ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)  

ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)
谷村 好洋




0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる (くもんジュニアサイエンス)」(レビューはこちら)で、珪藻の化石による古代気候史等の解明、というテーマを知った。

「0.1mmのタイムマシン」は、一人の研究者の研究内容の紹介だった。
本書は、珪藻化石の研究によって、現在どのような事実が明らかになり、どのような課題があるかを概観する。

単に化石そのものの年代史研究ではなく、まず珪藻の殻がどのように(そしてどれくらいの期間で)沈降するか、海底でどのような作用が生じているか、など、珪藻化石の年代特定の前提となる事実についても紹介されており、興味深い。

海底の「タフォノミック・アクティブゾーン」(海底下数cmを占める、その下の堆積物とは明らかに色が異なる堆積層)ではプランクトンの殻の溶解・破壊が急速に進んでいたり、
大規模な気候変動による撹拌・再堆積があるなど、単に珪藻化石は静かに沈降してできたものではない。

珪藻化石自体の年代測定と、それが積もった地層の年代評価の関係を読み解く難しさがある。

また、ある珪藻化石に注目しても、それが出現した年代と、その地域に分布を広げた年代が異なる。

こうした課題を踏まえたうえで、現在の珪藻化石などの微化石研究の概要が簡潔に紹介されている。

珪藻化石のような微化石の研究には派手さがない。
そのため、あまりTV等で紹介されることも無く、本書のようなコンパクトな概要書の価値は大きいと思う。

なお、淡水珪藻の研究として、福井県の三方五湖(三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖)、特に水月湖での研究成果が紹介されている。確かこの湖での珪藻化石の研究は、NHKか何かで特集していたような気がする。もっと丁寧に見ておくんだったと反省。

【目次】
第1章 深海への挑戦
1.1 謎の微小円盤
1.2 ナチュラリストのドレッジ
 ■深海探査を支えた二つのドレッジ ■無生物帯は存在しなかった
1.3 チャレンジャー号による世界周航探検航海1 二人の博物学者
 ■「チャレンジャー号」大探検航海へ出発
1.4 チャレンジャー号による世界周航探検航海2 サウンディング・マシーンで泥を採る
 ■チャレンジャーレポート

第2章 深海に降り積もったもの
2.1 海のなかの食生活
 ■食う―食われるの争い
2.2 沈降速度1――17年で3000m
2.3 沈降速度2――20日で3000m
 ■セジメント・トラップで沈降速度を割り出せ ■マリンスノーによる高速輸送
2.4 マリンスノー
 ■マリンスノーはどこへ行くのか?
2.5 堆積物になれる確率は1%!?
 ■タフォノミック・アクティブゾーン
2.6 深海に降り積もったプランクトンの殻
 ■深海底にはなにが堆積しているのか?
2.7 エスモディスクス――謎の珪藻
 ■エスモディスクス軟泥 ■陸や氷河の堆積物

第3章 地球史は深海底に記録される
3.1 1000年に0.3cm
 ■堆積速度が速い場所、遅い場所 ■海域によって違う堆積速度
3.2 海洋底を掘削する
 ■モホール計画
3.3 地球科学に革命を起こした船
 ■海底には古い・新しいがある?
3.4 微化石が語る地層の年代
 ■生層序基準面を見つけ出す ■古地磁気で年代を決める ■生層序基準面と古地磁気の極性反転を組み合わせると……
3.5 微化石に記録された小天体の衝突
 ■深海底から見つかった大事件の痕跡 ■イリジウムスパイク――戯言から定説へ
3.6 衝突と絶滅は同時に起こったのか?
 ■再堆積 ■シニョール・リップス効果 ■研究成果の見直しによる小天体衝突シナリオ
3.7 大絶滅後、プランクトンの運命
 ■植物プランクトン ■生物ポンプの停止。そして再開 ■淡水域ではどうだったのか?

第4章 微化石が語る古日本海
4.1 日本海の形成と日本列島の成立
 ■日本海は淡水湖へと変化した? ■日本海の形成
4.2 ラカストリン・アクチノキクルス 湖沼史を語るプランクトン珪藻
4.3 淡水珪藻が語る湖沼史
 ■日本列島のラカストリン・アクチノキクルス ■淡水珪藻、主役の交替 ■淡水珪藻、興味深い研究テーマ
4.4 湖沼堆積物の年輪 湖底の縞はなにを語る?
 ■三方五湖の縞々珪藻土 ■縞模様は珪藻のライフサイクルから ■緑黄色の粒の正体 ■縞の記録を読み解くと……
4.5 海底にも縞はある
 ■サンタバーバラ海盆と古仙台湾 ■貧酸素水塊のやっかいな副産物――青潮
4.6 縞に記録された100年
 ■縞を読み取る

第5章 微化石が語る日本列島の海
5.1 海の大河
 ■冷やされた海水は深海へ ■熱塩循環がストップすると……
5.2 プランクトンのプロビンス分化 微化石が語る海流の歴史
 ■コスモポリタンな珪藻「タラシオネマ」と「キャビターツス」 ■プランクトンのプロビンス分化
5.3 古黒潮と黒潮
 ■日本の亜熱帯化 ■インドネシア海路が閉じたから?
5.4 開いたり閉じたりする? 対馬海峡と対馬海路

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category: 植物

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動物奇想天外-江戸の動物百態 (大江戸カルチャーブックス)  

