ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

発酵なくして和食なし。「発酵はマジックだ」  

発酵はマジックだ
小泉 武夫



和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語 (河出ブックス)」(レビューはこちら)、漫画「もやしもん」と読むと、やはり発酵に興味が湧く。ということで読了。
著者は東京農大の名誉教授。実際は違うらしいが、「もやしもん」 の舞台モデルでは、と言われた大学の醸造科学科で教鞭をとられていた方である。

発酵に関する話題としては、酒・麹と、もちろん「和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語 (河出ブックス)」と重複する話題も多い。
だがこれは、結局は麹菌オリゼーの素晴らしい能力、そしてそれを最大限に引き出して発展させた日本人の先人の知恵によるところが大きく、その素晴らしさに再度感動するところである。

また本書では、鰹節、納豆、漬物、酒や肉の発酵にまで視野が広がっている点が楽しい。
そういう視点で改めて日本食を見ると、伝統的な食品は発酵食品だらけである。

ところが現在、同じ発酵食品でも、日本的な発酵食品は避けられ、
チーズなど西洋的な発酵食品が日本人の食生活に普及している。
時代の流れといってしまえばそれまでだが、
長い日本人の知恵と工夫の歴史を知れば、日本の発酵食品を避ける食生活が、いかに勿体ないものかが実感できるだろう。

【目次】
第1章 発酵とは何か
第2章 発酵の主役・微生物
第3章 麹と酒と日本人
第4章 発酵がつくる調味料
第5章 納豆、鰹節、種麹に見る日本人の知恵
第6章 漬け物大国日本
第7章 魚と肉の発酵食品
第8章 発酵食は健康食
第9章 北極から南極まで世界の発酵食
第10章 地球と人類を救う発酵革命


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category: 菌類

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失われた美の数々に、呆然とする。「「失われた名画」の展覧会」  

「失われた名画」の展覧会
池上 英洋



モノにしろ人にしろ、長い歴史の中に生まれ、消えていくのが通常の姿。
だが、その価値が多くの人々に認められれば、その人々の思いを繋ぐことによって、時代の流れを超越することができる。

製作当初から来歴が明らかな逸品は当然ながら、
発掘・発見されたモノについても、その発見時に価値を見いだせば、以降はしっかりと受け継がれていくことになる。

だが、そうした価値があるにも関わらず、失われてしまったものの方が、当然多い。
特に西洋文化史においては、美術-特に絵画については、かなり古くから作者のオリジナル性が認められていたことから、
逆に、その価値ゆえの紛失も多かった。盗難や、分割などがその例だ。

天災、焼失、戦争・テロ、意図的な破壊、改修、盗難、紛失。

例えば、本書「戦争」の章で取り上げられているが、
第二次大戦中、フリードリヒスハイン高射砲塔にドイツ軍が芸術品を大量に保管していた事例。
ドイツ軍としては、堅牢な軍事施設に保管する意図があったが、
逆に火災によって収蔵されていた作品の多くが失われてしまった。

本書は、そうした「失われてしまった名画」に着目し、
それぞれの紛失原因ごとに整理されたもの。
現在残っている断片、下書き、紛失前の写真など、
多くがカラーで収録されており、失われたものの大きさが実感できる。

それぞれの来歴を見ていけば、一編のミステリ小説等も作れそうで、興味深い。
(そういう方向を手軽に楽しみたければ、「ギャラリーフェイク」や「ゼロ THE MAN OF THE CREATION」などのコミックが楽しいだろう。)

それにしても驚いたのが、僕がオリジナルと思っていたローマ時代の大理石像の多くが、
実は古代ギリシャ時代に作成されたブロンズ像のコピーだ、という点だ。
いや、ローマ時代のものはオリジナルという先入観があったということだが、
西洋美術史の長さに圧倒される次第だ。

なお、ナチスに限れば「ナチスの財宝 (講談社現代新書)」(レビューはこちら)という本があり、こちらも非常に興味深い一冊である。

【目次】
第1展示室 天災で失われた作品
第2展示室 焼失した作品
第3展示室 戦争とテロリズム
第4展示室 人為的な破壊1―改修と切断
第5展示室 人為的な破壊2―修復・加筆・塗りつぶし
第6展示室 盗難
第7展示室 消失―行方不明の作品





