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学んでみると生態学はおもしろい (BERET SCIENCE)  

学んでみると生態学はおもしろい
伊勢 武史
【入門書として最適度】★★★☆

学んでみると生態学はおもしろい (BERET SCIENCE)学んでみると生態学はおもしろい (BERET SCIENCE)
(2013/01/17)
伊勢 武史

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よし、学んでみよう。
「生態学」。わかったようでわからない分野である。

様々な切り口があると思うが、本書は個体群生態学/群集生態学というカテゴリを中心に、
生物の行動や個体数の変化をモデル化する方法が、具体的に解説されている。

例としては非常にシンブルでベーシックなものであり、
紹介される数式も、初歩の初歩という感じである。

よって、この数式モデルを使ってすぐに何かが解析できるようになるわけではない。
ただし動物を数学モデルにする考え方、センスというものは十分にわかる。
漠然とした「○○なら増える」、「△△なら減る」、というイメージが、
数式・モデル化によって客観化できるということは、非常に感動的なものである。

きちんとフィールドでデータを取っている人は多いと思う。
ただ、それをどう生かしていくか。
多くの人が、宝の持ち腐れになっているのではないだろうか。

統計的なグラフ処理もありだが、
本書を手掛かりに、モデル化について学べば、
対象種についてものすごく客観的で優れた研究がなせるのではないか。

本書はフィールド研究における、貴重な武器の紹介である。
ぜひ一人でも多くの方に手に取っていただきたい。


【目次】
第1章 生態学への招待
第2章 世界中の生物はどのように生まれた?―生物進化と生態学
第3章 地球の気候と歴史が決定づける生物の分布
第4章 生物の「数」をサイエンスする―個体群生態学
第5章 食う・食われるの関係―群集生態学1
第6章 ライバル関係―群集生態学2
第7章 なぜ世界にはいろいろな生物がいるの?―生物多様性
第8章 動物の不思議な習性をサイエンスする―行動生物学
第9章 微生物が取り持つ地球環境―物質循環
第10章 無理せずエコしよう―生態系サービス

【メモ】
方向性選択directional selection
before(淘汰が起きる前)とafter(淘汰が起きた後)では、特徴が一つの方向にシフトする自然淘汰。
(ex:嘴の大きさの様々な個体がいて、嘴の大きい個体が有利な環境にある場合、全体がより嘴の大きな個体にシフトしていくこと)

安定化選択stabilizing selection
(ex:嘴の大きさの様々な個体がいて、最も適切なサイズの嘴に集約していくこと)

分断選択disruptive selection
(ex:嘴の大きさの様々な個体がいて、大きい実と小さい実しかない環境のとき、嘴の大きいグループと小さいグループに集約されていくこと)

p48
気流は太陽エネルギーの大きい赤道付近からエネルギーの小さい極付近へ流れるが、断面としてみると、
北半球・南半球でそれぞれ3つの気流の渦となっている。
赤道付近:熱せられて上昇→上空で冷却され下降(北緯・南緯30度付近)。
また上昇→下降と繰り返す。
上昇時は水蒸気も持ち上げるので上空に雲が発生し、雨が降りやすい。下降部では雲ができにくく、雨も振りにくい。
よって緯度30度付近に砂漠が多く見られる。


p60個体群生物学
1種類だけの生物に焦点を絞り、モデル化する。

p69
環境容量carrying capacity ある生物が決められた環境の中で最大何頭まで生きられるかという値
この環境容量を数式に取り入れたのがロジスティックな増加logistic growthというモデル

p78
タイムラグ:
特に大型の哺乳類などにある長い妊娠期間は、タイムラグの要因となる。
 環境容量に余裕がある→たくさん妊娠
一斉に出産(個体数は環境容量を超える)→餓死が増えて減少
個体数が減り、再び環境容量に余裕がある→たくさん妊娠

環境改変:
何かの拍子で個体数が激増すると、環境が大幅に変わり、環境容量自体も変化

p116
全く同じニッチを占める2種の生物は共存できない
→競争的排除competitive exclusion

p132競争を回避するため(ニッチをずらすため)、異なる形質を獲得する
→形質置換character displacement

p145
熱帯雨林の生物多様性が高い理由:様々な説がある
・気温が高いので新陳代謝が高い
・気温が一定なので絶滅の危険性が下がる
・生産者である植物の生産量が多い

・面積が広いのでニッチが広い
→地球は球体なので、熱帯は広く、極地は狭くなる
 (平面図では同じ面積に見えるが違う)

P161
ジャレッド・ダイヤモンド(アメリカ)
人類が引き起こしている生物の大絶滅の4つの原因
「悪の四重奏」
・生息地の破壊
・過度の収穫や捕獲
・外来種の影響
・二次的な捕獲(緊密な依存関係にある2種のうち1種が絶滅すれば、もう1種も絶滅)
+遺伝的なかく乱


p167
ケンワード(イギリス)1978
ハトが単独行動:オオタカの狩りの成功率は8割近く
ハトが群行動:2割以下

ラッツ(2012)
ハトの群の中でも羽の色・模様が独特なものが襲われる
=oddity effect(風変わり効果)
よって同質な個体が生き残る
→ハトやイワシなど、群れる個体の外見は均一化する

p171
群の最適サイズのモデル化
キャラコ(アメリカ、1979)
縦軸:時間
横軸:群の大きさ
①個体が見張りに費やす時間=右肩下がりの曲線となる
②群内で餌の奪い合い費やす時間=右肩上がりの曲線となる

これを重ねると、交差する1点がある=最適サイズ

オオタカが多い場所なら
見張りに費やす時間が増えるので、①がより多くなる
=群のサイズが大きくなる

ハトが攻撃的になったら
ケンカに費やす時間が増えるので、②がより多くなる
=群のサイズが小さくなる

p178
※モデル化する際、お金や時間という明解な基準currencyが必要


p182
地域によってさえずりが異なる(方言がある)ウグイス
ヒナを別地域の親に育てる実験=親のさえずりを覚える
よって、ウグイスのさえずりの差は遺伝的なものではなく、
各地域のウグイスの文化として受け継がれたもの

p234
「環境保全はやるだけムダ」=100点がとれなければ0点でよいという考え方
しかし、そもそも環境を相手にした問題解決策に100点はない
40点でもまし、もっと低くても0点よりはまし、何もしないよりまし。

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