ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

2014年8月31日 ツルグレン装置  

夏休みの自由研究は、ツルグレン装置。

8月最終日。もう夜は、秋の虫の声でいっぱいです。
今年の夏は、かねてから念願の国立科学博物館へ、子どもたちを連れて行きました。
耐震工事の関係で一部展示を閉鎖するとのことで、良いタイミングでした。

科博では、野鳥はもとより、様々な展示について子どもたちに伝えたのですが、
「解説がマニアすぎる」との指摘をいただきました。残念。
(ニホンオオカミ、ホモ・フロレシエンシスなど、話したいことが一杯あったので…)
でもまあ、話の細かい父と展示を見たことくらいは、記憶してくれるでしょう。

さて、科博では土壌生物を採集するツルグレン装置の展示があったのですが、
下の子が自由研究として、これをやってみたいとのこと。

(ツルグレン装置とは、数mm以下の土壌生物を採集するもの。
上部に土を入れ、上から白熱灯等で照らし、また温度を上昇させることで、
土の中の微生物は下に降り、最後にはエタノール等の皿等に落ちてしまう、という装置です。)

そこでペットボトルを使い、簡易装置を作成しました。
(作り方は、例えばこちら。)

結果から言えば、
・雨の日続きのため土壌生物がおそらく深く潜っていたこと、
・電気スタンドがないので日向に置いて代用したので、効率が悪かったこと
・土を篩にかけ忘れたこと
から、ほとんど採集できず。

とりあえず見つけた2個体が、こちらです。大きさは1.5mmくらい。
201408ツルグレン2

201408ツルグレン1

ツルグレン装置なんて使ったのは初めてでしたが、また新しい楽しみを見つけた気がします。
いつか、もっときちんと採集しましょう。小型のカニムシが見たいものです。

ところで、ツルグレン装置の「ツルグレン」。
人名だろうと思っていましたが、なかなか詳しく分かりませんでした。

調べた結果、ツルグレン装置は、アントニオ・ベルレーゼ(Antonio Berlese)が1905年に開発していた装置を、1918年にアルベルト・ツルグレン(Albert Tullgren)が、熱源を電灯に替える等の改良を施したもの。
アルベルト・ツルグレンは、1874年にストックホルムで生まれ、1958に亡くなったとのことでした。


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自然ウォッチングのコツ―アウトドアを楽しむ  

自然ウォッチングのコツ―アウトドアを楽しむ
山口 喜盛



野鳥観察会で、いつも野鳥に出会えるとは限らない。

案内人は、そんな時に、どれだけ興味を持続してもらえるか、が腕の見せ所だと思う。

目の前に野鳥がいない時こそ、じっくり保護や密猟対策の話もできるし、
構造色や換羽の話、鳥類の呼吸システム、脚の構造、紫外線が見える話など、
できるだけ幅広い話をしたいと思う。
(実際は、おっさんギャグを飛ばしているだけの時も多いが。)

そういう知識面もさることながら、使えるのが野鳥の痕跡。
巣の跡から繁殖期の行動を推測し、糞の跡から水浴び場や休息場を探る。
また、落ちている1枚の羽根から、種を識別し、その行動を語ることも出来る。

(ちなみに野鳥の羽根を拾ったら、シャンプーで洗い、軽く水を切って新聞紙上で乾かす。
 乾いたら、手で整えれば元の形に戻る。
 それを最終年月日と共にチャック付き袋に入れておく。
 こうすると、虫・ダニが発生しないし、何年経っても羽根が朽ちない。少なくとも僕のでは20年経っても美しいままだ。)

でも、もし野鳥の痕跡すら無かったら?

