ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?  

カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?
野島 智司



庭で草抜きや畑仕事をしていると、カタツムリを見ることがある。
おそらくウスカワマイマイだ。
本書によると、ウスカワマイマイは比較的乾燥に強く、植物の苗に付着して全国に分布しているという。
我が家の敷地は元々、草の1本もない空き地だったから、
僕が購入した何かの苗に付着していたのだろう。

一方、通常はカタツムリは移動能力が低いため、全国各地で優先種が異なる。
四国と中国地方・九州の瀬戸内側はセトウチマイマイだが、
九州と愛媛県の佐田岬はツクシマイマイ。中国地方はイズモマイマイ、
近畿、徳間南部はギュリッツマイマイ。
東日本も様々だから、
このブログをご覧になっている皆さんのイメージするカタツムリは、僕が思い浮かべるものとは異なる可能性が高い。

そのカタツムリについて、様々な研究成果や話題を元に、多角的に紹介するのが本書。

例えばカタツムリの動き方だけでも、
後ろ側から前に向かった「足波」が伝わることで進むが、
時々、足跡のように点状に残ることがあり、これは通常の足波の伝わり方では説明できず、
まだ動き方が解明されていないということが紹介されている。
身近なカタツムリでも、わからないことがあるのだ。

また、カタツムリといえば殻、カルシウムだが、
それが卵を産む野鳥にとっては重要なカルシウム源であること。
そのため、土獣中のカルシウムが少ないとカタツムリが少なく、野鳥の卵殻も薄いという因果関係があるという点も、
野鳥を中心に自然を見ている自分としては、なるほどと感じる話だった。

また、「クマムシ博士の「最強生物」学講座: 私が愛した生きものたち」(レビューはこちら)でも少し触れられていたが、
ノミガイという体長2~2.5mmのカタツムリの話も面白い。
ノミガイは、本州南部、四国、九州、沖縄など、広い範囲に分布しているが、
実は野鳥がノミガイを食べ、生きたまま排出される場合があり(実験では、メジロ・ヒヨドリに食われた個体のうち約15%が生きたまま排泄されたという)、こうした野鳥によって分布しているという。

身近なカタツムリだが、その動き、分布、様々な面において、やはり生態系の一員として興味深い面が多々ある。
そうした魅力を手軽に読める一冊として、本書は有り難い。

ところで、以前「ゲッチョ先生のナメクジ探検記」(レビューはこちら)で、イボイボのあるナメクジ、その名も「イボイボナメクジ」がいることを知ったことを紹介した。

ところが「香川生物 第37号」(香川県の生物関係の研究誌)を読んでいたところ、関連する文献があり、
その内容に驚かされました。

その文献は、「イボイボナメクジ Granulilimax fuscicornisMinato,1989の分類・生態的特徴」多田昭・矢野重文。

まず、イボイボナメクジは新属新種として,湊(1989)によって記載されたとのこと。そんなに新しい発見だったとは知らなかった。
しかも、イボイボナメクジの最初の発見場所は香川県仲多度郡仲南町(現,まんのう町)多治川。
そして完模式標本の産地は香川県綾歌郡綾歌町富熊大原とのこと。

※記載論文(湊,1989)では完模式標本は香川県綾歌町で採集された個体だが、
 その標本産地は徳島県高越山となっている。
 これは、標記の論文で明らかにされているが、
 実は最初に徳島県高越山で採集した個体を完模式標本としようとしていたところ、
 最後に香川県個体に変更したが、模式産地を修正し忘れたとのことである。


まさに香川県はイボイボナメクジ発祥の地であったのだ。

確かに、全国のレッドデータブックでみると、イボイボナメクジは情報不足の県が多いのだが、
香川県だけ絶滅危惧I類に区分されていて不思議だった。
つまり香川県だけ減少しているというより、香川県だけカテゴライズできる程度に情報があったということなのだ。

それにしても、これだけ香川県とイボイボナメクジの縁が深いのなら、やはり、いつかをこの目で見たいものである。
なお、イボイボナメクジは、なんと肉食性(他の陸貝を喰う)とのこと。これも驚きだった。
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category: 軟体動物