動物奇想天外-江戸の動物百態 (大江戸カルチャーブックス)
内山 淳一



江戸時代の出版文化の多様さについては、「和本の海へ 豊饒の江戸文化 (角川選書)」(レビューはこちら)に詳しいが、江戸期の人々の興味・関心は留まるところをしらない。

本書は、江戸時代に描かれた動物について、多くのカラー写真で紹介している。
また、単なる羅列に終わらず、その動物と江戸時代の人々の関わり、また画家のテクニックや興味などについても教えてくれる。

また、動物画だけでなく、実物写真等もあるのが本書の特色。

例えば虎絵の達人である岸駒(1749-1838)のトラについて紹介するページでは、岸駒が中国の商人からトラの頭骨や四足を手に入れて写生を行ったエピソード(と写生図)を紹介するとともに、岸駒が入手したそのトラの足標本そのものの写真を掲載。
(頭骨は、戦前に男子出産のまじないに貸し出されて以来行方不明とのこと。)

「狆とネコ」では、江戸時代の大圓寺の寺域跡から発掘されたイヌとネコの墓石の写真を掲載。
おそらくこの寺を菩提寺としていた薩摩藩邸で飼われていたものらしい。
イヌは文政13年(1830)没、「御狆白事」とあって、狆で名前は「白」。
ネコは明和3年(1766)没、「賢猫之墓」とある。人と愛玩動物の繋がりの歴史が垣間見える。

さらには、河童、人魚という想像上の動物の動物画も紹介されており、
当然、有名な「河童のミイラ」や「人魚のミイラ」の写真を掲載。

何とも楽しい一冊である。

なお香川からは、「衆鱗図」から鯛が掲載されている。
「衆鱗図」は松平頼恭(1711-71)が編纂させ、平賀源内が関わったという説もあるもの。
非常に細かく描かれ、鱗に金銀箔を使って質感を表現し、描いた図を正確に切り取って台紙に張り付けているなど、完成度が極めて高い。

他にも「衆禽画譜」「写生画帖」「衆芳画譜」などがあり、香川県立ミュージアムに収蔵されている。
僕はこれらの図譜の展示を見たり、衆禽画譜についてはその復刻本(2014時点では品切れ)を持っているのだが、
何度見ても素晴らしい逸品である。
上手く展示期間に巡り合えれば、ぜひご覧いただきたい。
(香川県立ミュージアムのホームページはこちら)

【目次】
動物大集合-涅槃図と十二支・群獣図
動物画のいろいろ-写実とその意味
江戸のペット事情-昔も今も人気は犬と猫
ふしぎな動物たち-珍獣から人魚まで
動物をきわめる-これがホンモノだ!
象が来た、龍が出た、人魚を見た!
江戸の不思議発見物語

コラム
涅槃図の動物たち
若冲のマス目描き
十二支図のゆくえ
江戸動物づくし
白井直賢とネズミ
動物のいる生活
岸駒とトラ
ウサギのなぐさめ
龍とヘビ
狙仙のサル・若冲のニワトリ
円山応挙の写生
奇想の動物画
擬人化された動物たち
鷹狩の風景
鷹狩の忘れ物
珍鳥を愛でる人々
イヌのいる風景
イヌを飼う殿様たち
狆とネコ
金魚と金魚玉
ゾウのおどろき
ラクダの夫婦
龍骨の発見
河童と人魚
見世物になった動物たち
西洋動物図鑑の衝撃
蘭学者と動物
らんぺき
リアルさの追求
北斎とナマコ
レンズの中の世界

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category: 歴史

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本を探す、米子水鳥公園 LOG 2015.02.16-2015.02.22.  

米子水鳥公園、本を探す LOG 2015.02.16-2015.02.22.

◆米子水鳥公園
鳥取県米子市にある米子水鳥公園
2月21日は、カナダヅル2羽とナベヅル1羽が舞い降りたそうです。
(22日の朝には飛び立ったようですが。)

同公園は、鳥類標識調査の修行のため、一時期は2週間おきに通った場所。
(瀬戸大橋代として、ハイウェイカード(懐かしいですね)でトランプができるくらい使いました。)
なのに、もう何年も行っていない!
今年こそ行きたい!!

コハクチョウもさることながら、とても気持ちの良いスポットですし、
艦長館長もレンジャーの方も、皆良い方です。
もし鳥取方面に旅行することがありましたら、ぜひお立ち寄りください。


◆本を探す

山と溪谷 2015年1月号」と「ノンフィクションはこれを読め! 2013- HONZが選んだ110冊 (単行本)」をチェック。
「山と渓谷」は、「テーマで見つける山の本100」という特集に惹かれたもの。
こういう特集では、読んだことがあるものを見つけると嬉しいし、
読みたいなあと思うのもあってワクワクしますね。

収録されているテーマは、次のとおり。
・単独行者の世界を知る10冊
・「ヤマノムスメ」キャラクターが選ぶ初心者におすすめの10冊
・読図とナビゲーションが楽しくなる10冊
・山小屋に泊まりたくなる10冊
・遭難と山岳救助を知る10冊
・登らなくても楽しめる雪山の本10冊
・今だからこそ知っておきたい火山の本10冊
・クライマーにすすめたい10冊
・旅心に火をつける10冊
・憧れと困難の海外登山10冊

僕は残念ながら山屋ではなく、行ったのは石鎚山、西赤石山、剣山くらい。
山小屋は積雪期にライチョウを見に行った立山の室堂山荘のみです。
山は好きなんですが、実は高いところがニガテなので…