その時は、より様々な生物に目を向けたい。

本書は、そうした幅広く学びたい、という方へのガイドブックだ。
細かい種の識別があるわけではない(それは専門の図鑑を見ればよい)。
本書では、環境、季節をふまえて、チェックできる生き物、その痕跡を、写真と共に紹介している。
植物・昆虫・動物・磯の生き物等々、取り上げているテーマは幅広いので、
どんな地域に住んでいる方でも参考になると思う。

また、野鳥なら羽根やペリット、動物の足跡、食痕、むしろ図鑑では記載されていない事項もあり、
まだ生き物そのものしか見えていない方には、参考になるだろう。

【目次】
第1章 野外に出かける前に
第2章 家の周りで観察する
第3章 里山で観察する
第4章 水辺で観察する
第5章 山や森で観察する
第6章 デジタルカメラを使って観察する
第7章 野外における危険を知る
第8章 全国のおすすめ自然観察地と案内施設

最後に、野鳥の痕跡をチェックするのに有用な図鑑を紹介しておこう。
ちなみに、僕は全て持っている。こういう本を持っていれば、野鳥を見る目の幅は確実に広がると思う。

さて、言うまでもなく、使用中の巣には手を出したり、近寄ったりしないでほしい。
小鳥類の場合、同じ巣を使うことは少ないので、秋~冬に見つけたら採集も可能。
ただその場合も、枝や木を切らないように。巣は同じものを使わなくても、同じ木を使うことは多いようだ。

野鳥の巣は次第に朽ちるし、地域・環境によって使われる巣材も変わる。
見た目よりも、大きさ、構造、用いる巣材の太さ、造巣位置などに注意して調べる方がいい。


写真で巣の図鑑ができるとは思わなかったので、刊行時は衝撃だった。
著者の小海途氏に一度お会いしたことがあるが、巣を保管する場所だけでも大変らしかった。


小鳥類は年に1回は換羽して羽根が抜け替わる。猛禽類も数年かけて換羽する。
だから羽根は、気をつけていれば良く拾う。
まずはドバトから拾って、サイズ感と部位ごとの形状差を体感すれば良い。
ただ、ドバトの羽根はベタベタした手触り。
これで嫌にならずに、ぜひ他の野鳥の羽根を探してほしい。スズメもツバメも、羽根1枚でも美しい。


原寸大なので、拾ったものと突き合わせるのに便利。
でも大きくて重くて高価なので、購入には度胸が要る。
正直なところ、「この本を買っても良い」と思う人は、この本が無くても羽根のチェックができるレベル。でも、持っていて、時折眺めるのに良い。


最後に、初めて買った痕跡本。1990年代半ばは、まだ洋書しかなかった。
本章は羽根だけでなく、骨とか足跡も収録。日本での有用性はそこそこだが(類似例として見たい)、
美しいイラストで、見ているだけでワクワクする。
上記の本は実用性豊かでいいのだが、こういう詩情性のある本が日本でも出てほしいもの。

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category: 環境

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デジタルカメラによる空の写真の撮り方: 感動をドラマチックに残す 被写体別撮影テクニック   

デジタルカメラによる空の写真の撮り方: 感動をドラマチックに残す 被写体別撮影テクニック
武田 康男



10月の空が好きだ。
地面から吹き上げるような暑さが去り、風に秋に向かう匂いが感じられる頃。
青空は高く、そしてまた高い高いところに雲が広がる。

この季節が1年中続けばいいのに、とも思うが、
四季の移ろいがあるからこそ、「10月の空が好き」というピンポイントの好みが生じるのだろう。

その空を、撮影したいと思いながら、毎年過ぎてゆく。今年もできるかどうか…。

本書は、その空の撮影の仕方を紹介するもの。

高性能なデジタルカメラのおかげで、オートでもそこそこ撮れるし、撮り直しも簡単だ。
ただ、だからこそ基本的なテクニックを知れば、一歩進んだ撮影が可能になるだろう。

本書では、次のような空をテーマとしている。

・青空
・雲
・虹
・朝日・夕日
・朝焼け・夕焼け
・雷
・雨・雪
・月・月食
・星空
・日食・金環日食
・オーロラ

僕が、実際にこうした技術を踏まえて空を撮影するかは自信がないが、
少なくとも本書によって、
より自分のイメージに近い写真を撮影するには、どこに気を付けるべきか、という点を学ぶことができる。

なお、インターネット上では、素晴らしい空の写真を見ることができる。

星空の写真(そして栗駒山の写真)では、星と写真の部屋  をお勧めする。

【目次】
Photo Gallery
1 空を撮るにはどんな機材が必要?
2 武田式空をドラマチックに撮る設定とは?
3 被写体別撮影テクニック
4 被写体別撮影テクニック上級編
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category: 技術

