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シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)  

シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
【シロアリもすごい度】★★★★
松浦 健二


シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
(2013/02/07)
松浦 健二

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マイナー生物シリーズである。皆さんも好きではないでしょうか。
岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉シリーズ、
今後も楽しそうな生き物が期待でき、目が離せない。

さて、本書である。

シロアリが「アリ」といいつつ、ゴキブリの仲間であることは知っていたが、
その生態についてはよく知らなかった。

本書ではまず、アリとの違いからシロアリが説明される。

同じ真社会性の生き物でありながら、
アリはメスのみでコロニーを形成する。よって遺伝子的に極めて近縁なため、真社会性が発達したと言われる。
シロアリもそうかなと漠然と思っていたのだが、
シロアリはなんと一夫一妻でコロニーを創設する。

しかも、シロアリの創設女王は単為生殖により二次女王を生み、
創設王と二次女王が繁殖することから、結局遺伝子的にはコロニーの全個体は創設王+創設女王の子孫と同じになる、という。
突然変異はそもそも中立的であり、環境等の淘汰要因によって適応していくのが進化というのは理解しているものの、
どうやったら有性生殖と単為生殖を使い分けるという生態が発達するのか。
全く生物とは謎だらけである。

しかし、この創設女王が単為生殖により二次女王を生むという発見は、
近年の遺伝子解析技術の進歩がなければ、到底発見しえない。

そう考えると、今後も様々な技術の発展により、
新しい知見も出ることだろう。
(DNAメチル化、エピジェネティクス(「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」の発展などが、その端緒となるのではないか。)


この他のテーマとしては、シロアリの卵に擬態しているカビの菌核、ターマイトボール。
これって普通のアリにもあるのだろうか。
子供の頃、なんかのアリの巣を破壊した際に、長細い卵と丸い卵があって不思議に思ったことがあったが、
あれはアリだったのか、シロアリだったのか。
またあれは、ターマイトボールだったのだろうか。
ターマイトボールZの存在も楽しいところである。

もう1点、外来種問題。
日本への侵入種が問題となるが、本書では逆にアメリカに進出した
オオハリアリが少し触れられている。
植物のクズもそうだが、
外来種が侵入してもいいじゃないの、という立場は、
日本の在来種が他国に進出しても良いといことにもなりかねず、
それはやはり、固有の生態系が発達してきた地球の進化史に対してあまりに無責任と考える。


いずれにしても、手軽に楽しい1冊である。
ぜひお読みいただきたい。



【目次】
1 シロアリとの運命の出会い
2 シロアリとは何者か?
3 カップル成立―非情な恋愛バトル
4 女王の分身の術
5 女王様はワインの香り
6 シロアリの卵に化けるカビ

【メモ】
P10
シロアリ:
等翅目Isptera
・シロアリ科     …高等シロアリ
・ノコギリシロアリ科 …(以下全てで)下等シロアリ
・ミゾガシラシロアリ科
・レイビシロアリ科
・オオシロアリ科
・シュウカクシロアリ科
・ムカシシロアリ科

下等シロアリ:後腸に共生原生動物をもち、セルロースを分解
高等シロアリ:共生原生動物を持たず、共生バクテリアや巣内で栽培する菌類で分解


シロアリ=ゴキブリに近い=社会性を高度に発達させたゴキブリ
アリ=ハチに近い=翅をなくしたアリ


p13
アリ:メスのみでコロニー形成(女王のみ)
シロアリ:一夫一妻でコロニー創設(創設王と女王(女王はのちに複数化))


ワーカー
アリ:雌のみ
シロアリ:オスもメスもいる

p14
・アリやハチの遺伝様式:半倍数性
女王が生んだ卵は、未授精(半数体)だとオス、
受精すると(2倍体)メス
娘同士の血縁度が高くなり、真社会性へ発達したと言われる

