半端なのが【3】。
出版社にすれば作りやすいのだが(写真はほどほどで良いし、単価も安くて良い)、
往々にして初心者には使いにくく、中級者以外には使えない図鑑ができる。
最も作り手のセンスと工夫が問われる図鑑と言える。
(全種図鑑の方が物理的な苦労は多いが、「種を選ぶ」という判断は不要なので、
とにかく力技で作ることができる。)
正直、野鳥図鑑では【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑で良いものは思いつかない。
トキとかアホウドリとかヤンバルクイナといった、有名種(普通種ではない!)が掲載され、
その分普通種の掲載が減っているのが多い。全くもっと無意味である。
昆虫は種数が多い分、全種図鑑も難しく、
よくあるのが「甲虫図鑑」や「蝶図鑑」など、特定の分類群だけに集中したものが多いようだ。
しかし、本書はあえて抽出図鑑で勝負している。
しかも、刊行元は全種図鑑を得意とする文一総合出版である。
それだけの自信があるのだ、というのが、本書を見た感想である。
本図鑑は【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑である。
検索の難しさがネックになりがちだが、本図鑑では
生態写真を、類似種はほぼ同じアングルで、背景を白抜き加工して掲載している。
おそらく相当の労力を要したのではないか。
しかしそのおかげで、極めて明瞭な写真で比較検討が可能となっている。
また、識別が難しいグループには、検索図も作成。だいたいの種を検索していける。
生態写真の採用と、極めてコンパクトな体裁は、とにかくフィールドに持ち出すことを
前提としているのだろう。
また、掲載種はよく見かける種とその類似種となっており、実際に野外で見たことあるな、という種ばかり。
久方ぶりに、興奮できる図鑑が刊行されたと言える。
虫の糞や卵、セミの抜け殻の識別などもあり、使い勝手はかなり良さそうだ。
フィールドで昆虫でも見てみようかという方、
庭や畑で見かけた昆虫を調べたいという方、
また小さい子供がいる家庭には、特に向いているだろう。
何か良い昆虫図鑑がないかな、と思っている方は、ぜひ検討していただきたい。
本図鑑では731種を収録している。
続編の (2)トンボ・コウチュウ・ハチ では660種収録、あわせて約1400種となる。
【①の目次】
チョウ目(チョウ、ガ)
ゴキブリ目
カマキリ目
バッタ目
ナナフシ目
ハサミムシ目
カメムシ目(セミ、アメンボ、タガメ、カメムシなど)
図鑑は、大きく2つのポイントで分類できる。
1 掲載種: a)全種(もしくはほぼ全種)図鑑か、b)抽出種図鑑か。
2 図 : a)写真図鑑か、b)イラスト図鑑か。
メリット、デメリットを整理しよう。
1掲載種-a)全種図鑑
・メリット:
全ての種について、漠然としてでも知識がつく。
「目指す種はこの中にある」という確信と安心感。
・デメリット:普通種と希少種が混在するので、初心者は検索が困難。
分厚く重くなり、携帯性が低下。
1掲載種-b)抽出種図鑑
・メリット
検索しやすく、コンパクト。
・デメリット
どの種を掲載するかというセンスが悪いと、使い物にならない。
2図-a)写真図鑑
・メリット
馴染みやすい。間違いはない。
・デメリット
掲載個体が標準と思い込みやすい。
識別点がわかりにくい場合がある。
アングル・明るさなどの違いで、類似種と比較がしにくい。
2図-b)イラスト図鑑
・メリット
標準的な個体を示せる。
識別点がわかりやすい。
類似種との比較がしやすい。
・デメリット
間違っている場合がある。
その時点で知られていない識別点は、正確に描かれていない場合が多い。
これを踏まえて組み合わせると、図鑑の性格がわかる。
【1】a)全種図鑑--a)写真図鑑
資料価値は高い。中級者以降も使える。
製作(撮影)が大変。重くなりがち。
【2】a)全種図鑑--b)イラスト図鑑
類似種の比較がしやすく、初心者から中級者まで使える。
古くなる(新しい識別知見が増える)と資料価値が下がる。
【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑
どの種を掲載するかというセンスが正しければ、フィールドでの有用性は高い。
ただし類似種との比較が難しい。
【4】b)抽出種図鑑--b)イラスト図鑑
検索しやすく、最も初心者向け。
ただし、慣れると物足りなくなるのも早い。
言い換えると、【1】は中~上級者向け、【2】は初~上級者向け、【4】は初心者向けである。
中途半端なのが【3】。
出版社にすれば作りやすいのだが(写真はほどほどで良いし、単価も安くて良い)、
往々にして初心者には使いにくく、中級者以外には使えない図鑑ができる。
最も作り手のセンスと工夫が問われる図鑑と言える。
(全種図鑑の方が物理的な苦労は多いが、「種を選ぶ」という判断は不要なので、
とにかく力技で作ることができる。)
正直、野鳥図鑑では【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑で良いものは思いつかない。
トキとかアホウドリとかヤンバルクイナといった、有名種(普通種ではない!)が掲載され、
その分普通種の掲載が減っているのが多い。全くもっと無意味である。
昆虫は種数が多い分、全種図鑑も難しく、
よくあるのが「甲虫図鑑」や「蝶図鑑」など、特定の分類群だけに集中したものが多いようだ。
しかし、本書はあえて抽出図鑑で勝負している。
しかも、刊行元は全種図鑑を得意とする文一総合出版である。
それだけの自信があるのだ、というのが、本書を見た感想である。
本図鑑は【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑である。
検索の難しさがネックになりがちだが、本図鑑では
生態写真を、類似種はほぼ同じアングルで、背景を白抜き加工して掲載している。
おそらく相当の労力を要したのではないか。
しかしそのおかげで、極めて明瞭な写真で比較検討が可能となっている。
また、識別が難しいグループには、検索図も作成。だいたいの種を検索していける。
生態写真の採用と、極めてコンパクトな体裁は、とにかくフィールドに持ち出すことを
前提としているのだろう。
また、掲載種はよく見かける種とその類似種となっており、実際に野外で見たことあるな、という種ばかり。
久方ぶりに、興奮できる図鑑が刊行されたと言える。
虫の糞や卵、セミの抜け殻の識別などもあり、使い勝手はかなり良さそうだ。
フィールドで昆虫でも見てみようかという方、
庭や畑で見かけた昆虫を調べたいという方、
また小さい子供がいる家庭には、特に向いているだろう。
何か良い昆虫図鑑がないかな、と思っている方は、ぜひ検討していただきたい。
本図鑑では731種を収録している。
続編の (2)トンボ・コウチュウ・ハチ では660種収録、あわせて約1400種となる。
【①の目次】
チョウ目(チョウ、ガ)
ゴキブリ目
カマキリ目
バッタ目
ナナフシ目
ハサミムシ目
カメムシ目(セミ、アメンボ、タガメ、カメムシなど)
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