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ドキュメント御嶽山大噴火  

ドキュメント御嶽山大噴火
--生還した登山者たちの証言を中心に救助現場からの報告と研究者による分析を交え緊急出版!-- 【地図付】 (ヤマケイ新書)
山と溪谷社



2014年9月27日午前11時52分、御嶽山噴火。ニュースで見た映像は、「火山列島」という言葉を突きつけるものだった。
現地の混乱、行方不明者の困難な捜索など、記憶に新しい(というか、まだまだ現在進行形と言えるだろう)。

ニュース直後、気象庁の事前の警戒情報が不十分だったとか、
火山に登る方が悪いとか、
シェルターを造れとか、様々な意見が飛び交った。

しかし、こと「噴火」という自然現象に対して、人間が出来得る対抗策は少ない。
まして、市街地における地震対策などと異なり、
火山の火口近くでの噴火対策など、現実的には困難だろう。

その困難さを伝える貴重な証言集が、本書である。

巻頭には、現場での写真を収録。また様々な縮尺の地図も収録し、証言の中の足跡を辿っていける。
収録された証言は、7本。多くの方が、今回のような大規模噴火の中にあっては、生死は運不運に過ぎないと語っている。

では、我々にはどうしようもないのか。

僕は、もちろん最初は「運次第」だけど、
「運良く」最初の危機を乗り越えた時に、その運を持続させるか否かは、
個人の意思と技術が影響する、と思いたい。

それを学ぶのが、本書である。
特に後半は、科学的な側面からの噴火の検証、そして救出にあたった方々の証言である。
噴火という大規模災害に遭遇した時、人は、どう動けるものか(実際は、動けないものか)。
本書により、少しでも頭の片隅に留め、運を手繰り寄せる判断を行いたい。

写真、地図も多く、「噴火」という非日常的な(しかし日本では常に有り得る)自然災害を、
具体的にイメージするのにも有用だろう。
特に地図は、具体的に現場の状況を把握するうえで極めて役立つ。
1年を経過した今だからこそ、改めて読み直したい。

なお、本書は「ヤマケイ新書 山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件--」(レビューはこちら)や、
「トムラウシ」というケーススタディを元に、ツアー登山の在り方や、ツアー参加者側の問題を分析した「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)」(レビューはこちら)に並ぶヤマケイ新書。
特定分野において、こうしたしっかりとした本、またはタイムリーな本が出版されるのは、有り難い。

【目次】
第1章 ドキュメント御嶽山の十日間
第2章 七つの証言
 最初は積乱雲かなと思いました
 生きて帰ることを強烈に考えていました
 少しでも噴火から遠ざかろうと思いました
 気づいたら、噴煙が上がっていました
 二回目の爆発は耐えがたいほどでした
 私たちは噴火の音を聞いていないんです
 ああいう漆黒の闇を経験したのは初めてです
第3章 科学的考察―信州大学研究室からの知見
 御嶽山と水蒸気爆発
 防災学から御嶽山を考える
 噴火時の気象と降灰、そして降雪
第4章 救助現場からの報告
 緊急を要した行方不明者の捜索
 御嶽山の一番長い日
 困難を極めた捜索活動
 災害派遣医療チームの苦悩
 登山者を守った山小屋の役割
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category: 災害

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凄い!ジオラマ   

凄い!ジオラマ
情景師アラーキー



ドールハウス、Nゲージ。
細かく作り込まれた「世界」には、魅力がある。
美しさもさることながら、精緻に造り込まれた細部には、ため息しかでない。

本書で紹介される数々のジオラマも、そうだ。
「情景師」という肩書きがあるが、本書の著者アラーキー氏が創り出すのは、
単なる美しい景色ではなく、使い込まれ、長い年月を経た世界。
車は錆び、ゴミは散らかり、草が伸びた風景だ。
だが、そんなありふれた風景を、ジオラマで再現するとは、何と凄い技術なんだろう。
創り出されたのは風景ではなく、時間だとも言える。

しかも本書では、一部の作品についてその作り方を紹介している。
どんな素材を、どんな工夫をもって加工しているのか。
舞台裏(実際、著者の作業スペースや機材、作品の収納方法まで紹介されている)をも見せてくれることで、これまでの「作品集」という本の形態とは異なっている。