100冊の中には、この本も入っていました。
レビューはこちら



一方、「ノンフィクションはこれを読め! 2013- HONZが選んだ110冊 (単行本)」は、
ノンフィクションの書評サイトHONZの書評記事を集約したもの。
HONZは新刊しか紹介しませんし、僕の嗜好とはちょっと異なるのですが、
見知らぬジャンルに眼を向けるにはいいガイドですね。

それにしても、Amazonの欲しい本リストが150冊になってしまった。
なのに、またBOOKOFFで2冊購入。







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category: 雑記:日々のこと

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鳥たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ (4))  

鳥たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ (4))
日野 輝明



僕が野鳥を真面目に見だしたのは約20年前だが、その頃に比べ、
野鳥観察・撮影は相当普及した。
写真による詳細な全種図鑑。ネット・携帯電話の普及による情報の伝播。
デジタルカメラ等の普及による野鳥撮影の廉価化。

これだけ普及すれば、研究面のハイ・アマチュアも増加し、日本の鳥学は急速に進展するはずだが、残念ながらそうではない。
一般化といっても、残念ながら大衆化の方に進みつつある。

その要因の一つとして考えられるのが、多くの観察・撮影者が「識別」にウエイトを置いていることだ。

おおむね図鑑では、種の識別、性・齢等の識別、鳴き声、生息時期・地域・環境が短くまとめられている。
それは良いのだか、そうしたハンディな図鑑では、個々の種の生態-餌、縄張り、抱卵・育雛、換羽、群・単独行動の意味等々は欠落している。
だが、野鳥は生物であり、長い進化の歴史を経てこれ程までに分化したのは、単に「形態」のためではない。

また、鳥類が野生動物であるからこそ、他の生物との関わり(食物連鎖や共進化など)もある。

その視点無しに野鳥の識別だけに拘るのは解せないし、もったいない。
だから観察会では、目の前の個体の種(亜種)、性・齢等の識別を行った上で、そこから「なぜここにいるのか」ということを解説するよう心がけている。十分にできているかどうかは分からないが、努めてはいる。

そして、こうした観点から「鳥類」を学ぶには、ハンディな図鑑だけでは不可能である。

本書は、鳥類と「森」というテーマで、その相互作用を解説するもの。
種子散布、昆虫類の補食、縄張りや群行動(特に混群)、生息環境の変化等、扱う分野は多岐にわたっており、森林性鳥類の「生き方」を知るには良い入門書である。

図鑑の次の世界に進みたい方に、お勧めする。

なお、類書の中では、「花・鳥・虫のしがらみ進化論―「共進化」を考える 」も面白い。
興味ある方は、ぜひ。

【目次】
まえがき
1章 鳥は森で生まれた
1・1 鳥は恐竜である
1・2 森が鳥を生んだ
1・3 森が鳥を進化させた
2章 鳥が森を作る
2・1 種子をまいて森を広げる
2・2 花を咲かせて森を保つ
2・3 巣作りが森を変える
3章 鳥が森を育てる
3・1 虫を食べて木を育てる
3・2 食べられるものたちの反撃
4章 森の鳥たちの敵対関係
4・1 似た鳥どうしの競合
4・2 托卵する鳥とされる鳥
4・3 食う鳥と食われる鳥
5章 森の鳥たちの誘因関係
5・1 競い合う鳥たちの群れ
5・2 他者に依存した場所選び
6章 森が変われば鳥も変わる
6・1 地理的歴史が鳥を変える
6・2 森の形が鳥を変える
6・3 自然撹乱が鳥を変える
7章 森の鳥を守る
7・1 森の鳥を脅かすもの
7・2 鳥の多様性から生物多様性へ
あとがき
引用文献
索引
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category: 野鳥

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和本の海へ 豊饒の江戸文化 (角川選書)  

和本の海へ 豊饒の江戸文化 (角川選書)
中野 三敏



江戸時代というと、テクノロジーが発達しているわけでもなく、
封建制度と身分制度のもと、庶民は生きるのに精一杯だったという印象がある。
しかし実際のところ、様々な制約はあったにせよ、
その制約の枠内での自由・安全・娯楽は、当時の世界でも屈指のものだったと思う。

その一端を垣間見せてくれるものが、和本である。

和本とは、版木で刷り、糸綴じされたもの。
伝統芸能を習っている方を除けば、時代劇ぐらいでしか見たことがないかもしれない。

僕の祖父が古本屋を営んでいた頃、店にいくつかの和本があった。
しかし祖父が死に、店を畳む際に一括して処分してしまった。
祖父の個人蔵の本も含め、どの本を手元に残すかは僕が判断できたのだが、ほぼ基本的に全て処分した。
惜しいことをしたと思うものの、やはり当時、古本屋一軒分の古本について、
20歳そこそこの若造が判断することは難しい。かといって、判断できるまで残し続けることも困難だった。
結局、有名どころの初版本は残しているが、その中に紛れて、いくつかの和本が残っていた。
それは最後に紹介しようと思う。

さて、本書は、江戸時代の和本のうち、特に珍しい(刊行数だけでなく、テーマの面からも)ものを
ピックアップして紹介するもの。
【目次】にあるとおり、江戸時代の出版文化がいかに幅広かったかが見えてくる。
いくつか紹介しよう。

まず、『諸色染手鑑』。
本書は衣類の染見本帖として刊行されたものだが、掲載されているのは「茶色染」のみ。
茶色なんて地味な、というのは現在の感覚で、当時、茶染は衣類の色目としては上品な好みとされ、本書では50種の色が紹介されている。
茶染のみ50種を掲載した、染色の見本帖。これが流通する社会というのは、すごい。

