ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

光る生物の話  

光る生物の話
下村脩



著者下村脩氏は、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の発見により、2008年(平成20年)にノーベル化学賞を受賞した。
本書はその下村氏が、オワンクラゲだけでなく、様々な「光る生物」について、その研究状況や発光メカニズムを紹介するもの。

構成としては、まず生物発光の研究概要を紹介し、続けて第3章でその仕組みを解説。
まず、ベーシックな生物発光であるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応について説明される。
ウミホタルなどが利用するこの反応が、生物発光の全てと考えられていたところ、
下村氏はオワンクラゲの研究から、既知のルシフェリンでもルシフェラーゼでもない発光物質、セレンテラジンを発見(この時、あわせて緑色蛍光たんぱく質GFPも発見)。
この後、他の発光生物の研究の進展により、セレンテラジンをルシフェリンとして用いるセレンテラジン―ルシフェラーゼ発光など、様々な生物発光のメカニズムが発見されている。

こうして研究史を見ると、ルシフェリンではない生物発光物質「セレンテラジン」の発見が、いかに生物発光研究でエポックメイキングだったかが分かる。

一方、ノーベル賞を受賞する理由となった「緑色蛍光たんぱく質GFP」は、その医学面での応用から価値は非常に高い。
例えば蛍光タンパク質を特定タンパク質のマーカーとすれば、容易にそのタンパク質を含む細胞を識別できる。そのため、2000年頃からその応用は爆発的に色がり、今は世界中の大学、研究所、病院などで用いられている。現在の生化学では不可欠の技術である。
しかしながら、本書でも「蛍光たんぱく質の応用」として取り上げられているものの、それはp184-188に過ぎない。下村氏にとっては、生物発光メカニズム研究の過程で「ついで」に見つかったものというのが如実に示されており、おもしろい。

それにしても、世界の発光動物のほぼ全ては海洋か陸上に棲み、その90%以上は海水中に生息するという。
実は淡水中に生息するのは、2種類の日本産ホタル(ゲンジ・ヘイケ)の幼虫とニュージーランド北島に生息するラチアという笠貝だけという。
なぜ海水中に生物発光種が多いのか。
生息環境などをふまえれば、なかなか面白い話になりそうだが、まだ定説はないようだ。

本書は生物発光メカニズムに特化しているが、そうした生物発光と生物進化の観点からの本も読んでみたい。

【目次】
はじめに

I 生物の発光は冷光である
Ⅱ 生物発光の様式について―細胞内発光と細胞外発光の違い
Ⅲ 生物発光の科学をどのようにして研究するか
Ⅳ 生物発光について今までに科学的に判っていること
 1.ホタルの発光
 2.発光バクテリア
 3.ウミホタルルシフェリン発光系
 4.オワンクラゲの発光の研究
 5.セレンテラジン―ルシフェラーゼ発光系
 6.セレンテラジンを含有するフォトプロテイン発光系
 7.前記ルシフェリン以外のルシフェリンとルシフェラーゼによる発光系
 8.セレンテラジンを含まないフォトプロテイン発光系
 9.以上のどの発光系にも属しない発光キノコ類
V 光を放つ科学反応
Ⅵ 生き物が光を放つ目的―なぜ光るのか
 1.防御的発光
 2.捕食目的の発光
 3.交信手段としての発光
 4.繁殖の促進
 5.その他―目的不明の発光
Ⅶ 発光生物の種類と特徴
 1.発光バクテリア
 2.キノコ類
 3.発光動物
Ⅷ 生物発光の応用
 1.ホタル発光反応を利用したATPの分析
 2.イクオリンによる細胞内カルシウムの可視化
 3.ルシフェリン―ルシフェラーゼ系を利用したイメージング
 4.蛍光たんぱく質の応用
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category: 動物

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脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体  

脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体
中野 信子



ドーパミンは、「快楽物質」とも呼ばれる神経伝達物質。
快楽を感じる仕組みは、次のようなものという。

1)人が初めて対称に接した時、「意識する脳」である前頭連合野がそれを好きかどうか判断。
2)好きな物だとA10神経からドーパミンが放出され、脳は快感を覚える。
3)快感を覚えた結果は、海馬に記憶される。

この仕組みは「報酬系」と呼ばれ、これによって人は興奮し、意欲的になる。
適切なドーパミンの働きにより、人はすぐに報酬が得られないようなものに対しても頑張ることができるが、一方でドーパミンを大量に分泌すると、次のような症状も発生する。
・興奮状態になり、時には攻撃的になる。
・アルコールやタバコの依存症や過食など、ある種の行動がやめられなくなる。
・幻覚を見たり、妄想を抱いたりする

本書はこのドーパミンの働きについて、丁寧に解説したもの-と言いたいが、ややテーマがずれている。

実のところ、本書ではドーパミンと「報酬系」という仕組みが「依存症」を発生するという点をスタートに、
むしろ、「依存症」の仕組みについて詳しく紹介されている。

だから、むしろ「依存症 快楽物質ドーパミンによる人間支配」というタイトルの方がよいのではないかと感じた。

依存症については、詳しい。
依存症は、大きく3つの依存対象に分けられるという。

・物質依存(ニコチン、アルコール、薬物、食べ物へなどへの依存)、
・プロセスへの依存(ギャンブル・インターネット・買い物・仕事など)
・人間関係への依存(恋愛・カルト宗教・DV・虐待など)

病気と認識されるものもあれば、アルコール依存症のように、まだ「意思の問題」と誤解されているものもある(この点については、「実録! あるこーる白書」に詳しい。レビューはこちら)。

