ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

モルフォチョウの碧い輝き―光と色の不思議に迫る  

モルフォチョウの碧い輝き―光と色の不思議に迫る
木下 修一
【生き物ってすごい不思議度】★★★★ 【殿堂入り】



構造色はとにかく気になっていたテーマである。
野鳥観察の案内をしていると、どうしてもカモ類やドバトの頸、
カワセミなどで構造職色の話題に入るときがある。

しかし、「あれは構造色で、色素の色じゃないんですよ」と説明しつつも、
もつと細かく、かつ正しい知識をもって説明したかった。

で、色々物色していたのだが、
僕は生物分野の構造色に興味があったので、本書を入手。

大正解である。

前半では光そのものの基礎知識からスタートし、
どのようなシステムによって構造色が発生するかが説明される。

(合間では、モルフォチョウの研究話題が挿入される。)

これによって、干渉(薄膜干渉や多層膜干渉)、回析(回析格子)などが理解できる。
若干数式があるが、すいません僕はとばしました。
でも、概念的には理解できると思われる。

そして中盤では、これらの光学知識を踏まえて、
いよいよモルフォチョウの構造色について、実際の研究過程をなぞりながら解説される。
どうして自然がこれほど微細な輝きをもちえるようになったのか、
本当に驚くばかりである。

後半では、モルフォチョウ以外の生物の構造色について説明される。
タマムシ、ハナムグリ、カモ、カワセミなど。
カモとカワセミの構造色が違うものだというのも、驚きであった。

ただ後半、コレステリック液晶、フォトニック結晶の話題がさらっと出てくるが、
もう少し細かい説明が欲しかったところ。

なお著者はブログ
「構造色事始」
http://blogs.yahoo.co.jp/kozoshoku
で、本書の内容や追加情報を紹介している。
ぜひご覧いただきたい。

そして本書の中でも言及されているアンドリュー・パーカーの「眼の誕生」、
これは本書を読んでいる方が絶対によくわかる。
未読の方は、ぜひ本書から読むことをお勧めする。

【目次】
序章 碧い輝きの誘惑
第1章 モルフォチョウってどんな蝶?
第2章 光と色の世界
第3章 碧い輝きの秘密
第4章 さまざまな構造色
第5章 まばゆさに包まれた暮らし
第6章 輝きの向こうに


【メモ】
p2
構造色 structural color,iridescence(虹色)

p22
モルフォチョウの翅の光沢は、光沢計で測るとほとんど光沢がない
モルフォチョウのツヤは光のあたる方向と関係なく、常に翅の真上から見たときに感じる

p23
物体の色:
太陽光のように様々な色を含む色が物体にあたる
特定の色の光が反射されて眼に入ったもの=色
眼に入らない光=物体に吸収される=その光エネルギーは一時的に電子のエネルギーになるが、
やがて熱エネルギーに変わる

p24
光の吸収によらない色=構造色
・光の回析や干渉によって強烈な色が生じる
・薄膜干渉、多層膜干渉、回析格子

p34
ニュートン,1704.「オプティクス」
太陽の光はプリズムによって様々な色にわかれ、プリズムによって元の光に復活する
(プリズムの屈折現象)

p35
・三原色→「光の三原色」と「色の三原色」
なぜ三原色か
→人間の目の網膜:
明暗を感知する桿体細胞、
色を検知する錐体細胞 がある
(夕方は錐体細胞が働かなくなるためモノトーン)
この錐体細胞 が、ヒトの場合赤、青、緑を検出する三種類あるため三原色

なお各錐体細胞は特定の色(ex.青)だけを感知するのではなく、
お互いに重なり合っている
→その割合で色を検知
だから逆に、他の錐体細胞が感知しない色は、少々違っても区別がつかない

p35
各錐体細胞の感知する波長の図を掲載
各色のピークの波長
青420nm
緑498nm
桿体534nm
赤564nm

補色:ある色に対して、その色を混ぜると白色になる色=補色


p40-41
光は振動する波、電磁波の一種

<振動数高い>
γ線
X線
真空紫外線 (紫外線)
近紫外線  (紫外線)
紫(可視光線)
青(可視光線)
緑(可視光線)
黄(可視光線)
橙(可視光線)
赤(可視光線)
近赤外線(赤外線)
遠赤外線(赤外線)
サブミリ波(マイクロ波)
ミリ波(マイクロ波)
センチ波(マイクロ波)
極短波(マイクロ波)
超短波(電波)
短波
中波
長波
超長波
<振動数低い>


(光速)=(波長)×(振動数)
(屈折率)=(真空中の光速)/(物質中の光速)

p44
偏光:
光の波が振動している方向
太陽の光:特定の方向に振動していないので無偏光
池の水にあたると地面に平行な方向に偏光
空が青いのは空気中の分子や水による散乱によって青い光が生じているが、
この青い光は地面に垂直な方向に偏光

光は波の一種で、進行方向に垂直に電磁場が振動している横波

波には「干渉」という性質がある

異なる位相の波が重なるとき、新しい波ができる=干渉
二つの波の位相が同じ=波の高さが高くなり、位相はずれない
二つの波の位相が180度ずれる=波が消滅する

p52
屈折率が小→大の順に物質を通過すると、その界面で反射される光は180度ずれる
屈折率が大→小の順に物質を通過すると、その界面で反射される光の位相はずれない

p61
・多層膜干渉
 膜がたくさん重なり、それぞれの界面が光を反射する
 それぞれの反射光が干渉することによって、特定の波長が強くなり、色を生じる

p67
・回析格子
 きわめて小さいスリットを光が通過するとき、平面的に伝わる部分がなくなり、
半円状に通過する波のみが生じ、それらが重なり合うことで特定の波長が強くなる