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私鉄の廃線跡を歩くIV 中国・四国・九州編  

私鉄の廃線跡を歩くIV 中国・四国・九州編
寺田裕一



プリティラヴ博士のおかげで、旧い街道とか、廃線に気が向くようになった。有り難い話である。

さて、坂出市久米町には、30年くらい前まで、港への線路が残っていた。
民間企業が敷設したものなのか、国鉄が貨物列車用に敷設していたのか、当時から気になったが、今なお放置している。
香川県の廃線なんて、それくらいだろう、と思って本書を開いたのだが、違った。

本書では、1957年(昭和32年)以降の、四国・九州の私鉄廃線が取り上げられている。

香川県で掲載されているのは、「琴平参宮電鉄」。
名前だけは、今の「琴参バス」に残っている。

琴平参宮電鉄は、坂出-琴平間と、多度津-琴平間の2路線(善通寺赤門前駅から合流)である。
中讃の主要な地域をカバーしていたようだ。
1922年(大正11年)10月22日に丸亀通町-善通寺が開通して以降、順次延伸し、1930年(昭和5年)2月には坂出-琴平の直通運転を開始。6月には、坂出-琴平も多度津-琴平も15分間隔の運行だったという。すごい。

ところが、当時は別の私鉄、「琴平急行電鉄線」もあった。
廃線時期が早い(1944年(昭和19年))ため、本書には収録されていないが、
こちらは坂出駅から川津、飯山を抜け、丸亀の郡家を通り、琴平に至る。
1930年には全線が開通していた。

すなわち、1930年から1944年までは、琴平へは
・鉄道省(国鉄)
・琴平参宮電鉄 (坂出-琴平、多度津-琴平)
・琴平急行電鉄 (坂出-琴平)
・琴平電鉄 (高松-琴平)、現高松琴平電気鉄道
の4路線が存在したことになる。

以前、街道の話で「日本の街道ハンドブック―「旅ゆけば心たのしき」街道小事典」を紹介した際(レビューはこちら)、
江戸時代頃の街道の丸亀街道(丸亀-琴平)、高松街道(高松-滝宮-琴平)、多度津街道(多度津-善通寺-琴平)が週お役していることから、
「讃岐の道は金比羅に通じる」という言葉を紹介した。

こうしてみると、この街道が、そのまま鉄道に置き換わっているのである。琴平恐るべし。

太平洋戦争激化に伴い、1944年(昭和19年)1月に琴平急行電鉄線は不要不急路線に指定され、廃線。
琴平参宮電鉄線も、営業不振に伴って1963年(昭和38年)9月に鉄道は全線廃止した。
そして現在のJR、ことでんの路線のみが残った。

それにしても、僕が生まれ育ったのは坂出だが、
こんなダイナミックな公共交通の変遷があったとは知らなかった。
機会があれば、そういう目で地域を見てみよう。路線跡の気配が感じられるかもしれない。
1930年(昭和5年)~1944年(昭和19年)までの地図も、どこかで見られれば面白いのだが。

ちなみに、父や母に聞いてみると、坂出-丸亀-琴平の電車は、
母が学生の頃に利用していたとのこと。
こちらの線路が「電車道」、国鉄が「汽車道」だったそうだ。
なるほどそういえば、四国の国鉄の完全電化って遅かったから(僕の子どもの頃はまだ汽車が多かった)、
国鉄は「汽車」と呼んでいた。「汽車道」という呼び名も納得である。
そして子供の頃、坂出にはまだ電車は無いのだ、と思っていたが、既に撤退した後だったのだ。

それにしても、昭和の初めに私鉄電車が複数路線あった、というのは本当にすごい。過当競争も極まれりである。

さて、本書は地域ごとに出ているシリーズ本である。
上記のとおり、地域ごとに様々な歴史があると思うので、
ぜひ皆さんのお住いの地域について、一度確認してみることをお勧めする。

ところで、僕が子供の頃の坂出駅は、木造の屋根付き(というか箱型)の陸橋で、別のホームに渡る形式だった。
ネット上にないかなあと思って探したら、1枚あった。
こちらの「しこく’ず わ~るど」の坂出駅のページ(本当はフレーム内ページだけど、それだとリンクが貼れないので)。
一番下の方に改修中の駅があり、陸橋が写っている。懐かしい。