次に、辻番心得書『異扱要覧』。
これは武家屋敷の辻々の辻番の心得を書いたもの。
境目の行き倒れは足の方が引き受けるとか、
捨て子があった場合(3歳までは捨て子、4歳からは迷子だが、これに限らず、5~6歳でも歩けなかったり足が汚れていなかったら捨て子というべきである、ともある)には、生死の問題があるので「年番、月番の構(かまひ)なく、捨られ候屋敷にて早速取上げ養育いたし…」とまず助けることなどを規定している。
現在とは基本理念が全く異なるとはいえ、無法地帯ではない。
一つの完結・独立した社会システムが確立していることが実感できる。

また、これは刊行本ではないが、
請け負った造作を人に見せず、話さない事等を誓った「職人誓詞」。
「大工町 大工 久右衛門」が誓ったものだが、彼はいったい、どんな細工を密かに請け負ったのだろうか。

そして、これらの和本の刊行を知る基礎資料として、例えば『享保以後江戸出版書目』が紹介されている。

享保七年(1722)、幕府は出版統制・検閲強化を目的として、五箇条の法令を出した。
・第一条 儒書・仏教書・神道書・医学書・歌書の新刊書は許可するが、異説を交えた物は禁止。
・第二条 過去に出版された書籍のうち、好色本を絶版
・第三条 諸家の先祖について誤りを記し世の中に流布することの禁止等
・第四条 作者、版元の実名を奥付に記載することの義務化
・第五条 徳川家に関する書籍の出版禁止

こうした検閲体制が始まる一方、
「重板」(同一内容)、「類板」(類似内容)を禁止することにより、作者・版元の権利も明確化され、出版数は増大したという。

その版権認定の基礎資料として、記録を義務付けられたのが江戸では「割印張」、大阪では「差定張」や「開版御願張扣(ひかえ)」。
『享保以後江戸出版書目』では、享保中頃から文化まで、江戸の出版内容(署名、冊数、丁数、著者名、版元名、売り出し店名、届け出日、認可・不認可の有無を全て記載しているというのだから、史料価値としては高い。
こんな史料まで残っている日本。
「和本」の世界は、もっと注目されるべきだし、日本の知的共有財産として、より手軽に見られるようになってほしい。


ということで、最後に手元の和書から、数冊紹介したい。

◯鳩翁道話
江戸時代後期の学者、柴田鳩翁による石門心学(石田梅岩を開祖とする実践哲学)の教えを、養子の武修 (遊翁) が編纂したもの。天保6 (1835) 年に正編3巻、同7年に続編、同9年に続々編が刊行。各3巻で計9巻となり、江戸後期のベストセラー。1929年さらに拾遺が加えられている。
東洋文庫や岩波文庫で復刻もなされているようだ。
鳩翁道話

◯類題木葉集
芙蓉庵井左編、文久元年 (1861)刊行。俳諧の小本で、春夏秋冬の4冊。
類題木葉集

◯大工雛形等
綾歌町の大工が手元の資料一式を売却し、それを入荷したらしく、
大工の雛形関係も多い。
町家雛形のほか、武家の雛形、掲載していないが欄間のデザイン集や棚の雛形などもある。
江戸期から、こうした職人用ガイドブックが刊行され、明治にまで続いていたのには驚いた。
職人の世界は単なる口承だけではなく、こうした出版文化にも支えられていたようだ。
大工雛形 (1)

大工雛形 (2)

◯日本紀
日本書紀の別称。どちらが正式名称かについては、おおむね「日本書紀」の意見が多いようだが、反対論もあるようだ。本書では、「日本紀」に対して、「ヤマトフミ」とルビを振っている。
これは明治刊行。
日本紀

【目次】
・和本の海へ
(凡例)
・生き物
 (一)『霊象貢珍記』など
 (二)『養鼠玉のかけはし』など
・見立て生花
 (一)『挿花古実化』
 (二)『見立花のお江戸』
・通俗易占書
 (一)指紋占い『男女手紋三十二相』
 (二)宝くじ必勝法『富札買様秘伝』
・博奕
 (一)サイコロ博奕『博奕教止秘伝書』
 (二)花札『美よし野』
・見本帖
 (一)『小紋帖』(仮題)
 (二)『諸色染手鑑』
・言葉遊び
 (一)「鈍字画」「風流絵合せ」など
 (二)『連々呼式』
・戯作
 (一)色摺り戯作『遊子戯語』
 (二)赤本『松の後』
・遊里案内
 (一)遊女評判記『姿摸嗜茂草』
 (二)岡場所細見『おみなめし』など
・諸職
 (一)大工用語集『紙上蜃気』
 (二)『江戸好事職人尽』「職人誓詞」
・食餌
 (一)『和歌食物本草』
 (二)『便用謡』『臨時客応接』
・武家作法
 (一)「波智盃豆腐」
 (二)辻番心得書『異扱要覧』
・人名録
 (一)『家雅見種』
 (二)「諸家人名江戸方角分」
・印譜
 (一) 『一刀萬象』
 (二)『日本麦酒集』
・邦人法帖
 (一)『詩仏苦吟帖』
 (二)『三十六峰山陽外史遺墨』
・書画展観目録
 (一)『赤松居展観図録』
 (二)『南可亭書画展観目録 乙亥』
・画譜
 (一)『蒲桃画譜』
 (二)文晁『画学叢書』
・寿会詩集
 (一)歳旦詩集『三元彩毫』
 (二)『東都嘉慶花宴集稿』
・狂詩
 (一)『図惚先生詩集』
 (二)『一部詩集』
・わ印
 (一)『開巻斂咲』
 (二)『春窓秘事』
・写本
 (一)『牛渚唱和集』
 (二)『秘談抄』
・自筆稿本
 (一)「蒼海一滴集」
 (二)「淇園三筆」

