ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

驚愕するアンコール・ワットの豊かさ。「NHKスペシャル アジア巨大遺跡 兵馬俑・バガン・縄文・アンコール」  

NHKスペシャル アジア巨大遺跡 兵馬俑・バガン・縄文・アンコール
NHKスペシャル「アジア巨大遺跡」取材班



NHKスペシャル アジア巨大遺跡を見た。


巨大遺跡というとピラミッド、万里の長城、仁徳天皇陵(という言い方をするのは古い世代の証拠か)というイメージがあるが、
この番組では中国の始皇帝陵、ミャンマーの統一王朝・バガンで建立された多数の仏塔、
日本の三内丸山遺跡、カンボジアのアンコール・ワットと、ちょっと変わったセレクションである。

だが、なるほど始皇帝陵の真の大きさ、計画的に構築された往時のアンコール・ワットなどを
再現CGで見ると、その壮大さに圧倒された。
本書はそれらを纏めた一冊。NHKスペシャルは、こうして整理してくれるので、有り難い。

特にTVでは短時間しか写されない再現CGをゆっくり見られるのが、有り難い。

例えば兵馬俑がある兵馬俑抗。始皇帝陵の中にあるイメージだっが、始皇帝陵から1.5km東に位置する場所にある。
また水禽抗、動物抗もそれぞれ狭義の始皇帝陵の外に位置しているのだが、本書だとじっくり確認できる。

またアンコール・ワットも、往時は人口100万人の大都市だった。
現在の密林がない状況を再現CGとしてるのだが、これまもたゆっくり見る価値がある。

ただ残念ながら、本書では番組+αの部分が少なく、その点やや物足りない。
テーマとしては面白いのだが、ちょっと書籍化にあたって妥協というか、流れに任せたかなという感じである。

なお振り返ってみると、本ブログでも結構とりあげている。
番組+αの部分はそれぞれだが、
いずれもテーマとしては非常に興味深いものばかりであった。

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category: 歴史

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知られざる日本の優れた国際貢献と、それを成し遂げた人々。「中米の知られざる風土病「シャーガス病」克服への道」  

中米の知られざる風土病「シャーガス病」克服への道 (地球選書)
橋本 謙



シャーガス病。
聞きなれない病気だが、中南米では極めて深刻な人獣共通感染症である。
媒介するのはカメムシの仲間であるサシガメ。

家の土壁のひび割れや屋根の茅葺材に潜み、夜間に人を襲い、吸血する。
その後に糞をするのだが、これに原虫トリパノソーマ・クルージTrypanosoma cruziが含まれている。
痒みに人が搔くと、その原虫が傷口から侵入し、感染してしまう。

感染した直後の急性期(1週間~数ヵ月間)には高熱等があるものの、無症状の人も多という。
この感染症の問題はむしろ10 年~数十年後で、次第に疲労感や胸の苦しみを訴え、心筋炎等で急死するという。

日本でも献血時に中南米生まれ・育ちは申告するよう指示があるが、これによってスクリーニングにかけている。
(なお献血の場合、血液は様々な工程を経て管理されることから、輸血による感染は日本では無い。
また全世界でも、感染例はこれまで全てで数十人程度のようである。)

シャーガス病を媒介するサシガメは大きく2種あり、外来種のR.p.種と在来種のT.d.種がある。
このうち外来種のR.p.種は人家でのみ繁殖し、殺虫剤に弱い。
一方、在来種のT.d.種は野外に生息する。
こうした2種が混在し、また十分な衛生環境にあるとは言えない中南米の農村地帯では、
サシガメを根絶するのは極めて困難だ。

だがそれに対して、PAHO(米州保健機構)等は「2010年までに中米におけるシャーガス病の感染を中断する」という目標を掲げ、その対策を1997年に開始。JICもはグアテマラ、ホンジュラス、エル・サルバドル、パナマで広域的に技術協力を展開している。

その結果、JICAによる取り組みは調査・駆虫・啓発それぞれの事業面で高い成果を挙げているが、
その道のりは平坦なものではなく、一人一人の協力員の努力、創意工夫の賜物である。

本書は、その取組みの歴史を一冊にまとめたもの。
その特色は、シャーガス病根絶のため取組みという面もさることながら、
JICAがどのような姿勢・体制で中南米諸国におけるプロジェクトに取り組みんでいたかが詳細に語られている点だ。

ともすれば、シャーガス病根絶という大目的のみに注目し、
圧倒的な人材・経済力を投入し、短期集中的な行えばよいと考えがちだ。

だが日常的な生活の中にある感染症だけに、
中南米諸国自身、また個々の住民自身の意識改革が不可欠である。
でなければ、短期間での感染中断はあっても、継続的かつ拡大な予防は不可能だろう。

まさにJICAがこうした姿勢にたち、中南米諸国自身の力で対策ができるように、
現地のシステムと人を育てていることが、本書で明確となっている。

派遣される現地の協力隊員は若く、当初は何をどうすれば良いのかも分からない。
だがその中で、日本人ならではの発想と取組みにより、少しずつ改善させていく。

日本に対する各国の評価は高いが、その評価は経済力や高性能な車や家電に対するものと思いがちだ。
だが実際には、こうした地道な協力が行える点にあるだろう。

日本から遥か彼方の国とはいえ、シャーガス病という深刻な感染症を放置することはできない。
また、JICAをはじめとする様々な国際協力がも日々続いている。

日本で生活していると全く目に入らないテーマだが、多くの人が知っておくべき話だろう。

プロローグ 一世紀前に発見されたシャーガス病
第1章 シャーガス病は「貧困の病」
第2章 プロジェクト前史:媒介虫の棲みかをつきとめよ
第3章 サシガメを退治せよ:発展期2000~2007年
第4章 低下した感染リスクを維持する仕組みづくり:自立期2008~2011年
第5章 サシガメ対策の成果
第6章 人がつながり、人が育つ
第7章 感染中断の国際認定と今後の展望
エピローグ プロジェクトで育った人たちのそれから
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category: 感染症

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人類は、もう引き返せない。「捕食者なき世界」  

捕食者なき世界
ウィリアム ソウルゼンバーグ



このご時世、生態系ピラミッドの図は、誰もが見た事があるだろう。

だが、あの図が示す意味をどう読むかは、なかなか難しいところだ。
何となく、植物などの一次生産者、それを喰う草食動物、さらに肉食動物と、
下位の生物の種数・個体数が、上位の生物の種数・個体数を決定していくと思いがちである(僕はそうだった)。

この場合、最上位の捕食者に積極的な生態系上の意味はなく、
いわば下位の生物群の多様性を象徴するシンボルにすぎなくなる。
「オオタカがいれば豊かな森」という程度のシンボルだ。
(だから、オオタカが確認されるケースが増せば、オオタカのシンボル性が低下し、積極的に守る必要は無いという論に陥る。)

だが、本書はその地域の生態系の最上位に位置する捕食者、すなわち「頂点捕食者(トップ・プレデター)」の存在が、
逆に下位の生物種の種数・個体数を決定づける要因となっているという認識を示す。

例えばロバート・ペインによるマッカウ湾での比較研究。
その磯での「頂点捕食者」(トップ・プレデター)は貝を捕食するヒトデだが、これを継続的に除去するという実験を行った結果、
ヒトデがいなくなった場所ではイガイが異常に増殖し、逆に生態系の多様性が失われた。

また、ウニを捕食するラッコがいなくなった場所では、ウニが増殖し、ジャイアント・ケルプの食害が増加。
その結果、当該海域の生物種が激減した。

こうした事例をいくつも重ねていくことで、本書は「頂点捕食者(トップ・プレデター)」が生態系ピラミッドの「結果」ではなく、
「要因」、それも決定的に重要な「要因」であることを証明していく。

生物多様性の重要性が課題となって久しいが、
本書が示す「頂点捕食者(トップ・プレデター)」は単なる生態系のシンボルではないという認識は、もっと普遍的な知識としていく必要があるだろう。

また、過去に比して荒れた環境であっても、その時代に育った人にとってはそれが基準となるという「シフティング・ベースライン・シンドローム(基準推移症候群)」。
環境保護教育が重要である現代、 学校教育で必ず教えるべき知識ではないだろうか。

例えば香川県では、僕が野鳥を見だした1990年代前半、ハッカチョウは丸亀市の一か所で繁殖しているのが「珍しい」事例であり、ソウシチョウはまだレオマワールドから逸出していなかった(これは伝聞ではなく、2004年9月の台風16号で当時のレオマワールドの野鳥展示施設が破損して大量に飼育個体が逃げた際、ソウシチョウ約100羽も逃げたことを確認している)。
だが今、香川県ではハッカチョウは各地で繁殖し、ソウシチョウも高松市南部から琴平山まで分布を拡大している。
そして現在の野鳥屋は、それが「普通」の状態と認識しているのだ。
こうした中で、外来種がいない環境の重要性を伝えるのは、非常に難しい。

なお、本書ではイエローストーンへのオオカミ再導入の成果が、かなり多くの紙面を割いて紹介されている。
これを踏まえてだろうが、日本へも増加したシカ対策として、オオカミ再導入を図っている団体がある。

僕は反対である。

第一に、日本で絶滅したとされるニホンオオカミと、大陸産オオカミの関係が不明瞭なこと。
再導入推進派は、両種は遺伝的に近いとか亜種関係とか言うが、
そもそもニホンオオカミに関する研究自体が全くといって良いほどなされておらず、そのような判定すらできない。
それでも、一応過去の研究ではニホンオオカミと大陸産オオカミは別種というコンセンサスに至っているが、
再導入推進派の中には、
「研究が全くなされていない」から当時のコンセンサスは信用できない、だから「同種の可能性が高い」という飛躍的な論法も見受けられる。
再導入ありきではなく、まずはニホンオオカミという種をきちんと研究することが重要だろう。
(実はニホンオオカミと「ヤマイヌ」の二種がいた、という説すらある。)

もう一点は、本ブログでは何度も繰り返しているが、
「ニホンオオカミが絶滅した」というのは、ニホンオオカミを「認識した記録」が途絶えたということに過ぎないこと。
上記のニホンオオカミの研究と重複するが、実はニホンオオカミは大陸産オオカミとは、全く異なる印象を受ける動物のようだ。
そのため、ニホンオオカミが身近だった世代が少なくなれば、急速に一般人がニホンオオカミを認識することは困難になる。
その結果目撃情報が途絶え、それが絶滅したという根拠となっている。
別に国が網羅的に調査した結果ではないのだ。

▼国立科学博物館に展示されているニホンオオカミの標本。剥製の出来が悪いとはいえ、いわゆるオオカミとは程遠い。
なお、前足前方に黒斑がある等、ニホンオオカミの特徴があるが、普通の人は知るはずもない。
ニホンオオカミ

そしてここが問題なのだが、そのような状況にありながら、
今も「イヌではない何か」に遭遇したという情報は途絶えることがない。
(最も客観性が高い記録として、「ニホンオオカミは生きている」(レビューはこちら) がある。)

一度大陸産オオカミを導入すれば、こうした「ニホンオオカミが生き残っている可能性」を人為的に消滅させることになる。
イエローストーンのような地域ならともかく、日本のように人家が散在・隣接する森林において、
群れで行動する大形肉食獣を導入したらどうなるか。
日本各地のアライグマ、ヌートリア、沖縄のマングースなどの例を見れば、安易な外来種の導入が、いかに不可逆的な影響を及ぼすかは明らかである。

「捕食者なき世界」の恐ろしさは本書で明確だが、
かといって、世界各地で、安易に頂点捕食者を再導入できるはずもない。
だから「人類はもう引き返せない」とタイトルにつけた次第である。

【目次】
ハイイログマとの邂逅
ヒトデの腕
捕食と進化
ラッコが守る森
恐るべきハンター
生態系のメルトダウン
バンビの復讐
小さなモンスターたち
恐怖によるコントロール
ピューマが守る谷
アメリカ再野生化プロジェクト
孤独な捕食者
人は再び自然を愛せるか


また、このニホンオオカミを今も探索している人もいる。
心から、この方が何かを見つけることを期待している。
ニホンオオカミを探す会の井戸端会議

▼著者による別の生態系ドキュメント。レビューはこちら





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category: 動物

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不思議な植物に出会いたい。「森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界」  

森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界
塚谷 裕一



腐生植物、といっても正直、何のことか分からなかった。

植物といえば、葉緑素を持ち、光合成を行う生きもの。
だが中には、葉緑素を失い、他者から栄養を奪うことで生育する植物がある。

「葉緑素が無い」というと、キノコ等の菌類かなと思うが、菌類ではない。
歴とした植物なのだ。そして、栄養源を奪う相手が、菌類なのである。

そうした独特の生き様を持つ植物を、総じて「腐生植物」と言う。
特定の科に限定するわけではなく(ある科全てが腐生植物というのは有る)、様々な科に、こうした種が存在している。
被子植物だけでも520種以上(10科以上)というから、知らないだけでかなり普遍的な生き方なのだろう。
一般的な植物と菌類の間というか、本当に生物というのは、あの手この手を使ってニッチを見いだすものである。

さて、この腐生植物、かなり発見することが難しいという。
というのも、葉緑素を持たず、光合成を行う必要がないため、葉を持つ必要が無い。
そのため多くの場合、花をつけ、種子を散布するまでの時期のみ、地上部で見いだされるのだ。
そしてその開花期間は、かなり短い。

また、色が独特。
有名なギンリョウソウ、幽霊茸という別名があるが、葉緑素を持たず真白である。
かと思えば赤や黄色などがあって、ちょっと「植物」という眼で見ると見過ごしそうである。

形も独特。タヌキノショクダイなんて、何がどうなっているのか分からない。
森で見たら、たぶんキノコと思って見過ごしそうだ。
(タヌキノショクダイは、徳島県那賀町で記録が有る。那賀町観光協会がflickerに画像をアップしているので、
ご覧いただきたい。)

さらに、大まかに言うと腐葉土が多く、菌類が豊かな土地にのみ発生するため、
その出現場所が限定される。しかも小さかったり、同じ場所でも連続しての発生は難しいという。

フィールドに多く出る者でも、恐らく菌類や、ごく小さな土壌生物を追っているような人くらいしか、
遭遇する機会すらないのではないだろうか。

本書はそうした腐生植物を専門とする著者が、腐生植物の生活史、
また日本各地・世界各国における腐生植物の発見状況等、フィールド体験を、多くのカラー写真と共に紹介するもの。

上記のとおり、通常の生活の中で腐生植物を見つけることは極めて難しいだろうから、
本書でその多様な姿を見られるだけでも、なかなか得難い経験である。

腐生植物のひとつであるツチアケビは、種子散布は鳥類によるという。
その真っ赤で多肉質の果実が、ヒヨドリやシロハラに好まれるようだ。
留鳥のヒヨドリ、冬鳥のシロハラは野鳥の中では個体数も多い普通種だし、
そのためかツチアケビは、腐生植物としては割とよく見られる種という。いつか巡り合いたいものだ。

腐生植物は、まだまだ新種が見出される可能性が高く、日本国内においても、その産地に空白地帯が多いようだ。
知らなければ、探しようもない。
本書により腐生植物の存在を知れば、これからの森歩きの愉しみが一つ増えるだろう。
そしていつか出会い、その幸せを噛みしめたいものである。

【目次】
1 腐生植物のことはじめ
2 腐生植物のくらし
3 腐生植物は新種の宝庫
4 腐生植物の探しかた
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category: 植物

