ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ウイルスと地球生命 (岩波科学ライブラリー)  

ウイルスと地球生命
山内 一也
【生き物?としてのウイルスに詳しくなる度】★★★☆

ウイルスと地球生命 (岩波科学ライブラリー)ウイルスと地球生命 (岩波科学ライブラリー)
(2012/04/14)
山内 一也

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ウイルスって、どの分類に入れるのか? 悩んでしまった。
とりあえず、感染症に分類しておく。が、これは結果であって、本質ではない。

さて、ここんとこ感染症関係の本をいくつか読んだので、
そもそもウイルスって何だろう、という観点で手を出した。

ウイルスが生命か非生命か、という議論があることは知っていたが、
細菌よりも大きいウイルスがあることは知らなかった。
自分のイメージの古さに残念である。

また新型インフルエンザなど、病気の原因というイメージしか持っていなかったが、
胎児に対して母体が免疫反応を示さないシステムに、内在性レトロウイルスが関与しているなど、
生物としてはウイルスと共存している部分も多いらしい。

ただやはりヒトという生物種の歴史が浅いこと、その一方で開発により他種の動物種のウイルスに晒される機会が極めて多いことから、今後もウイルスはヒトにとって大きな脅威となり続けるのだろう。

麻疹ウイルスなどが動物ウイルスから派生してきたことや、
イギリスのハイイロリス(外来種)によるアカリス(在来種)の駆逐が、
リスポックスウイルスによるものということなど、初めて知る話も多い。収穫のある一冊だと思う。

僕は今日も口唇ヘルペスを発症している。ウイルスが身近な一日である。


【目次】
序章 あなたはウイルスに守られて生まれてきた
1 ウイルスはどのようにして見いだされたか?
2 ウイルスは生きているか?
3 人のウイルスはどこから来たか?
4 生物界を動きまわるウイルス
5 病原体だけではないウイルスの意外な役割
6 病気を治すウイルスの利用
7 広大なウイルスの世界

【メモ】
p2 
why:ヒトの胎児は母親の免疫反応で拒絶されないか
胎盤の中で母親と胎児の血液循環を隔てる合胞体栄養細胞の層が集まってできた膜で、リンパ球の交換が阻止されている

合胞体栄養細胞が妊娠とともに形成されるメカニズムは謎だったが、
2000年、合胞体栄養細胞はヒト内在性レトロウイルスの被膜(エンベロープ)にあるシンシチンと呼ばれるタンパク質の作用で形成されることが試験管内実験で解明された
→妊娠すると、それまで眠っていたヒト内在性レトロウイルスが活性化されて大量に増加し、その際にシンシチンが作られ、膜を形成。
→ヒツジの動物実験でも明らかにされた。


p23
ウイルスが生命か否か
1935年のタバコモザイクウイルスの結晶化→生物といえないという議論
21cになり、マイコプラズマ(最も小型の最近の一種)よりも大きいミミウイルスが発見され、生物とみなすべきという議論も盛んになってきた

p27
ウイルス:核酸(DNAまたはRNA)がカプシドと呼ばれるタンパク質の外殻に包まれたもの。
ウイルスによって、カプシドのまわりを被膜(エンベロープ)が包んでいるものと、ないものがある。
エンベロープあり:麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス
エンベロープなし:ポリオウイルス、ノロウイルス

増殖様式:生物の細胞内でウイルス核酸の複製と、ウイルスタンパク質の合成が行なわれ、それらが集められてウイルス粒子を形成する部品組み立て方式

p34-
ヘルペスウイルス:多くの生物に存在している
全ての脊椎動物
・哺乳類(ヒト、サル、牛、馬、ブタ、犬、猫
・鳥類(ニワトリ、アヒル、七面鳥、オウム)
・爬虫類(トカゲ、コブラ、ウミガメ)
・魚類(サケ、ナマズ、ウナギ)
・両生類(カエル)、
無脊椎動物の軟体動物(カキ)