附録
『國書總目録』の使い勝手
『享保以後江戸出版書目』
『国会図書館・目録』
『日本小説書目年表』
書目年表類のさまざま

作後贅言

書名索引
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category: 読書

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野鳥観察会(ビンズイ、庭園のアオサギ) LOG 2015.02.15  

野鳥観察会(ビンズイ、庭園のアオサギ) LOG 2015.02.15

2月15日は、野鳥観察会でした。久しぶりに家族総出。
栗林公園では梅まつり。梅観茶会(野点)があって結構な人が来ていましたが、
観察会はハヤブサ、クロジ、イカル、カワセミなどを観察して大満足。
オフィシャルな結果報告は、こちらで行っていますが、アオサギが巣上にいました。たぶん抱卵中です。
まだ2月ですが、(香川の)留鳥はもう春支度ですね。

さて、ここでは別の写真をご紹介しましょう。まず、ビンズイのおしり。
もこもこですね。頬ずりしたい。
201502ビンズイ

そして、今月のアオサギ。栗林公園ならではの風景ですね。
201502アオサギと舟

もっとフィールドに出たいのですが、事務作業のため、今年は、毎週末は自宅で缶詰めです。
現実逃避にAmazonで古本の値段が下がっていないかばかりチェックしています。むむむ。
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category: 雑記:日々のこと

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メジロの眼―行動・生態・進化のしくみ  

メジロの眼―行動・生態・進化のしくみ
橘川 次郎



2014年、日本の鳥類の研究または鳥類保護に関し、特に顕著な功績があった人に贈られる第18回山階芳麿賞が、橘川次郎・小西正一の両氏に贈られた。

小西氏は、「小鳥はなぜ歌うのか (岩波新書)」という著書を読んだことがあるが、橘川次郎氏の名前は全く知らなかった。

そこでプレス・リリースを見ると、この両氏は海外の研究者であり、だから今回は「特別賞」として贈与するのだ、とあった。
そして橘川氏は、オーストリアでメジロの研究を行っている研究者である、と。

その方の、おそらく唯一の日本語での著書が、本書である。
古風な感じすらする、地味な装丁。タイトルも奇を衒ったものでもない。
おそらく部数も少ないだろうし、刊行当時、僕は見過ごしていたようだ。

しかし本書は、とんでもなく大規模・長期間の野鳥研究の成果が凝縮されている。

著者は、オーストラリアのヘロン島で、なんと1965年から約30年間、島のメジロ全てに標識をつけ、その巣を見つけ、親族関係を明らかにしてきた。
そして島における個体と群の生活、そして個体数の変動、進化に至る(と思われる)要因等について、極めて具体的な成果を挙げていく。

今後これほどの長期間・大規模な研究が個人の研究者によって成し遂げられるとは考えにくいし、特にそれが日本人の手によることは困難だろう。

鳥類を通した進化の研究といえば、「フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」が有名だ。

残念ながらメジロは、あそこまでの進化的ダイナミズムは無い。

だが、だからこそ、日本の我々の周囲にいるメジロとも共通する進化の仕組みを理解するヒントを、本書は提供してくれる。
また本書の巻末には、参考文献、引用文献、用語説明、諸索引が完備されており、この本は世界に繋がる窓となっている。

本書は、オーストラリアで活躍する大鳥類学者が、日本に残してくれた贈り物であり、その価値は、時が経つにつれてより高まるだろう。
これほどの成果が、日本語で読めることは幸せである。

【目次】
メジロとの出会い
1 メジロの社会(一) 群れ生活
2 メジロの社会(二) 順位制の役割
3 メジロの生態(一) 生活史
4 メジロの生態(二) 親の習性
5 メジロの生態(三) 個体群動態
6 メジロの生態(四) 分散と移動
7 メジロの進化
8 行動、生態、進化のしくみ







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category: 野鳥

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アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY   

アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY
マーク・オーウェン,ケヴィン・マウラー



アメリカの特殊戦闘部隊と言えば、陸軍のグリーンベレー、デルタフォース、
海軍のNavy SEALsが有名で、フィクション・ノンフィクション問わず様々なメディアで取り上げられている。
近年よく聞くのがNavy SEALsだが、その中でも更に精鋭を選抜して構成されるのが著者が属していたDEVGRU。特殊精鋭部隊の更に選抜部隊なのだから、その実態には不明な部分が多い。

ところが、本書は、著者がNavy SEALsからDEVGRUに選抜されるまでの試験、DEVGRUの隊員・チームリーダーとして関わった様々な作戦を紹介する。中でビンラディン暗殺作戦については、かなり詳細な地図。作戦展開図などを付しており、詳しい。
こういう内部暴露本の常として、やはり軍の戦術、技術、手順や科学技術などは、秘すべき情報は隠されているし、時系列がぼかされてい箇所もある。
またアメリカ合衆国が本書の内容を正確という筈もないし、「秘して語らず」という伝統のあるNavy SEALs他隊員からは、むしろ「嘘だ」と言われることもあるだろう。
だから、本書が正しい・間違っているという点に拘るのは不毛と考える。現在のアメリカ特殊戦闘部隊の参考情報として読みたい。
特に、すでに著者はマット・ビソネット(Matt Bissonnette)だと特定されているようなので、全てが虚構ということはないだろう。

