ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

樹木ハカセになろう  

樹木ハカセになろう
石井 誠治




堀辰雄の作品に、確か「フローラとファウナ」というのがある。

作家は「フローラ」(動物的)と「ファウナ」(植物的)に分けられる、というのがベースの内容だったと記憶しているが、自然愛好者にも「フローラとファウナ」があるのではないか。

植物と動物、どちらも同じように親しめれば良いのだが、
人によっては向き不向きがある。

僕は間違いなくファウナであり、
動物は鳥のみならずだいたい興味深く見ることができるが、
植物グループは苦手である。
できるだけきちんと見ようとしてはいるのだが、どうにもハマらない。
種類を覚えるのも苦手だし、識別するのも難しい。
ついつい「木Sp」「草Sp」と言ってしまう。

それではいけないので、時折植物系の図鑑、書物に手を出している。
本書もその一冊。
ジュニア向けの体ではあるが、樹木について、
ベーシックな知識を学ぶことができる。
特に人間に近いところに存在している樹木(街路樹や公園、社寺林の樹木)について詳しい。

視点は、きちんと樹木の生態を理解し、そのうえで樹木を見守っていこうというもの。
例えば、サクラにつく毛虫(モンクロシャチホコ)は、
散るべき落ち葉の直前を採食しており、
ケムシ=食害=植物に悪影響、その木は弱い などと短絡的に考えてはいけない場合があることなど、
新しい見方を教えてくれた。

入門書としては全うで良い一冊と思う。

【目次】
1 木のこと、どれくらい知っていますか?
2 木の生き方を知ろう
3 木たちがかわいそう
4 樹木ハカセになるために
5 木がもつ不思議な力

【メモ】
pⅲ
都会で見られるサクラの約8割=ソメイヨシノ
遺伝的に同じ形質であるため、感受性が揃い、桜前線という指標が成立する

pvii
ソメイヨシノは、9月には葉が落ち始める
(今年の新葉は枝の伸びに従い、下から成葉になり、落ち葉になる)
落葉の直前(8月頃)にモンクロシャチホコ(ガ)が産卵し、
9月にあちこちに広がる
不快害虫として駆除されるが、落ち葉(になる葉)を糞として分解しやすくしている
大事な来年の花芽や葉芽を包む芽鱗は堅く、毛虫にき食えない
葉が早く無くなった枝でも翌年の成長に支障はない

p13
ミカンの葉=葉を透かして見ると、白く透き通っている丸い模様(油点(ゆてん))が見える
=精油成分で揮発性

p22
楠:南から来た木という意味と思われる
樟:樟脳成分を含むため
成長が良く、材が腐りにくいため、巨樹として神木になりやすい
本来は亜熱帯の木、九州・四国から太平洋側の神社に多いのは、人間が植えたため

クスノキの実:黒紫色に熟し、鳥散布
霜が降りなければ発芽するが、タネの状態で霜や雪には耐えられない


p31
縄文杉:1966年に発見、1973年に著者が訪れた際は目の前まで行かないと、どの木がそうかわからなかった
→その後、手前の木々が切り払われた
→土壌が流出
→石を運ぶ運動
→根がいたむ
→人を近づけないよう隔離された

p39
クロロフィル(が多くつめこまれたもの=葉緑体)=窒素を多く含む
秋、クロロフィルを分解して窒素を葉から枝に回収し、水分と光合成化合物の通り道である
維管束を閉じる
→葉の内部に糖分が残り、糖濃度が上がると赤や紫の色素であるアントシアニンが作られる
→紅葉

緑の色素であるクロロフィルが分解し、黄色の色素であるカロチノイドが目立つ
→黄葉

p44
樹木に聴診器を当てて水の音を聞く
→水分の移動は細胞間の伝達なので音はしない、
実際に聞こえているのは根や枝葉からの雑音

p55
マツは菌根とのつきあいが深く、菌根と共生しているマツと菌根がつかないマツを比較すると、
その生育量は5倍ほども差がある

p62
根に障害がある(水分ストレスがある)=根から最も遠い枝の先端の葉が枯れる
ただし葉に出るサインは軽傷、致命傷は幹へのキノコ発生

腐朽菌として危険なキノコ
=ナラタケ、ナラタケモドキ、ベッコウタケ

p76
ポプラ=中国には多い
材は白く柔らかい
楊枝の楊=ポプラ
ちなみにシダレヤナギなどは「柳」と区別される

p87
巨樹ほど移植して残したいとされるが、1年以上準備しないと活着しにくい
図面上では簡単に移植できるが、現実には困難

p92
現在の日本の山は、(樹種は別として)有史以来最も木が生えている状況

p95
大腸菌O157=細胞の半分を使って毒素を作るため、他の常在菌である大腸菌が多いと競争に負けて
普通は増殖できない

p143
イチョウ:奈良・平安の文献には登場しない
中国から持込み神社仏閣に植えられた
(中国では珍しくないので伐採され、逆に最近はどこにも見当たらない)

p157
初期に上陸した植物=コケ
移行、シダに進化し、木のようになったようなシダから針葉樹が生まれ、
やがて葉の広い植物が出現し、より乾燥した地域に進出。
このとき、木から宿根草が現れる
よって、木と草では、草の方が新しい。
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