ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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タネが危ない  

タネが危ない
野口 勲
【タネがどころか、人類の農業が危ない度】★★★★

タネが危ないタネが危ない
(2011/09/06)
野口 勲

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野口氏は、固定種専門のタネ屋、野口種苗研究所  の方。
家庭菜園雑誌とかでもおなじみである。

F1種の席捲というのは知っていたが、そこにどんな危険があるのか。
固定種にこだわってきた野口氏ならではの視点による解説が、本書である。

また驚きだっのが、野口氏が虫プロの雑誌編集者として、手塚治虫氏を担当していたということ。
本書の前半では野口氏の半生記が語られるが、そこで手塚氏との話が多く出てくる。
かなり貴重な話題であり、面白い。

さて本書では、

・F1種を得るための雄性不稔
・蜂群崩壊症候群
・遺伝子組み換え技術

これらが、ミトコンドリア異常の話を縦軸に、手塚治虫氏の思想を横軸に語られる。
なかなかこんな書物はないだろう。

家庭菜園をしている方、自家採取の興味がある方、そして日々の食事の野菜にちょっとでも関心がある方は、
ぜひお読みいただきたい。

なお、本書でも触れられているが、
蜂群崩壊症候群、いわゆるCCDについては、
ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセンが詳しい。

同書では、ミトコンドリア異常という観点はあまりなかったと思う。また読み直したいとところだ。

なお本書によって、F1種を得るためにも、ミツバチが活用されていることを初めて知った。
CCDが蔓延したら、本当に世界の農業は崩壊してしまうだろう。



【目次】
第1章 タネ屋三代目、手塚慢画担当に
第2章 すべてはミトコンドリアの釆配
第3章 消えゆく固定種 席巻するF1
第4章 F1はこうして作られる
第5章 ミツバチはなぜ消えたのか

【メモ】
p15
~S30年代:固定種の需要も多い
S40年代~:F1の時代

p18
江戸中期
タネ屋の集落が東京北区の滝野川にできた
現在の「みかど協和」の越後家、「東京種苗」の榎本家、「日本農林社」の鈴木家などの先祖
明治維新以後、外国の種苗取引、「横浜植木」「サカタのタネ」
国内の流通が活発になり、全国に販売網を持つ会社 京都の「タキイ種苗」、群馬の「カネコ種苗」、宮城の「渡辺採種場」

野口種苗園:蚕種の販売所兼野菜種子販売、1929創業

p19
終戦直後:タネは配給制で粗悪
いったん配給本部に集められ、そこで良いタネをとって古いタネを混入し、
また各段階を経て配給していくため、末端のタネ屋には粗悪なタネがきていた

p21
第1回SF大会の記念写真
手塚治虫、平井和正、半村良、石ノ森章太郎、星新一ら

p23
筆者:虫プロ、児童向け会報誌「鉄腕アトムクラブ」や月刊マンガ雑誌「COM」の編集、
「火の鳥」の初代担当編集者

p24
採用時の手塚治虫との会話

p35
菜っ葉は東アジアにしかない。
ヨーロッパのカトリック社会では、食べ物にも階級があり
神に近い空を飛ぶ鳥は高級素材。
その次は地上の果物。
次が野山の獣。
次に地上の葉
最下層が土から抜くカブや大根、悪魔や家畜、奴隷の食べ物。
ヨーロッパはカブから生まれた菜っ葉類はない。

ヨーロッパで土の中の作物が普及するのは、ルターの宗教改革の時代、
プロテスタントのドイツなどでジャガイモが食べられるようになってから。

p50
ミトコンドリア遺伝子が母系遺伝である理由として、古くから
受精の際に精子の核だけが注入され、
鞭毛の根元の部分にあるミトコンドリアは入らないから、とされていたが、
実際は異なる。

たとえば哺乳類の場合、卵子内のミトコンドリアは約10万個、精子内のは約1000個。
この数少ない精子のミトコンドリアは卵子の中に入るとすぐ分解されてしまう。
なぜ分解されるかは不明。

p59
東京農業大学の湯浅浩史氏
人類が最初に栽培したのはひょうたんではないか

日本の青森の遺跡からひょうたんが出土(約9000年前)
ひょうたんはアフリカ原産、
つまり人類はアフリカから出るときに、ひょうたんを持って出ていた?

p61
ひょうたんの「ひょうたん型」劣性、くびれのない「夕顔型」優性

p63
メンデルはドミナント(子供を支配する性質)とレセッシブに分けた。
優劣ではない。

p64
純粋な日本人と純粋な白人が結婚すると、一代目は必ず日本人の形質が出る。
純粋な日本人と純粋な黒人が結婚すると、一代目は必ず黒人の形質が出る。

p68
固定種の時代は、八百屋では一貫目いくらとか、1kgいくらとか、重さで売っていた。
現在は1個単位で価格がつくので、揃っているF1が売れる。

p73
販売用の野菜タネのほとんどをF1にしたのは日本くらい
フランス:7~8割が固定種

p76
大根:首が上に出る大根と、下に潜る大根がある。
耕土が深くて寒いところは下に潜る系統が適し、
耕土が浅くて暖かい土地だと、上に伸びる系統が適している。

p78
秋の新タネが小売店に並ぶものは、例年早くて6月下旬、多くは7月。
タネの成熟が成夏にかかるタマネギは8月以降。
これ以前に店頭に並んでいる秋野菜のタネは、100%古い種子。