さて、まず本書を読んで痛感したのは、まずはその徹底した現実主義だった。
作戦において理想も期待も持たず、考えうるシチュエーションを全て試す。
また任務完了後、殺害した人物を特定するために血をぬぐった写真を撮影し、DNAを採取し、PCや資料など、持って帰れるものは全て持ち帰る(SSE)。
戦争の是非については、その立場や論点から様々な意見があることは承知した上でだが、
実際に戦争なり軍事活動を行わざるを得ないシチュエーションになれば、日本はここまで徹底したリアリズムを突き通すことができるのだろうか、と思わざるを得ない。
リアリズムなき戦争は、命の浪費に過ぎないだろう。
兵士の育成や作戦行動が日常化しているアメリカの到達点に対して、軍事アレルギーから拒否するのは簡単だが、もし日本が侵攻された時に、命を粗末にする作戦を展開されては困る。
(なお、「日本が侵攻されることはない」という考えに立つことが、すでにリアリズムの放棄だろう。)

次に、現在のアメリカの交戦規程について。
包囲したら「呼び掛け」で降伏するよう呼びかけるとか、「武装していない者は攻撃してはならない」とかいうものだ。もちろん、人道上は正しい。
だが、相手がこの交戦規定を利用すれば、単なる「逮捕」で終わる。そして数か月のちには釈放され、再びゲリラ的に戦うことになる。

この交戦規定を順守することで作戦が破綻したのが、レッド・ウィング作戦。4名のSEALs隊員が攻撃目標近くで3名の山羊飼いと接触し、前線基地との通信連絡ができなかったことから、交戦規程に従い3名を非戦闘員とみなして解放。その結果、タリバンに通報され、隊員3名が死亡、隊員を救おうとした即応部隊のヘリも撃墜され、16名が死亡した。その顛末は、「ローン・サバイバー」でも描かれている。

交戦規程は現代戦では当然あるべきだろうが、果たして日本ではどうなるのだろうか。
イラクに派遣された頃、自衛隊の交戦規程では殺されるまで応戦できないようなモノだった印象があるのだが、このあたりの議論が継続されないのもリアリズムの欠如だろう。

さて、本書では、かなり話題になった様々な作戦に著書が関与していることが触れられている。

もしお読みになる際は、デルタフォースなどが参加していたが悲惨な結果に終わったモガディシュの戦闘を描いた「ブラックホーク・ダウン」、ソマリア沖でのアメリカ人船長誘拐事件の「キャプテン・フィリップス」、先に触れた「ローン・サバイバー 」、そしてビンラディン暗殺計画を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ 」などを見ていると、文章が映像として浮かびやすいだろう。


【目次】
プロローグ ブラックホーク・ダウン ビンラディン暗殺作戦
1 グリーン・チーム DEVGRU選抜の厚い壁
2 キル・ハウス 世界最強の特殊部隊へ
3 教訓を学ぶ SEAL5時代のイラク駐留
4 ナイト・ストーカーズ 武器商人を急襲せよ
5 3度目のイラク派遣 ターゲットを急襲する日々
6 ソマリアの海賊 人質救出作戦の顛末
7 長い戦争 ナンバー2からチーム・リーダーに
8 キル・ゾーン アフガン最悪の州にて
9 UBL 運命のオペレーションのはじまり
10 ネプチューン・スピア ”ペーサー”を倒せ
11 出撃命令 仕事そのものが報酬だ
12 お出かけ 出発数時間前
13 C1制圧 側近との銃撃戦
14 ビンラディンの息子 あっけない幕切れ
15 「3階、確保!」 ビンラディンの最期
16 タッチダウン 「やりとげちまった夜」
17 現場からの脱出 自由に向かって飛べ!
18 確認作業 そして任務は終わった
19 ろくでもない休暇 最後はオバマだと?
エピローグ








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category: 戦争

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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ジャーナリストの死  LOG 2015.2.1-2015.2.8  

ジャーナリストの死 LOG 2015.2.1-2015.2.8


◆ジャーナリストの死
様々な報道がなされ、また今後も様々な情報が飛び交うことと思います。
後藤氏がシリア入りしたのが「報道」のためか、湯川氏の救出という「プライベート」なものだったかは、僕には良く分かりません。

しかし、その死がどういう行動の結果であったかということと、
後藤健二氏が報道してきたこと、報道しようとしたことについては、
切りなして考えるべきと思います。

そこで思い出されるのが、同じくシリアで凶弾に斃れたというジャーナリスト、山本美香氏の存在です。

もちろん、お二人のどちらが上という話ではありませんし、
報道を自粛すべきとか、自己責任云々を議論するつもりはありません。

ただ、僕自身も上手く整理できていないのですが、
少なくとも、現代の日本から、戦場(や危険な現場)における市民の姿を伝えようとしたジャーナリストがいたこと、
そして、そのような方が二人とも犠牲になったことは、
きちんと考える必要があるのではないかと思います。

二人が伝えようとしてきた事態は、今も続いています。
彼ら自身がその事態に斃れ、僕たちは遠い中東の現実を突きつけられたにも関わらず、
数か月経てば二人の死を「過去の出来事」にしてしまう。
それは、同じ日本人として問題ではないかと思います。

「できること」が思いつかなくても、「考えること」、「知ること」はできます。
果たして僕らは、彼らがその人生で伝えようとした事実に対して、どう向き合っていけるのでしょうか。

