ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

生物のなかの時間  

生物のなかの時間
西川 伸一,倉谷 滋,上田 泰己



良いタイトルである。
生物は、どのように時間を把握し、コントロールしているのか。
人間は時計をもっている。
しかし、実際は時計がなくても時間を把握している。
例えば、真っ暗でも同じ時間に目が覚めのは、体内時計の働きである。
では、その体内時計とは何なのか?
また、個々の細胞レベルでみたとき、どのような仕組みによって時間の経過が把握され、
それを生命活動に用いているのか?

こうした問いすら、これまで持ったことがなかった。
刺激的な興味をもって手に取った一冊である。
本書は、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)に所属する3人による鼎談。現在の分子生物学的な「生物にとっての時間」を語り合う一冊である。

前述のとおり、かなりワクワクして読んだ。
なるほど研究の最前線の成果、課題が示され、刺激的ではあった。

ただ正直なところ、消化不足ではある。
第一に、本書には章末にかなり細かい項目解説があるのだが、
よく用いられている「概日性」の説明がなかったり、
またそれこそ「時間」という言葉を、
「経過する時間という量」という意味で用いたり、
それとも「時刻という目盛り」として用いたりと、
3人の間では共通認識はあるのだろうが、ちょっと読者に対しては不親切かな、という点が否めなかった。
「最先端の同一研究所にいる3人の研究者の立ち話を横で聴いている感じ」であり、
こういうのを隔靴掻痒の感、というのだろう。
生物における時間について、おそらく他の本で基礎的な知識を得ていれば、より楽しめると思う。


【目次】
第1章 生命とは何か?
第2章 宇宙の時間
第3章 細胞の時間
第4章 時間の発明
第5章 発生の時間
第6章 形の時間・進化の時間
第7章 脳の時間

【メモ】
p34
20年間フリーザーに入れていた動物の核を未受精卵に移植してクローンマウスをつくる
→通常の細胞ではダメがが、脳の細胞核は使える。
=脳の細胞核は、死んで-20℃で凍結していても(DNAの)情報は使える。

p63
エピジェネティックスepigenetics
遺伝子の配列変更を伴うことなく細胞を変化させ、その変化を子孫に伝えることができる機構。
後成的遺伝。
メチル化などによる直接的なDNAの修飾や、DNAに結合するタンパク質(ヒストン)が修飾されるDNA-ヒストン複合分子(クロマチン)の構造変化など。
全く同じゲノムを持つ双子に様々な差が生じるのも、こうした機構が存在するから。

p69
DNAメチル化
遺伝子のmRNAへの転写を司るプロモーター領域のCpGと呼ばれる配列にある特定の炭素に、
メチル基(CH3-)が付加されること。
この部分にRNA転写酵素が結合できなくなり、この遺伝子は使用不可能になる。

p80
24時間のサイクルは地球の自転を写し取ったものだが、それがどう生体内に書き込まれているのかという時間の「単位」の問題はまだ解明されていない。
睡眠・覚醒という時間の「質」の問題も未解明。
「時間の『単位』と『質』の二つがわかると時計が理解できたといえると思う」

p87
哺乳類では、脳の直下の下垂体の上の方、正中隆起部に光で抑制されるメラトニンの受容体があり、それで外界の日長を読み取る。概日時計もあり、明暗という外部環境とあわせて、その差から日が長いか、短いかを感知して、春夏と秋冬を見分ける。

p89
(外界からの力と原型との相克の結果として生じる)
エコロジカルで機能的な形:「ゲシュタルト」

(肝臓のように機能すれば形はどうでもいいような場合)
「フォルム」

p106
天動説と地動説というのは、厳密な意味での科学のパラダイムの対立ではない。
生物学的環境認識の話と、物理現象の一環としての天体運行の話なので、
よって立っている文脈が全く違う。

p168
「現在言っている種というのは、系統樹を今という時点でぶち切って、その横断面を見ているだけという印象はある。」

p172
輪状種:セグロカモメグループなど
A-B、B-CとBを介して交雑可能だが、仮にBが消滅するとAとCは繁殖隔離されている。
「種とは何か」の定義を行うネックとなる。

p181
(分子時計により判明する)系統の分岐と、ボディプランの進化は別。
化石と分子時計の話はそもそもかみ合うものではない。

p200
真核生物ができるまでの20億年、ボディプランが多様化した5億年という時間が、
必然的なものなのか、確率論的なものなのかは、あまり議論されていない。
生物現象に、必然的時間というのは無いのだろうか。

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