ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

鳥たちの驚異的な感覚世界  

鳥たちの驚異的な感覚世界
【まだまだ鳥の不思議は多い度】★★★☆
ティム・バークヘッド




野鳥の生活、能力を見ていくと、人間とかなり異なる能力があることに驚かされる。
というより、
野鳥という一つのグループを知るにつれ、
人間が能力的に最高だとか、人間の感覚がスタンダードだという先入観が否定される。

例えば視力のうち、色について。
人間は赤・青・緑を知覚できるが、鳥類などでは紫外線色も感知できる。
それは哺乳類が夜行性になった時に、赤と紫外線色や感知能力が退化し、
代わりに明暗を感知する能力が進化したこと、
さらに霊長類が進化する際に再び赤だけは戻ったという進化史が背景にある。
また哺乳類は紫外線色を見られないので、体色で紫外線色はないが、
紫外線色を感知できる鳥類等では、羽色や採餌等で紫外線色を活用している。
これだけでも、我々人間とは全く異なる世界を知っている、というものだ。

本書では多くの研究成果を踏まえて、鳥類の感覚がどのようなものか、
どの点が発達し、また発達していないかを説明する。
いわゆる五感について各章で整理されており、
加えて鳥類の渡りで用いられているという磁気感覚、そしてアレックス・ケースなどでも
有名な感情も別章となっている。

僕としては、鳥類の脳における左右機能分化、それに伴う左右の眼の機能分化、
そして鳥類が磁気を「見ている」という研究について、より深い説明がほしかった。

なお通して読んでみると、本書が著者独自の研究についてではなく、
多くの他の研究者の論文等を紹介するというスタイルのため、
「~らしい」「~という」とか、
「特定種では○○だ」、という説明が目立つ。
このため、紹介された話が鳥類に普遍的なものなのか否か、判断に迷うところがある。
全般的に、寄せ集め的な印象が否めないので、
本書で気になるテーマがあれば、それについて別の本等を探す方が良いだろう。


【目次】

第1章 視覚―人間には見えない世界
第2章 聴覚―さえずりの謎と反響定位
第3章 触覚―敏感なくちばしとオルガスムに達する鳥
第4章 味覚―グルメな鳥と毒を持つ鳥
第5章 嗅覚―匂いで食べ物を見つけ出す
第6章 磁気感覚―はるかなる旅路の羅針盤
第7章 感情―鳥は死を悲しむか?

【メモ】
p29
眼球の中心窩:
網膜の中心部の小さな窪み、像の鮮明さを損なう血管はなく、
光を感知する「光受容体」が一番密集している
=網膜上で像が最も明瞭に結ばれるところ
→人間は1つ、 全鳥種の1/2は中心窩が1つ
 猛禽類、モズ、ハチドリ、カワセミ、ツバメなどは2つ
 
 浅い中心窩と深い中心窩

 浅い中心窩=1つしかない鳥と同じもの、近距離用
 深い中心窩=望遠レンズのような働き、遠距離用
 
 猛禽類が頭を上下左右に動かす=浅い中心窩と深い中心窩で像を結び、
 対象を確認している

p36
 ダチョウ 体サイズのわりに小さい
 体サイズに比して眼が大きい=ワシ類、ハヤブサ類、フクロウ類


 眼が大きいほど、網膜に映る像も大きくなり、光受容体が増加するので鮮明になる

p42
鳥の眼:人間にはない「櫛状突起(ペクテン)」がある。
プリーツ状の黒ずんだ器官で、ヒダの数は3-30種
猛禽類のように視覚が発達した鳥では櫛状突起は発達
キーウィでも極めて小さいがある