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category: 雑記:日々のこと

thread: 日々のつれづれ - janre: 日記

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エボラの正体  

エボラの正体
デビッド・クアメン



2014年、西アフリカ(ギニア、リベリア、シエラレオネ)でエボラのアウトブレイクが発生した。
エンデミック(地域流行)ではなく、エピデミック(流行)という点が、これまでと異なる。
人類とエボラの歴史は、新しい時代に突入した、と思って良いだろう。

既に人口合成まで達成しインフルエンザウイルスと異なり、エボラウイルスの研究はまだ進んでいない。
その原因は、通常、アウトブレイクが発生した集落-多くはジャングルの奥深くの限定的な集落-において、
感染者の大半が死に絶え、アメリカやWHOが情報をつかんだ時点では、既に感染経路等を把握すること自体が困難なためだ。

それでも研究者は、限られた情報から自然界における保有宿主を突き止めるべく、多数のサンプル(保有宿主が疑われる各種生物)も収集するが、現時点では未解明である。
ただ、コウモリではないか、と推測されているところには来ている。

コウモリは哺乳類全体の21%(「コウモリの謎: 哺乳類が空を飛んだ理由」(レビューはこちら)による)~25%(本書)を占めるほど、哺乳類では種分化が進んでいる。
種分化が進むということは、それに伴うウイルスの分化も進んでいる、ということだ。
そして、極めて多数の個体が接触して生活し、出産等で体液に接触する可能性も高いこと、
長距離を移動し、別地域の個体と交流すること、
平均寿命が長いこと(一部の小型食虫型コウモリは、20~25年生きるものもあるという)など、
変異したウイルスが死滅しない条件も整っている。

エボラはアフリカの病気というイメージが強いが、フィリピンで捕獲されたカニクイザルで確認された例もあり、
保有宿主である生物が特定できれば、その生物の分布域等からエボラの感染可能性も探れる。

特に、明確な治療方法が無い現在、そして治療体制が整っていないアフリカにおいては、
「感染しないこと」が最も重要だからだ。

本書は、エボラウイルスのこれまでの発生を辿りつつ、
特に「保有宿主は何か」という根源的な謎を探る研究史を辿るものであり、
研究者の「もどかしさ」が伝わってくる。

ただ、エボラの自然宿主がコウモリとすると、それを根絶することは不可能だろう。

むしろ、人類がエボラに対して突きつけられた課題は、今回の西アフリカでの流行が示したように、
発生国の「貧困、不十分な医療体制、政治的な機能不全、絶望、そして国際社会による長年の怠慢と無視」(本書p184)だ。

ワクチンや抗ウイルス薬が開発されたとしても、それが真に必要な地域に適用されるのか、
また、当該国において、正しく対応できるのかとなると、現時点では困難である。

2014年2月現在では、エボラは沈静化しつつあるという簡単な「雰囲気」が漂っているだけで、
日本のメディアの主体的な取材報道は見られない。

だが、エボラの感染者は、まだ残っているし、死者は続いている。
まして、エボラウイルスが消滅したわけではない。

「世界」にとって、更なる新型インフルエンザの発生とともに、エボラウイルスの脅威は残っている。
それを常に意識しておきたい。また、新しい情報が出ることを望む。

【目次】
ter1:山積みにされた13頭のゴリラの死体
Chapter2:浮かび上がってきたいくつかの共通点
Chapter3:姿を消した多数のゴリラとウイルス
Chapter4:エボラはどこに隠れているのか?
Chapter5:アフリカ外に感染を持ち出した最初の人物
Chapter6:あらゆる伝播は勝者総取りの宝くじ
Chapter7:フィリピンまで7000マイル移動の謎
Chapter8:人間の形をした悪霊
Chapter9:正確さ欠く『ホット・ゾーン』
Chapter10:エボラに感染した2人の研究者の明暗
Chapter11:手袋を突き抜けた針
Chapter12:人間がエボラの生息地の中にいる
:伝播先はウイルスが自分で考える
Chapter14:波動説か粒子説か
Chapter15:すべては機会のもたらす産物
Chapter16:重要な保有宿主としてのコウモリ
Chapter17:マールブルグとエボラに関する画期的発見
Chapter18:冒険旅行の犠牲者
Chapter19:移動するコウモリの群れ
Chapter20:一人の少女にまつわるエピソード
Chapter21:ウイルスも動物も人も共存している
エピローグ:エボラはさらに進化し、適応力を身につける
解説:西原智昭(WCSコンゴ共和国自然環境保全・技術顧問)
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category: 感染症

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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カブトムシと進化論―博物学の復権  

カブトムシと進化論―博物学の復権
河野 和男



進化という概念が定着した時代と国にあって、つくづく良かったと思う。

例えば目の前にいるスズメを理解するだけでも、進化という認識は欠かせない。
鳥類というグループ、その中で、種子食の野鳥として在る意味。
スズメの色、鳴き声、形態、生態-そして、現在の日本に生息していること。全てに必然性がある。
進化という概念抜きで、その必然性を理解するのは困難だ。

また、特定の生物の進化史を辿ることは、歴史時間の間に、その生物種に与えられた外部要因を調べることに直結する。外部要因とは即ち、気候変動や生物種との競争等だ。
そして、複数種に共通する気候変動や生存競争を読み解けば、それは地球の歴史に繋がっていく。