ヒトは様々なヘルペスウイルスに感染するが、代表的なのは
・単純ヘルペスウイルス
・水痘ウイルス
これらは子どもの頃に感染し、神経細胞に入り込み、増殖せずいわば冬眠状態で潜伏。
・単純ヘルペスウイルス
=風邪や強い紫外線などで眠りから醒め、唇の粘膜の上皮細胞に移動し、増殖して口唇ヘルペス潰瘍となる。
・水痘ウイルス
=免疫力が低下したときに感覚神経に沿って増殖し、帯状疱疹

p38
定住生活とともに、家畜のウイルスが人間に感染するウイルス化
・麻疹ウイルス
牛にだけ致死的感染を起こす牛痘ウイルスにヒトが感染し、それがヒトの間で広がる間に人ウイルスとなったものと考えられている。
8000年前程度に牛痘ウイルスから発生したと考えられていたが、
2010年、東北大学の押谷仁氏のグループは、分子進化の速度から、
11世紀から12世紀の間に発生したと推測している。

おたふく風邪の原因のムンプスウイルス:
ニワトリに致死的感染症を起こすニューカッスル病ウイルス由来の可能性が提唱されている。

p40
動物ウイルスが人ウイルスに進化する段階
1:なし
2:動物からのみ感染
3:動物から人←→感染(2、3回)
4:動物から人←→感染(多数回)
5:人←→人感染

第5段階の最も代表的なもの:HIV
2つのタイプ(HIV-1とHIV-2)があり、全世界にはHIV-1が広がった
HIV-2は主に西アフリカ内
HIV-1は20世紀初めに、西アフリカで一人の人がチンパンジーから感染し、広がった
HIV-2はアフリカ産サルであるスーティマンガベイのウイルスに、20世紀半ばに感染した結果

p58
寄生バチとウイルスの共生
寄生バチにはポリドナウイルスと呼ばれるDNAウイルスが存在
(約7,400万年前にハチの体内に組み込まれたものと推定)
ハチの卵巣の中で増殖したウイルスは、産卵管を通って卵と共に宿主に産みつけられる
このウイルスのDNAには免疫機能を抑制するタンパク質の情報が含まれている
おそらくこのタンパク質が血球の働きを麻痺させ、卵が孵化するのを助けるとともに、
蝶や蛾に変態するのをやめてしまう

p59
東京大学の久保健雄氏のグループ
ミツバチ:働き蜂のうち、攻撃グループに加わるグループの脳には、
特定のRNA配列:ピコルナウイルス科のRNAウイルスの配列:カクゴウイルス
カクゴウイルスがあることで、針を刺して自らが死ぬ攻撃グループに属している

p60-61
20世紀初めに、北米→英国にハイイロリス導入
→在来のアカリスが激減
ハイイロリスの方が活動的なためと考えられていたが、次の3つの理由から、
ハイイロリスに寄生するリスポックスウイルスに感染したためと考えられている
・ハイイロリスが輸入されるまで見られなかった病気で多数死亡している
・生息数が減少している地域のアカリスは、リスポックスウイルスの抗体を持つ個体が多い
・アカリスはリスポックスウイルスで多数死亡するが、ハイイロリスが死亡するのは稀
現在イギリスで残っているアカリスは14万頭以下、その85%はスコットランドにいる
ハイイロリスは250万頭に増加
外来種の導入による減少事例のうち、ウイルスによる例

p64
臓器の異種間移植→豚内在性レトロウイルスは豚の遺伝子のひとつとなっているため、
排除できない
→欧米や日本では、異種間移植の臨床試験の際に豚内在性レトロウイルスの感染リスクを抑えるためのナショナル・ガイドラインを作成している

p84-85
細菌を食べるウイルス=ファージ=特定の細菌にだけ感染して増殖し、その細菌を溶かす
2009年イギリス、抗生物質耐性の緑膿菌による外耳炎・手術の後遺症による耳炎などに対し、
緑膿菌ファージを投与→大部分の患者で症状の改善

食中毒の予防:
2006年:イギリス、食品添加物としてファージを認可
リステリア菌に対する6種類のファージを含むもの
この製品を開発したベンチャー企業は、O157やサルモネラ菌に対するファージ添加物の開発を行なっている
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