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category: 美術

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Kindle、要チェック番組、骨折  

Kindle、要チェック番組、骨折

■Kindle paperwhite
今夏、やっとKindle paperwhiteを購入しました。
購入したのは黒、wifiのみ、キャンペーンなし。



保護カバーはスタンダードなもの(【 Kindle, Kindle Paperwhite 保護フィルム】Digio2 液晶保護フィルム フッ素コーティング 反射防止 抗菌 気泡レス加工 2枚入り)。2枚入っているのでミスにも安心。

カバーはInateck。造りが丁寧ですが、もっと遊んだデザインのモノが欲しかったのですが、
オートパワーOFF対応のカバーだと、余り選択肢がないですね。

他、2年間の事故保証プランもつけました。

それにしても、無料プライム体験で安く買おうと思ったら、プライムデーがあったので待ち、
プライムデーには買い損ね(買おうと思ったら時間過ぎてた)、
プライムデーが終わったら無料プライム体験では安くならず、
じゅあ有料プライム会員になろうと思ったら途中で切り替えられずと、
安く買おうと思ったがために、1か月以上も待つことになった次第。マヌケですね。

使用感としては、読む分には問題なし。
画面切り替えの際のE-インクの特徴的な反転も、全く気にならない程度。
オートパワーON・OFFができるカバーをつけているので、ストレスなく読めます。
何より、この一台で数(十)冊の積読を持ち歩けるのが良い。
隙間時間が生じるか不明なシチュエーションでも、気軽に持ち運びできます。

一方、メニューを出したり、ハイライトしたりという、
操作系へのレスポンスがやや遅い(間隔よりワンテンポ遅い)というのが不満点。
一般的な小説とかならハイライト・メモ機能は多分使わないですが、
僕のようにノンフィクションや新書系を読む人には、やや問題ですね。

といっても、Kindleでハイライトすれば、
パソコンのKindleアプリで開いた時にも、当然引き継がれています。

ですから、パソコンでハイライト部分を次々確認することが可能です。
こうしたスキップ読みはKindleでは難しい(遅い)ので、使い分けが重要でしょう。

なお、引用やEVERNOTEのためにエクスポートすることもありますが、可能なエクスポート容量は限られているようです(例えば「スーパーヒューマン誕生! ―人間はSFを超える (NHK出版新書 480) 」は1%までだった)。
色々方法はありそうなので、今後の課題ですね。

コンテンツとしては、やはり中途半端に古い本は無いため、これからに期待。
でも大好きな堀辰雄が持ち運べるだけで、心の平安に良いのです。
また、サンプルが多いのはありがたい。目次を見るだけでも、買うべきか否かの材料になりますしね。

もちろん紙の本の装丁も好きだし、カラー図版が重要な本もあります。
また、ゆったりとした活字で読みたい本もあります。
なので当面、Kindleで購入するのは、装丁が問題とならない新書・文庫がメインになりそうです。

Kindle小僧の先輩であるプリティラヴ博士にあやかって、タイトルをピンクにしました。

■要チェック番組
もう本日(ごめんなさい、昨日1日間違えてました。8月28日(日)放送です)ですが、NHKスペシャルで
シリーズ ディープ・オーシャン 潜入!深海大峡谷 光る生物たちの王国
が放映されます。深海ファン必見でしょう。
見逃した人は、再放送を期待!!