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category: 歴史

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サンゴの生物学  

サンゴの生物学
山里 清



あるサンゴの識別方法について知る必要があり、専門の方に教えを乞う。
その際、生物としてのサンゴの基礎知識を学ぶのなら、として推薦していただいたのが本書である。

宝石サンゴ、サンゴ礁という漠然としたイメージしか無かったが、おかげで生物としてサンゴを知ることができた。
いくつか、メモしておきたい。

まず、サンゴの種別について。
第一に、サンゴの成長速度は、光合成を行う褐虫藻が、サンゴの組織に共生しているかにより左右される。
サンゴはプランクトンも捕食するが、褐虫藻による光合成産物も成長に利用している。
そのため、褐虫藻が共生する方が成長が早い。

また、褐虫藻が共生するのが造礁サンゴだが、造礁サンゴか否かはそういう生態学的な相違であって、系統分類学的な相違ではない。

褐虫藻が共生するサンゴにとって、当然ながら褐虫藻があるかどうかは、文字通り死活問題だ。
しかし、近年よく聞く「白化減少」は、この褐虫藻が高水温によってなくなってしまう現象である。

著者の調査によれば、サンゴの種類により相違はあるものの、30℃、31℃では徐々に、32℃では急速に褐虫藻を失うとのこと。

サンゴにとって、水温が1℃異なることは重要な意味を持つのだ。

その温度差が、長い歴史時間で影響した結果が、サンゴの分布にも現れている。

太平洋において、サンゴの分布は西高東低であり、西部に多種多様なサンゴが分布する。
その主要因は、太平洋において、赤道以北の海流が時計回りであるため、西部は赤道で温められた海流が流れ込み、また浅海域であるため種分化が促進。そこから暖流となって北上するが、徐々に海水温が下がるため、種数も減少する。

本書によれば、西太平洋全体の造礁サンゴは73属、八重山諸島以北は66属、沖縄以北は59属、九州以北は43属と減少し、新たに加わる属はないという。

そしてベーリング海峡を経て、北極海の冷たい水と混り、北米大陸西岸では北から寒流として南下。
その低い海水温がサンゴの生息の制約となり、太平洋東部の種数が少ない原因となっているという。

このように、ダイナミックな海流によって種分布が左右されているというのは、生物地理学の面からとても興味深かった。

なお、本書で、脊椎動物の骨はリン酸カルシウムのヒドロキシアパタイトだが、
無脊椎動物の骨は主に炭酸カルシウム化合物であること、
その炭酸カルシウムを成分とする鉱物には方解石(calciteカルサイト)、あられ石(aragoniteアラゴナイト)、バテライト(vaterite)という3種があるが、動物のグループによりどの鉱物が骨となっているかは異なる、という。

( 大部分の無脊椎動物の骨は方解石。イシサンゴの骨格はあられ石。
 同じサンゴでも、ヤギ類の石灰石は方解石。貝殻には両方が混在することがある。
 バテライトはホヤ類の骨片などわずかの場合に限られる。)

動物の骨とサンゴ、貝の手触り等が違うのが、そのままこの成分差を反映しているのかどうかは知らないが、そもそも違う物質なのだ、というのは納得できる話だった。

【目次】
1 サンゴという動物
2 サンゴの生物地理学
3 サンゴを支える褐虫藻
4 サンゴの成長と環境
5 サンゴの生殖
6 海底の静かな果し合い
7 サンゴ群集の生態


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category: 刺胞動物

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アゲハ蝶の白地図  

アゲハ蝶の白地図
五十嵐 邁



昆虫採集の魅惑 (光文社新書)」(レビューはこちら)において、世界を股にかける昆虫採集家の話にワクワクしたが、本書は「蝶」に特化した蝶屋さんの話。

それも、普通の蝶屋さんではない。
日本鱗翅学会の和文誌編集委員長などを務めた後、日本蝶類学会の発起人として初代会長を務め、のちには名誉会長にもなった、日本の蝶屋を代表する方である。
五十嵐氏は未解明のチョウ類の幼虫期研究を行い、「世界のアゲハチョウ (1979年)」、「アジア産蝶類生活史図鑑〈1〉」、「アジア産蝶類生活史図鑑〈2〉」などの大著を刊行している。