しかし、これらの依存症には、「これらの依存対象に接しているとき、人の脳の中にはドーパミンが分泌されている」という共通点があり、その仕組みを詳しく紹介する。

例えばアルコールは報酬系に直接関与し、ドーパミン分泌を抑制するブレーキであるGABA神経の活動を弱らせる(→ドーパミンの分泌が促進される)、とか、
タバコは喫煙開始後15秒程度で報酬系を活性化させるが、その作用は長持ちしないため、吸って吐くの間に快感の発生→喪失が繰り返されている、など、依存症のメカニズムについて詳しく、なかなか面白い。
(と思えるのは、僕が酒もタバコもやらないからだろうが)。

さらに第4章では、特に他者からの承認・評価・信用など、他人から評価されること(社会的報酬)もとりあげる。ただこの章に至ると、もはやあまりドーパミンは関係なくなる。

「社会的報酬」の仕組み等は面白く、「ヒト」という動物の進化にかなり関与しているらしいし、また文化面への影響も興味深い。しかしドーパミンの本の一部となっていることで、やや中途半端な印象を受ける。
社会的報酬は、これを中心に、より生物学寄りの本として別にするほうが良かったのではないだろうか。

目新しい知識が掲載されていて興味深い本ではあるものの、ちょっと消化しにくい一冊であった。

【目次】
第1章 快感の脳内回路
第2章 脳内麻薬と薬物依存
第3章 そのほかの依存症―過食、セックス、恋愛、ゲーム、ギャンブル
第4章 社会的報酬
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category: 医学

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久しぶりのバウムクーヘン、ミサゴ観察会  

久しぶりのバウムクーヘン、ミサゴ観察会

まずは、「100種類のバウムクーヘンを食べる」夢の記録。
久しぶりに更新できました。

#010 2014年6月20日  ビアードパパの「バニラバームクーヘン」

また、昨日6月21日は、五色台ビジターセンター主催のミサゴ観察会に、講師として参加。
天気予報は雨、現地は霧が濃いというハードな条件でしたが、
終わってみれば充実した観察会になりました。

僕の報告は、こちらのサイトで行っています。よろしければご覧ください。
霧の五色台でミサゴを満喫

また、主催の五色台ビジターセンターでも、さっそくご報告いただいています。
五色台体験教室 「ミサゴ観察会」 6/21(土)に実施しました!
写真がいっぱいで、楽しそうな雰囲気が伝わると思います。
(ちなみに僕も写っていますが、1枚目に右端の方ではありません。)

また今回、雨に備えて、僕の鳥の巣や羽根、ペリット等のコレクションを持参しました。
博物館と違って、実際に触ってもらいます。
野鳥は「観察」が主ですが、野鳥の巣の巧妙さ(そして、巣にビニール紐が使われる危険性)、
フクロウ類の羽根の手触り、カモ類の羽根の構造色など、
やっぱり実感するのも大事かなと思います。

なお、観察会では、本サイトでも紹介した「フィールドガイド日本の猛禽類 ミサゴ」(レビューはこちら)を活用するとともに、「ミサゴのくる谷 (児童図書館・文学の部屋)」(レビューはこちら)も、実物を持参して紹介しました。
知行合一ですね。違うか。



s-ミサゴ
販売元:http://www.studiokohoku.com/
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category: 雑記:日々のこと

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科学の栞 世界とつながる本棚  

科学の栞 世界とつながる本棚
瀬名 秀明



ノンフィクションやサイエンス関係の本が好きな人間にの悩みは、
本の情報が少ないこと。

書評にしても本屋にしても、主流はフィクション。情報誌「ダ・ヴィンチ」も、大半はフィクションが占めている。

フィクションや文学を否定する気はない。
僕も推理、SF、冒険etc、数多の小説を読んできた。

ただ、森博嗣氏がどこかで書いていたが(正解な引用ではない)、フィクションは自分に中にあるモノに合う作品を求めるもので、ノンフィクションは自分の外にある価値観に触れるもの。

自分に合うフィクションを追い続けるのは心地よいが、それは実世界ではどこにも発展しない(自分の内的感情は別である)。
一方、良質のノンフィクションは、世界を視る目を拡げてくれる。このリアルな感覚は、フィクションにはない醍醐味だ。

だが、どのノンフィクションが良いのか、時代性という束縛から脱出しているのかを知るのは、なかなか難しい。

本ブログがその一助になればだが、もちろん力不足であるし、僕こそ良い本を教えてほしい。

本書は、その助けとなるもの。「パラサイト・イヴ」の瀬名秀明氏が、進路を決めようとしている中学・高校生、仕事の傍ら未知の世界を求めている読者人、そして瀬名氏の父という三者を念頭に、読む価値のある「科学の本」を紹介している。分野は次の通りだ。

【目次】
1 ようこそ!科学の世界へ―いつもと違う本棚に
2 こころの迷宮―脳科学・心理学・生命倫理
3 生命のふしぎ―生命科学・進化
4 空を見上げて―気象・地球・宇宙
5 自然との対話―環境といきもの
6 世界とつながる―物理・数学・医学
7 一緒に歩こう―機械・建築・ロボット
8 科学と人の物語―伝記・物語

有り難いことに、僕がこれまで読んだ本とは、ほとんど重なっていない。
(すなわち、このブログで紹介していない。)
しかも、読みたくなる本が多数収録されている。

「自分には、これらの本を読む自由があるのだ」と思えるのは、本当に幸せだ。
本ブログで紹介したうちで、科学系の本の嗜好が合う方は、ぜひ本書も参考にしてほしい。


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category: 読書

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2014年6月 庭の生き物  

探してみると生き物がいっぱい

子どもの頃に昆虫採集をしていないので(ムダな殺生はしましたが)、なかなか昆虫が覚えられません。
というより、種名を調べてもいない。これでは、いけません。
そこで、できるだけ写真を撮って確認することにしました。
とりあえず庭先からですが、記録がてら。