また、9月18日(日)には、「完全解剖 ティラノサウルス ~最強恐竜 進化の謎~」かあります。
画像を見ると、羽毛恐竜としての再現映像です。こちらも興味深いですね。

■骨折
7月末、子どもが放置しているザックに足が絡まり、左親指のみで着地。強烈な痛みと爪の付け根からの出血。
夜だったので、翌日病院(休日なので当番医)へ行き、骨折確認。関節部分が折れました。
痛々しい姿で(自分で言うな)帰り、「骨折したぞ」と子どもに言うと、「うひゃひゃひゃ」と高笑い。
我が家には悪魔がいます。

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category: 雑記:日々のこと

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国宝は、もっと普遍化されるべきだ。「知識ゼロからの国宝入門」  

知識ゼロからの国宝入門
小和田 哲男



国宝。
正に国の宝として認定されたものだが、それが「なぜ」国の宝なのか。
様々な国宝があるだけに、それぞれのストーリーを知る必要がある。
例えば縄文時代のモノと江戸時代のモノを。同列に論じることは難しいだろう。

そうすると、各時代ごとにどのようなモノが国宝として指定されているか、
類似・関連するモノにどのようなモノがあるのかと、時代単位で見ていく方が分かりやすい。

こうした観点により、日本の国宝概観として纏められているのが本書である。
全ての国宝が掲載されているわけではなく、また有名どころが必ず網羅されているわけでもない。
(例えば土偶だと、遮光器土偶は掲載されていない。)

しかしながら、基本的に見開き2頁という限られた紙幅の中、当該国宝の概要、それに関連する日本史、国宝の写真と
ちょっとした話題・ミステリー等をコラム的にまとめており、概要を掴むには手軽で良い。
また城や茶室といった建築物も収録されており、日本美術史の幅を知ることもできるだろう。

ただ、日本の国宝の奥行きと幅は極めて広く、 本書はもちろん極々一端に触れた入門書である。
本来望まれるのは、日本の国宝について出来る限り網羅し、かつ分かりやすく紹介したスタンダードな本である。
僕が知らないだけかもしれないが、
調べた限りそうした本が数年に一度でも刊行されていない(商業ベースにも載らず、国も刊行しない)というのが、
日本の文化意識に対する貧困さというか、限界を感じるところである。

【目次】
第1章 古代(縄文~飛鳥)―国家日本誕生のカギを握る国宝群
第2章 奈良時代―政変に揺れた平城の歴史を彩る国宝群
第3章 平安時代―貴族社会に花開いた国風文化と国宝群
20分でわかる!国宝入門
第4章 中世(鎌倉~奈良)―武士が心を託した国宝群
第5章 近世(安土桃山~江戸)―乱世から泰平の世へうつろう時代を見守った国宝群
付録 もっと知りたい日本史と国宝
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category: 歴史

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考える視点のヒント。「ルリボシカミキリの青―福岡ハカセができるまで 」  

ルリボシカミキリの青―福岡ハカセができるまで
福岡 伸一



科学者による定期的なエッセイというのは、なかなか少ない。

もちろん科学者たるもの、本業で成果を出すのが第一だ。
でも、本業に関連する一般向けの書籍も出版してほしい。
科学の第一線は、やはり科学者自身によって語られることが最も面白いからだ。
通常、それすら行う時間も労力も無いのだが、無責任な第三者としては、
さらに科学者が日常的にどのように考え、どんな問題意識を持っているかという点についてのエッセイも望みたい。
というのは、やはり科学者の「視点・思考」というのは、独特だからである。

他者を知ることは自分を知ること(もしく、自分が何を知らないかを知ること)だと思うが、
特に科学者のエッセイからは、自身に欠けている視点を多く学ぶことができる、と考える。

特に昨今、トンデモ科学に陥りやすい人々が増加している。
個人的には「ゆとり教育」の弊害云々ではなく、むしろ高度成長期以降の実学志向、
「役に立つ知識・技術の取得・確立が第一」という考え方が蔓延し、
「自分の知識の限界を知ること(自分が「知らないこと」ばかりであること)」と、
それを解決するための情報探索と思考のトレーニングが欠けているからではないかと思う。
このままでは、ますます地に足のついた思考ができる人と、トンデモ思考の二極化が進むだろう。

これを解決する一助として、科学的知識の普及ではなく、その科学的思考のプロセスを学ぶことが重要だ。

ところが、本業に関連するものはともかく、普遍的なテーマを対象とし、科学者ならではの視点を加味したエッセイを定期的に出す科学者は少ない。
養老孟司氏、ミステリも関連するが森博嗣氏(推理小説作家、元工業大学)、ちょっとマイナーなのが須藤靖氏(東京大学)。
本ブログでも取り上げたり、僕がすぐ思いつくのはその程度だ。

・森博嗣氏
封印サイトは詩的私的手記 I Say Essay Everyday」とか、「MORI LOG ACADEMY〈1〉 (ダ・ヴィンチ ブックス)」とか色々ある。
日記系よりも、考察系の方が今となっては良い。

・須藤靖氏
人生一般ニ相対論 」(レビューはこちら )や、「三日月とクロワッサン」(レビューはこちら)がある。独特の視点が楽しいのだが、残念ながらどんどん新刊が出ているという訳ではない。

そして本書の著者、福岡伸一氏もそうした科学者の一人である。本ブログでは、「生命と記憶のパラドクス―福岡ハカセ、66の小さな発見」(レビューはこちら、ずいぶん昔だなあ)を紹介しているが、本書もその流れを組むもの。

時代としては村上春樹の「1Q84」が刊行された頃であり、それにまつわる話題も多い。
本書後書きにも書かれているが、福岡氏としては「隠しテーマ」があり、それを踏まえて再読すると、新たな発見も多いだろう。

しかしむしろ、僕としてはこの頃「脳死移植」が話題となり、人の死はいつの時点かという議論が盛んだったが、
福岡氏が逆に「ヒト」としての誕生はいつの時点かという点についても同様に議論が必要であること、
そして現代の議論は、再生医療への展開を促進する一方で、
ヒトとしての「生命の時間」を狭めている(肉体の死から脳死へ、また「脳始」という観点から受精時よりも受精後24~27週へ)
という指摘が興味深かった。

また人が第一言語はどんな言語でも覚えてしまうように、
デジタルツールについても、それが第一に出会うものならそれがスタンダードとなるという指摘。
これも昨今の「スマホやタブレットは使えるがPCは使えない」という、
MSXとかX1とかPC8801mk-IIとかを見てきた世代からすると嘘だろうという世代が生じていることにも繋がり、
これから生きていく上で意識しなければならないと思う。
そういえば我が家の子供たちも、スマホやタブレットは使えるが、PCは使えないんじゃないだろうか。問題である。

【目次】
第1章 ハカセの研究最前線
第2章 ハカセはいかにつくられたか
第3章 ハカセをいかに育てるか
第4章 理科的生活
第5章 『1Q84』のゲノムを解読する
第6章 私はなぜ「わたし」なのか?
第7章 ルリボシカミキリの青

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category: エッセイ

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真に凶悪な犯罪は、誰も気がついていない。「凶悪―ある死刑囚の告発」  

凶悪―ある死刑囚の告発
「新潮45」編集部



日本の殺人事件率、諸外国(アメリカやヨーロッパ諸国)と比しても、まだまだ低いだろうなと思われている。
(実際にそうらしい。)
ただ一方、実は「自殺」や「病死」と見做されるものの中に、かなり殺人が埋もれているのではないかという点も、よく言われる。
(とんでもない「自殺」に対して、最近は「エクストリーム自殺」という言い方すらあるほどだ。)

警察や関係機関の能力不足や怠慢による見過ごしというよりも、
検視医が圧倒的に不足している現状では、こうした可能性を否定することもできない。
過去の安全神話を前提とした社会システムが、警察官や検視医・監察医の増員を拒み、
その結果、十分に捜査されないまま、「事件性無し」となっていく。

むやみに不安を煽る必要はないが、現在の日本社会は、
現行の警察行政で十分なほど安全ではない。

本書で語られる、いわゆる「上申書殺人事件」も、そうした見過ごされていた犯罪だ。

端緒は、既に拘置所に収監中の殺人犯である後藤良次から、
知人(これも拘置所に収監されている人物だ)を介し、雑誌記者である著者に届けられた一報である。

「自分が裁かれている事件の他に、
まだ自分が関与した事件で明らかになっていない事件に、殺人2件と死体遺棄1件がある。
それらを自分が犯したことは間違いないが、首謀者は「先生」と読んでいた不動産ブローカーだ。」

デマ、もしくは裁判の引き伸ばし策ではないかという疑念も抱きつつ、著者は取材を開始する。
その結果明らかになっていく、後藤良次の通報にそった事実の数々。

疑惑は確信に変わり、ついに著者は「先生」こと三上静男に取材を行うが、三上は会う事すら拒む。
ついに著者や後藤良次の弁護士は、後藤良次が通報した3件の事件に関する警察への「上申書」を提出。

警察の執念の捜査も実を結び、ついに平成18年12月9日、警察は三上の身柄を拘束した。

と、ここまでがハードカバー版での内容だ。

現在刊行されている文庫版では、書下ろしとして三上の判決を描く最終章、
さらにそれ以降の時点による「文庫版のあとがき」が追加されている。

「主文、被告人を無期懲役の形に処する」。

裁判で明らかになる冷酷な所業には、慄然とするばかりだが、
それよりも後藤の自白が無ければ、この事件自体が露見することがなかったことに寒気を覚える。
こうした犯罪が、まだまだ埋もれている可能性もあるのだ。

本書は稀有な流れを辿った犯罪ノンフィクションとして有名だが、
こうした「露見していない殺人事件」が多数存在しうるのが現代社会だということに気づかせる、警鐘の一冊とも読める。
しかしなか゜ら、本書を踏まえて、検視制度が改善されたという話は聞かない。
むしろ、「法医学者、死者と語る~解剖室で聴く 異状死体、最期の声~」(レビューはこちら)のように、まだまだ検視制度の不足を告発する本すらある。
日本が「事件が無い」安心な社会は、既に過去の神話だ。
もっとリアルな、「事件はあるが、確実に把握されて裁かれる」安心な社会を目指さなければならないだろう。

なお、こうした犯罪ノンフィクションを読むたびに思い出すのが、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」だ。
「足利事件」や「菅家さん冤罪事件」として記憶されている方も多いだろう。
未だ「連続誘拐殺人事件」としてきちんと捜査されていなようだが、現在連続事件とみなされているのは、次の5事件。
 (1)1979年 栃木県足利市 5歳女児
 (2)1984年 栃木県足利市 5歳女児
 (3)1987年 群馬県新田郡尾島町(現・太田市) 8歳女児
 (4)1990年 (足利事件) 栃木県足利市 4歳女児
 (5)1996年 (失踪事件) 群馬県太田市 4歳女児
これらの事件には、次のような共通点がある。また犯行は半径10キロの範囲内だ。
 ・被害に遭ったのが4歳から8歳までの児童
 ・パチンコ店が行方不明の現場(3事件)
 ・河川敷で死体遺棄(3事件)
 ・金曜、土曜、日曜および祝日に事件が発生(4事件)

この連続殺人事件については、「殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」(レビューはこちら ) という著者による追及・告発の書がある。何度か大きな話題となったが、未だ解決には至っていない。
こうした事件を徹底的に究明することが、真の「安全社会」だろう。

【目次】
独房からの手紙
サイは投げられた
“先生"VS殺人犯
驚愕の証言
“じいさん"の素性
“カーテン屋"を知る女
そして、矢は放たれた
脚光を浴びた死刑囚
第四の殺害計画
消せない死臭
闇に射しこむ光




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category: 事件・事故

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国菌・麹菌。その凄さを実感する。「和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語」  

和食とうま味のミステリー:国産麴菌オリゼがつむぐ千年の物語
北本勝ひこ



それぞれの国・土地・町には、それぞれの郷土料理がある。
その郷土料理は、それぞれの土地柄と歴史にあわせ、そこに定着している人々が選別・発展・確立してきたものだ。

僕は「食」に対しては、食材の流通史と郷土料理の歴史に特に興味があるのだが、
この郷土料理の成り立ち、何かに似ているなと思えば、僕が興味を持っている生物地理学そのものであった。

特定の地域において、その風土に適合したモノが発展・分化していく。
いわば個々の郷土料理は、その地域の固有種なのである。

だとすれば、その固有種の生物相を調べ、歴史を遡ることにより、
生物地理学同様に、その地域の特異性を明らかにすることもできるだろう。

本書は、日本の郷土料理-和食-について、
その根本的な要素を「うま味」と看破し、うま味の歴史を辿ることによって、
日本が世界的にも妙な食文化を確立するに至った必然性を明らかにするもの。
いや、面白そうである。

さて、本書ではまず「日本酒」を取り上げる。
広い範囲の和食だが、料理じゃないよなという気がするが、
実のところ日本の和食-うま味確立を知る上では、実は日本酒こそが重要のようだ。
というのは、味噌、醤油といったかなり加工度が高い調味料よりも、
自然発酵で得られる酒のほうが歴史的に古く、そしてその製法等が以降の食文化にも方向性を与えるためである。
なるほど果実酒やサル酒という伝説もあるし、
世界各地で葡萄からワイン、麦からビール、そして米から日本酒が生じている。
そしてそれらの原料は、その地域の考古学的時代において生産しやすい素材である。

さて日本酒だが、本書では日本における酒の製法について、古文献等を元に紐解いていく。
日本において果実酒が発展しなかった理由、
ごく初期の酒の製法である「口噛み酒」、その低効率性。
そこで、発酵過程の効率化のために生じた「麹菌」の利用と「家畜化」。
和食における日本酒の最も重要な意味は、この「麹菌」の取得だった。

そして本書は、日本酒と「麹菌」から導きだされた醤油、味噌の歴史を辿り、
これらによる「うま味」に対して相乗効果を働かせる昆布、鰹節の利用に展開していく。

こうして辿ると、なぜ日本人が発酵食品と「うま味」に執着するのかが明瞭に理解できる。

逆に、日本の風土から腐敗しやすい食文化は発展し難かったこと(果実酒は発酵する前に腐敗してしまう、貯蔵に回すほどの果実を生産しない)、食肉用の家畜を持たないことから、酪農も、乳製品の利用も生じなかった理由も浮き彫りになってくる。

また、麹の作り方についても、日本の特異性がある。
麦や米以外の穀物を多く生産し、それらを材料とする地域では、
麦等の皮を分離するのが難しいため、まず粉状に挽き、それを水で練り上げて発酵させる。
だが日本では、米を蒸しあげ、粒状のまま発酵させる。
日本にいるとあまり意識しないが、こうした麹菌の生産方法の違いは、以降の食文化の発展に大きく影響を与える。

このほか、本書では酒造りの時期(江戸時代以前は、日本では秋からの冬の寒造りが主流だった)、
また麹造りの場所(暗所)による日本独特の麹菌の発展(というか家畜化による育種)、
「火入れ」と呼ばれる低温殺菌法の早期導入など、日本酒づくりの過程に得られた技術の高さも紹介されている。

日本における昆布の利用・流通については「昆布と日本人 (日経プレミアシリーズ)」(レビューはこちら、この本は日本人なら読んでおきたい一冊である)、
また鰹節については「かつお節と日本人 (岩波新書)」(レビューはこちら)がある。
これらと併せて読めば、和食の特異性、そして和食がまさにガラパゴス的発展をした日本固有種であることが実感できるだろう。

なお、本書に描かれた麹菌・オリゼーや「口噛み酒」、これらは漫画「もやしもん」において見事にネタとして昇華されている。
Amazonや楽天に全巻セットも販売しており、お手頃価格である。ぜひ。
(僕も先日購入した。)

【目次】
第一章 なぜ日本人はうま味を求めるのか
第二章 美酒の追求が和食を高める
第三章 種麴屋と国産麴菌オリゼの誕生
第四章 オリゼがつむぐ調味料と和食
終章 うまみが広げる和食の世界






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category: 菌類

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底辺を流れる粘り強さとタフな心。やはり只者ではない。「戦場カメラマンの仕事術」  

戦場カメラマンの仕事術 (光文社新書)
渡部 陽一



戦場カメラマン・渡部 陽一氏。
朴訥な喋り方と「戦場カメラマン」というギャップで評判だったが、
氏の「戦場カメラマン」 としての情熱、歩みを詳しく知る機会は殆ど無かったと思う。

本書は、「仕事術」というタイトルどおり、戦場カメラマンとしての心がけやノウハウが綴られている。
だが、もちろんそれが日本における日常に役立つ訳ではなく、
単にビジネスマン向けのセールス・タイトルに過ぎないので、
「仕事術」を求める層にとっては、正直期待外れだろう。

むしろ本書は、そうした独自の仕事術-ノウハウを得るまでの過程を綴るため、
渡部氏が戦場カメラマンになるに至る人生が綴られている。
そこから「面白いキャラクター」としての渡部 陽一氏ではなく、
「戦場カメラマン」としての渡部氏を知り、理解できることが重要だ。

単なるカメラマンと、「戦場カメラマン」は大きく違う。
紛争地に赴き、自身の感性を信じ、現地の方々を信じ、時には騙される。
自らのルールと経験を頼りに動き、フリーとして写真を公表する媒体を探す。
恐ろしくタフな世界だ。
あの「朴訥な渡部氏」とは、真逆の世界とも思える。

しかし本書を読み、また第二章のジャーナリストによる渡部氏評を読むと、
実は渡部氏の静かな情熱が、底知れぬ「粘り」を発揮していることに気づかされる。

「戦場カメラマン」であるからは、その写真でのみ評価するべきかもしれない。
しかし、多くの人が眼にしてこそ、その写真に価値と意味が生まれる。
(だからこそ、渡部氏もメディアへの露出に取り組んできた。)

本書は、改めて渡部氏の存在と、その写真に注目する機会となる一冊になるだろう。

渡部氏の公式サイトは、こちらである。
またオフィシャルブログ「戦場からこんにちは」では、日々の記事と写真がアップされている。

日本だけでも、最近は天災が多く、また日本近隣でも多くのテロが起こっている。
戦場カメラマンが伝えてくれる世界は、もう「遠い世界」の話ではない。


【目次】
●第一部 僕が見てきた世界
第一章 取材は準備から始まる
第二章 戦場カメラマンになろうとは思わなかった
第三章 現場で学んだ取材の作法
第四章 戦場取材のリアル
第五章 戦場では活字が心の癒しになる
●第二部 僕が出会った日本のジャーナリスト
山本皓一(フォトジャーナリスト)
松浦一樹(読売新聞社)
渡辺照明(産経新聞社)
原田浩司(共同通信社)
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category: 戦争

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日本の「ものづくり」の歴史の一つが、ここにある。「振子気動車に懸けた男たち」  

振子気動車に懸けた男たち (交通新聞社新書)
福原 俊一



僕は香川県坂出市生まれ・育ちである。
かつての坂出駅(まだ木造だった頃)には、何本も線路が広がり、いつも多くの汽車や貨物列車があった。
ただ、子供の頃は国鉄時代に汽車に乗る機会は殆どなく(生活圏が坂出市で完結していたので)、
速く、遠くまで行く特急列車は、夢のような存在だった。

だが、四国は大歩危・小歩危や四国山脈のように、中央部はかなり起伏の激しい地形である。
そのため道路も線路も湾曲し、トンネルも多い。

そのため特急列車も、僕が生まれた頃は、まだ実際には「速い」ものではなかったようだ。

だが高速道路の延伸、そして国鉄が民営化された時代、JR四国は特急列車の高速化に取り組ことになる。

そこで求めたられたのが、高速でカーブに進入した際に、遠心力で外側に振られる車体を内傾させることにより、
高速のまま通過するシステムを持った車両。すなわち「制御付振子気動車」だった。

振子気動車そのものは、国鉄において「自然振子」というメカニズムで開発がなされていたという。
だが自然振子では高速・狭いカーブになると乗り心地が悪くなり、限界もあった。

そこで技術的に停滞していたが、JR四国ではその振子挙動を制御することで、
全く新しいシステム開発に取り組むことになる。

限られた期間、国鉄分割化により削減されたマンパワー。
だが、JR四国として分割されたことによる危機感と、
一方で「JR四国内に特化すればいい」、すなわち寒冷化対策等を気にしなくても良いというメリットもあり、
ついに「2000系」、岡山-高知間の「南風」、高松-高知間の「しまんと」として結実する。