また、五十嵐氏の父は「美保関事件」で沈没した駆逐艦「蕨」の館長であり、この事件について「美保関のかなたへ 日本海軍特秘遭難事件 (角川ソフィア文庫)」というノンフィクションも記している(レビューはこちら)。
その筆力は、素人のそれではない。

その方が、自身の蝶人生、特に海外での採集旅行記を纏めたのが、本書である。

本書で取り上げられた期間は、1963-1998の約40年間。
まだ日本を初め、東南アジアの諸国が、発展途上にある時代である。
さらに、訪れた地はインド、中東、東南アジア、オーストラリア、中国と幅広い。

【目次】
第1章 蝶の魔境・インド―1963~1968
第2章 ベンゲットの道・フィリピン―1966
第3章 熱砂の国・イラク―1969~1971
第4章 エルブルツの高峰・イラン―1974
第5章 雨と蛭と原生林・インド―1985~1986
第6章 蒼きブータンの山河・ブータン―1985~1987
第7章 朦気の地・中国―1994.2001.2004
第8章 彩りに満ちる島・スラウェシ―1967.1972.1993
第9章 疫病満ちる半島・ラオス―1998
第10章 遠い国・オーストラリア―1977~1978
第11章 驟雨と老酒・シンガポール―1998

移動だけでも何日も要し、インターネットなど無い時代の、中東・東南アジア諸国の辺境。
蝶を求めて彷徨い、車が故障し、疫病に罹り、飛行機事故に遭遇する。
旅行記としても、俊逸である。

さらに五十嵐氏は、成虫の採集だけでなく、その生活史を解明するというライフワークから、
見知らぬ地で発見した1頭の成虫を手掛かりに、幼虫や卵を探し、食草を見つけ、
採集下での孵化・羽化までを手掛けていく。

その執念、工夫は、驚くばかりであり、生物好き(探究好き)にとって、ワクワクするような瞬間がいくつも閉じ込められている。

東南アジア諸国でもインターネットや携帯電話によってリアルタイムに情報が飛び交い、
一方では、各地の生息地が開発され、、希少な昆虫類が保護対象(そして一方では購入対象)となった現代では、
もう本書のような採集旅行は難しいだろうし、多くの虫屋さんにとっても夢のような世界ではないだろうか。

だからこそ、本書によって、ロマン溢れる採集旅行を追体験できるというのは、非常に嬉しい。
本書は、20世紀ならではの探検記である。蝶好きでなくても、お勧めしたい。







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category: 昆虫

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ダ・ヴィンチ・ゴースト ウィトルウィウス的人体図の謎  

ダ・ヴィンチ・ゴースト ウィトルウィウス的人体図の謎
トビー レスター



「ウィトルウィウス的人体図」といってもピンとこないが、これである。
ウィトルウィウス的人体図

本書は、タイトルがいかにもなので損をしている。
邦題だけかと思ったら、原題も「DA VINCI'S GHOST」だった。
海の向こうにも「ダ・ヴィンチ・コードにあやかろう」という、つまらない思惑を持った人がいるようである。
しかもAmazonのレビューを見ると何だか胡散臭そうな内容に想えるが、オカルトティックな話は一切ない。

本書はダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」という、史上最も有名なイメージの一つについて、
徹底した資料と、無理のない推測により、
紀元前の一建築家の夢想的理論が、人類史に残る天才によって普遍化された歴史を辿るものである。
とても興味深く読んだ。

非常に簡単で誤解を招くかもしれないが、簡単にまとめておく。
詳細は、ぜひ本書を読んでいただきたい。

まず、「ウィトルウィウス」って何か。これすら知らなかったが、人名である。
マルクス・ウィトルウィウス・ポッリオ(紀元前70~80年頃から紀元前15年頃)。
ローマの建築家・軍事技師にして、「建築十書(デ・アルキテクトゥーラ・リブリ・デセム)」(紀元前20年代の半ば)の著者である。