実際に可能かどうかはともかく、
自分にも作れそうだ、作りたいという気持ちを引き起こす一冊。
ジオラマ製作の楽しさを詰め込んだ、ワクワクする本だ。

なお、著者のブログもある。
こんな楽しい世界を知らないのはもったいない。ぜひ、ご覧いただきたい。

情景師アラーキー 凄い!ジオラマ



▼ドールハウスについては、こちらが美しい。(レビューはこちら)


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category: 趣味

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ナチスの財宝  

ナチスの財宝 (講談社現代新書)
篠田 航一



「琥珀の間」。
1701年に即位したプロイセン王フリードリヒ1世が構想・着手。
その子のフリードリヒ・ヴィルヘルム1世の時、ロシアのピョートル大帝に贈られた。
その後が1770年、エカテリーナ2世の時代に完成した。

ところが第二次世界大戦中の1941年、ナチスドイツはエカテリーナ宮殿の様々な美術品と共に、
「琥珀の間」も解体して略奪。
ケーニヒスベルク城に一時保管されていたが、後にイギリス空軍の空爆のため、
全て焼失してしまった。

だが、その「琥珀の間」が、空爆前に解体・搬出され、今もどこかに眠っているという伝説がある。

本書冒頭は、その「琥珀の間」を巡る旅だ。
この財宝伝説が荒唐無稽なものではなく、当時の時代情勢やナチスの動向を踏まえると、
実際に隠された可能性が伺えてくる。
そして、「琥珀の間」を巡って暗躍する幾多の国家。

また、有名なロンメル将軍がアフリカに進軍した際、同地にいたナチスが略奪した財宝。
これも大戦末期、ある島の沖に沈められたという。

さらに、同様にナチスが何かを沈めたという「トプリッツ湖」。
ここでは実際にイギリス紙幣の偽札などが入った多数の木箱が発見されている。
当時、木箱を運ばされた地元の人の言葉からは、もっと重いもの-金塊もあった可能性がある。

大戦末期に指揮系統が破綻したナチスドイツでは、略奪した財宝をベルリンに運ぶことはできなかった。
だが、それを残して連合軍に渡すこともできない。
「ならば、隠せ。」
そう判断した将校がいても、不思議ではない。

そのようにして隠匿された財宝の一部が、当時ナチスが海外逃亡した資金源になっていた節もある。

「財宝伝説」というと荒唐無稽な感じだが、
本書は毎日新聞社のベルリン特派員(当時)が、新聞取材と同様に足で探し、
当時の資料や関係者へのインタビューなどを通して、
「ナチスの財宝」と呼ばれるものの信憑性を探っていくもの。
基本的に中立的・落ち着いたスタンスであり、安心して読むことができる。

また、4章のうち1章はナチス残党の逃亡に割かれており、財宝伝説の枠を超えた話題も提供されている。

実際、ナチスが隠した財宝はあるだろう。
だが、それらは失われてしまっている。
金塊、宝石、美術品もあるだろう。
だが何より、それらを奪うために失われた人命と平和は計り知れない。
人間の物欲の深さを実感させられる。

【目次】
第一章 「琥珀の間」を追え
第二章 消えた「コッホ・コレクション」
第三章 ナチス残党と「闇の組織」
第四章 ロンメル将軍の秘宝
第五章 ヒトラー、美術館建設の野望
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category: 戦争

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紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている  

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
佐々 涼子



父は、本屋を営んでいた。僕が高校の頃には店を畳んだが、
その後は祖父が古本屋として開業した。
古本屋も祖父の死と共に畳み、もう店は更地になってしまっているが、
当時を思い出すと、本屋独特の臭い、重み、湿度を思い出す。
人生の初めから本があったし、
こうして読書ブログを書いているくらいだから、死ぬまで本は傍にあるだろう。

その本。電子書籍が主流になると言われて久しいが、
僕は、やはり紙ベースの本を好む。

様々な本ごとにある、表紙の手触り、見返しの色。それらに配慮された栞や花切れ(花布とも言う)など、
「本」というモノならではの美しさがある。

(装丁については、「西洋の書物工房 ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで (朝日選書)」(レビューはこちら)が詳しい。)