まずは、先日の観察会でも見たベニシジミ(2014/6/15)です。
口吻を伸ばしています。蜜を吸うのに夢中で、すぐ近くで撮影させてくれました。
ベニシジミ20140615

次はシオカラトンボ(2014/6/15)。
近くの池に行くと別種がいるので、いつか撮影したいと思いますが、トンボはとまってくれない…。
シオカラトンボ

次は甲虫類。菜園に来ます。図鑑等を見ながら識別しているので、間違っていたら指摘してください。

たぶんセマダラコガネ(2014/6/20)。背中の模様は個体変異が多いそうです。
触覚が三本のフォークみたいになっているのがポイントのようですが、撮影しそこねました。
植物の葉を食べるそうですが、トウモロコシの雄花に頭を突っ込んでいます。
両脚を外側に開いているのが夢中っぽくて良い。
セマダラコガネ

同じく、トウモロコシの茎にいました。ヒメカメノコテントウ(2014/6/20)と思います。
5mmもない小さな虫です。こちらはアブラムシを食べるそう。いわゆる益虫です。
ヒメカメノコテントウ

逆に、害虫とされるのがカメムシ類。これはホオズキカメムシ(2014/6/15)。
ピーマン、トウモロコシにたくさんいます。むむむ。
ホオズキカメムシ

害虫とはわかっていますが、農薬は撒いていません。
有機栽培したい、という気持ちもありますが、かといって無農薬の防除策も取りませんので、
単なる面倒くさがりなのです。

次はクモ。苦手な人はごめんなさい。
たぶん、ドヨウオニグモ(2014/6/15)の若い個体。
ドヨウオニグモ

最後は爬虫類。ニホンカナヘビ(2014/6/15)です。キュウリで餌待ちでした。
カナヘビ

見慣れた庭でも、いろいろな生き物がいるものです。今後もチェックしたいと思います。

ところで、畑に来る昆虫って、なかなか図鑑で探すのが難しい。
そんな時に、「虫といっしょに庭づくり―オーガニック・ガーデン・ハンドブック」が便利です。
いつかレビューしたいと思いますが、色々な「身近な昆虫」が載っていて、その生態、食性、農薬を使わない対処方法が載っています。
有機栽培とか無農薬にこだわるかどうかは別として、「家庭菜園の昆虫を知りたい」という時には、便利な一冊です。


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category: 雑記:日々のこと

thread: 日々のつれづれ - janre: 日記

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トロイアの真実―アナトリアの発掘現場からシュリーマンの実像を踏査する   

トロイアの真実―アナトリアの発掘現場からシュリーマンの実像を踏査する
大村 幸弘,大村 次郷



トロイ戦争において、「トロイの木馬」によって滅んだと言われる都市、トロイ。
伝説上のものと思われていた都市「トロイ」を発掘した、シュリーマンの物語。
伝説を信じてトロイを発掘したというストーリーは、誰でも、いつのまにか覚えていると思う。
これほど馴染みがある物語になると、全く疑問を持っていなかった。

しかし、例えばシュリーマンの自伝「古代への情熱」。
僕はシュリーマンが書いたと思っていたが、まず、これは違う。
それどころか、「古代への情熱」という自伝は、シュリーマンがまとめたものですらない。
実は、「古代への情熱」の第1章は、シュリーマンが1880年に書いたトロイとされる地「ヒサルルック」の発掘報告書「イリオス」(Ilios,the City and Country of the Trojaons)の記述をそのまま転用したもの。
そして第二章から第七章は、彼の死後、伝記作家のアルフレッド・ブリュックナーが、シュリーマンの妻ソフィアの依頼で記したものである。

そして本書では、さらに、もう一つの事実を突きつける。
「シュリーマンが発掘した「ヒサルルック」を、トロイと断定する証拠は何もない。」
 (以下、本書に従って「トロイ」は「トロイア」と呼ぶ。)

僕も含め、たぶん多くの方は、次のように理解していると思う。
「シュリーマンは事業に成功した後、子どもの頃の夢をかなえるために考古学を学び、この地を「トロイア」と考えて発掘し、数々の証拠を示し、トロイアを発見した。」

ところが本書では、まずシュリーマンの考古学知識や発掘手法が、完全に素人のままだったことを示す。
・発掘許可も得ないままの着手。
・各時代が積み重なって埋まっているという層序の知識の欠如。
・現場を破壊する可能性の高い雨季の発掘着手。出土した遺物の記録の欠如。
例えばシュリーマンは、ヒサルルックで「プリアモスの財宝」と呼ぶ金製品を発掘しているが、記録がないから、それが一括して出土したのか、具体的にどの地点からどのように出土したのかすら、まったく分からないのだ。

そしてシュリーマンは、ヒサルルックを「トロイア」と思って発掘した。
しかし、それこそが落とし穴だった。
すなわちシュリーマンの中では既にヒサルルック=トロイアであり、それ以外の結論は無かったのだ。
その結果、青銅器時代の層に火災跡を発見したシュリーマンは、それこそトロイアが焼け落ちた結果であり、だからヒサルルックがトロイアである、と主張した。
そして当時(そして現在の)のヨーロッパにおいて、トロイア戦争=焼け落ちるトロイアというイメージは極めて強く、この論理によってヒサルルック=トロイアという認識が確立した。

ところが、まずその火災の時期は、前2000年後半頃といわれるトロイア戦争があったと言われる時期より1000年も古い、前期青銅器時代だったのだ。
この事実は、シュリーマンが晩年発掘を任せたデルプフェルトが指摘し、その結果シュリーマンとデルプフェルトは、その次の層(都市の破壊が顕著な時期)こそがトロイア戦争だと変更した。
そして現在に至るまで、その結論が通用している。