まずギリシア人は、
・神々の意思が造形物に現れている
・よって理想的な人体が存在し、そして人体の各部位には、理想的な比例関係がある
・また建築学とは人、神々の意思を明らかにして人工物と神的なものを結びつけるもの
と認識していた。

さらにウィトルウィウスは、
・全ての構造は、正方形と円を操る行為になる
と考え、
人体の理想的な比例関係、例えば「顎から髪の生え際までは、手首から中指までの長さに等しく、
 いずれも身長の10分の1に等しい」とか「胸の中心から頭頂までの長さは身長の4分の1」などを整理するとともに、
円と正方形の考えから、「人体の中心はへそであり、へその部分にコンパスをおいて円を描くと、指先と爪先が円に内接する。足底から頭頂までの長さを測り、広げた両手の長さと比べると、正方形のように等しい」と説いた。

ただ、いずれも全く図は無かった。単なる説明だけだったのだ。

そして1400年代、再び理想的な人体比例を見出すことは、理想的な建築へと繋がることになる。

まずアントーニオ・ディ・ピエトロ・アヴェルリーノは、1464年に「建築の書(リブロ・アルキトッテニコ)では、「建築物はじつは生きた人間だということを示そう」とした。
ここでは建築と人体は比喩的な関係にある。

さらに、フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニは、
「建築論」(1481-84頃)において、建築は極めて論理的な知的学問であるとし、
ウィトルウィウスを踏まえて、あらゆる調和的な設計は「均衡と釣り合いのとれた人体」から派生するとした。
また、1480年代にはウィトルウィウス的人体図も描いている。

ところがそれは比喩的なもので、円も正方形も正確でなく、また人体の細部もウィトルウィウスの比例に従っていない。さらに、円・正方形の中に納まっていない。


ここで、ダ・ヴィンチが関与する。
当時、建築家として名を馳せようと思っていたダ・ヴィンチは、フランチェスコと交流する立場にあった。

ここからは著者の推測となるが、
ダ・ヴィンチは、フランチェスコにこれらの本を見せられたと考えられる。

そしてその不完全さから、
芸術家・建築家・自然哲学者として生きていたダ・ヴィンチは、
建築物と人体に関係があるならば、誰よりも徹底的に人体の性質を、内外から調べる必要があると考え、人体の解剖を開始したのではないか(1488年か89年頃には、人体比例を徹底的に調査し始めている)。

そして1490年、再びダ・ヴィンチがフランチェスコ一緒に旅をした年に、現在のウィトルウィウス的人体図を描いたらしい。

本書によって初めて知ったが、そもそもウィトルウィウスは、その建築十書に図解は入れていない。
そして、その比例もさして正確ではなかった。

ただその概念だけが独り歩きし、ダ・ヴィンチに至るまで、適当な比喩図や、不正確なウィトルウィウス的人体図しか描かれなかった。描きようがなかった、とも言える。

しかし、人体の解剖学知識を持ち、徹底して調べ、そして類まれな芸術の才能を持つダ・ヴィンチによって、
初めて僕らが現在目にする、「完全なウィトルウィウス的人体図」が生まれたのだ。

そう考えれば、数百年の歴史を経て、このイメージが結実し、
今、ウィトルウィウス的人体図は極めてベーシックなモチーフとなっているが奇跡のようなものだ。

例えばスカイラブ3号のワッペン、
Skylab2

ドコモの電子マネー・iDのマーク。
ドコモ iD

今度から、このモチーフに出会うと、ちょっと楽しくなりそうだ。

なお著者は、ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」は出版のための清書のようなものであり、実は「建築十書」の図解版を画策していたのではないかと推測している。

実際に、ジャーコモ・アンドレアという建築家兼軍事技師による「建築十書」の図解版があり、
これにはダ・ヴィンチが共同制作しているフシがあるという(ウィトルウィウス人体図のデッサンのようなものも含まれている)。

また一方、人体の比例だけでなく、動きも図示した書をダ・ヴィンチが考えており、
現在は失われたが「ホイヘンス稿本」と呼ばれる手稿には、
その中には様々な動きをしているウィトルウィウス的人体図のような図があったと言われる。

