ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥 (光文社新書)  

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥
遠藤秀紀
【チキンのことがキチンと分かる度】★★★★

ニワトリ 愛を独り占めにした鳥 (光文社新書)ニワトリ 愛を独り占めにした鳥 (光文社新書)
(2010/02/17)
遠藤秀紀

商品詳細を見る


ものすごく身近で、よく知っているようで知らないのがニワトリである。
「庭には二羽ニワトリがいる」とは誰もが言ったことがあると思うが、
もはやそんな風景はない。

この本では、大きく次の点が説明される。

原種のセキショクヤケイはどんな野鳥で、
どんな人間社会の関わりから家禽化され、
どのような品種改良がなされ、
現在の白色レグホンとブロイラーは、どのような「性能」を持つに至ったか。

戦後からほとんど値段が変わらない物価の優等生といわれる卵だが、
これが持続されるには、やはり恐ろしい効率化があったのである。

野鳥屋としての僕としては、
・原種セキショクヤケイの形態・生態
・いわゆる「名古屋コーチン」がどうしてこれほど知名度が高いのか、日本の養鶏史での位置づけ。
・現在の白色レグホンとブロイラーの「性能」。
を知ることができたのが大収穫である。

また、卵肉兼用種から卵用種と肉用種に分離したことが、効率化のためであり、
これを維持するには、高度な経済社会が必要であること、

またブロイラーの交配原種が企業秘密であり、
これが絶たれると、一朝一夕には同様のブロイラーの「性能」を確保できないだろう。

すなわち、物価の優等生と言いながら、
かなり高度な経済バランスの上に「ニワトリ」が維持されていることに、空恐ろしい感覚を覚えた。

どのような養鶏形態が理想なのかは、消費者によって異なると思う。
ただ、白色レグホンとブロイラーのみで構成される社会は、
その基盤が極めて脆弱だということだけは、常に意識しておきたい。

ちなみに我が家の卵は、有機農業を実施している農家から、
直接購入している。
これが善だと主張して押し付けるつもりはないが、
こうした養鶏業を支持することも、やはり必要なのだと思う。




【目次】
第1章 なぜ人はニワトリを愛でるのか
1-1 幻の鳥を求めて
1-2 「空気化」した食品
1-3 食の神話を支える
1-4 ブロイラーの真実
第2章 家畜の最高傑作、ニワトリ
2-1 ご先祖様の正体
2-2 セキショクヤケイのからだ
2-3 家畜化の始まり
2-4 心のエネルギー
2-5 人の心に応えて
第3章 ニワトリの栄光と苦悩
3-1 スターと脇役
3-2 大きさへの執着
3-3 愛が行き着く先
第4章 日本人とニワトリ
4-1 記憶のどこかに
4-2 培われた関係
4-3 心のエネルギー日本版
第5章 答えのない旅
5-1 日本鶏の出自
5-2 ニワトリ学のこれから
5-3 インフルエンザ、そして永遠の間柄

【メモ】

ニワトリGallus gallus domesticus

p19
国内で生産される鶏卵 250万t/年

p22
「必ず人間の健康にプラスに貢献し、かつ農業的にも経済的にも確実に市民に行きわたる原材料」
豚:宗教的な禁忌がある
牛:かなりの経済力が必要
羊:乾燥した温帯で広い平原があれば増えるが、湿度が高く森林の多い日本ではものにならない
ニワトリ:誰でも飼え、どんな社会でも維持できる

p26
島根県の美保神社、滋賀の田村神社、大阪の道明寺などの周辺では、鶏卵を食べない風習があるらしい。
しかし、イスラム教における豚のように大規模な宗教的禁忌ではない。

p29
国内消費量
6億羽/年、170万tのブロイラーが出荷されている
輸入されるチキンも含めて、11kg/年/人の消費。

単純化:日本のニワトリの飼育数:戦前の30年間に3倍、戦後の30年間にさらに3倍になった。


p41
【白色レグホン】
産卵数290個/年
1日でも早く卵を産まないとコスト増になるので、初産日齢は160日以内
ニワトリは15年くらい生きると考えられるが、
若いほど産卵量が多いので、700日程度で産卵量が落ちると廃鶏になる
廃鶏は廃棄物となる(研究材料など、食肉用にはされない)

換羽すると産卵数が減る、通常14カ月目に換羽する
方法1:160日~14カ月にできるだけ産卵させ、換羽を機に廃鶏
方法2:照明を13~17時間つけることで人工的に換羽しないようにし、
折をみて光の変化と絶食・絶水などで強制換羽させる

p157
ただし、これほどの優れた数字を出せるのは、
清潔な鶏舎、良質な飼料、高度な健康管理、的確な流通、優れた公衆衛生、卵を買う資力、消費者の価値観といった、一定の経済力をもつ社会のみ