櫛状突起:その影は盲点に落ちるので視野を妨げない
 後眼房に酸素などの栄養物を与えているらしい(眼球内のガス交換)

p50
 ハトなど大部分の鳥:紫外線を見る
・鳥が食べるベリー類の花は紫外線を出す
・チョウゲンボウ:ハタネズミの尿の痕跡が照り返す紫外線を感知
・ハチドリ、ホシムクドリ、オウゴンヒワ、ルリイカルの羽毛は紫外線を反射し、
 特に雄で目立つ
・ルリイカルなど:羽毛の紫外線反射率は雄の質も表す

p52
脳の左右機能分化:人間だけと思われていたが、鳥にもある
・胚発生過程で左右の眼に入る光量の違いが、両眼の役割を決定する
 孵化後1日目の家禽
  右目は近距離、左目は空中の捕食者など遠距離

セイタカシギ:雄は、左目で見た雌に対して求愛ディスプレイを行うことが多い

ハヤブサ:大きな弧を描きながら主に右目で獲物に向かっていく

p64
雄のオオライチョウ:鳴いている最中と、鳴き終えた後の数秒間、耳の開口部は皮膚の覆いで覆われる

p73
内耳で音を感知する有毛細胞:
人間は再生不可能→高周波音が加齢で聞こえなくなる
鳥類は再生可能

p74
鳥の雄のさえずり習得とさえずり方をコントロールする脳部位:
繁殖期が終わると縮み、翌春に大きくなる。
鳴禽類の聴力は、さえずりが重要な時期に最も鋭敏になる

p77
人間:両耳が離れているので、音が聞こえる時間は左右で異なる
ex)海面の冷たく乾燥した空気の中は、音は340/sec、
  よって音は両耳で0.5mm秒時間差がある。
  この時間差がなければ、音は真正面か真後ろから聞こえたと判断している。

キクイタダキなど:両耳の間が狭く、時間差がない
=時間差は35マイクロ秒未満。
よって頻繁に頭を動かし、時間差を感知したり、音量のわずかな違いを感知したりしている

p82
フクロウ類
メンフクロウの羽ばたき=1kHzという低い音
野ネズミのカサコソ音=6~9kHzという高い音

かつ、野ネズミは約3kHz未満の音にはわりあい鈍感なので、メンフクロウの音は聞き取れない

p89
人間の聴覚:音の間隔が1/10秒に近づくと低下し始める
鳥類の聴覚:音の間隔が1/10秒よりずっと短い間隔で、いろいろな音の構成要素があるので、
      聞き取れているらしい

p98
鳥類:アダラヨタカ、東南アジアのアナツバメなどは反響定位を利用している

p102
カモ類:嘴の先端を縁取るように触覚受容体がある。
触覚受容体:ヘルプスト受容体とグランドリー受容体
圧力、振動、速度、感触、痛みなど
これによって、咥えたものを感知するむことができる

嘴と足に特に集中している

p113
毛状羽:非常に敏感で、何かに触れると神経インパルスを発する

p116
嘴先端の感覚孔:
コオバシギでは嘴先端の感覚孔は前向きになっていて、その中にヘルプスト受容体がある
前向き=圧力かく乱による水のパターン感知か
他のシギ:横向きの感覚孔
横向き=振動による感知
キーウィ:
孔は前向き・横向き・後ろ向き

p122
1670年代、ヨーロッパでツバメの巣から卵を取り去る実験
→通常5卵だが、最終的に19卵
イエスズメ:4-5個→50個
ハシボソキツツキ:→71個
ただしタゲリなどでは変わらなかった

・抱卵斑が発達する種では、抱卵斑の触覚受容体が刺激されることで、
 ちょうどよい卵数で産卵を終える

p145
マガモ:
上あごと下あごに合計400個の味蕾がある
味蕾がある場所:嘴でくわえた場所と、のみ込んだ食べ物が喉に向かう時に口内で接触する場所

p146
味蕾の数
ニワトリ:約300
カモ:約400
ウズラ:60
ヨウム:300-400

大部分の鳥では、味蕾は舌の基部、口蓋、咽頭付近にある。
多くは唾液腺の近く。

・ヒト1万、ラット1265、ハムスター723

p149
ニューギニア:ズグロモリモズ:1989年に有毒であることを発見
現地名「ウォボブ」口がすぼまる程苦い皮膚を持つ鳥
毒は食べ物に由来、ジョウカイモドキ科の有毒甲虫
毒素:ホモバトラコトキシン