これだけならば、まあ仕方がないかと思う。
ところがヒサルルックを含むアナトリア(現トルコ)で発掘・調査する著者は、
さらに次のような事実を指摘する。

・アナトリアの多くの都市(すなわちヒッタイト帝国の多くの都市)が、後期青銅器時代に火災にあって終わっている。ヒサルルックの火災もこれと同時代である。
・ヒサルルックの破壊がトロイア戦争によるものとしたら、その戦争による遺物(遺体、青銅製の武器)が圧倒的に少ない。別の遺跡カマン・カレホユックでは、火災のあった層で人骨、青銅製の剣・槍先などの武器があり、しかも、建築遺構の内側と外側の人骨では、形質人類学的に差異があり、激しい武力の衝突があったと想像される。
・ヒサルルックがトロイアであるという考古学的な遺物はひとつもない。

すなわち、ヒサルルックがトロイアであるというのは、シュリーマンの思い込みに端を発した幻想にすぎないのだ。

ただ、著者はシュリーマンを批判するものではない。
夢を胸に、ヒサルルックの発掘を行ったシュリーマンの熱意、それは考古学者が見本とする姿であると、随所で称賛する。

だからこそ、安易にシュリーマンに追従して結論を出すことが、考古学者として許せない。

既にヒサルルックは、ほとんど掘り尽され、新たに発掘するような場所はないが、
著者はこれまでの発掘で排出された土砂を丁寧にフルイにかけることで、新しい発見があるのではないかと指摘する。

著者は、シュリーマンをはじめ、これまでの多くの考古学者が「トロイアと思い込んで」ヒサルルックを発掘したと冷静に分析する。その著者の主張は、極めて説得力がある。

アナトリアの西端、海を挟んでギリシアの南に位置するヒサルルック。
そこが「トロイア」かどうか。伝説のトロイ戦争はあったのか。
シュリーマンによって解明されたはずだったが、それが人類の壮大な「思い込み」であった可能性があるならば、それは、やはり検証されるべきだろう。

【目次】
シュリーマンと私
第1章 トロイア再考
第2章 層序を理解しない発掘
第3章 シュリーマンの世界
第4章 虚構に隠された真実
第5章 ヒサルルックの周辺踏査
第6章 ヒサルルックの発掘
第7章 シュリーマン以後の発掘
第8章 アナトリアの後期青銅器時代の終焉
第9章 コルフマンが追い求めていたもの
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category: 歴史

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わたしのウナギ研究  

わたしのウナギ研究
海部 健三



ニホンウナギが、IUCN(国際自然保護連合)によって、絶滅危惧種に指定されることになった(2014.6.12)。
日経新聞の報道はこちら

一方、今年のシラス稚魚が豊漁あるという報道が以前あった(例えばこちら)。
土用の丑の日(2014年は7月29日)が近付くにつれ、ウナギの動向はまだまだ話題になるだろう。

素直に統計からみれば、
「ここ数年では豊漁だが、かつての状態からすれば微増に過ぎない」という程度。
むしろ、ここで自制しなければ、天然のニホンウナギは本当に絶滅するだろう。

グラフを見るとよく分かる。
ネットから拾って貼り付けるのも何なので、リンクだけだが、
ご覧いただければ見事な右肩下がりだ。
ナショナル・ジオグラフイックの「ウナギが食べられなくなる日」

今年の豊漁は、これがちょびっと上向いただけに過ぎない。
増加というほどのモノではない。

昨今の状況を見れば、もはや若干の豊漁を喜んで「増えた、捕った、安くなった」という時代でもあるまい。
シラスウナギが増えた→将来のために漁獲量は抑えよう、というのが本来の姿だろう。

しかし、シラスウナギ漁は規制されているとはいえ、
日本全体で、統一的にそうしたイニシアチブが取られているようには見られない。

漁業者やウナギ専門料理屋の死活問題だという面もあるが、ウナギがいなくなれば元も子もない。

そのウナギだが、近年になってやっと産卵場が見つかった。
しかし、まだ謎がある。
本書で、岡山県旭川をベースに著者が追求しているのが、
「具体的に、どのような場所で、何を食って成長しているのか」ということ。
逆に、それすら明確に分からないまま、
ウナギの消費量の増加にあわせて、成魚とシラスウナギを取り続けていたという事実に驚く。

さて、ウナギは海で産卵し、淡水に入る、というイメージは持っていたが、
実際のところ、1度も淡水域に入らないウナギや、
一度淡水に入って汽水域に降りるもの、しばらく汽水域にいて淡水域へ行くものと様々らしい。

ウナギの生息には、汽水域の方がたくさんエサを食べ、早く、大きく成長できる。
これは、ニホンウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギ全てに共通している。
それなのに、なぜ成長に不利益となる淡水に入るのかは、未だ謎だという。

この点について、近年では、ウナギが競争の少ないニッチに進出しているのではないか、という考えがあるそうだ。ウナギ目の他のウミヘビ、ウツボ、アナゴなどは、言うまでもなく海水性。
ニホンウナギのように淡水に進入するものは、より新しい時代に分化した種らしい。

もしそうだとすれば、
「新天地」であるはずの淡水域への進入路を、河口堰などで遮断し、
生息場所をコンクリートで固めてしまった現在の日本では、
かつての、まだこれらの人工物が無い時代のレベルまでウナギが回復することは、
他の要因(海洋環境、ウナギ漁)が解決しても不可能ということになる。