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「このままでは正しく行動できない」と知ることが、第一歩だ。「生き残る判断 生き残れない行動」  

生き残る判断 生き残れない行動
アマンダ・リプリー



冷戦というグローバルかつ分かりやすい対立構造の時代は、もう一昔前となった。
だが現在が平和で安全な時代かといえば、
多発するテロ、天災、宗教対立や移民問題等、日々世界のどこかで火の手が上がっている。

過去と違うのは、一般人が、そうした災害・紛争に巻き込まれる可能性が高まっていること。
日本の一地方だから大丈夫という話はなく、いつ、どこで何が起こるか分からない。

そのような状況において、一般人にも「生き残る判断」が求められるが、
果たして人は災害に直面した時、どのように考え、行動するのか。

本書は1977年のアメリカ・シンシナティ市郊外におけるビバリーヒルズ・サパークラブの火災、
1982年のエア・フロリダ90便墜落事故(ポトマック川旅客機墜落事故)、
2001年の9.11同時多発テロ、2004年のスマトラ沖地震、2005年のハリケーン・カトリーナなど、
それぞれの災害中の特徴的な人物にスポットをあて、災害の中で人がどう判断し行動するかを探っていくものである。

本書を読めばただちに「生き残る判断」ができるようになるかといえば、もちろん無理だろう。

だが、災害の中で人は-自分も、他人も-正しい判断をするのが困難であるという認識をスタート地点にできれば、
無知ゆえ「生き残れない行動」を回避できる可能性は高まるだろう。

また、「自分が生き残るかどうか」ではなく、
「誰かを助けられるかどうか」というシチュエーションに直面する可能性も高まっている。
そんな時、いかに行動できるかは、それこそ平時の訓練や意識に大きく左右されるだろう。

本書は東日本大震災以前に執筆されているが、本書が提示した様々な課題は、
振り返ってみれば東日本大震災以降の様々な日本での災害の中にも見いだされる。

過去の文献と考えるのではなく、本書こそ、「歴史から学ぶ」教材として最適の一冊だろう。

なお、9.11の際、モルガン・スタンレー証券の社員が特異的に多数生存したことから、
同社は事前に知っていたとか、同社の自作自演である等の陰謀説がある。
だが本書を読めば、同社の避難の成功は、
・モルガン・スタンレー・ディーン・ウイッター社は1993年の世界貿易センター爆破事件を経験していたこと
・同社の警備主任である元陸軍のリック・レスコラは、当時、知人とビル爆破テロ対策を進言したものの採用されず、
 結局は想定どおりの爆破事件が発生し、的確な対処ができなかった経験があること
・これらから、同社は新しいワールドトレードセンターに入居後、リック・レスコラの主導のもと、
 徹底して実効的な避難訓練を重ねてきたこと
・9.11当日、同氏が主体となって避難を完了させたこと
という、リスク管理、特に避難担当者による積極的かつ日常的な訓練が、避難の成功に結び付いたことが分かる。

これは、東日本大震災は本書刊行後に発生したが、いわゆる「釜石の奇跡」が奇跡ではなく、日常的な訓練や防災教育の成果であったことに通じるものだ。

リック・レスコラは9.11の際、更に逃げ遅れた人を探すためか再びビル内に戻り、そのまま行方不明となっている。

9.11陰謀論を叫ぶのは自由だが、
リック・レスコラが文字通り命を架けて示した、彼の信条である8つのP、
Proper Prior Planning and Preparation Prevents Piss-Poor Performance
(適切な事前の計画と準備は、最悪の行動を防ぐ)
を伝える方が、遥かに重要だろう。

【目次】
「人生は融けた金属のごとくなって」
第1部 否認
 立ち遅れ―北タワーでのぐずついた行動
 リスク―ニューオーリンズにおける賭け
第2部 思考
 恐怖―人質の体と心
 非常時の回復力―エルサレムで冷静さを保つ
 集団思考―ビバリーヒルズ・サパークラブ火災でのそれぞれの役割
第3部 決定的瞬間
 パニック―聖地で殺到した群集
 麻痺―フランス語の授業で死んだふりをする
 英雄的行為―ポトマック川での自殺未遂
新たな直感を生みだす
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category: 災害

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セダカコブヤハズカミキリ、アサギマダラ  

セダカコブヤハズカミキリ、アサギマダラ

9月も下旬に入りましたが、お休みを取得。
リハビリ(左足親指骨折)を兼ねて、大川山(1,043m)へ行きました。狙いは鳥と昆虫です。

さすが平日、誰もいない-と思っていたら、岡山ナンバーの車が1台有りました。
山頂では人影は見かけませんでしたが、ロッジに泊まっていたのでしょうか?

それにしても昨日夜の雨、そして台風の影響も有るのでしょうが、
大川山山頂は雲の中。頻繁にガスに包まれます。
そんな中、北川斜面のイヌシデ林へ。
IMG_0739
木道もしっとり濡れ、不用意に歩くと滑りそうです。リハビリどころか悪化しそう。

足元からなんか出た、と思ったら、たぶんヤマアカガエル。
IMG_0745
10cm程度の、かなり大きな個体です。

山頂ではカラ類とメジロの声。メジロの鳴き交わし方から、たぶん幼鳥の群れでしょう。
また、遠くからアオゲラの声が聴こえますが、姿を見ることはありませんでした。

渡り途中の野鳥がなんかいないかな、と思っていましたが、残念ながら野鳥を見る天候ではありませんでした。

一方、同じく渡り途中のアサギマダラ。2個体いましたが、どちらもマーキングは無し。
IMG_0753

さて、今回の狙っていた昆虫は、セダカコブヤハズカミキリ。
後翅が退化して飛ぶことができず、各地で亜種に分化しているカミキリです。
また、標高が高いブナ林など、豊かな自然林に棲み、しかも秋以降の枯枝等にいるという、
なかなか見つけにくい種。

このカミキリ、20年前くらいに1度だけ大川山で見た事がありました。
ただ、その頃昆虫はアウト・オブ・眼中だったため、「ふーん」程度。
最近昆虫を勉強するにつれ、もう一度会いたいと思っていた次第です。

そして今日。
まだ9月ですが、しっかり湿り、枯れ葉も多い。
よしよし、今日も頑張って探そう、と思って叩き網を準備して、
ふと横の樹を見ると-、
IMG_07312
いた。えええ。

確かに後翅は、開く気配もありません。
IMG_0737
思いがけない出会いに驚き、喜び。
野鳥は空振りでしたが、来た甲斐がありました。

ただ、その後1時間程度探しましたが、追加の個体発見は無し。
本当に幸運な出会いでした。

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category: 雑記:日々のこと

thread: 日々のつれづれ - janre: 日記

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来年のツバメが待ち遠しい。「ツバメの謎: ツバメの繁殖行動は進化する!?」  

ツバメの謎: ツバメの繁殖行動は進化する!?
北村 亘




観察会で、「野鳥なんて知らない」という方に、「では知っている鳥は?」と尋ねてみる。
だいたい「スズメ、カラス、ハト」で終わるが、
ツバメは? 白いサギは? と尋ねると、皆さん見た事がある、と答える。
それほどツバメは、意識されていない身近な野鳥なのだ。
(最近は、「駐車場を歩いている白黒の鳥は?」(=ハクセキレイ)もヒット率が高い。)

だが昔に比べると、建築物の構造的に、ツバメが営巣可能な場所は減少している。
一方昔ながらの商店街は、巣は架けられるものの、人通りが少なくツバメ好みではなくなりつつある。
ツバメはスズメと並び、人と共に暮らしてきた鳥として、
身近な鳥の代表格だが、むしろ数十年後には「懐かしい鳥」になるかもしれない。

さて、本書はそのツバメについて、丁寧な観察・研究を続けてきた筆者による謎解き本。
特定種の研究者が、概論から自身の専門分野まで解説する、親しみやすく奥が深い「◯◯の謎」シリーズである。
(これまでレビューした「◯◯の謎」は、記事末尾に掲載している。)
本書でも、研究手法から始まるが、随所に筆者ならではの知見が盛り込まれていて、野鳥好きでも楽しめる。

というか、野鳥好きであるほど、いかに「ツバメ」を見ていなかったかと気づかされるポイントが満載である。

例えば産卵・抱卵のタイミング。巣を造り、枯草を敷き詰めるが、
最後に他の鳥の羽根を拾ってきて敷き詰める(いわゆる産座だ)。
多くの巣を観察してきた筆者によると、この羽根を敷き詰めるタイミングは殆どの巣で、
卵を産む2日前という(もちろん、たまに3日前や1日前もある)。
この時期を知れば、産卵そのものを確認できずとも産卵時期が確定でき、
以降の雛の成長についても、ある程度目星がつくわれだ。

また、雛の翼長が80mmを超えれば飛翔可能で巣立ちが近いこと、
それはおよそ孵化後18日前後という。

こうした知見は、やはり数を見ないとわからない。

またもう一点、おそらく一般向けには本書で初めて指摘されたのが、
ツバメの性選択。
「ツバメは尾羽の長い♂を好む」と、様々な本に書いており、僕もそう説明してきた。

だが著者によると、日本のツバメはそうではない、という。
ヨーロッパのツバメの亜種では確かに尾羽の長さが性選択のポイントだが、
アメリカのツバメの亜種では腹の赤さがポイントになる。

そして多くのツバメのつがいを調査した結果、
日本のツバメは、喉の赤い部分の大きさ・濃さが性選択のポイントになっているという。

このように、広域に分布する種が地域によって性選択の指標が異なるというのはたまにあり、
例えばモンシロチョウもそうである(「モンシロチョウ―キャベツ畑の動物行動学 (中公新書)」(レビューはこちら)に詳しい。)。

野鳥ではそのような事例を寡聞にして思いつかないが、
なるほどツバメのような広域分布種であれば、頷ける話だ。
おそらくそれが亜種分化のポイントにもなっているのだろう。

本書ではその他、つがい外交尾、ツバメのペアの存続状況、
また自身でツバメを調べる際の手ほどきなど、興味深く親しみやすいテーマが多く含まれている。

野鳥好きだけが楽しむのは勿体ない一冊である。特に学校などに常備することを望む。

なお、p30に、NPO法人バードリサーチが調査した、ツバメの初認日報告を元にした「ツバメ前線マッピングデータ」が掲載されている。
この中で、いくつかの県が2/29以前という特異な時期を報告されているが、
おそらくこれは当該地域より北から南下してきた越冬ツバメである。

香川県も2/29以前の報告がなされているが、香川県ではおおむね11月-12月までツバメは消え、
1月から2月頃まで池で越冬ツバメが観察される。
だが、繁殖場所でツバメが観察されるのは通常3月上・中旬、当地で春一番が吹いた後である。

【目次】
1章 ツバメはどんな鳥?
2章 ツバメの1年
3章 意外と知らない、ツバメの謎
4章 調べてみよう

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category: 野鳥

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昆虫採集という趣味を育て、日本の昆虫学を支え続けた男。「日本一の昆虫屋 志賀昆虫普及社と歩んだ百一歳」  

日本一の昆虫屋 志賀昆虫普及社と歩んだ百一歳 (文春文庫PLUS)
志賀 卯助



子どもの頃、「昆虫採集キット」があった。
今では考えられないが、メス、注射器、プラスチックルーペ、そして何かよく分からない青い液と赤い液。
これ一つで素晴らしい昆虫標本ができるような気がしたが、やはり現実はそう甘くはない。
今と違ってネットも情報もなく、周囲に詳しい人もいないので、虫取り一つ満足にできなかった。

その反動か、40歳を何年か越えた現在になって、昆虫採集を始めている。
家のすぐ裏の桜並木でも、見るごとに新しい種との出会いがある。
野鳥は長年やってきたが、自分が昆虫を全く見ていなかったことを痛感する次第だ。
また、昆虫を求めると、通常、野鳥を狙う時と違う場所・シーズンのフィールドに行くことになる。
そうすると新しい野鳥との出会いもあって、久しぶりにフィールドを楽しんでいる。

さて、そうして昆虫を探し歩いていると、よく不審がられる(当然だ)。
だが、「昆虫を探しています」と言うと、皆さん納得していただける。
それは「昆虫採集」という趣味があると普及しているためだが、
日本において、「昆虫採集」という趣味を普遍化したのは、やはり本書で語られる「志賀昆虫普及社」の存在があったからこそだ。

同社の設立者、志賀卯助氏は明治36年生まれ。
新潟県の寒村で生まれ、満足に学校へも通えず、地元では「学校へ通わせてやる」と言われながら、日々奉公暮らし。
何とか東京へ出て来ても、将来が全く見えない生活が続く。
そんな中、大正の中頃、17歳で昆虫標本店で働きだし、それを機に昆虫の世界へ入る。
願いは珍しい昆虫を採集することでも金稼ぎでもなく、「昆虫採集」という趣味を日本に定着させること。
その想いが結実したのが、「志賀昆虫普及社」 である。
戦前、戦中、戦後と、昆虫採集という楽しみの普及に尽力してきた志賀卯助氏が、
93歳にて記した自伝が、本書のハードカバー版、「日本一の昆虫屋―わたしの九十三年」である。
そして同書出版後の状況を付し、御年101歳の時に文庫化されたのが、本書だ。

「昆虫採集」というとマイナーな趣味だし、昨今の風潮からは学校でもあまり推奨されない。
だが、植物・昆虫という膨大な種数がある生物群は、やはり採集して識別しなければ分からない場合が多い。
そして採集した昆虫を調べ、さらに適切な「標本」として記録化するという行為は、
むしろ多様な生物の存在を実感するとともに、極めてベーシックな自然観察の基礎力を身につけさせると考える。

特に日本のように、春夏秋冬があり、山岳から海辺まで多様な自然が凝縮されている地では、
昆虫を通して自然を実感することもかなり有益だろう。

だが、そうした知識・経験も、「昆虫採集」という趣味がスタートとしてあればこそ、だ。
それが、志賀卯助氏という一個人に負うところが大きいという事実には、驚くばかりである。

昆虫というキーワード、昆虫採集という趣味に、生理的に嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。

だがそうした視点を一切捨てても、
本書は、明治から平成という日本の激変期において、
一本の道を切り開いてきた隠れた偉人の物語として、ぜひお勧めしたい。
本書標題の「日本一」とは、順位だけでなく、「日本唯一の」という意味でもあるからだ。

さて現在、時折り息子が山に同行してくれる。
息子は蝶を捕獲するのが楽しいようで(キャッチ&リリース)、
種名の同定や標本化までにはさほど興味が無いようだ。
たぶん数年後には、一緒に行かなくなるだろう。

だが数十年後、
僕の残した標本を見て、気分転換に山に行ってくれれば、嬉しい。

そしてその時、志賀昆虫普及社の昆虫針が入手できることを、心から願う。
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category: ノンフィクション

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生物としてのクジラ研究の現状を客観的に伝える。「クジラの死体はかく語る」  

クジラの死体はかく語る
荻野 みちる



クジラの話となると、様々な主張が飛び交う。
ただ、その主張同士が噛み合い、議論として成立しているかというと、疑問である。
本書のAmazonレビューも、捕鯨推進か否かが不明だとか、
環境汚染に対する突っ込み不足とか、著者が何を言いたいのか分からないとか、否定的なものばかりである。
だが、何か腑に落ちない。

クジラについては、主張する際に様々な立脚点があると思う。
(以下は思いついただけであり、網羅でもない。それこそ欠けている視点もあるだろう。)

・伝統的な消費文化の範囲での捕鯨を認めるか否か。
・今後の商業的な捕鯨を認めるか否か。
・日本の調査捕鯨をどう評価するか。
・クジラが増加しているか否か(どの種が、という問題もある)。
・過去のアメリカ等の鯨油のための大規模捕鯨をどう総括するか。
・イルカやクジラは「賢い」から別格だという主張を認めるか。
・レジャー・ハンティングを認める姿勢との差はどう考えるのか。
・クジラを殺傷して研究する必要性をどこまで認めるか。

こうしたベーシックな立脚点を整理し、自身がどのような立場か、また相手がどのような立場かを整理すらしなければ、
それは議論ではなく、単なるヒステリックな叫びに過ぎないだろう。

さて、本書は捕鯨論ではなく、一民間研究者による、日本の鯨類研究の現状と問題点を指摘する本である。
(それなのに、「捕鯨を認めるか否か」という点からのみ読めば、当然「何が主張したいのか分からない」となるだろう。
それは誤読というか、言いがかりのようなものだ。)

著者は、鯨に獲りつかれ、一主婦の立場ながら国立科学博物館に出入りするようになり、
国内に漂着した鯨類の処理、解剖(及び解剖学的知見の研究)、標本化を行うようになった方である。
また同時に、写真による個体識別に取り組み、国内外の研究者と連携して様々な鯨類の個体プロファイルを構築している。
ただし、国立科学博物館の職員というわけではなく、民間人という立場であり、本書後半でも独自の道を進んでいる。
著者としての肩書も「海の哺乳類情報センター代表」となっているが、2016.6時点では特定非営利活動法人としてもホームページとしても確認できなかった。一個人の取組みなので、団体の看板は下ろしたのかも知れない。
その点から批判されやすいのかもしれないが、
だからといって本書の内容や著者の成果が否定されるものではない。

本書で指摘されている大きな点は、2005年時点までの日本の鯨類研究の問題だ。
今でこそ、深海研究の一環(「鯨類群集」という生態系の存在)として着目されているものの、
生物としての鯨類研究が日本で大きな成果を上げているとは、僕も聞いたことがない。
特に不思議なのは、調査捕鯨を行っているが、その科学的成果のアナウンスが一般向けには殆どんない(ように見える)ことだ。

そして本書で大きな問題として指摘されているのが、1999年前後の日本の状況。
海外研究者が日本にDNA分析機器を持ち込み、国内に流通している鯨肉を分析したところ、
調査捕鯨対象種以外の種が多数含まれているという事実が判明した。

既に国外ではDNAサンプリングが確立しているため、どの個体かまで特定できたという。

なぜ調査捕鯨対象種以外の種が流通しているのか。それを国外研究者が追究したが、
(少なくとも本書刊行時までに)日本政府や国内の研究者からの説明無かったという。

かなり大きな問題と思うが、(僕が見過ごしていただけかもしれないが)記憶にない。

調査捕鯨を推進している日本として、またそのマスコミ、研究者として、
そのような姿勢で良いのか-というのが、本書の指摘である。

もう一点、著者や国外研究者の研究により、多くの鯨類の肉にはPCBやドーモイ酸が含まれていることが判明した。
ドーモイ酸とは天然由来の貝毒の原因物質。記憶障害や脳障害、場合によっては死に至る場合もあるという。
この事実を、鯨由来食品が多く流通している日本では、適切に報道していないのではないか、という指摘がある。

さらにもう一点、軍事演習レベルのソナー実験では、それにより鯨類が耳や脳に障害を受け、死亡するという因果関係が認められている。これがアメリカでは問題となり、アメリカ沿岸でのソナー実験は禁止された。
だが本書刊行時点では、アジアと日本周辺では可能のまま、という。
日本周辺が可能となったのは、当時の日本人研究者による論文がなく、日本近海には鯨はいないという理屈が通ったから、という。
この点について、著者は科学者の怠慢として糾弾している。

これらの指摘が含まれている本書、どう読んでも「何が主張したいのか分からない」という読みにはならないだろう。
鯨類研究の状況を知る上にも、一読して損は無いと思う。

なおAmazonレビューでは、「クジラのPCBが天然起源であることを示す論文が、Science誌2005年2月11日号に発表された」のに、
その直後にクジラのPCB汚染を指摘する本書は「極めて悪質」という指摘がある。

気になってScience誌2005年2月11日号を検索。
日本語ダイジェスト(EurekAlert! 日本語)を発見した(PDFで読める)。
"Two Abundant Bioaccumulated Halogenated Compounds Are Natural Products"
 E.L. Teuten, L. Xu and C.M. Reddy at Woods Hole Oceanographic Institution in Woods Hole, MA

これを読むと、「クジラの脂肪中に2種類の、ヒト母乳に蓄積される難燃剤に類似した生化学的構造を有する化合物が発見された。当該化合物は、おそらく藻類あるいは海綿によって自然に生み出されたものと思われる。」という論文のようだ。
「ヒト母乳に蓄積される難燃剤に「類似した化合物」」と、ちょっと話が違う。

こうなると気になって仕方がないので、Scienceのオンラインに登録(無料)して原文にあたってみた。
もちろんスラスラ読めるはずもないが、どうも発見されたのはメトキシ化された(化学は良く分かんない)ポリ臭化ジフェニルエーテル、MeO-PBDE。少なくとも、PCBとは別物である(「PCBに匹敵する濃度で生物濃縮されている」という趣旨でPCBが出てくるようだ)。

一方、本書で指摘されてるのはPCB。それについては、国も調査結果を出している。
例えば「鯨由来食品のPCB・水銀の汚染実態調査結果について 平成15年1月16日」。
(本書では「シャチやミンククジラから高濃度」とされているが、こちらの調査結果ではそこまでではない。
様々事例があるという話かもしれない。それこそ、これらを総括的に分析するのが科学であり、公表するのが行政の仕事だろう。
Google検索でも平成14年前後の情報が上位に出てしまうが…。)

いずれにしても、
 「クジラのPCBが天然起源であることを示す論文が、Science誌2005年2月11日号に発表された」 のに刊行された本書は、「極めて悪質」だ
とするAmazonレビュー、意図的かどうかは知らないが、この方がむしろ「悪質な」ミスリードと思う。

もちろん、僕の読解が誤っている可能性もある。気になる人は、ぜひ原文にあたってほしい。
そしてこうした毀誉褒貶にこだわらず、自身のスタンスで本書を読んでいただきたい。

【目次】
1 クジラって、どんな生き物なの?
2 衝撃の幕開け…日本で売られているクジラ
3 クジラを解剖してわかること
4 新種クジラ、ツノシマクジラとの出会い
5 欧米諸国と日本
6 ここまで深刻となった海洋汚染
7 クジラよ永遠に
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category: 哺乳類

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星のマークは夢のマーク。「田宮模型の仕事」  

田宮模型の仕事
田宮 俊作



赤と青地に、白抜きの星のマーク。
多くの人々(男性が多いと思うが)にとって、様々な憧れを引き起こすだろう。
僕が子供の頃、街のおもちゃ屋(まだ個人経営のおもちゃ屋があった時代だ)には、
ガンプラが積まれている一方に、戦車、艦船、兵士のプラモデルがあった。
子どもには手が出せそうに無い世界だが、雑誌でジオラマを見るたび、いつかこんな世界を造ってみたいと思ったものだ。
そのプラモデルに輝いていたのが、
赤と青地に、白抜きの星のマーク。TAMIYAだ。
硬派なプラモデル屋というイメージしかなかったが、本書のおかげでそのイメージが払拭された。

本書は田宮模型を世界のTAMIYAにまで発展させた、田宮俊作氏による熱い歴史書である。

木製模型の跡取りとして生まれた少年時代。
だが順風満帆な生活ではなく、工場の火災によるマイナスからのスタート。
それでも新型機械の導入等によって木製模型が軌道に乗り出した時に訪れた、アメリカ製のプラモデルの衝撃。
一方、日本でプラモデルを作ろうとしても、莫大な金型製作費、金型製作職人の横柄さ等の障害。

日本全体の木製模型屋が、同じような苦境に遭遇した筈だ。

だが、なぜ田宮模型だけが世界まで羽ばたけたのか。
本書を読めば、その謎が、実は謎ではなかったことが理解できる。

田宮俊作氏が貫いてきたことは、一つはモノづくりとしてのプライドだ。
徹底した取材に基づくモデリング。
保存展示されている戦車を求め、世界中を駆け巡り、寝食を忘れて撮影を行う。
その真摯さが、ホンダのF1模型でも如何なく発揮されている。
タイヤ一つとっても、それまでののっぺりしたタイヤではなく、
トレッドパターンを刻んだタイヤ模型を開発。
また、単に縮小するだけでなく、日常の状態や視線を踏まえた微妙な調整。
そして作りやすいと共に、作る楽しみも有ること。
F1のプラモデルを見たホンダの本田宗一郎氏による「日本の模型屋も、ここまでやるようになったか」という評価は、
「たかが玩具屋」ではなく同じくクオリティを追究するモノづくりの姿勢に共感した証なのだろう。

そして、子どもが楽しめること。
マニアや大人たちだけが楽しむ趣味ではなく、
子どもたちがもモノづくりを楽しめるツールとして、プラモデルがある。
それを徹底したのが、ミニ四駆だ。

残念ながら僕はブームとは外れた世代だが、
本書を読めば、その「ブーム」が発生するまでに本書刊行時でも18年の歴史があった。
子どもたちが楽しめる造形、子どもたちの創意工夫を受けたカスタマイズシステム、
そしてレースの愉しみ。
「売ったらおしまい」という姿勢ではないタミヤだからこそ、ミニ四駆という趣味の一ジャンルを形成できたと言える。

本書解説において、次のような指摘がある。

コカコーラのマークがあっても、その店が何屋かはわからない。
しかし世界中で、タミヤの星マークが見えたら、そこはホビーショップ以外の何ものでもない。
一社のロゴマークが、業界そのもののシンボルになる、そんな会社はタミヤ以外ないのではないか。


これほどまで、「楽しさ」を広めてきたタミヤ。日本企業の凄さというか、昨今はなかなか見つけにくい「日本企業ならではの良さ」を知る機会としても、本書はお勧めである。
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category: 趣味

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