ただ、ダーウィンの「種の起源」が1859年だから、まだ進化論という学問は150年程度しか経過していない。だから、「進化」というメカニズムは歴然としてあるにも関わらず、そのメカニズムを理解する「進化論」はまだまだ未解明な点も多い。

それでも、というか、だからこそ「進化論」は面白い。

ただ、「進化論」の最新の知見や最先端の成果は、様々な研究者によって発表されているものの、ついつい陥りがちなのが自己流の進化論解釈に陥り、既に否定された(されつつある)研究こそ真実、と思ってしまうことである。
「進化論」がいかなる展開を辿ってきたのかという点は、やはり押さえておく必要がある。

本書は、「カブトムシと」というタイトルではあるものの、
第1章のダーウィンから第7章の木村資生の分子進化の中立説に至るまで、1/3は進化論史の解説に充てられている。凡百な概説ではなく、非常に丁寧な解説である。
(木村資生の中立説については、「生物進化を考える (岩波新書)」を。レビューはこちら。)

また、第8章からは「種」という概念や、「門」等の高位分類の実在性に関する議論の紹介。
そして第18章からは、種の多様性の解説と、
1冊を通して、進化論史の教科書のような丁寧な内容となっている。

もちろん、その解説の実例として、随所に甲虫類の実例を多数紹介するとともに、種間変異と種内変異の関係、それの進化における意味等を説明する。カラープレートも37図収録されており、著者の説明がビジュアルに理解できるのはありがたい。

最終章までで300pを超えるものの、「進化」についてベーシックかつスタンダードな知識を得るにあたり、この本はとても有用な一冊になるだろう。

【目次】
カブトムシとダーウィン
リンネまでの静的自然観
流転のラマルク理論
至高の銀メダリスト:ウォレス
進化論は進化しないのか?―ネオダーウィニズムと「バベルの図書館」
主体性の進化論:今西錦司
分子進化の中立説:木村資生
進化と進歩、偶然と必然―人間の測り間違い
ゆっくリズム対断続平衡―グールドの異議申し立て
大進化と小進化―前途有望な怪物、ゴールドシュミットの挑戦
進化は末広がり、それとも先細り?
たくさんある種の定義-奇人ホールデンとマイヤーの種概念
地理的隔離と生殖隔離、種分化の仕組み-ドブジャンスキーの見識
種の実在性
高位分類群の定義:分岐分類と進化分類
高位分類群の実存性:系統発生制約
似ているということ-相同と相似そして並行進化
生物多様性:熱帯と温帯
地球上に生物は何種類いるのか?
進化にセカンドチャンスはあるのか? -目下、六回目の大絶滅中
甲虫類の性的異型 -カブトムシの角はどこからきたのか?
カブトムシの角はなぜ長い?
人はなぜ虫を集め、進化を考え、それを語るのか?

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category: 進化論

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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バウムクーヘン、人生の100のリスト、LIFE! LOG 2015.1.26-2015.2.1  

バウムクーヘン、人生の100のリスト、LIFE! LOG 2015.01.16-2015.02.01.

◆バウムクーヘンは続く
「100種類のバウムクーヘンを食べる」夢。
またまたバウムクーヘンを食べました。腹はどんどん福々しくなっています。
#018 2015年1月17日 博多 柳香の「プディングバームクーヘン」
1月下旬はバウムクーヘン続きでしたが、記事が追いつきません(たいした記事でもありませんが)。
少しずつブログにアップしていこうと思います。

◆人生の100のリスト
「バウムクーヘンを100種類食べる!」というのは僕の「人生の100のリスト」の一つですが、
改めてネット上で、いろんな方の「人生の100リスト」を拝見しました。
(「人生の100のリスト」で検索すると、いっぱい表示されます。)
やる気復活。今年も1か月経過しましたが、これからですね。
僕も100リストは手帳に書いていますが、まだ40くらいしか書けていない。
まだまだ自分の欲にブレーキをかけているようですね。
とりあえず、今年はまず、関わっている野鳥保護団体の研究・記録誌の続刊を刊行します(おお、言い切った)。
毎週末作業をしているのですが、刊行は春かな?

「人生の100のリスト」っ何? という方は、ぜひロバート・ハリスの「人生の100のリスト (講談社+α文庫)」(レビューはこちら)をお読みください。人生はカラフルでなくっちゃね。



◆LIFE!
先日、気になっていた「LIFE!」を見ました。

雑誌「LIFE」の写真管理部に勤務するウォルターは、ごくごく平凡な人間。
それどころか、現実逃避の妄想をするという悪癖のため、他人からは馬鹿にされるほど。
ある日、雑誌「LIFE」が突然終わることが決定され、
有名な写真家から最終号の表紙として送られた「とっておきの写真」のネガが、
その封筒に入っていないという事態が発生。
「写真が無い」と言い出せないウォルターは、「少しの間のはず」と、カメラマンを探す旅に向かう。
ところが、いつしか妄想していた冒険を遥かに超える旅が始まり、ウォルター自身が変わり始める…。



と、最初のウォルターの妄想さえ乗り越えれば、なかなかワイルドでカラフルな旅が楽しめます。
ストーリーは「そりゃないだろう」という非現実なもののため、
「真面目さ」や「現実感」を求める方には合わないかもしれません。
むしろこの作品は、現実世界を舞台として、
思い切って一歩を踏み出すことの素晴しさを伝える「ファンタジー」として楽しむのが良いと思います。

なお、吹き替えは酷評されていまして、僕も字幕で見たクチですので、
とりあえず字幕で見ることをお勧めします。

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category: メディア:映画

thread: 洋画 - janre: 映画

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