タネは、温度と湿度が低くて一定であれば、発芽力はそんなに落ちない。
しかし高温多湿だと呼吸量が多くなり、発芽力が落ちる。

p84
キュウリ:
昔のキュウリ
イボが黒い「華南型」、半白タイプ
明治以後、日清・日露戦争を経て入った=全体が青い「華北型」
現在:F1のブルームレス

p94
野菜指定産地制度を含む野菜生産出荷安定法:モノカルチャー農業の元凶

p106
私たちが食べている野菜のタネを作る過程はブラックボックス。
種苗メーカーは製造過程の秘密を決して明かさない。

p108
スイカ
日本のスイカのもと:奈良県大和地方「旭大和」
 皮に縞がない、皮が弱く割れやすい、甘い
外国の西瓜
 縞があり大きい、固定種としてはまずい、皮が硬い
これらの交配によって、
日本のスイカは全て縞のあるスイカになった

p109
F1の作り方
1:自家不和合性:
 菜の花のようなアブラナ科:自分の花粉ではタネがつかず、他の株の花粉でないとつかない。
 しかし、つぼみの段階ではつく。
 よって、つぼみをピンセットで開き、自分の花粉で受精させる

2:雄性不稔:
 植物の葯やおしべが退化し、花粉が機能的に不完全になること。

p119
 雄性不稔:母親株から子供に引き継がれる
 =ミトコンドリア遺伝子の異常:
 ミトコンドリアは母系遺伝


p132
ミツバチがいなくなる蜂群崩壊症候群CCD:Colony Collapse Disorder

p134
ミツバチが受粉に使われている農作物
牧草のアルファルファ、リンゴ、アーモンド、柑橘類、玉ネギ、ニンジン
果実収穫のためのミツバチ受粉のほか、
F1のタネ採りのためにミツバチ利用

ex.)玉ネギ
花粉の出ない雌株の系統(雄性不稔)+花粉の出雄株の系統
→F1

p137
ミツバチ:雄性不稔の花の蜜を集める

日本:巣に帰る途中で落ち、ベロを出したまま死ぬ=ネオニコチノイド農薬によるもの
外国:CCD:突然いなくなるのでネオニコチノイドとは考えにくい
(「ハチはなぜ大量死したか」に言及)

筆者の仮説:
1940年代:雄性不稔からF1を得るため、ミツバチの活用開始
雄性不稔(ミトコンドリア異常)の密・花粉収集→ローヤルゼリー→次世代の女王育成
新コロニー(女王蜂の遺伝子)
同じ畑で雄性不稔F1種子のための使われることの繰り返し=ミトコンドリア異常の蓄積
無精子症のオスバチの発生
コロニーの崩壊

仮説が正しいか否かは別として、
現在世の中の野菜だけでなく、ハイブリッドライス(米)、砂糖の原料のテンサイ、
ヒマワリ、スギ、あらゆる植物がF1化=雄性不稔化=ミトコンドリア異常 になりつつある。

p145
砂糖の原料のテンサイ(甜菜、砂糖大根、シュガービート):
日本の砂糖の2割が沖縄のサトウキビ、8割は北海道のテンサイ:全てF1
世界に普及しているテンサイのハイブリッド種は、すべて細胞質雄性不稔株(アメリカ、育種家のオーエンが50年以上前にUS1品種で発見した変異株)に由来する

テンサイ:絞り汁は砂糖、絞りかすの繊維質は食物繊維入りの清涼飲料水やインスタントラーメンのつなぎ
知らないうちにF1のテンサイ細胞を食べている

p147
ハイブリッドライス(米)
中国:雄性不稔のF1米が58%(インディカ80%、ジャポニカ3%)
アメリカ:39%
日本:1%弱

F1のタネ:1代限り食べられるが子孫は育たない
日本「みつひかり」三井化学アグロ

P149
F1でなく放射線照射による品種改良:タキイ「サラダごぼう」
納豆のコスズ、スズヒメなど


p150
雄性不稔によるF1:本来、近縁の植物が持っていた遺伝子の導入
遺伝子組み換え:細菌、カビ、ウイルスなど、まったく関係のない遺伝子の導入

p152
バラ:根頭癌種病菌:アグロバクテリウム(日本のどこの土にもいる土壌細菌)
細菌:大元の遺伝子は渡さないが、プラスミドという環状の遺伝子を交換
除草剤に強いプラスミド交換=耐性の獲得
アグロバクテリウムは、植物に入るとプラスミドからできた遺伝子を植物の細胞の核に渡す
植物はそれを核の遺伝子に取り込む
癌細胞のように増殖し、やがて枯れる

アグロバクテリウムの遺伝子がなぜ細胞に入れるかは未解明
プラスミド遺伝子→遺伝子組み換えに応用

p153
現在封印されている遺伝組み換え特許の技術:ターミネーター・テクノロジー
米国特許572376号
「遺伝子操作により、タネの次世代以降の発芽を抑える技術で、農家による自家採取を不可能にする」
=タネを特定の会社からしか購入できない社会を形成
自殺遺伝子
この遺伝子が入った種子は、発芽と同時に毒素を形成して死んでしまう

ミズーリ州の綿花種子会社デルタ&パイン・ランドが開発、ミズーリ州農務省と共同特許、
1999年モンサントに買収される
しかし一社による農業支配に通じると反対され、モンサントは開発計画を凍結

p161
「食べた物は全て低分子のアミノ酸に分解され、それが細胞に再配分され、高分子のたんぱく質に組み立てられる。遺伝子も高分子のタンパク質なので、低分子のアミノ酸に分解される。よって遺伝子組み換えした植物を食べても問題はない」
フランシス・クリックのセントラルドグマ、分子生物学の基本原則

ただしBSE(牛海綿状脳症)では、プリオン(タンパク質)が原因
タンパク質がアミノ酸に分解されるのなら問題ないはずだが、感染した
→まだまだ遺伝子の働き、人間が食べる食べ物の影響はわからないことが多い


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