ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ありがとう大五郎 (新潮文庫)  

ありがとう大五郎
大谷 淳子、大谷 英之 他

ありがとう大五郎 (新潮文庫)ありがとう大五郎 (新潮文庫)
(1997/03)
大谷 淳子、大谷 英之 他

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所有しているものは平成9年3月刊行の文庫である。
後扉に、本書は平成5年12月刊行の「ゆふいんの風 奇形猿『大五郎』がくれた人生」を再編集したもの、とある。

元の書名では明瞭だが、
本書は淡路島で保護された四肢異常(前脚は肘まで、後ろ足は付け根のみ)のニホンザルを、
あるカメラマンが保護し、大五郎と名付け、
家族とともに-というか、家族として過ごした2年4カ月の記録である。
多くの写真が挿入され、その間に著者のみでなく、ご家族(妻や娘さん)の思いが綴られている。

本書を手に取るまで全く知らなかったが、解説にあるように、日本ではかつて四肢異常のサルが頻発していた。

・四肢に異常を持つサルが初めて発見されたのは、1955年高崎山
・餌付けされた野猿公苑が増加に伴い発見も増し、解説者の調査では29/74群で異常個体を確認。
 うち餌付け群れでは、20/39群と高率で、餌付けが原因になっていることを示唆。
・全国では1970前後の10年間が最も多かったが、淡路島では現在(H9)も発生が続く。
・遺伝要因だけでは説明できない。
・寄生虫、細菌、ウイルス、輸入大豆、土壌金属は否定された。
・農薬はもしかしたら、というのが2、3あるが、否定も肯定もできない。

知らなかった。解説者はこう記す。
「多くの人々が、ニホンザルの奇形問題に関わり、そして散っていった。いつしかマスコミにも取り上げられなくなった奇形ザル問題は、人々から忘れ去られ、「風化」してしまった感さえある。」

残念ながら、本当にそう感じる。
しかし、この日本にこうした問題が存在し、多くの野生動物が被害にあっていたという事実は、
本書が明瞭に伝えている。

また、本書で大五郎を献身的に支えた著者の妻は、被爆者でもある。
その事実が、原因は違えど、
人間が「生命」に対して、形は違えど過ちを繰り返してきていることを痛感させる。

しかし、大五郎は懸命に生きた。
そして、著者の家族は、大五郎と生きた。
この事実が、人間と全ての生命の未来に、一縷の希望を与えてくれる。

分厚い本でもなく、また、高価な本でもない。
ぜひ多くの方に手に取り、こうした歴史を知っておいたほしい。

それにしても、現在の中国を見るにつけ、
あたらでも同様の悲劇が発生しているのではないか。
そんな恐れを感じる日々である。

【目次】
第1章 重度の障害を持った猿が新しい家族に加わった
第2章 三人の娘プラス一匹の息子
第3章 家族・それぞれの旅立ち
第4章 定年後、湯布院で第二の人生を始める
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