危機に瀕している、というのは誇張ではない。
現在の個体群から少しでも増加させなければ、将来本当に天然ウナギは消えてしまうだろう。

養殖ウナギという道は拓けるかもしれないが、それはあくまでも商業構造での話。
日本の生態系からは、ニホンウナギが消滅しかねない。

既に、旭川ではウナギの主なエサはアメリカザリガニであり、
外来種であるアメリカザリガニ侵入以前に何を食べていたのかは、既にわからない。

ここから更にウナギが消滅すれば、日本の川の生態系はどうなるのか。

どうしてもウナギは漁業・商業の場で論じられがちだが、
このような状況に至った今、
必要なのは、野生生物として、生態系の面からの評価・保護体制が、漁業・商業を規制するシステムだろう。

でも正直なところ、日本では非常に困難だと思う。
「川からウナギはほとんどいなくなったけれど、完全養殖ウナギの技術が確立して良かったね」というのが
数十後の姿なのではないか。



【目次】
第1章 ウナギを研究する
第2章 ウナギ研究のいま
第3章 研究の現場から
第4章 これからのウナギ研究―ウナギを守るために
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category: 魚類

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ネゴシエイター―人質救出への心理戦  

ネゴシエイター―人質救出への心理戦
ベン ロペス



何だかんだ言っても、日本は世界でトップレベルに安全な国である。
だが、日本の安全を前提にしていると、国外では当たり前の危機に無頓着になりかねない。
その意思のズレは、いざ危機に直面した際に、誤った判断を起こしかねない。

日本国内と国外では状況が違うということを、しっかり前提に置かなければならない。

その一例が、本書のメインテーマであるK&R(Kidnapping for ransom)、 身代金目的の誘拐である。

日本だと、誘拐は大事件。
ただ、近年報道で多いのはストーカーや、乱暴目的の児童誘拐であり、
「行方不明になった」という報道から始まることが多い。
誘拐され、身代金を要求された、という事案は、近年あまり報道で見た覚えがない。
もちろん報道されないだけかもしれない。
それでも多数発生していれば、それなりに情報漏洩も起こるだろうし、警察も防止のための警戒・啓発を始めるだろう。
それらが無いということは、日本では、まだ身代金目的の誘拐は、犯罪として普及していないということだろう。

だが世界では、異なる。
本書の原書は2011年刊行だが、それによると誘拐事件は世界で2万件/年以上発生し、半数以上がラテンアメリカで発生。また近年ではアフガニスタンでも行われているらしい。
誘拐は、収入を得るための生活手段として定着していのだ。

身代金目的の誘拐犯は反復・継続的に誘拐を行う。
もちろん彼らを摘発すればよいが、多くの国では、そうした警察力自体が存在しない(むしろ汚職が蔓延している)。
そこで検討される解決策は、2つ。
一つは警察またはその他の武力をもって、人質救出を行うこと。
もう一つは、身代金を払い、人質を解放させることだ。

身代金を払うことは、「次の誘拐」を防止することにはならない。
しかし、当事者には「次」は関係ない。自分の家族が、仲間が無事戻ればよいのだ。
一方、誘拐犯の目的も、金でしかない。
であれば、冷静に取引し、現実的な身代金を支払うよう交渉し、安全に金と人質の取引ができれば良い。

そのための存在が、本書の著者も行うネゴシエイター、「交渉人」である。
交渉人の目的は、誘拐を

拉致-監禁-生存証明-交渉-身代金の受け渡し-解放


といった流れに乗せ、人質を解放させること。それ以外は含まれない。

身代金を支払うという犯罪者に対する妥協こそ、誘拐を助長しているのではないかと著者に告げる女性もいる。
しかし、著者は語る。

「身代金の支払いに反対し、交渉人が誘拐を助長するという見解は、自動車保険が交通事故を助長するというようなもの。」

交渉人が身代金を支払うのは、人質が無事に帰られるようにするためであり、武装介入や交渉拒否では、人質の解放は保障されない。

実際、誘拐がビジネスとなっている現場では、身代金で解決するのは70%。
一方、力ずくでの救出は10&の成功率という。

日本だと、警察が人質を救出し、犯人を逮捕してくれるはずと思う。
ハリウッド映画などでは、武装チームが急襲して人質を解放してくれる。
どちらも、誘拐がビジネスとなっている現場では、幻想に過ぎないと著者は指摘する。

アメリカやイギリスでは、警察学校で人質交渉人コースがあり、
日常的に交渉をトレーニングする体制となっている。
日本にそのコースがあるのかどうか知らない。
ただ、ニーズの有無に限らず、こうしたスキルとシステムは構築していくべきだろう。


なお、本書で誘拐犯に対する視点として、勉強になった点が二つある。

一つは、いわゆるテロリストは、個人的な計略を満足させるための道具として、主義を利用していることが多く、それは「大義を求める病人」と著者が呼ぶ存在であること。
そして、誘拐においては、身代金を求められる方がビジネスとして完結しており、宗教や政治が目的となった誘拐だと交渉すら困難になるということ。

もう一つは、被害者が加害者と交流して人間として認められることで、殺害される可能性を低くできること。
逆に加害者が、被害者が自分たちと異なる生き物と認識することで、虐殺が容易になる「非人間化」が起こる。
すなわち、例えばグループを形成する時、意識下で同じグループに入らない者は自分と似ていないと感じ、似ていないのなら危険、危険なら殺して構わないと展開しかねない。
こうした内集団と外集団の違いを顕著にして効果を上げた例は宗教であり、外集団を異教徒、不信心者等と呼ぶことから「非人間化」が開始し、迫害・殺害が容易となっていること。

世の中には「大義を求める病人」がいること、外集団の「非人間化」が迫害・虐殺を容易にするとことは、現代においてもっと普及して良い知識だろう。


【目次】
第1部 エンド・ゲーム
 身柄
第2部 ビジネス
 ゴムのニワトリ
 売り込み
 もっとも長い道のり
第3部 降下地域
 初動
 損の上塗り
 詐術
 シェパードの祈り
第4部 新しい波
 最後の手段
 裸の王様
第5部 不和
 立てこもり
 交渉人部屋
 ジャーの兵士
 突破口
 長い議論
 帰ってほしい
 高値の標的
 魔女の集会
第6部 海賊たち
 ザ・ウルフ
 循環

