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ニホンカモシカのたどった道―野生動物との共生を探る (中公新書)  

ニホンカモシカのたどった道―野生動物との共生を探る
小野 勇一
【反芻類について詳しくわかる度】★★★★

ニホンカモシカのたどった道―野生動物との共生を探る (中公新書)ニホンカモシカのたどった道―野生動物との共生を探る (中公新書)
(2000/06)
小野 勇一

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カモシカ。
山岳にいる賢者といった風体である。
アメゴ釣りで渓流に行く方に聞いたところでは、剣山系ではまあ出会えるようだが、
なかなか四国では出会えないようだ。少なくとも、僕は出会ったことがない。

そのカモシカだが、天然記念物に指定される一方、各地で増加し、林業との軋轢もある。
僕が小さい頃はそういう話がよく流れていたが、最近はあまり耳にしなていない。
僕のニュース感度が悪いのか、
また林業の衰退と自然保護の高まりで、カモシカもそこそこ暮らしやすい時代になったのか。
もしかしたら本州の方とはイメージが違うかもしれない。ご了承いただきたい。

さて、本書はそのカモシカに関する研究書である。
カモシカってどんな動物か、をとくため、そもそも反芻類って何、反芻って何というところから
スタートするのだが、これが面白かった。
ウシがのどかにもくもぐするイメージだけだったのだか、
ここにも進化の妙があったとは。窒素リサイクルなんて考えもしなかった。

また後半の研究では、特に個体数推測手法が興味深い。
区画法は、野鳥でもラインセンサスや定点センサスでなじみがある。
しかし糞粒法である。
個体の一日の排泄する糞塊、その分解速度、発見率から個体数を推測するという手法は、
なるほどと驚いた。
これが野鳥にも適用できるとは思わないが、
個体数の把握も、さまざまな方法があるのだなと勉強になった。

またそうした分布把握から、拡大速度までわかるというのも面白い。
野鳥でも外来種の拡大が問題となるが、こうした拡大速度を求めていくことも良いかもしれない。

研究手法のモデルケースとしても、有益な一冊である。

【目次】
序章
第1章 ニホンカモシカとはどんな動物か
第2章 反芻類としてのカモシカ
第3章 生まれてから死ぬまで
第4章 ニホンカモシカを追う
第5章 「カモシカ問題」とは何か

【メモ】
p18
ウシ科の全ての種類には、枝分かれしない角がある。
この角は頭骨から直接生え、一生生え変わらない。
原型は直線的な1本角、適応放散によって多様化

p40
草食動物の食性
狭食性stenophagousと広食性euryphagous
狭食性:食べる種類が限られている、極端な場合は1種:単食性
広食性:幅広い食物を食う

カモシカ:広食性:潅木食い 季節によっては木の芽や幹の皮など

p44
高槻(1986)
木本類B、グラミノイド(ササ類を含むイネ科の草本類)G、その他O
で三角ダイアグラムを作成し、胃内容をプロット
   B
G  O
カモシカはB-G線上に集中
 
カモシカはジャーマン-ベル説(BJS説)のいわゆるむしり食い者(ブラウザー)


p51
反芻類の唾液
草原では窒素は不足しがちな無機成分、そこで草食動物は取り込んだ窒素をリサイクルして体外に出にくくする
→動物では窒素は尿酸や尿素のかたちで体外へ排出されるが、草食獣では尿の中のその濃度は低く、窒素成分は血液中に再吸収される。反芻類ではこの窒素は口腔内に開口する唾液腺に集められ、摂食や反芻時に多量の唾液として食物に混ぜられる。唾液中の窒素は瘤網胃のなかで微生物に使用され、微生物や生成物に取り入れられ、再び反芻類の体に戻る。

p57
反芻という消化方法である以上、発酵のための時間が必要である。一方、栄養のためにはできるかぎり短い時間で発酵をすます必要がある。体が小さくなればなるほど、この矛盾は大きくなる。
反芻類の体の大きさの最低限界は植物体に含まれる繊維素/蛋白質比によって計算されるが、最低は5kg前後とされている。実際にはマメジカ科(体重2~3kg)がいるが、マメジカは一応反芻するが、魚も食べるといわれている。また、体の小さい反芻類は、後腸発酵が発酵している。

p62
大量に植物に含まり、草食哺乳類に有害な物質:タンニンとリグニン
タンニン:ネズミの実験では4%濃度で成長が止まり、8%で死ぬとの報告もある。
リグニン:セルロースとともに細胞内に大量に詰まっており、木材では20~30%含有。
毒ではないが全く消化できない。また発酵阻害の作用もある。

潅木を食べる反芻類では特に解毒能力が高い。

p72
カモシカの角:縦に切って染色すると、角の年輪(角輪)とがあり、角の内部の成長線(層)と一致。ただし成長線(層)と一致しない偽角輪もある。ただし、慣れれば外部から識別可能。
また雌が妊娠・出産すると貧栄養状態となるため、角輪が狭くなる。これによって出産回数もわかる。

p107
カモシカ:数が増えた場合、分布の拡大を伴っている(密度が一定のため)。
石川県白山では、密度が2.3~3.3匹/平方km、S30~のデータでは、分布拡大の速度は平均0.7km/年。


p115
天然記念物指定時(1955)には3,000頭といわれたが、あまりあてになる数字ではなかったらしい。
それが1980の環境庁全国調査では6~9万頭とされた(調査未実施県もあるので、実際は6~12万頭)。
「増えた」とされたが、そもそものスタートが不明確。

・個体数の推測方法
①区画法(ブロックカウント)
対象とする動物を発見する精度が、労力に対して適切な広さで調査。
カモシカの場合は、見通しが極端に悪くない林では「5ヘクタールで1.5時間」、
良好な見通しなら「10ヘクタールで2時間」としている。
この時間・広さを決定するためには、様々なケースでの試行がある。

②糞粒法
一定時間に排出する糞、野外で発見される糞の数、その分解率を利用して、個体数を推測。
 (発見した糞数F÷発見率)×分解率b÷(1頭あたり1日の糞塊数)
※季節変化もある
シカについても糞粒法が試みられているが、季節的・場所的にはシカの方が変動が大きく、実用になねか不明。

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