ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ  

日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ



図鑑は、大きく2つのポイントで分類できる。

1 掲載種: a)全種(もしくはほぼ全種)図鑑か、b)抽出種図鑑か。
2 図  : a)写真図鑑か、b)イラスト図鑑か。

メリット、デメリットを整理しよう。

1掲載種-a)全種図鑑
・メリット:
 全ての種について、漠然としてでも知識がつく。
 「目指す種はこの中にある」という確信と安心感。
・デメリット:普通種と希少種が混在するので、初心者は検索が困難。
 分厚く重くなり、携帯性が低下。

1掲載種-b)抽出種図鑑
・メリット
 検索しやすく、コンパクト。
・デメリット
 どの種を掲載するかというセンスが悪いと、使い物にならない。

2図-a)写真図鑑
・メリット
 馴染みやすい。間違いはない。
・デメリット
 掲載個体が標準と思い込みやすい。
 識別点がわかりにくい場合がある。
 アングル・明るさなどの違いで、類似種と比較がしにくい。

2図-b)イラスト図鑑
・メリット
 標準的な個体を示せる。 
 識別点がわかりやすい。
 類似種との比較がしやすい。
・デメリット
 間違っている場合がある。
 その時点で知られていない識別点は、正確に描かれていない場合が多い。


これを踏まえて組み合わせると、図鑑の性格がわかる。

【1】a)全種図鑑--a)写真図鑑
 資料価値は高い。中級者以降も使える。
 製作(撮影)が大変。重くなりがち。

【2】a)全種図鑑--b)イラスト図鑑
 類似種の比較がしやすく、初心者から中級者まで使える。
 古くなる(新しい識別知見が増える)と資料価値が下がる。
 

【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑
 どの種を掲載するかというセンスが正しければ、フィールドでの有用性は高い。
 ただし類似種との比較が難しい。

【4】b)抽出種図鑑--b)イラスト図鑑
 検索しやすく、最も初心者向け。
 ただし、慣れると物足りなくなるのも早い。

言い換えると、【1】は中~上級者向け、【2】は初~上級者向け、【4】は初心者向けである。

中途半端なのが【3】。
出版社にすれば作りやすいのだが(写真はほどほどで良いし、単価も安くて良い)、
往々にして初心者には使いにくく、中級者以外には使えない図鑑ができる。
最も作り手のセンスと工夫が問われる図鑑と言える。
(全種図鑑の方が物理的な苦労は多いが、「種を選ぶ」という判断は不要なので、
とにかく力技で作ることができる。)

正直、野鳥図鑑では【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑で良いものは思いつかない。
トキとかアホウドリとかヤンバルクイナといった、有名種(普通種ではない!)が掲載され、
その分普通種の掲載が減っているのが多い。全くもっと無意味である。

昆虫は種数が多い分、全種図鑑も難しく、
よくあるのが「甲虫図鑑」や「蝶図鑑」など、特定の分類群だけに集中したものが多いようだ。

しかし、本書はあえて抽出図鑑で勝負している。
しかも、刊行元は全種図鑑を得意とする文一総合出版である。

それだけの自信があるのだ、というのが、本書を見た感想である。

本図鑑は【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑である。
検索の難しさがネックになりがちだが、本図鑑では

生態写真を、類似種はほぼ同じアングルで、背景を白抜き加工して掲載している。
おそらく相当の労力を要したのではないか。

しかしそのおかげで、極めて明瞭な写真で比較検討が可能となっている。
また、識別が難しいグループには、検索図も作成。だいたいの種を検索していける。

生態写真の採用と、極めてコンパクトな体裁は、とにかくフィールドに持ち出すことを
前提としているのだろう。

また、掲載種はよく見かける種とその類似種となっており、実際に野外で見たことあるな、という種ばかり。

久方ぶりに、興奮できる図鑑が刊行されたと言える。
虫の糞や卵、セミの抜け殻の識別などもあり、使い勝手はかなり良さそうだ。

フィールドで昆虫でも見てみようかという方、
庭や畑で見かけた昆虫を調べたいという方、
また小さい子供がいる家庭には、特に向いているだろう。

何か良い昆虫図鑑がないかな、と思っている方は、ぜひ検討していただきたい。

本図鑑では731種を収録している。
続編の (2)トンボ・コウチュウ・ハチ では660種収録、あわせて約1400種となる。



【①の目次】
チョウ目(チョウ、ガ)
ゴキブリ目
カマキリ目
バッタ目
ナナフシ目
ハサミムシ目
カメムシ目(セミ、アメンボ、タガメ、カメムシなど)
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