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category: 事件・事故

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2014年6月13日、ホタル。  

ホタル

我が家の子どもたちは、それぞれホタルを見たことはありましたが、
「家族で見る」という経験がありませんでした。
気になっていたのてすが、ホタルの時期は雨の時期。
また、週末の夜は疲れや何やで、結局1年、また1年と過ぎてきました。

これては、いつまで経っても見られない。
そこで今年はと手帳に書き留め、
本日つい先ほど、綾川町枌所付近で、ホタルを見てきました。

往路はとても大きく丸い満月。
到着した川では、風もなく、でも暑くなく。とても気持ちの良い夜です。
そして、暗い水面に光るホタル。
乱舞とまでは行きませんが、あちこちで舞い上がります。

ちょっと遠かったのですが、
1度だけ、橋近くの車に1匹のホタルがとまったので、
子どもたちは触れれるくらい近くで見ることができました。

ついでに田万ダムの方も見てみよう、と行ってみましたが、
ポイントを求めて夜道を走ったら、結局ダム入口までを別ルートで一周しただけでした。

帰りは、子どもたちは爆睡。
そして途中から、雨が降り出しました。ぎりぎりセーフ!

ほんの2時間弱のドライブでしたが、
ホタルを家族で見た、という今日の出来事を、子どもたちが覚えていてくれることを願います。
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category: 雑記:日々のこと

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狼の牙を折れ 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部  

狼の牙を折れ 史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部
門田 隆将



時代に閉塞感を感じている。
既に、年々貧富の差は極端になっている。
以前では想像できないような金持ちが増えた感もある。またメディアでは、それなりの消費力のある層をターゲットにしている。
しかし、派遣、フリーター、生活保護という言葉が既に蔓延しているとおり、
働いてもその日暮らしという層も増加している。
普通に見える家庭であっても、想定外の出費イベントが続けば、簡単にその家計は破綻しかねない。

適正なサービスや適正な価格では満足できず、
チキンレースのように、低価格・高サービスを追求する時代。
何かがおかしい。

この閉塞感によって社会的な良心は着実に荒み始めているものの、
社会への憤りは、とりあえず未だ現実的な暴力になっていないことが、唯一の救いでもある。

今から約半世紀前の1970年代。その憤りは、爆弾テロとして現実化していた。

1974年8月30日、東京・丸の内の三菱重工ビルで起こった爆弾テロは、死者8人・負傷376人と、オウム事件までは日本で最大規模のテロだった。犯人はグループは「東アジア反日武装戦線」の「狼」グル―プ。
「東アジア反日武装戦線」の様々なグループは、その後連続企業爆破テロを起こしていく。

本書は、この爆破テロ事件に直面し、五里霧中の状況から犯人像を推測し、
徹底した捜査・張り込み・尾行等によって実行犯を特定し、
逮捕までに至った公安警察の記録である。

当時の組織、各幹部や捜査官が実名で登場し、捜査手法も具体的に描かれている。
徹底した取材に基づく記述は、リアルタイムで事件を追っているように感じるほどだ。

今となっては、理解することも難しい「大義」のための犯行。
ごく普通の人生のように見える犯人たちの生活。
その裏で作成される、手製爆弾。

平成時代になって久しい現時点では、どこか別の国の話かと思う程だが、
ほんの数十年前、こうした「大義」に基づくテロが、この日本で横行していたのだ。

浅はかな話だが、僕はこの事件のことを全く知らなかった。
そして、文字通りの意味で、「現在進行中」であることも。

警察官らは、血のにじむような捜査の果てに、犯人たちをついに逮捕する。
しかしその後、犯人たちの一部はクアラルンプール事件(1975年8月4日、日本赤軍によるアメリカとスウェーデン大使館での襲撃・占拠・人質事件)とダッカ日航機ハイジャック事件(1977年9月28日、日本赤軍によるハイジャック事件)において、超法規的措置により釈放・国外脱出し、今も逃亡中なのである。

当時とは社会的な思想も方向性も大きく変わった今、
逃亡した犯人グループが日本を変えることができるとは、到底思えない。

しかし、日本は1980年以降も、オウム事件を経験し、様々な異常な犯罪にも直面してきた。
この平和な日本であっても、「大義を求める病人」(「ネゴシエイター―人質救出への心理戦」ベン・ロペス)は確実に存在する。

そのことと、爆弾テロの犯人らが今なお逃亡中であるという事実を重ね合わせれば、
現在の日本の平和も、結局は脆いものだと思い知らされる。

テロの時代と言われて久しい。
東日本大震災を経て、次の大地震や原発問題が日本のメインテーマのようになっているが、
実は社会情勢から考えれば、現実問題として日本はもっとテロリズムを警戒すべきではないか。
本書は警告書として、多くの日本人に事前に読まれるべきである。
新たなテロによって、事後に本書が注目されるような事態にならないことを祈る。

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category: 事件・事故

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NHKスペシャル 超常現象―科学者たちの挑戦  

NHKスペシャル 超常現象―科学者たちの挑戦
梅原 勇樹,苅田 章




「超常現象」という言葉に対して、肌から拒否反応を起こす人もいるし、頭から受け入れる人もいる。
物足りないのは、どうして科学的に突き詰めないのかという点だ。
「信じるか信じないか」という言葉がよく使われるが、この言葉はかなり感覚的かつ個人的だ。
ノストラダムスの大予言が普及していた1990年代ならともかく、もう2010年代。
そろそろそんな低レベルな議論は終わらせてほしい。
少なくとも、多くの人が「理解できない現象が起こった」と認識した事例が在る。
それら全てを「気のせいだ」と断じるのは、極めて短絡的な判断であり、思考停止ですらある。
むしろ、そうした「気のせい」ですます行為が、この問題を精査する機会を奪い、
逆に延々と人類を煩わせる結果となっている。