多彩な天才と言われるダ・ヴィンチだが、まだまだ謎と驚きは尽きない。

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category: 歴史

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謎の絶滅動物たち  

謎の絶滅動物たち
北村 雄一



絶滅した動物といえば真っ先に恐竜が浮かぶが、
現在により近い時代にも、大量の哺乳類・鳥類・爬虫類・有袋類等が絶滅している。

どうしてもマスメディアでは恐竜ばかり取り上げられるが、
むしろこれらの、絶滅動物こそ、とても興味深い存在である。

なぜならば、これらはの多くは、人類が絶滅させたからだ。

ただ、人類史の黎明期に絶滅させたものは、
残念だが狩る量と狩られる生物量のバランスが、
道具・服・火という他の生物には無い武器によって、著しく不均衡になった結果に過ぎない。

絶滅させた人類も、ただ単に獲物を仕留め続けていたに過ぎない。

この時代の絶滅を責めることはできないと思う。

ただ一方で、今度は大航海時代以降、
近代的な銃や道具により、瞬く間に様々な動物が乱獲され、絶滅している。

当時、多くのフロンティアに節度を求めるのは無理だったのだろうが、
それにしても欲の皮が突っ張っているのが、痛々しいほどである。

こうして人間は振り返り、
本書のようにお手軽な本にまとめることもできるのに、
なぜ未だに、様々な動植物を絶滅に追いやることが放置されているのか。
非常に疑問である。

経済活動とのバランスが言われるが、
「絶滅」という状態は、「減少」とは全く異なる次元であることを認識しておきたい。

【目次】
1 ユーラシアの絶滅動物たち
2 北米の絶滅動物たち
3 南米の絶滅動物たち
4 オーストラリアの絶滅動物たち
5 島と近代の絶滅動物たち

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category: 動物

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台風は瀬戸大橋を渡るのか、そしてバウムクーヘン  

2014年8月9日 台風直撃とバウムクーヘン

本日は、台風のため自宅に沈没。
子どもの自由研究もできません。

いつかのために、現在の台風情報を貼っておきましょう。
2014-08-09台風11号

我が家では時折強い風と雨が降りますが、ずっと継続してではありません。
何だかゆっくり進んでいる感じですが、大きな被害が無いことを願うばかりです。

さて、時間が余ったので、久しぶりにバウムクーヘンの記事をアップしました。

「100種類のバウムクーヘンを食べる」
 #011,12,13 2014年8月02日 ねんりん家の「マウントバーム しっかり芽」、「ストレートバーム やわらか芽」、「甘夏香るマウントバーム」

東京近辺にお住まいで、まだ「ねんりん家」のバウムクーヘンを食べたことが無い方は、ぜひ一度、お試しください。
おすすめは、「マウントバーム しっかり芽」です。
カリっと感を楽しむために、サイズはお好みですが、ぜひ1山タイプをどうぞ。

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category: 雑記:日々のこと

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脱皮コレクション  

脱皮コレクション
岡島 秀治



大学生の頃、一度は見ておかねばなるまいと思って、
自宅近くの緑地帯(幅50m×200m程度で、中に遊歩道がある)で、
セミの脱皮を見たことがある。

太陽も沈み、林にねぐら入りのスズメとムクドリが戻り、
蚊が獲物を探して飛び交う時間。

1本の幹にアブラゼミの幼虫がいた。
カメラ(当時はフィルムだし)をセットし、インターバルタイマーで一定間隔で撮影するようにして、
あとはただ見るのみ。

ゆっくりゆっくり、時々休みながらセミは脱皮していった。

脱皮直後は、白い体に透き通った羽根。
セミはそのまま幹を登って行った。たぶんより安全な場所に移動したのだろう。

たった1回だけだったが、自分の目で脱皮を見届けたという経験は、
やっぱりしておいて良かったと感じている。

本書は、様々な種の脱皮を、大きな写真と共に紹介するもの。

人によっては苦手かもしれないが、昆虫だけでなく、爬虫類、両生類の脱皮シーンも数多く収録されていて、とても興味深い。

中には、ウスバカゲロウ(アリジゴク)など、
どうして見ようと思ったのか呆れるようなマニアックな種もある。

僕は恥ずかしながら、カエルが脱皮する、というのを知らなかった。
見たことないと思ったら、脱皮した皮は、すぐに食べてしまうそうだ。

あと、先日海岸へ行ったら、でっかいフナムシの脱皮殻があった。
息子が「持って帰ろう」と言ったけれども、やめさせた。
潮で臭うし、綺麗な抜け殻でないから…と説明したが、
何よりよりあれは、さすがに僕でも気持ちよろしくない物体であった。