だが、本をモノとしての本たらしめているもの。
それは「紙」だ。
だが、伝統工芸として取り上げられやすい和紙と違い、
商業ベースの本の紙が、メディアに取り上げられることはなく、
僕も気にしたことは無かった。

だが、東日本大震災において被災した石巻の日本製紙石巻工場。
そここそが、日本の出版界-文庫も、ハードカバーも、新聞も-を支える紙工場だった。

本書は、「エンジェルフライト 国際霊柩送還士(レビューはこちら)」の著者による、
その石巻工場の被災から復興までを追う、ノンフィクション。

エンジェルフライト 国際霊柩送還士」では、その丁寧かつ細やかな取材により、全く知らない世界を教えてくれたが、
本書でもそのクォリティは保たれている。

巨大かつ複雑な製紙工場。それを襲う圧倒的な地震と津波の力。
なすすべもない中で、だが工場長は、「半年での再開」を宣言する。
それは企業活動であるとともに、今日を、そして明日を生きる目的でもあったのだろう。

これまで、僕は本に支えられて生きてきたが、
モノとしての本を支える紙、そしてそれを作り出す人々のことを初めて知った。
それは、とても有り難いことだった。

本書は刊行当時から話題となり、既に読了済みの方も多いと思うが、
未読の方は、ぜひ紙の本で、できれば何とかしてハードカバーでお読みいただきたい。
文庫がどうなのかは知らないが、ハードカバーでは、それに用いられている紙の種類、そして製造工場が記載されている。
そこに記された「日本製紙石巻工場゜8号抄紙機」という言葉の重みを、ぜひその手で実感していただきたい。

【目次】
プロローグ
第一章 石巻工場壊滅
第二章 生き延びた者たち
第三章 リーダーの決断
第四章 8号を回せ
第五章 たすきをつなぐ
第六章 野球部の運命
第七章 居酒屋店主の証言
第八章 紙つなげ!
第九章 おお、石巻
エピローグ
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category: 災害

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パンデミックとたたかう  

パンデミックとたたかう
押谷 仁,瀬名 秀明



インフルエンザ21世紀」(レビューはこちら)と平行して綴られた一冊。
著者と押谷氏の対話篇である。

同書は様々な現場の声が集約されていたが、本書では公衆衛生の専門家である押谷氏のみということで、
テーマが明確に絞られている。

新型インフルエンザとは何か。どうしてパンデミックになるのか。
2009年新型インフルエンザにおける、公衆衛生対策での成果と課題は何か。
そして、各個人は、どのような公衆衛生を意識すべきなのか。

インフルエンザ21世紀」は、かなり厚くて読みごたえがある一冊であり、
様々な視点からのパンデミックを捉えたもの。

一方本書は、パンデミック対策の中心人物の一人である押谷氏との対話から、
パンデミック対策を探っていくもの。
インフルエンザ21世紀」と本書は、
来るべき感染症の時代において、自分はどう考えるべきかの指針となるだろう。

【目次】
救える命を救うために
 数ではわからないこと
 感染症と病原性
 つばがりの視点
第1章 恐れと対峙する
 公衆衛生の道へ
 SARSでの体験
 適切に恐れる
 見えてくる被害
 怖さを伝える
第2章 パンデミックという経験
 感染拡大は止められない
 プロアクティブの重要性
 致死率の難しさ
 感染拡大の起こり方
第3章 パンデミックを乗り越える
 全体像をつかむ
 情報をいかに発信するか
 ポジティブに評価する社会性
 被害を最小限に抑える
 絶望しないこと
第4章 想像する力
 他者への想像力
 フィールドから見えること
 未来への想像力
 おわりに―パンデミックを見すえるまなざし

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category: 感染症

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メガ! :巨大技術の現場へ、ゴー  

メガ! :巨大技術の現場へ、ゴー
成毛 眞



切り口というかテーマというか、全く異なるジャンルであっても、
上手く共通化できる視点さえあれば、横断的に見ることができる。

そのテーマを思いつくことが企画力で、
実際に横断的に見て共通化するのが実行力だろう。

本書は、そうした企画力と実行力で成立した本。

日本各地に様々な工事・製造・プロジェクト現場があるが、
それをメガ-モノとしての巨大さだけでなく、システムとしての巨大さも含めて-という観点で捉え、
それぞれ現場を見て歩いたもの。

近年知名度抜群の著者の力技で、通常、一介のライターは立ち入ることすらできない現場も紹介。
場所すら明かされていない新幹線総合指令所、CERNの内部、日販の流通センターなど、
あまり見ることがない施設のカラー写真も多数収録されており、楽しい。

横断的であるだけに、個人によって興味を抱く施設とそうでない施設があると思うが、
それだけに、日本にこんな施設・システムがあったのかと新しい発見もある。

著者はノンフィクション系レビューのメッカ、HONZの主宰者でもあるため、
巻末には「桁違いになるためのブックガイド」として、
本書紹介の技術・システムやその他の科学系ノンフィクションの推薦ブックリストも収録。

また、関連施設の見学リストも収録し、企画本としてはなかなか親切な作りとなっている。

ちなみに、「週刊東洋経済」に連載していた、「成毛眞の技術探検」を加筆修正したものなので、
同連載をお読みの方は、ご注意いただきたい。

【目次】

I ザ・巨大!
01 首都高・大橋ジャンクションの地下網
02 東海道新幹線の運行システム
03 三菱重工業長崎造船所

II 次世代エネルギー
04 東京ガスの世界最大タンク
05 国家石油備蓄基地
06 大企業集結プロジェクト
07 浜松ホトニクスの挑戦

III 職人技──技術は細部に宿る
08 オハラのすごいガラス
09 本が届くことの驚異
10 「グローバルニッチ」の未来形
11 この本の紙をつくる人たち

IV 宇宙・地球の起源を探る
12 130億光年先を見る望遠鏡
13 ミッションは「ちきゅう」
14 宇宙の謎を探る、世界のCERN、日本のKEK
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category: 技術

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運慶―リアルを超えた天才仏師  

運慶―リアルを超えた天才仏師
山本 勉,ヤノベ ケンジ,橋本 麻里,みうら じゅん



奈良・東大寺の仁王像の運慶・快慶。
社会科でも習うし、極めてメジャーな存在である。
それだけに、特に意識もしていなかった。

だが、なぜ「運慶」が特に優れた仏師として名が残ったのか。
円空や木喰といった独特の仏師はともかくとして、
日本の仏教彫刻において、なぜ運慶・快慶の他は名前すら記憶に残らないのか。

改めて考えると、不思議な話である。
本書は、現時点で運慶作と認められている諸仏をカラー写真で紹介しつつ運慶の生涯を辿り、
その過程で「なぜ運慶が特筆される存在なのか」を明らかにしていくもの。

端的に言えば、仏教彫刻としてスタンダードであった常朝の作風
(破綻がなく、均整がとれた、現在も仏具店でよく見る仏像の作風だ)、
これを突破したのが運慶である。
だが、運慶が格段に優れていたため、運慶以後は新たな展開の可能性がなく、再び常朝の作風に戻らざるを得なかった、というところだろうか。

そして、その天才・運慶と同時代にいきざるを得なかった、秀才・快慶。

本書によって、仏教美術史の単語でしかなかった運慶について、
その凄み、人生を感じることができるだろう。

仏師としてサインした日本最古の例が運慶であるとか、
俊乗上人座像(重源像)のようにリアリズムかつ抽象的で「静かな」像の存在など、
仁王像のような迫力満点のイメージしかない運慶について、手軽に新たな発見が得られる一冊である。

【目次】
第1章 始まりは弱小工房
第2章 運慶、東国へ
第3章 運慶と快慶の違い
第4章 慶派のさらなる飛躍
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category: 美術

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黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎  

黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎 (新潮選書)
若原 正己



オリンピックとか世界陸上を見ると、短距離からマラソンまで、すなわち「走る」という競技においては、
黒人の活躍に圧倒される。

その国籍や出自まではあまり気にしていなかったが、本書著者によれば、
明らかに短距離走はカリブ海勢(出自としては西アフリカ勢)、中・長距離走は東アフリカ勢が強いという。

その理由は、なぜか。

タイトルにあるように、「黒人が足が速い」と単純化してしまうのは簡単だ。
だがあまりにも短絡的な決めつけは、その裏返しとして人種差別に繋がる懸念もがある。
実際、欧米では「黒人は天性のアスリートだ」というだけで問題になるという(運動能力が高い=野生的・動物的=野蛮・粗暴・劣等と連想するらしい)。
そこまで意識しない日本人が人種差別に無頓着なのか、欧米がナーバスすぎるのかはさておき、
人種間で遺伝上差がある、という考え方を推し進めていくことは、確かに危険な側面がある。

だが、それならば現にオリンピックや世界陸上で見る状況は、
単に彼らが個人的に優れ、個人的にトレーニングしたためと言って良いのか。
その「個人的に優れ」という点について、遺伝子面で追究したのが本書である。

結論から言うと、
遺伝子は蛋白質をコードするだけだが、その一部が変異することで、
運動面において、プラスに働く遺伝子はあるようだ。

例えば、αアクチニン3という瞬発力やパワーを発揮する、筋肉の収縮を支える遺伝子(ACTN3)には、
正常な遺伝子型R、変異型Xがある。

そうすると、RR、RX、XXの3タイプが有り得る。
RRはαアクチニン3が多いので瞬発力に優れ、XXはαアクチニンを持たないので瞬発力が劣る、という。

この他にも、様々な遺伝子が確認されているようだ。

短距離・瞬発力系の遺伝子はACTN3、マイナスタチン遺伝子、インスリン様成長因子遺伝子。
長距離・持久力系はACE遺伝子、エリスロポイエチン受容体遺伝子、HIF(低酸素誘導因子)遺伝子、ミトコンドリアのATP6遺伝子、AMPD1遺伝子。
その外にも、運動能力に関与している遺伝子の多型は100以上も知られているという。

だとすれば、運動能力に遺伝子が関与している(人種面での際は有り得る)としても、
結局、個人の遺伝子上の運動能力は100以上の組み合わせにより決定すること、
そしてトレーニングや学習機会などの環境要因を加算すれば、
実際のところ、単純に「黒人だから速い」といった人種的なレッテルには意味が無い、と考えられる。
運動能力を左右する遺伝子の有無は参考情報にはなるが、それで全てが決定されるわけではない。

本書は、そうした冷静な判断を行うための材料として、なかなか読みごたえがある一冊である。

ところで、本書の後半に、人種差別を助長する悪例として、ハーンスタイン&マレイの「ベル曲線」(正確には「ベルカーブ:アメリカ生活における知能と階級構造」)という本が紹介されている。
「ベル曲線」において、黒人が劣る非合理的な理由が挙げられており、「近年の黒人差別の『バイブル』と呼ぶべき一冊である」とまで記述している。
ところが、どうも他のレビュー、特に「ベル曲線」そのもののレビューを読んでみると、
「ベル曲線」という本が「黒人差別の『バイブル』」的内容である、というのは誤読であるようだ。
というか、むしろ本書の著者は「ベル曲線」そのものは読んでおらず、誤読した他者のレビューを鵜呑みにしている可能性が高い、と指摘されている。

この点については、僕自身は「ベル曲線」そのものを読んでいないため、判断は避ける。
ただ、こうした指摘がある以上、少なくともこの部分については鵜呑みにされないよう注意されたい。

こうした箇所があると、どうしても他の部分の信頼性も揺らぐのだが、
他に掲載された人類進化や遺伝子の話(鎌形赤血球症、アルコール耐性、乳糖耐性)を見ると、他の人類史の本(例えば「人類進化700万年の物語 私たちだけがなぜ生き残れたのか」(レビューはこちら)や「迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか」(レビューはこちら)と大きな相違はなさそうである。

【目次】
第1章 短距離はジャマイカ、長距離はエチオピア
第2章 走力と遺伝子
第3章 短距離・瞬発力系の遺伝子
第4章 長距離・持久力系の遺伝子
第5章 西アフリカと東アフリカ
第6章 人種とスポーツ
第7章 記録はどこまで伸びるか

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category: 進化論

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