少なくとも、その「理解できない現象」をモデル化して検証し、
心理的な錯覚(トリックも含む)なのか、
既知のメカニズムによって発生した現象なのか、
未知のメカニズムが介在しているのか、を明らかにするべきではないだろうか。
何時まで経っても「有るのかな、無いのかな」では進歩がない。

注意すべきは、「未知のメカニズム」があったとしても、
それがそのまま霊や超能力の存在に直結するものではないという点だ。
現時点の人間が、全ての物理的メカニズムを理解しているという方がおこがましくて、
まだまだ知らない現象・メカニズムは多いはずだ。
それを解明していくのが科学であって、既知の知識だけで説明するのは科学ではない。

そんな考えに対して、本書は近いスタンスである。取り上げるテーマは、霊、生まれ変わり、念力(PK)、透視やテレパシー(ESP)。お馴染みの「超常現象」である。

これらの超常現象に対して、

超常現象とは、現代科学では説明ができていないだけであって、いつかは必ず合理的な説明がつけられる自然現象や物理現象である(p8)


というスタンスの科学者に対する取材や、同行した検証事例が主となっている。

例えば心霊現象に対しては、
ネズミに備わっている天敵を察知した際の体温低メカニズムが人間にもあり、それが「霊を見た」という恐怖心によって発動した結果、霊に対して冷気を感じるという現象に繋がっている可能性や、
人間が「顔」認識に特化していることから、顔のパターンに近いシミなどを無意識化で「顔」と認識し(パレイドリア効果)、それを霊と感じている可能性などを指摘している。

これらは、「霊という錯覚」を説明する正しい説明と思う。
もちろん、霊現象の全てをこれらで説明できるものではないが、こうした客観的な検討の積み重ねが、より大きな超常現象の理解につながるのだろう。

その点、次に取り上げられる「生まれ変わり」は、錯覚や先入観等で説明つかない事例も多く、本書ではメカニズムの検証までに至っていない。正直な姿勢だと思う。

また超能力に対しても、十把一絡げに「超能力」と扱うのではなく、次のように整理して、それぞれの事例・研究状況を紹介している。
・ESP 透視やテレパシー、予知といった特殊な知覚能力
・PK  物理現象を伴う能力。
  マクロPK PKのうち、金属を曲げたり、物体を動かす能力
  ミクロPK サイコロの出目確率を変化させたり、コインの表裏の確率を変化させるような影響力

このうち、ESPについては、最新の「量子もつれ」というリアルな科学的知識を踏まえた紹介となっている。
量子もつれとは、二つの量子の片側に刺激を与えると、もう一方の量子(何千キロ離しても)にも影響が及ぶ状態のこと。オカルト的な話のようだが、現時点ではこの状態が実験的に生み出され、現象の存在は確認されているとのこと。人間の脳や近くに、このメカニズムが関与しているのではないか、という仮説を紹介している。
もちろんこんな状態を生じるには莫大にエネルギーが必要だろうが、こうした一般的な科学知識の延血用では理解できない状態がありうるという点は、ESPの理解に役立つだろう。

また、ミクロPKについては、乱数発生機に対する無意識化の影響を紹介している。これも(極めて)多数の人間が同時に特定の感情を共有した際に、乱数発生確率に偏りが生じるという「現象」は確認されている。
それがどこまで信頼できる「現象」なのかという検証も必要だが、複数の研究者による複数の事例があることから、現象そのものは存在しそうだ。とすれば、そのメカニズムの解明が必要となるだろう。


超常現象がなければ、別にそれで困らない。
世界は既存の科学知識の延長上で、これからも発展するだろう。

ただ、もし霊という状態があれば。
生まれ変わりというシステムがあれば。
ESPという他者との交感メカニズムがあれば。
PKにより、ごく微小でも人の精神が物理的な影響を及ぼす可能性があれば。

超常現象が実在すれば、世界は大きなパラダイムシフトを起こす。
この可能性がある以上、「気のせいだ」などという思考停止ではなく、
超常現象を素直に検証する体制は必要だろう。
きちんと検証したうえで否定できるのなら、それでも良い。以降は不要な労力が損なわれずに済む。

でなければ、何時まで経ってもエンターティメントとしての霊・超能力のTV番組に付き合うことになる。
それほど無意味に浪費はない。
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category: スピリチュアル

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ミサゴのくる谷  

ミサゴのくる谷
ジル ルイス



ミサゴは、魚食性のワシタカ類だ。
ミサゴ(フリー画像)
(※写真はフリー画像・写真素材集 3.0より。著作者:winnu)

精悍な顔つき。魚を捕る時には水面上でホバリングし、急降下して獲物を掴む。
そのダイナミックな姿は、何度見ても飽きることがない。
僕が住む香川県では、ため池や瀬戸内海といった穏やかな水面が多いためか、わりと高密度に生息している。しかし全国レベルでは、準絶滅危惧種にカテゴライズされる程度の個体数しかいない。
個体数減少の原因としては、餌資源の減少、開発による営巣できる大木や自然崖の減少、生物濃縮による発育・繁殖阻害などの要因があり、簡単に回復することは難しい野鳥だ。

日本では一年中生息する留鳥だが、ヨーロッパ圏ではアフリカへ、カナダ・アメリカでは南アメリカへの渡りを行う。
ハードな渡りは、それ自体が個体数の減少要因ともなりうる。

イギリスとスコットランドでは、1967年には2ペア。そこから保護が成功し、2000年には150ペア、2012年には240ペアとなったが、総個体数1500羽程度であり、未だ珍しい野鳥という。
(出典はLoch of the Lowes Wildlife Blog)

