ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))  

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))
長谷川 眞理子
【進化論入門に適している度】★★★

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))
(1999/06/21)
長谷川 眞理子

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著者には「生き物をめぐる4つの「なぜ」 (集英社新書)」という本もある。
そちらは読んでいた。
僕は野鳥屋なので、なぜ一夫一妻や一夫多妻が
成立するのかが疑問だったのだが、
同書でその点がモデル的に説明されており、なかなか興味深かった。

その著者による、進化一般に関する本である。
自然淘汰、適応、「種」とは何か、という話から始まり、
最終的には著者のメインフィールドである雄・雌論に入って行く。

前半は基本的な概論だが、かなりわかりやすい。
多くの重要な概念が、コンパクトに説明されている。

一方、第9章の雄・雌論では、なぜ有性生殖が発達したのかという点から始まり、
繁殖速度や同性間の競争など、雄・雌論の基本的な考え方が説明される。

全般的に、形態的な進化や、内部構造の進化などはターゲットに入っていないので、
その点ではやや物足りないだろう。
また、ゲーム理論もかなりのあっさりしていて、この本だけではよく分からないと思う。

しかし雄・雌論の入門書としては、かなり有用である。
この本に続けて、よりテーマを絞った
「雄と雌の数をめぐる不思議」を読んだが、順番としてはこれが正解と思われる。

それにしても、これが岩波「ジュニア」新書である。
どういう読書(学習)遍歴のある「ジュニア」を想定しているのか、教えてほしいものである。


【目次】
第1章 生物の多様性と適応 
第2章 生命の長い鎖
第3章 自然淘汰と適応
第4章 変異の性質と淘汰の種類
第5章 新しい種の誕生
第6章 進化的軍拡競争と共進化
第7章 最適化の理論
第8章 頻度依存による自然淘汰 
第9章 雄と雌はなぜ違う?
第10章 進化の考えがたどった道



【メモ】
p5
南フランスの洞窟 ここだけに生活する甲虫がいるが、この甲虫の硬い後部の羽根にしか生えない菌類がいる

p5
カリフォルニアのハエPsilopa petrolei
卵が原油の中に産み落とされ、石油を食べて成長する。

p7
インドガンAnser indicus
ヒマラヤの上空9000mを通過する
赤血球の中のヘモグロビンの遺伝子に変化、
他のガンカモ類はプロリンというアミノ酸だが、アラニンに変化。これにより酸素を吸入する効率が高くなっている

p29
地球上の生命
・DNAの塩基配列が指定するアミノ酸=全生物に共通
・アミノ酸からタンパク質を合成、この高分子は分子の並べ方に二通りあり、
 同じものでも鏡像関係にある2通りができる。
 D型…偏光を右に反射し、L型…偏光を左に反射
 自然状態で高分子をつくると、半々できる。
 しかしどの生物も、DNAを作る糖はD型で、アミノ酸はL型。
→誕生が1回しかなかったことを示唆

p34
オーストラリアにウサギ導入1875年、24頭
6年後には2万頭に増加
ただしこうした指数的な増加は、栄養不足、病気増加などでいずれ止まる

p35
・コンテスト型競争
 実際に個体が出会い、資源を巡り競争を行う
・スクランブル型競争
 直接戦わなくても、限られた資源を取り合うなどで競争

p58
DNAの突然変異
・点突然変異
 DNAの3つの文字の1文字が変わる ex)AAA→AAC
 1文字追加、1文字欠落、1文字置換など

突然変異が生き物の適応度にほとんど影響を及ぼさない場合、
ある性質について、複数のタイプが共存することになる=多型
ヒトのABO型血液=典型的な多型

p65
減数分裂時、親のDNAを単純に半分にしているのではなく、組み換えされて新しく作られている
よって同じ親の子でも、個体によって様々な遺伝子を持つ

p65-
・安定化淘汰
・方向性淘汰
・分断淘汰

p70
木村資生(1924-94)、分子進化の中立説
※「生物進化を考える」http://birdbookreading.blog.fc2.com/blog-entry-35.html参照のこと

遺伝子に生じる変異が中立であれば、淘汰によって増減しないので、
そうした変異がどれだけ積み重なるかは確立の問題になる=分子時計

p75
ヘモグロビン α鎖とβ鎖からなる
はるか昔に1本のヘモグロビンだったのが、遺伝子の重複により2本作られるようになった
最初は正確に同じものだったが、中立的な変化が蓄積
その結果、各種の持っているα鎖とβ鎖は同じものではなく、アミノ酸にいくつもの違いがある

p81
・形態的種
 シジュウカラとヤマガラのように、外見的特徴によって区分
・生物学的種
 繁殖隔離の有無
 ただし無性生殖や、実際には交配できる種もある
・認識的種
 「互いに繁殖可能な相手と認識している個体の集まり」
・進化的種
 A----A'
|--B
 と分岐したときに、A=A'か?
分岐分類学では、違うものが出てきた分岐と分岐の間を種とするので、A≠A'となる。
 賛否両論がある。