【目次】
Part1 変! おもしろい脱皮
 コガネグモ
 ウスバカゲロウ
 ヒラタミミズク
 ニホンアカガエル
 ヤマアカガエル
 シマヘビ
Part2 きれい! 美しい脱皮
 オトヒメエビ
 ベッコウカガンボ
 ヨコヅナサシガメ
 ハラビロカマキリ
 アブラゼミなど
Part3 びっくり! 大変身する脱皮
 ツマキチョウ
 アゲハ
 ヤママユ
 ナナホシテントウ
Part4 知らなかった! 身近な生きものの脱皮
 オカダンゴムシ
 モンカゲロウ
 キイロショウジョウバエ
 ヤマトヤブカ
 ツチイナゴ
 シオカラトンボ
 ニホンヤモリ
 は虫類・両生類の脱皮
 アメリカザリガニ
 アカテガニ
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落ち葉の下の生きものとそのなかま  

落ち葉の下の生きものとそのなかま
ミミズくらぶ



子どもたちは夏休みである。多くの親は、自由研究・工作で四苦八苦のシーズン。

僕は野鳥をメインに観ているが、だからといって子どもの自由研究も野鳥っていうのも、やや安易に過ぎる。毎年悩むところである。

さて、そのヒントを物色していて、図書館で見つけたのが本書。

落ち葉の下などには、様々な分類の生きものが混在している。
そのため、図鑑で探そうとすると、たくさんの図鑑が必要になって、ちょっと大変だ。

その点、本書は軟体動物、昆虫、節足動物等をカラー写真で紹介している。
5mm以下の生きものも結構掲載されているので、
結構な種類が同定できるだろうし、また「◯◯の仲間」というトコまでは調べられるだろう。
我が家でも、簡易ツルグレン装置でも作って、こういう方向から自由研究ができないか検討中である。

「落ち葉の下」とあるが、庭のプランタの下、石やブロックの下でも応用可能。

毒の有無やちょっとした豆知識も書かれており、
落ち葉や石をひっくり返している少年・少女には、良い本なのではないだろうか。

軟体動物やクモなど、人によっては苦手だと思うが、
生き物好きな大人、庭の生きものが気になる人は、手元にあるとちょっと楽しいと思う。


【目次】
第1章 やわらかいもの
第2章 あしがたくさんあるもの
第3章 あしが6本のもの

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サンゴとサンゴ礁のビジュアル・サイエンス: 美しい海に生きるサンゴの不思議な生態を探る  

サンゴとサンゴ礁のビジュアル・サイエンス: 美しい海に生きるサンゴの不思議な生態を探る
中村 庸夫




人生何がどう進むかわからないもので、
ちょっとサンゴの識別について勉強する必要が発生してしまった。
その縁で、本書を手に取る。

全ページがカラーで、とても美しい写真とともに、
サンゴの生態、そしてサンゴに生息する生物との関係が説明されている。

海中という環境の中で、サンゴ礁がもたらす「生息環境」の多様性は、計り知れない。
それを、多くの写真で実感させてくれる本である。

ただ、基本的な話を紹介するにとどまっており、
例えば取り上げているのは、いわゆる造礁性のサンゴ(沖縄とか南国のイメージ写真に多いアレ)ばかりである。
非造礁性のサンゴは「宝石サンゴ」として取り上げられている程度。

こういう点からも、「沖縄のサンゴ礁って素敵」と感じた人が、
ちょっと詳しく知りたいな、という時に適した入門書と思われる。


【目次】
第1章 サンゴとサンゴ礁
第2章 サンゴ礁の生態
第3章 サンゴ礁の生物たち
第4章 サンゴと環境
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