その後、瀬戸大橋の開通に伴っての電化、アンパンマン列車としての展開等、
地元民として振り返れば日常の風景だったが、確かに着実なJR四国の新列車の歴史が綴られている。

四国外の方にとっては面白味のない話題とは思うが、
「列車」の技術開発という、なかなか知ることができない世界の歴史が丁寧に綴られており、
鉄道屋の「情熱」を垣間見ることができた一冊であった。
おそらく四国外の方が読んでも、楽しめるものと思う。

ただ、「◯◯が最初である(と言うと、△△ を忘れるなと、という指摘を受けると思うが…)」という、
やや独特の言い回しが数か所あり、くどく感じてしまった。読むリズムが途絶える感があり、勿体ない限りである。

なお、香川県の鉄道史については、「私鉄の廃線跡を歩くIV 中国・四国・九州編(キャンブックス)」(レビューはこちら)に詳しく、参考となる。

【目次】
序章 分割そしてJR四国の発足
第1章 制御付振子気動車の幕開け
第2章 国鉄時代に開発が進んだ制御付自然振子
第3章 開発がスタートした振子気動車
第4章 振子気動車の新技術
第5章 高松~高知2時間運転の夢
第6章 TSE2000系のデビュー
第7章 2000系量産車の登場とダイヤ改正
第8章 JR四国の2代目振子車両8000系
第9章 予讃線電化を支えた技術屋の奮闘
第10章 アンパンマン列車と次世代車両8600系


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category: 技術

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21世紀の物理学は、重力の時代だ。「重力とは何か」  

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る
大栗 博司



様々な「力」が生活の中に存在している。
蒸気力、電力、磁力、ジェット噴射による推進力等々。
それらの中で、この宇宙の成り立ちに関係していると考えられる「力」として、
現在は4つ、重力、電磁気力、弱い力、強い力がある、とされている。

これらが相互に無関係に存在するのではなく、おそらく何らかのルールに従って、
統一した理解ができるのだろう、というのが、ごく単純化した現在の物理学(と理解している。)のテーマだ。

「力」とは何か。それを統一する理論があるのか。
それを突き詰めていくことが、日々の生活にそのまま役立つとは考えにくいが、
この世界-正確には宇宙の成り立ちを人類が理解することは、
人類という知的生命体にとって、大きな転換点になるだろう。

ただ、既に現在の最先端の「力」の理論でさえも、一般人が理解することは、なかなか難しい。
というのも、ニュートン、アインシュタイン、ホーキング、そしてファインマンやハッブル、マクスウェル等々、
物理史どころか、科学史に燦然と輝く人々が生涯を賭けて明らかにしてきた事柄を理解しなければならないからだ。

「力」の統一というのがなぜ重要なのか、
そして科学史におけるニュートン、アインシュタインの本質的な「凄さ」の意味、
それに対するホーキングの立ち位置等、理論物理学は一筋縄では理解できないテーマでもある。

本書は、そうした「力の統一」を目指した科学史を縦軸に、
そして「重力とは何か」ということを横軸に、現在までの理論物理学史を丁寧に説明していく。

順を追うことによって、僕のような文系人間でも少しずつだが理解できるようになっている。
もちろん、最終章に近づくにつれて難解になっていく(数式は無い。むしろ、イメージすらできない世界が広がっていく) のだが、
手元に置いて、何度も読み返していこうという気になる一冊だ。

ニュートン2016年5月号でも、四つの力が特集されていた。


この「四つの力」の重要性を知らなければ、今後の科学ニュースの重要性を理解することもできないだろう。
そうした意味で、本書は入門書として、ぜひ一読しておきたい。
なお、Dr.プリティラブ氏が、「Dr.プリティラヴ-愛妻に恋する博士の日常-」で紹介されていたように、本書はとても「面白い本」である。
なかなかこんな本は無い。

【目次】
伸び縮みする時間と空間 ---- 特殊相対論の世界
重力はなぜ生じるのか ---- 一般相対論の世界
ブラックホールと宇宙の始まり ---- アインシュタイン理論の限界
宇宙玉ねぎの芯に迫る ---- 超弦理論の登場
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