p89
・輪状種
 生息地の微妙な変化の積み重ねによって、分布の両端は交配できない種になる
 この両端の種が出会い、全体で輪状に分布しているもの
 ex)セグロカモメ

p91
・異所的種分化
 地理な障壁によって、二つの集団が隔離され、別種になること

P97
アフリカ・ビクトリア湖:約1万2400年前に、数千年にわたって干上がっていた
ここに現在、300種以上のシクリッドがいる
遺伝研究でも、単一系統から種分化したと考えられている
=約1万2000年間に急速に種分化した

p106
・共進化
 生物が互いに影響を及ぼしながら、ともに相手あっての適応をとげていくこと
・進化的軍拡競争
 共進化が両者にとって最適のところで止まらず、
 片方が相手を出し抜くことが繰り返し、止めどなく進化が起きること

p112
モンシロチョウの仲間
 キャベツに含まれているアルカロイド(カラシ油)の仲間を分解できる
 しかしパセリやニンジンは食べられない。
キアゲハ
 パセリやニンジンなどセリ科に含まれるアニソールを分解できる
アゲハ
 柑橘類の葉に含まれるアルカロイドだけを分解できる

p116
・鳥媒花
 虫媒花よりも多くの蜜、匂いがない、色は赤や黄色、
 たいてい筒状に長い
 →鳥との間に共進化が起こる

p121
 モーリシャス島のドードーと、タンバロコックの木(アカテツ科)
 ドードーの絶滅により、ドードーに食われることで種子散布していたタンバロコックも
 新しい分散がなくなった


※絶滅鳥ドードーの適応 アニマ1978.2(59)p90
1681 ドードー(モーリシャス島)絶滅
1973 S.テンプル 原生林の中にカルバリア(Calvaria major)を13本しか確認できず
全て樹齢300年以上。ドードー絶滅も300年前
カルバリア 種子→そのまま地上に落ちても発芽しない厚い皮
1977 テンプルの仮説(Science,97,1977) ドードーの砂嚢で表皮が削り取られ発芽する
実験)シチメンチョウにカルバリアの種子17個を与える→3個が発芽


p131
・最適採食戦略
 パッチ状に餌が分布しており、鳥は一つのパッチで採食し、ある程度時間がたつと別のパッチに移動
あるパッチにx時間いたときの餌獲得量をg(x)とすると、g(x)は上に凸の曲線になる
別のパッチに移動するのに時間Tがかかるとすると、
餌取りに使う時間(T+x)に対して、餌の量g(x)が最大になる時間配分が最適となる。

p139
オックスフォードのワイタムの森に住むシジュウカラの一腹卵数
=8~9個

人工的に卵を追加しても孵化させたので、9個以上でも育てる能力はある
→1つの巣にいるヒナの数は、多すぎても少なすぎても生存率が下がる
ただし実際に最適な数にすると、親鳥の負担が増大し、親鳥自身の生存率が下がる
よって少し最適値より少ない卵の数になっている

p143
生き物は「最適」という状態が一つに決まり、自然淘汰によりその状態になっていく
しかしいつも「一つ」とは限らない。
他の個体が何をしているかによつて最適が変化する場合がある。
=頻度依存の淘汰

p152
タカ-ハトゲーム
純粋戦略 1つの戦略で進化的に安定になる場合
混合戦略 2つ以上の戦略で最適になる場合

p162
・性比
交配が兄弟姉妹間で行われる場合(イチジクコバチ、シラミダニの仲間の一種、ホコリダニの仲間の一種など)
なるべく多く雌を生み、雄は受精が保証される最低限の数だけ生むこと良い
→極端に性比が雌に偏る

p166
ギンブナ 全て雌
卵の発生には精子が必要(受精せず、精子による刺激のみが必要)
他の種類のフナと交尾し、その精子を使って卵に刺激を与えるが、その精子は捨て、
最終的にギンブナの未受精卵から子が発生する

p171
有性生殖のメリット=赤の女王仮説
寄生者対策として、親の代で突破された防御の壁を、有性生殖による遺伝子の組み換えによりリセットする

p178
雄と雌=潜在的な繁殖速度が異なる
雄:小さい精子を作る=短時間
雌:大きい卵子を作る=長時間
よって個体数は等しくても、実際に繁殖可能な数は雌の方が少ない(実効性比)
→雄が競争することになる

卵を外に出す種の場合、雄のみ、雌のみ、雄&雌 が子育てするかによって、実効性比は変わる

ex)タマシギ
雄が抱卵し、育雛>雌が卵を準備する時間
→雌が競争

p184
体のサイズ
いくつかの霊長類では、最適なサイズは雌の大きさで、雄は不必要に大きい=競争のため

タマシギ=雌の方が大きい
アカエリヒレアシシギ=雌が戦うが、雌の蹴爪が非常に大きく発達

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