ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)  

教養としての世界宗教事件史
島田 裕巳
【そもそも1冊にまとめられるテーマではないのではないか度】★★☆☆

教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)教養としての世界宗教事件史 (河出ブックス)
(2010/10/09)
島田 裕巳

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「教養として」、いったいどんな事件が取り上げられるのかに興味を持ち、読む。
まあ世界全体からエポックメーキングな「事件」をとりあげるとすれば、
こういうものだろうな、という気はする。

とりあえず、特定宗教の発生や分裂もさることながら、
インドで仏教が消滅する、という、長らく漠然と疑問に感じていたできごとにも焦点があたっており、
面白かった。

他に興味深かった視点。

○一元論と二元論
一神教-多神教という構造はよく見るが、
むしろこの世界がそもそも善によって成立し、その中に一時的な(または方便的な)悪がある(一元論)のか、
または最初から善悪の二元論であり、どう転ぶかわからない(二元論)という構造も重要であること。

○仏教とキリスト教は、聖と俗を明確に区分し、俗から聖に「出家」することに価値を見出している、
という点で共通性があること。

○ダライ・ラマ14世がもし死亡したら、チベット情勢は今よりももっと混乱するだろうなあ、ということ。


○世界宗教はなぜか開祖が著作を残すのではなく、弟子による伝聞録によって布教していること。

○日本とチベットに流入した「密教」は、その段階が異なるゆえに大きく違うこと。

宗教を知ることが世界を理解する一助になるとは思いつつも、
やはり一筋縄ではいかないなあ、と痛感した。


逆に、これはちょっと違うだろうという点。
筆者は
「直立二足歩行、言語、宗教」が人間にしか見られないため、
これらは密接に関係している、
特に直立二足歩行、言語が宗教を生んだ、としている。

宗教がなぜ人類にのみ誕生したのかはわからないが、
とりあえず、
「言語」が人類特有のものではないことは確かであり、この点、違和感を感じた。
(もちろん、どの程度抽象的な「言語」とするかの定義によっては、
人類にのみ発生したということは可能とは思うが、筆者は定義はしていない。)




【目次】
1 人類はいったいいつ宗教をもったのか
2 壁画が物語る宗教の発生
3 謎に満ちた巨大ピラミッドの建設
4 ゾロアスター教が後世に多大な影響を与える
5 一神教が誕生し、偶像崇拝が禁止される
6 老子、釈迦になる
7 結集から、仏教の歩みがはじまる
8 パウロとアウグスティヌスの回心が、キリスト教という宗教を生む
9 三蔵法師、天竺を旅する
10 ムハンマド、メディナに逃れる
11 東西の教会が分裂する
12 十字軍が召集され、「聖戦」をめぐる対立の発端となる
13 モンゴルの世界征服が原理主義を生む
14 インドで仏教が消滅する
15 ルターの異議申し立てが資本主義を生む
16 ヘンリー八世の離婚問題がイギリス国教会を独立させる
17 地動説を主張したガリレオ・ガリレイが異端審問で終身刑を課せられる
18 清教徒、新大陸にエクソダスを果たす
19 聖母マリア、出現
20 神の死を背景に宗教学が誕生する
21 ダライ・ラマ一四世、チベットを脱出しインドに亡命する
22 一〇〇年ぶりに開かれた第二バチカン公会議が修道女を解放する
23 毛沢東語録をふりかざす紅衛兵が孔子を厳しく糾弾する
24 イランのイスラム革命が世界を変える

【メモ】
p17
人類に特有なのが宗教。
地球上の民族・社会で、宗教が全く存在しないという場所は一か所も発見されていない。
一方、動物には宗教は全く見られない。
コンラート・ローレンツ(1903-89)は攻撃・威嚇のためにパターン化された儀式的な行動はとることは示唆しているが、信仰を伴う儀礼を司る動物はいない。

P17
「直立二足歩行、言語、そして宗教。この三つの要素は、他の動物、類人猿にさえ見られない人類だけの特徴である。そうである以上、この三つの要素の発達が密接な関連性をもつことが想像される。」
→言語は他の動物でも見られるのではないか?


p42
キリスト教もイスラム教も一神教であり一神教だけで世界の宗教人口のおよそ半分を占めている。

世界宗教の一つの条件は独自の教えをとく開祖が存在するかどうか。

→※「世界宗教」とは何か、筆者は明確に定義していない。

ゾロアスター(ギリシア語を元にした英語読み)教
:開祖ザラスシュトラ(ペルシア語)、ツアラトゥストラ(ドイツ語)

p49
日本人は一神教:多神教で対比させる傾向が強いが、世界観として考えた場合は、
一元論:二元論の違いの方が大きい意味を持っている。
一元論:全ては神によって作られたのだから、最終的には神の勝利に向かう
二元論:善悪二元論

p53
モーゼの十戒において、神が自分だけを信仰するよう求めたこと(一神教)、偶像崇拝を禁じたことは、
密接に関連しており、セム的一神教においては後世に絶大な影響を及ぼした。

p58
キリスト教:イエス・キリスト、イスラム教:ムハンマドという開祖がおり、民族を超えて広がった点で世界宗教。
ただし、ユダヤ教には「ハラハー」という神が定めた法があり、「トーラー」に詳細に述べられている。
イスラム教もイスラム法としての「シャリーア」がある。これらの宗教は、宗教的な法の世俗に対する規範力が強い。