有毒:
ズグロモリモズ、サビイロモリモズ、クロモリモズ、カワリモリモズ、ズアオチメドリ

p157
1500年代半ば、ポルトガル領東アフリカ(現モザンビーク)
ポルトガル宣教師ジョアン・ドス・サントスの日記
教会の聖具室で蜜蝋ろうそくに火をつけると、必ず小鳥がやってきて溶けた蜜をついばむ
現地名サズー、蜜蝋を食べる鳥、和名ミツオシエ

p166
鳥類の呼吸による空気の出入り口;
外鼻孔、大部分の鳥類では嘴上部
上嘴の内側は3つの空間、最初の2つの空間で温まり、湿った吸気の一部は口から肺に流れる。
三番目の空間は嘴基部、鼻甲介(人間では呼気を温めて湿らすほか、匂いを感知)の間を通る。

鳥類では匂いの情報処理を行う脳部位は嘴基部近くにあり、「嗅球」という。
ミズナギドリ類では、1種を除き嗅球は大きい
→硫化ジメチルの匂いを感知している

硫化ジメチル:
生物由来の化合物、植物プランクトンが作り出す。オキアミなどに植物プランクトンが食われると、
やがて硫化ジメチルが発生する。海中に溶けた硫化ジメチルは、やがて大気中に気化し、
エアロゾルとなって漂う。


p170
ヒメコンドル:
天然ガスのパイプラインでのガス漏れ穴に近づく、
天然ガスには腐ったキャベツや放屁のような匂いがする物質エチルメルカプタン(別名エタンチオール)が含まれている

そこでユニオン石油会社は、天然ガスに高濃度のエチルメルカプタンを加えて、
ヒメコンドルによるガス漏れ感知に使っている


p198
オオソリハシシギ:ニュージーランドからアラスカまで、途中休むことなく11,000kmを8日で移動する

p206
鳥類を含めて動物が磁気を感知する方法の説
・電磁誘導 魚類では起こるだろうが、鳥類や他の動物には、このメカニズムに必須の鋭敏な受容体がない
・磁気を帯びた「磁鉄鉱」
 走磁性バクテリアは体内の磁鉄鉱を利用する
 ミツバチ、魚類、鳥類も微細な磁鉄鉱の結晶を持っている
 これはハトでは上嘴の鼻孔の神経終末内部にある
・特定の生化学反応を介して働く
 網膜中のタンパク質であるクリプトクロム:磁気センサーのように働くので、
 鳥類は磁気が「見える」らしい
 
 ロビンでの実験
 ケージ内での磁場変換→180度変換すると、向きも180度変わる
 左目を覆ってもかわらない
 右目を覆うと定位できなくなる
 →右目のみが磁場を感じている

 →右目に透明なコンタクトレンズを入れると定位できる
     不透明なものだと定位できない

p218
ウミガラス@スコットランド・メイ島
高密度のコロニーで繁殖し、共同体的世話を行う
が、2007年には餌のイカナゴが激減
→他の鳥の雛を攻撃する行動が頻発
翌年に食糧事情が戻ると、以前の共同体的世話に戻った

p224 動物福祉
ジェレミー・ベンサム(1748-1832)
「道徳及び立法の諸原理序説」(1789)

問題は動物が論理的に考えられるかどうかになく、苦しむかどうかにあると指摘

p229
鳥類のほとんどは動物では珍しく単婚(一夫一妻)
約1万種のうち90%以上(byデイビッド・ラック、1960年代の調査)

ただし実父確定調査では、つがい外交尾や婚外子は多い
よって現在は、浮気もある社会的単婚と、
排他的つがい関係の性的単婚を区別している。
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