本書は、そのスコットランドが舞台だ。

仲間たちと遊んでいた農園の少年カラムは、川沿いで魚を捕っていた少女アイオアと出会う。
少女の家庭は蔑まれていて、カラムの仲間たちもアイオアを軽蔑する。
だがカラムは、その少女になぜか惹かれ、こっそりと話しかける。
そんなカラムに、アイオアはある「秘密」を打ち明ける。

「この農場に、ミサゴが巣を作っている。」

絶滅しそうなミサゴが、自分の農場に巣を作っている!
カラムはアイオアと共に、アイリスと名付けたそのミサゴを守ろうと決心する。

ところがある夜、一緒にミサゴを見守るはずだったアイオアが、観察用のツリーハウスに来なかった…。


ここまでの粗筋だと、野鳥保護の話か、と思うかもしれない。
もちろんそうした側面はあるものの、あまりその主張はない。
むしろ、少年カラムと少女アイオアの交流、
ミサゴ・アイリスのアフリカへの旅、
そして少年カラムの経験する別れと出会いといった、
1年程度だけど、ものすごく濃密な1年が描かれている。

特筆すべきは、この本が2013年に書かれたということで、
パソコン、Eメール、Google、
そして送信機をミサゴに装着して渡りをリアルタイムに衛星追跡するといった、
最新のテクノロジーが見事に盛り込まれていることだ。

お読みいただければ納得できると思うが、衛星追跡という手法がなければ、
この物語は成立しない。

かといって、テクノロジーが前面に出るわけでもなく、あくまで主役は、少年・少女たちの心。
21世紀になって書かれた、21世紀らしい児童文学の傑作と思う。

ぜひ、大人の皆さんもお読みいただきたい。
最後の場面は、とても切なくて、嬉しい。
(決して解説から読まないでください。)

なお日本でも、ワシタカ類のハチクマを衛星追跡したプロジェクトが実施されたことがある。
現在はもう終了しているが、その追跡結果を見ることができる。
このプロジェクト中、僕もハチクマがどう渡るか、ワクワクして見ていたことを思い出した。

ハチクマプロジェクト2012 
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category: 小説

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野鳥観察会、でもチョウの話題  

ドロバチの巣、ミズイロオナガシジミ、ベニシジミ

6月1日(日)は、事務局をしている野鳥保護団体の野鳥観察会でした。
ホトトギスを肉眼で観察でき、満足。
野鳥関係の報告はこちらでしていますので、ここでは、野鳥以外をご紹介しましょう。
(ホトトギスとツバメ以外、じっくり見られた野鳥がほとんどいなかったというのが実情ですが…。)

まず道中の崖にあった、ドロバチの巣。
ムモントックリバチの巣かな、と思いますが、よく分かりません。
2014ムモントックリバチ

シジミチョウが道の脇にたくさんいました。
チョウはあまり詳しくないので、スタッフの方に聞きながらの観察でした。
こちらはベニシジミ。家の近くでもよく遭遇します。
2014ベニシジミ

こちらはミズイロオナガシジミ。僕だけだと見過ごしていたはず。
ほんとだ、尾が長いぞ!
後翅後縁の小さな橙色斑がポイントだそう。
2014ミズイロオナガシジミ

小さなチョウは見過ごしがちですが、じっくり見ると、バリエーション豊か。
おかげでこれらのチョウは、「僕の認識している世界」に入りましたので、次回からは自力で見つけることができるでしょう。

上空ではホトトギスが囀り、地上ではシジミチョウが吸蜜。

最近のせわしない日々を忘れて、豊かな世界を堪能したひと時でした。
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category: 雑記:日々のこと

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ハッカチョウ、ソウシチョウ  

ハッカチョウ

先週日曜日は、子どもの運動会でした。
暑い中子どもも先生も保護者も大変でしたが、無事終わって何より。

ところで、子どもが通う小学校には、ハッカチョウが住み着いています。
2014ハッカチョウ
(黒い翼の大きな白斑が特徴なのですが、まだ撮影していませんでした。いずれまた。)

この鳥は、外来種ですが、現在は、ほぼ県内全域に分布しています。

香川県での最初の記録は、1993年に高松市でのようですが、
今日まで繁殖拡大したのは、95年頃、中讃(旧綾歌町・丸亀市周辺)で繁殖しだした群れでしょう。

僕も95年頃、丸亀市川西町へ、繁殖していたハッカチョウを見に行ったことがあります。
(当時は、わざわざ見に行くくらい珍しかった。)

中讃のハッカチョウの群は、旧「レオマワールド」の動物園施設から逃げ出したの群だ、というのが定説です。
また残念ながらレオマからは、2004年9月にも台風で施設が破損し、大量の外来種が逃亡しています。

特に100羽程度が逃げたソウシチョウは、現在丸亀市綾歌町を中心に、分布を拡大しています。
(詳しくは、こちらにまとめています。)

外来種は、一度逃げ出したら、取り返しがつきません。

現在、ソウシチョウは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」で規制されていますし、その他の爬虫類・昆虫も規制されています。

ところが一方では、規制緩和による外来種の輸入販売が拡大し、
世界中の動植物が日本のペット市場に入っています。
そして、ペットの放棄や逃げ出しなどで、新たな外来種の繁殖が発生しています。

今さらレオマを責める気はありません(ただし外来種逸出の再々発は許されません)。
また、個々の外来種の個体には、本来何の罪もありません。

しかし、子どもたちが、ハッカチョウやソウシチヨウを「故郷の鳥」と思って育つのは、
何ともやりきれません。

これ以上「日本の風景」を攪乱しないよう、外来種問題には敏感でありたいと思っています。
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