一方キリスト教は、聖と俗を明確に区分する。かつ、俗なる世界を否定し、「出家」に価値が認められる。
イスラム教・ユダヤ教では、宗教的な指導者は、家庭生活を営む俗人である。

仏教も「出家」に価値をおく点で、キリスト教との共通性がある。


p70
世界の三大宗教:(日本人があげるなら)キリスト教、イスラム教、仏教
・これらの宗教は、すべて開祖が自らの著作を残しておらず、弟子による言行録によって開祖としてあがめられている。
親鸞も、自身の「教行信証」があるが、むしろ弟子の唯円が残した「歎異抄」によって知られる。
道元も、自身の「正法眼蔵」ではなく、「正法眼蔵随聞記」がある。

p73
キリスト教では、旧約・新約聖書におさめられているものの他に、「外典」がある。
セム的一神教では、神の正しい教えである「正統」と、それから逸脱した「異端」との区別が厳然として存在する。

仏教ではそうした区別はなく、一応全て釈迦の教えをといたものとされる。
ただしどれが正しい教えなのかを明確にする作業として、
「教相判釈」がある。インドでは実施されていない。
様々な時代の仏典が同時に渡来した中国で実施された。

中国天台宗を開いた智顗(538-97)=「五時八教」
(1)華厳時
(2)鹿苑(阿含)時
(3)方等時
(4)般若時
(5)法華・涅槃時
という区別を行い、この順に釈迦が説いたとした。
実際はそのようなことは無いが、
最澄や日蓮にはこの考えが引き継がれ、法華が重視されることとなった。

p85
キリスト教:キリストの教えは「福音」と呼ばれ、その「良き知らせ」を周囲に知らしめることが務め。
仏教:日蓮教のように「折伏」という布教手段をとるところもあるが、
   基本は「求法(求道)」。自らが教えを求めることを重視。
円仁:「入唐求法巡礼行記」

p104
東方教会:国ごとに教会が独立
カトリック:世界的に統一した組織:教皇庁:ローマ教皇

p106
395年 ローマ帝国の分裂:西ローマ帝国と東ローマ帝国
東ローマ帝国:国家と教会は一体、皇帝が神の代理人
       神は絶対的な存在であり、人間の世界とは隔絶。
       ゆえに、人間の世界で、聖と俗を区別する意味がない。
西ローマ帝国:国家と教会は別
       神の代理は宗教的な権威である教皇、その組織も世俗から隔絶されている(出家)

p133
般若心経:インドで作られたものの、サンスクリット語の原本はインドには残っておらず、
日本の法隆寺に8世紀後半と考えられる「法隆寺梵本」が残っている。

p144
宗教改革:カトリック→プロテスタント
「出家主義」→「在家主義」

出家主義である以上、世俗に価値がなく、勤勉な生産や資本主義の発達がない
在家主義となって初めて勤勉(世俗)に価値が認められる。
現在でも、プロテスタントが広まった国とカトリックにとどまった国では差がある。
カトリックの国では労働には価値が見いだされず、できるだけ働かない、余暇に生きがいを見出そうとする。

p151
イギリス:
ヘンリー八世のキャサリンとの離婚、アン・ブーリンとの再婚
そもそもキャサリン(兄嫁)との結婚が近親婚にあたるため、特別に教皇から許可を得た
離婚・再婚時には教皇が神聖ローマ帝国の支配下にあったため、許可がもらえなかった
よって、イギリスを帝国として、1545には「国王至上法」が成立する。
現在もエリザベス二世はイギリス連邦の元首であり、イギリス国教会の長である
=ある意味、祭政一致の国

p158
キリスト教では正統と異端の区別が明確
「公会議」の制度によって、ある協議が正しいかどうかを教会組織が決定する


p179
「聖母マリア」
一般的なキリスト教国では「聖母」とは言われず、「処女マリア」という言い方
「聖母」という言葉自体、母なるものを信仰する日本的な宗教意識との妥協、融合の産物

p188
西欧では最初「science of religion」(宗教の科学)という学問が生まれたが、
この言葉は死語となり、「宗教学」に相当する言葉が生まれなかった。
バックボーンであるキリスト教を相対化できなかった。
西欧では「宗教史」である。
あらゆる宗教を相対化して研究対象とする「宗教学」は、実は日本でしか存在しないかもしれない。

p193
密教=
初期密教:雑密:体系化が進んでいない
中期密教:体系化、護摩、大日経や金剛頂経、両界曼荼羅
後期密教:ヒンズー教等の影響、男性的原理と女性的な原理の合一による神秘的な力の獲得、
     歓喜仏がふんだんに登場

日本仏教:初期と中期が伝えられる
チベット仏教:後期が伝えられる
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