(CDなど)
 規則正しい小さい突起にあたった光が回析により広がって反射され、特定の方向に強い光を出す


p89
モルフォチョウの構造色
・鱗粉にある棚構造が、干渉によって青い光を強めて反射する。
・棚構造が細長く細切れであることによって、短軸方向では回析効果が、
 長軸方向では正反射が起こり、方向によって反射が異なる。
・棚構造が棚一段程度の大きさで乱雑になっていることによって、
 棚構造同士の干渉を防ぎ、回析スポットをつくらない。
 (単純な回析格子になっていない)
p125
・下面に赤い色素があることで、コントラストを増大させる

p144
・タマムシ(多層膜干渉)
表皮:外側から
エピクチクラ(外表皮)→多層膜
エキソクチクラ(外原表皮)
エンドクチクラ(内表皮)

このエピクチクラに20層ほどの黒い層と白い層がある多層膜構造、
層の厚さは0.2マイクロメートル=可視光の波長の半分程度=多層膜干渉

ただし、表面が細かい多角形であることで、一面的な反射をせず、
拡散光を作り出している

p145
・ハナムグリ(コレステリック液晶)
エピクチクラ(外表皮)
エキソクチクラ(外原表皮)→コレステリック液晶
エンドクチクラ(内表皮)

コレステリック液晶:
光学活性な分子が一方向に並んだ面が、深さ方向に少しずつ分子の向きを変えて
らせん構造になっている。

ハナムグリ:
光の進行方向から見て左向きなので、特に左回り円偏光という。

p147
・オオゴマダラの蛹
タテハチョウ科の蝶の蛹:金属的な輝き
金色や銀色;約70%の反射率
クチクラと体液による多層膜が250層ほど存在
多層膜の間隔は手前から少しずつ広くなり、再び狭くなる
狭いところ:短波長の光を反射
広いところ:長波長の光を反射

オオゴマダラの蛹:
金色、ただし金は反射率が90%だが、蛹は50%、
それでも金色に見えるのは青色を反射しないため
金色は周囲の風景を反射するので、隠蔽効果があると考えられる

・青魚の銀色:グアニンという結晶による反射

これら→生物反射鏡

p150
・クジャク(フォトニック結晶:ブラッグ回析)
 小羽枝が構造色、幅30マイクロメートル程度、断面は三日月形、
小羽枝の伸びる方向に向かって棒状の粒子が並ぶ
よって小羽枝の断面で見ると、円形の粒子が、正方形の格子に8~10層結晶のように並ぶ
粒子の間隔は羽根の色によって変化、

青:0.14~0.15マイクロメートル
緑:0.15マイクロメートル
黄:0.165~0.19マイクロメートル


粒子:0.7マイクロメートルほどで、メラニン顆粒
→光の波長程度の結晶=フォトニック結晶

規則正しい結晶状の粒子に光があたったとき、波長と入射角が条件を満たせば
粒子で散乱した光が干渉しあい、多層膜のように光を反射する
=ブラッグ回析

なお、拡散光を発生させるのは小羽枝の三日月状の湾曲
メラニン色素が吸収体の役目をはたし、コントラストを増強


p153
・カワセミ(網目構造による干渉と拡散光?
背中:羽枝は網目構造、0.2マイクロメートルの規則正しい方向性
→切れ切れになった多層膜がいろいろな方向に分布しているようなもの
→干渉による青色の発生と、拡散光発生の調和の結果か

光散乱:
・レイリー散乱:光の波長より細かい分子により散乱:振動数の高い光が散乱しやすい
 →空も空気分子で散乱して青い
・ミー散乱:光の波長より大きい分子により散乱:振動数の低い光が散乱しやすい

チンダルブルー:チンダル散乱よって青色が散乱したもの
チンダル散乱:液体の中のコロイド粒子による散乱:

p165-
見る方向によって色が変わる塗装の性質:フリップフロップ性
光輝材:雲母、ガラス片、酸化チタンなど薄膜干渉型の構造色

塗料の中にアルミニウム片:メタリックカラー
透明な雲母片に酸化チタンの薄膜をコーティング:界面での反射が増えるので、
白の上に塗るとホワイトパール

p173
赤色の構造色は存在しないのか?
→タマムシの腹は赤色構造色
ただし昆虫には赤色が見えないので、そもそも赤色構造色はあまり役に立たない

赤色は色素で作りやすいが、青色は作りにくい
青を出すためには黄色~赤を吸収する必要があるが、そのためには分子が長くなる。
分子が長いと作るコストも大きく、壊れやすい(褪色しやすい。)
構造色で赤や青を作るのは手間は同じ。


p182
アンドリュー・パーカー「眼の誕生」
5億1500万年前のカンブリア紀
回析格子による構造色があったことを発見
アメリカのサウスダコタの8000万年前のアンモナイト:多層膜干渉で虹色

眼による識別、色の発達、生存競争の激化、外部形態の進化、カンブリア大爆発

p183
構造色のデメリット
・回析格子型の構造色だと、どこから見ても虹色
様々な色を表現するには色素タンパク質の方が便利
→多様な色の発達
ただし、逆にこの中で構造色が目立つことになった
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