・シロアリ:
オスもメスも2倍体、よってなぜ真社会性が発達したのか議論がある
※そもそも血縁度が高くないと真社会性が発達しないのか、という議論もある

p15
ハチ目:完全変態:幼虫はウジ虫状で、ワーカーの世話を受けないと成長できない
=働きアリや働きバチはすべて成虫
シロアリ:不完全変態(孵化した段階でシロアリの形)、ある程度成長したらワーカーとして働く
=発生学的には構成員のほとんどが幼虫
よって現在の役割は確定的ではなく、「分化可能性」があり、多くの下等シロアリでは
ワーカーから女王になったり、羽アリになる予定だったニンフが巣に残り、王や女王の繁殖を
引き継ぐこともできる

p22
なぜシロアリは白いのか(羽アリは黒い=メラニンを持っている)
ヤマトシロアリ:5月に羽アリが飛び立つ:紫外線から身を守るため
紫外線:
・DNAを破壊する。
・腸内の共生微生物はさらに紫外線に弱い。
・シロアリ体内のノルハルマンという物質は、紫外線で有毒化する。

メラニンはチロシンというアミノ酸から作られる。よって作るコストがかかる。

p25
地球上で最も大量に存在する高分子化合物:セルロース(植物の細胞壁の主成分)
毎年1,000億t余りが生産される
太陽エネルギーによってブドウ糖を生成し、ブドウ糖がβ1-4グリコシド結合で鎖状に繋がったもの
これを食物として利用するには、セルラーゼという酵素が必要

セルラーゼを生産できる:主に細菌、原生生物(単細胞の鞭毛虫など)、糸状菌(カビやキノコ)
この微生物を腸内に共生させることで、反芻動物やシロアリはセルロースを利用

p29
ヤマトシロアリの仲間:増水すると浸水する朽木にもいる
水に入ったシロアリ(兵アリ):酸素を送っていると最長12日、空気だけ送っても3日は生きる
→溶存酸素を利用する能力がある

p42
ヤマトシロアリの雌:単為生殖の能力がある
♂に出会えなかった♀:♀♀ペアや単独♀でも繁殖
ただし単独♀の生存率は低い:お互いを舐めあい病原性微生物に対抗するグルーミングができないた



p55
・創設王(もとは羽アリ):外皮にメラニンを持ち黒い
・二次王(羽アリにならずにコロニー内で分化):少し茶色い
ただし、二次王の巣はわずかしかない=コロニーの寿命は創設王の寿命
・創設女王:多くは多数の二次女王に置き換わる

創設王+創設女王→二次女王とすると、
創設王+二次女王→近親交配となり、血縁度が高まる=真社会性→実は×

実際は、
創設女王→(単為生殖)→二次女王であり、
創設王+二次女王=遺伝子的には創設王+創設女王 と同じ

創設女王が長生きすれば良い?
→ 移動しない(巣と餌場が分離している)場合は、大きくなれる
ヤマトシロアリ=複数の餌場である朽木をつないだのが巣=女王も移動しなければならない
→ 自力で移動できる大きさにしかなれない

よって、
創設女王が大きくなる種=創設女王は長生き=卵数多い
創設女王が大きくなれない種=創設女王は短命=二次女王の卵数は少ない(二次女王じたいが多い)

p70
実験室では10年飼育したヤマトシロアリでも、創設王も創設女王も若々しい。
野外の巨大コロニーの王は、30年以上生きているのではないか。

p80
女王と認識されるフェロモン
・酪酸ブチルというエステルと2-メチル1-ブタノールというアルコール
この成分は卵からも発している

二次女王(単為生殖の娘)はこのフェロモンを感知しないから二次女王になれる

p95
ターマイトボール
シロアリの卵(カプセル型)に混じっている粒(球形)
=菌核菌の菌核(カビの種のようなもの)

ヤマトシロアリのアカマツ材に営巣したコロニーでは100%

卵に混じっているときは、グルーミングによって発芽抑制。
古くなると形が変形するので、捨てられる→発芽→新たな菌核→卵塊へ運ばれる

なお、ターマイトボールは滑らかな表面をもつ(卵に類似)する代わりに、
他の菌核にある硬い外皮を失っており、乾燥耐性がない。

また、化学的にも、グルーミングによって卵につくβグルコシダーゼを生産し、卵と認識されている。

βグルコシダーゼ=セルロースを分解する消化酵素、だからシロアリも菌も持っていた

p109
オオハリアリ(日本在来種):シロアリを襲う
→1930年代にアメリカに侵入し、分布拡大。オオハリアリによって、在来アリが減少。
また、朽木に棲む昆虫だけを食っていたのが、地上の蛾や蝶の幼虫も捕食している。

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