イタリアのレグホン(イタリア語ではリボルノ)港に由来か
アメリカで白色レグホンと呼ばれる集団に確立

p51
【ブロイラー】
特定品種の名前ではない、肉用鶏
ブロイラーなる飼養戦略とそれに適したニワトリの登場は、S40頃
肉用と卵用に明確に分けることになった
また多様な品種がブロイラーによって駆逐された

生後8週目で体重が2.8kg、8~10週に出荷される
飼い続けても生後30週目で体重増加が止まってしまう(3kg台の半ば)

ブロイラーの両親:種鶏(しゅけい)
種鶏を育てる会社は日本にいくつもあり、その血統は企業秘密に近い

p181
普通は白色プリマスロックの雌と白色コーニッシュの雄
ただし、実際にどのような系統の親を用いているかは種鶏供給企業の最高機密



p66
ニワトリの原種:【セキショクヤケイGallus gallus】:ラオスやタイ、現地では「カイ・パー」
ただし現地人でもあまり区別していない

中国南部~ヒマラヤ山脈奥地~インド半島ほぼ全域、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、マレーシアの半島部
ニワトリよりもかなり小さく、大きな雄でもなかなか1kgに達しない
嘴から肛門まで約35cm
頸部に比して頭骨が小さい
耳の下に耳朶(じだ)がある:色で亜種があると言われてきたが、同地域に混在している
蹴爪が細くて鋭い
皮膚が薄い
砂肝(砂嚢)がかなり大きい=固い木の実や昆虫(外骨格)を好んで食べる
翼は標準的で、50mや100mなら十分飛べる

※ハトはかなり体重の割に翼が小さい、そのため強力な胸筋で羽ばたく

1シーズンに2回程度の産卵ピーク、計10個程度の産卵数
15~20年生きる


地上に巣を構える
雄は抱卵・育雛しないが、雌は強い執着がある→家禽化ではこの就巣性をなくすことが重要だった

p98 セキショクヤケイ近縁種
ハイイロヤケイ:南西インドのみ
セイロンヤケイ:セイロン島のみ
アオエリヤケイ:ジャワ島~小スンダ列島

p102
家畜(家禽)とは
「繁殖が人の手で管理されている動物」、繁殖の人為的制御、繁殖コントロールの有無

p114
セキショクヤケイ 飼ったり繁殖させるのがかなり大変、
体重:1kgに満たない=食肉用ではない
卵:年10個=採卵用ではない
それを積極的に飼った動機は?

闘鶏、おとり、時計目的 & 占い
闘争性、鳴き声、外貌 = 人間の精神的欲求に合致

p160
【マレー】困ったときのマレーとミノルカ
雄の体重が5kgを超える
欧州の最古品種のひとつ、ただし積極的に品種を維持したのではなく、大型ニワトリの集団

p163
【ミノルカ】困ったときのマレーとミノルカ
体重3.5kg弱、増体速度は遅い、肉はまずい、産卵数130個/年
ただし19世紀には、この3.5kgは十分大きかった
真っ白な大きい卵、卵重65g

p167
【横斑プリマスロック】
アメリカ19世紀末、
ブラックジャワ+種々のコーチン、ブラマ、ミノルカ、ドミニークなど
雄5kg弱
卵肉兼用を目指した品種

p172
【名古屋(名古屋コーチン)】
明治維新後の尾張藩士族、海部壮平・正秀兄弟による
明治38年に日本初の国産実用種として品種登録(日本家禽協会)
雄5kg程度、最高級といわれる肉質、桜色といわれる卵など
兼用種

p206
【小国】
「正刻」「正告」という言葉由来ではないかという説
時を告げる品種として飼養か
現在も「小国」という品種があるが、当時の品種と同じものが維持されているとは考えられない

p212
日本三大長鳴鶏:
【東天紅】、唐丸】、【声良】

p217
【長尾鶏】:10mを超える尾羽
ただし突然変異として、尾羽が換羽しない個体はよく出る
しかし、それを維持していくのは相当余裕のある育種家が生きられる時代でないと無理

p221
【烏骨鶏】
肉から骨まで黒い、メラニン色素が豊富
もともと(江戸時代)は羽毛に覆われた鶏冠が珍重された

p226
【矮鶏チャボ】
○○矮鶏、と様々な品種がある

p234
【軍鶏シャモ】
小軍鶏、中軍鶏、大軍鶏とある
小軍鶏は1.5kg程度

p238
【比内鶏】:「比内鶏」、「地頭鶏」
日本では西欧のような肉の生産性を求めた改良は全くないが、
これらは食用に消費する意識をもってつくられた珍しい集団
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 野鳥

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/124-60ade82e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム