ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

デザインマンホール100選―阿寒から波照間島へ旅歩き  

デザインマンホール100選―阿寒から波照間島へ旅歩き
池上 修,池上 和子



いつの頃からか、華やかなマンホールを見るようになった。
見かけるのは、人口の多い街中が多い。
考えてみれば、多くのマンホールの下水用なので、下水整備が進む都市圏において良く見かけるのは、当たり前だ。
だが、どうしてこんなにデザインに凝る必要があるのか、正直ちょっと分からない。

本書は、このデザインマンホールを100のテーマに分類し、
各テーマにつき複数のマンホールから1枚「これ」というのを選出している。
だから、1テーマ(見開き)につき複数のデザインマンホールが掲載されている。
100種のマンホール、ではない。
数える気にもならないが、1テーマ3種掲載としても、300種以上である。
これを撮影する熱意もすごいが、これほどのバリエーションを生み出した社会もすごい(驚嘆ではなく、茫然)。

本書によると、デザインマンホールの先駆けは1977年(昭和52年)、那覇市だったという。
下水道整備の多くが市町の事業だから、マンホールに市町章を入れる程度のデザインの差別化はあっただろう。
よく分からないが、そういう「市町単位でデザインする」習慣と、
デザイン化して殺風景なマンホールにも潤いを、という思いが直結したのかもしれない。
それがいつしか、「景観に配慮した都市のマンホールはデザインしなければならない」という、強迫観念めいた先入観が形成されているのではないだろうか。
しかし景観に配慮といっても、マンホールを隠すのではなく飾り立てるという方向性には意表を突かれる。何とも不思議な文化だが、他国にもあるのだろうか?

マンホールのデザインなんて本当にどうでも良い話だが、
個人的には、カラー化までする必要はないだろうし、
そこまでの熱意とエネルギーを注ぎ込むモノではないだろうと思う。
しかし、こうしてマンホール本まで出版されるところを見ると、
それなりに評価している層もあるのだろう。よくわからない世界である。

ただ、近年は、市町合併による統一や、路面と一体化する見た目のマンホールも増えているという。
カラーデザインマンホールは減っていくのかもしれない。

とりあえず、通勤路のマンホールを撮影して見た。
これがカラーマンホール。
マンホール・カラー

単色バージョンはこちら。これでも十分自己主張している。
マンホール・単色

こうしてみると、実はカラーバージョンと単色バージョンでデザインが異なっている。
これ、やっぱりこれほど労力を注ぐようなもんじゃないと思う。
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category: 趣味

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面白くて眠れなくなる生物学  

面白くて眠れなくなる生物学
長谷川 英祐



生物学と言っても、その範囲は広い。
本書はDNAの構造や社会性昆虫などのふるまいについて、
「なぜそうなのか」という理由を、進化や遺伝のメカニズムを踏まえて解説するもの。

教科書のように様々な知識を脈絡なく覚えるのではなく、
理由とメカニズムを知れば、生物学はもっと理解しやすく、覚えやすく、楽しいものだ、というスタンスだ。

このように、「なぜ」という観点で生物を解説する本は多いが、
本書は、1章を割いて生物の最も小さな構造、細胞やDNAの仕組みについて説明しているのが、類書に無い点だろう。
DNAが二重らせん構造であるとわかり、まだ50年程度。
だがその仕組みは、驚くほど細やかで、絶妙なものだ。
この地球における生物進化については、アカデミックなものだけでなく、かなりオカルト的なものまで諸説入り乱れているが、それも納得できる。それほど、生命とは奇跡的な存在だと思う。


【メモ】
p29
進化が起こる条件
①世代間で情報が伝わること(遺伝)
②伝わる情報が完全に同じものにならないこと(変異)
③変異体の間に増殖率に関する差があること(選択)
このうち、①と②があれば進化は起こり、③が揃えば環境に対する適応が起こる。
この三つが揃えば、生物でなくても進化は起こる。

p34
・集団遺伝学では、親の世代と子の世代で遺伝子頻度が変わることを進化と呼ぶ。
 卵子や精子の中にどうな遺伝子が入るかは偶然によって決まるので、確率的に必ず起こる変化。
 =上の3つのうち、①と②のみで生じる進化。
・このメカニズム(遺伝的浮動)は、「自然選択」とは別の進化のメカニズム。
 日本の木村資生(もとお)博士が発見した。

p57
・なぜDNAでは、A(アデニン)-T(チミン)、G(グアニン)-C(シトシン)のペアになるか
 普通の化学物質の結合は、「共有結合」。二つの分子の一部が、電子を共有することで一つの化合物になる。
・塩基対の結合は、「水素結合」。プラスまたはマイナスの電荷を帯びた末端の元素が向かい合わせになり、その電気の力で引き合う結合。
 A-C、G-Tだと電荷がプラス同士(またはマイナス同士)になって引き合わない。
・水素結合は結合力が弱く、熱などのエネルギーで容易に離れる。→よって、二重鎖をほどくことができる。(各ヌクレオチド間は共有結合なので、熱エネルギーでは分離しない→1本鎖はほどけない。)

p160
・アリやハチなど社会性昆虫では、ある決定を行う際に多数決による(多数が選択したものを群が選択する。)
多数決を用いる理由=個体の能力が高くない場合、多数決を用いることで間違った決定をすることを避ける。
 例えば個体が正解を選ぶ確率が0.7とすれば、3匹の群れのうち2匹以上が選んだ答えを群の答えとするとき、正解を選ぶ確率は0.784となり、1個体が選択するより正解率が高くなる。
・自然選択を経たアリやハチなどは、一個体が正解する確率は当然0.5より高いと考えられるので、多数決が有効になる。

・ただし、個体が正解を選ぶ確率が0.5より低い時は、多数決は逆に高い確率で間違った答えを選ぶ。
 多数決は万能ではない。
・また、多数決には時間がかかる。これを回避するために、定足数を増減させる。
 定足数を増やせば正解率が上がるメリットと、それによる時間のコストのバランスで定足数は決定する。




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category: 進化論

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科学の宝箱 人に話したくなる25のとっておきの豆知識 TBSラジオ「夢☆夢Engine!」公式BOOK  

科学の宝箱 人に話したくなる25のとっておきの豆知識 TBSラジオ「夢☆夢Engine!」公式BOOK



松尾貴史がパーソナリティであるTBSラジオ「夢☆夢Engine!」で、ゲストの25人の科学者・技術者とのトークをまとめたもの。

このラジオ番組は知らないのだが、なかなか有名どころ・キーパーソンが集まっていて、
ちょっと変わった先端科学・技術の概要を楽しく手軽に読める。
とりあえず、頑張ってゲストを入力したので、ご覧いただきたい。

【目次】
第1章 ロボット、宇宙、科学の最前線
 ロボットを取り巻く環境の今と未来 古田貴之
 日本中が感動したはやぶさの話   川口淳一郎
 満天の星空を自宅で再現した少年  大平貴之
 骨の探偵による遺骨の身元確認   橋本正次
 私たちの身近に潜む数学の話    桜井進
 誰もが化学実験のトリコになる   牧野順子
 微生物がつくる発酵食品の世界   柳田藤寿
第2章 身近な生き物の驚くべき生態
 生物学者が語る生物のキホン    福岡伸一
 カラス博士のカラス能力秘話    杉田昭栄
 『働かないアリに意義がある』著者 長谷川英祐
 『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』著者  本川達雄
 ショジョウバエを使って脳の謎に迫る 上川内あづさ
 セミが身につけた生き残るための秘策 吉村仁
 ヒトはいかにして言葉を獲得したのか 岡ノ谷一夫
 モノの形の謎を解く         高木隆司
第3章 人間の「心」と「生活」を考える
 知って得する渋滞のメカニズム   西成活裕
 筋肉科学の権威による筋トレ講座  石井直方
 嗅覚で感じとる魅惑の世界     東原和成
 理系と文系にまたがる「左右学」  西山賢一
 「食」についてとことん考えよう  伏木享
 夢と睡眠について考える      松田英子
 「顔学」という創造型科学     原島博
 犯罪プロファイリングのプロに聞く 桐生正幸
 コーヒー好きな発明家の研究生活  廣瀬幸雄
 サッカーの物理学的現象を分析   浅井武

ラジオ番組はもう150回以上放送され、以上はその中のほんの一部だが、
テーマも人も、興味深いものが並んでいる。
それでも、有名どころ、またそれぞれのカテゴリでは自著のあるような方が多く、とても楽しめる。

それぞれの方の研究エッセンスを掴むのに最適だし、
多くの方には自著があるので、本書で興味をもった人で検索すれば、更なる世界が開けるだろう。

さらに嬉しいことに、このラジオ放送の録音が全て無料で提供されている。
こちら
上記の25人以外にも、興味深いテーマがたくさん並んでいおり、
今まで読んだ本(このブログ紹介した本も多い)の著者も多数出演している。

僕は全部ダウンロードした。知っている話題や、本書収録のもあるが、
その研究者の自身の声で、その研究の話が聴く機会というのは、なかなか無い。
インターネット時代ならではのメリットだろう。

そして、このアーカイブを使えば、本を読むことができない30分程度の時間、
例えば電車や車などの移動時に、サイエンスの話が聴けるのだ。
ワクワクする話である。

このラジオとアーカイブの存在、僕は初めて知った。
まだご存じない方も多いと思うので、ぜひご利用いただきたい。

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category: ノンフィクション

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環境考古学への招待―発掘からわかる食・トイレ・戦争  

環境考古学への招待―発掘からわかる食・トイレ・戦争
松井 章



道が語る日本古代史」(レビューはこちら)もそうだが、
古墳といういわば考古学のシンボル的存在があまりに強すぎて、
生活遺跡や当時の自然環境には、なかなか目が届かない。

しかし過去の時代を明らかにするためには、豪族の文化だけで足りないことは明白だ。
集落、集落をつなぐ道、また集落周辺と集落内の環境など、分からないことが多い。

本書では、「環境考古学」として、貝塚などのいわば古代のゴミ溜め、トイレ跡、水路跡などに眠る遺物-骨から微小な花粉まで-を丁寧に調査し、当時の生活と環境を明らかにしようとする方法と成果を紹介するもの。
一般的な考古学の本では触れられない話題が満載で、とても楽しい。

骨についた傷から、道具や加工方法を探る。
花粉から環境や耕作状況を探る。
水路跡などから、当時のトイレの状況を探り、例えば生活臭あふれる、平安期のリアルな都の姿を構築していく。

こうした手法がより高度化・共通化されれば、日本における考古学・歴史学は大きく発展するだろう。

また、既にアメリカなどではこの手法を発展した戦跡考古学という分野が存在し、近代における戦場の状況を明らかにしたり、虐殺の検証に活かしているという点も、驚きだった。

様々な分野が関係する総合的な研究手法ともいうべき「環境考古学」は、今後とても大きく発展していくのではないかと思うし、またそうあってほしい。


【目次】
第1章 食卓の考古学
第2章 土と水から見える古代
第3章 人、豚と犬に出会う
第4章 牛馬の考古学
第5章 人間の骨から何がわかるか
第6章 遺跡保存と環境
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category: 歴史

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地層の見方がわかるフィールド図鑑―地層を見に行こう地形や鉱物を調べよう  

地層の見方がわかるフィールド図鑑―地層を見に行こう地形や鉱物を調べよう
青木 正博,目代 邦康



小さい頃から、地層、鉱物というのにも惹かれている。
化石はもとより、多くは長い長い時間をかけて形成されたもの。
そこには、自分の人生とは比べ物にならない、遥かな時間の流れが、目に見えるかたちとなっている。
普通は見えない、「時間」が見えることに惹かれているのかもしれない。

もちろん、なかなか実際にフィールドを回ることはできないし、本を見た程度では覚えられるものでもない。
しかし、少しでも知識があれば、フィールドで気づくことはできる。それが第一歩だ。

本書は「地層」という、分類・典型化しやすい生物や鉱物とは異なるモノの図鑑。
「扇状地礫層」「柱状節理」や「熱水金鉱床」といった地質学的な地層について、写真とあわせて形成過程等を紹介するもの。
ただ、同じ「柱状節理」といった現象でも、おそらく全国に様々な状態・レベルのものがあるだろうから、本書を使ってすぐに分類できるようにはならないだろう。
それでも、どんな地質学的現象があるのか、といったことを知るだけでも、
身近な土地を見る目は変わるものだ。

例えば香川でも、以前紹介した白い凝塊角礫岩の崖や、カキの化石(いわゆる馬蹄石)もある。

◯国分寺の白い崖。香川のThe Waveと勝手に思っている。
白い崖2

◯土器川の木戸の馬蹄石。さらに上流の奥にもあったはず。
馬蹄石

また東かがわ市のランプロファイヤーも有名だが、僕はまだ行ってもいない。

興味を持つこと、その興味に従って行動すること。
そうすれば、また違う世界が見えるだろう。
本書も、地層なんて全く興味もないという方にこそ、手に取ってみてほしい。
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category: 地学

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新聞コラム  

ホトトギス、新聞コラム、野鳥の密猟対策

「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」が有名ですが、
昨日夕方、ホトトギスの囀りを自宅で聴きました。今季初。

ツバメを見れば、冬が終わったと感じ、
ホトトギスの声を聴けば、春が終わったと僕は感じますが、皆様のお近くではいかがでしょうか。
ところで、上記にひっかけた川柳で、
「目と耳は ただだが口は 銭がいり」 というのが有ります。
今年は鰹が不漁というニュースを聞きます。銭がたくさん要るようです。

さて本日、地元は新聞コラムで僕らの団体についてちょっと触れていただけました。
四国新聞コラム「一日一言」5月20日付「楽しい野鳥の聞きなし」
小さな団体でも、継続すれば思いは伝わるのだなと、有り難く感じた次第。久しぶりに嬉しかった出来事でした。

最後に、全国的に野鳥の密猟の時期に突入しました。
野鳥に興味がある・ないに関わらず、密猟に出会う時には出会うものです。
(自宅近くで、おじさんが飼っているメジロを庭先に出しているかもしれません。)

うちの会のホームページに密猟対策についてまとめましたので、ぜひご参考にしてください。

本日は野鳥モードでした。ではまた。
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category: 雑記:日々のこと

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職業は武装解除  

職業は武装解除
瀬谷ルミ子


久しぶりに、一気に読んだ。良い本であった。

本書はDDR、兵士の武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)までをサポートする手法について、おそらく日本で数少ない実践者である著者の半生を綴ったもの。
半生といっても本書刊行時点(2011年)ではまだ30代半ば。
それでいて、ルワンダ、シエラレオネ、アフガニスタン、コートジボワールなどなどの世界の紛争地で、
タフな交渉で武装解除を行い、様々な手法で社会復帰への道を作り上げている。
この分野で活躍することになったのも、誰かモデルケースがあったわけでもなく、
者自らが拓きつづけたもの。そのくバイタリティに触れるだけでも、読む価値があろうというものだ。

「◯◯国の◯◯軍(派)が、武装解除に応じた」という報道を、時々耳にする。
単なる降伏のようなイメージを持っていたのだが、実際はそんな単純な話ではない。

いかに武器を捨てさせるか。そして武装解除した後の兵士をどう社会復帰させるか。
また、兵士らに支配されていた一般人と、どうバランスをとっていくか。
極めて難しく、おそらく同じケース・同じ答えなんて有り得ない状況だろう。

DDRという仕組みの存在自体を、僕は本書で初めて知ったくらいの平和ボケである。
その分野で、日本人女性がスペシャリストとして活躍しているという事実に、本当に驚いた。

著者が現場の体験をふまえて語る平和の姿は、とても厳しい。

 平和をつくるプロセスとは、当事者が望んではじめて行われるべきであること、部外者が興味本位でかき乱すことがあってはならないことを痛感した。そして、皆が手を取り合って仲良しでなくても、殺しあわずに共存できている状態であれば、それもひとつの「平和」の形であり得ることも。(p41)



また、戦争犯罪に問われる可能性があるのに武装解除や和平に応じるお人好しはいない。
そのため多くの場合、和平合意の際は、武装勢力が武装解除に応じることと引き換えに、戦争犯罪を無罪にする取引がなされる。

平和とは、時に残酷なトレードオフのうえで成り立っている。安全を確保するためのやむを得ない手段として、「加害者」に恩恵が与えられる。
加害者(兵士)のうちには、子ども兵士や、強制された者もいる。しかし、「被害者」に同じレベルの恩恵が行きわたることはめったにない。

被害者たちは、元兵士たちの不満が爆発した時、犠牲になるのは自分たちであり、我が子であることがわかっている。そして、『平和』という大義のために、加害者の裁きをあきらめ、理不尽さを飲み込み、自らの正義を主地要することを身を切られる思いであきらめる。(p66)



平和と言えば、仲良しグループの「バラ色の未来」を夢見がちな日本では、理解しにくいかもしれない。
しかし、現実に殺し合いが続く地域では、この程度の平和すら、構築するのは難しい。

もちろん、紛争を防ぐことが、最も大事だ。
だが国家間というより民族・宗教間の対立が深まっている今、今後も残念ながら紛争は起こるだろう。

その時、どのように収め、どのような手段をもって、どのような平和を構築するのか。
そして、日本という国や、我々には何ができ、何ができないのか。
そうした問いを続け、現実的かつ具体的な活動を続けることが、今平和な国々の責務だろう。

特に日本は、DDRにおいて大きなアドバンテージがある。
第二次大戦で破壊されても復興した日本の姿を見て、紛争国の人々はこう感じているという。

「今はボロボロの自分たちの国も、日本のようになれるのではないかという希望を与える存在となっている。
 日本が背負ってきた歴史的経緯は、他の国がどれだけお金を積んでも手に入れられない価値をもっているのだ。」

日本が自信をもって国際貢献できる分野、すべき分野は何か。
著者のような人が活躍している今のうちに、日本は前に進まなければならない。

著者、瀬谷氏の活躍するNGOのホームページはこちら。ぜひご覧いただきたい。

特定非営利活動法人 日本紛争予防センター

なお、国際的に活躍する日本人女性ということで、「私たちにできること。 新型インフルエンザとの戦い (NHKプロフェッショナル仕事の流儀)」(レビューはこちら)の進藤奈邦子氏を思い出した。

本書とあわせてこの2冊は、世界という舞台で働くことについて、とても良い指針になると思う。
女性はもちろん男性でも、そして特に、踏み出すことを躊躇している学生の方々にお勧めしたい。


【メモ】
p35
「DDR」兵士の武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)
和平合意が結ばれて紛争が終わっても、そのままでは安全にはならない。
DDRは、兵士や戦闘員から武器を回収し、除隊させ、一般市民として生きていける職業訓練や教育を与える取り組み。
 
p41
犯罪被害者の家族に、部外者が加害者との和解を尋ねることは、無神経なもの。
それは被害者にとって、心の傷を深める「言葉の凶器」と感じられるのではないか。

「平和をつくるプロセスとは、当事者が望んではじめて行われるべきであること、部外者が興味本位でかき乱すことがあってはならないことを痛感した。そして、皆が手を取り合って仲良しでなくても、殺しあわずに共存できている状態であれば、それもひとつの「平和」の形であり得ることも。」

p66
戦争犯罪に問われる可能性があるのに武装解除や和平に応じるお人好しはいない。
そのため多くの場合、和平合意の際は、武装勢力が武装解除に応じることと引き換えに、戦争犯罪を無罪にする取引がなされる。
「平和とは、時に残酷なトレードオフのうえで成り立っている。安全を確保するためのやむを得ない手段として、「加害者」に恩恵が与えられる。」
加害者(兵士)のうちには、子ども兵士や、強制された者もいる。しかし、「被害者」に同じレベルの恩恵が行きわたることはめったにない。

「被害者たちは、元兵士たちの不満が爆発した時、犠牲になるのは自分たちであり、我が子であることがわかっている。そして、『平和』という大義のために、加害者の裁きをあきらめ、理不尽さを飲み込み、自らの正義を主地要することを身を切られる思いであきらめる。」

p86
著者はアフガニスタンで、武装解除の枠組みを作っていた伊勢崎賢治氏と働いている。

p78
アフガニスタンの支援は、五分野で行われた。
アメリカ-国軍再建
イギリス-麻薬対策
ドイツ-警察改革
イタリア-司法改革
日本・国連-DDR

日本がDDRを選択したのは、他の4分野が各国の外国戦略に基づきすぐに担当国が決められたため。

p91
アフガニスタンでは、日本側で武装解除の交渉や方針に関わっていたのは著者と駒野大使の二人だけ。
アメリカやイギリスでは、専門家や財務情報、軍とのネットワークがすぐに得られるが、
日本にはそのようにノウハウが無かった。

p194
紛争について意識することは、二つの点で日本人にとって重要。
①テロのように、どこでも紛争に巻き込まれる恐れがある。
②「日本のもつ中立性と大戦後の復興が、世界各地の紛争地に大きな影響を与えているという事実がある。」

②について:
第二次大戦で破壊されても復興した日本の姿を見て、
「今はボロボロの自分たちの国も、日本のようになれるのではないかという希望を与える存在となっている。
 日本が背負ってきた歴史的経緯は、他の国がどれだけお金を積んでも手に入れられない価値をもっているのだ。
 日本人の多くは、それを知らない。そして、世界で一定の地位を築いた今、道を見失い、自信を失っている。」

【目次】
1 群馬の田舎から世界を目指す
2 武装解除の現場に立って
3 生きる選択肢を、紛争地の人々へ
4 紛争地での事件簿
5 50年後の世界と日本、そして私たち
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category: 戦争

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道が語る日本古代史  

道が語る日本古代史
近江俊秀



プリティラヴ博士氏(Dr.プリティラヴ-愛妻に恋する博士の日常-)氏の街道紹介に触発されて、「道」というモノが気になりだしている。
「街道」については「日本の街道ハンドブック―「旅ゆけば心たのしき」街道小事典 」(レビューはこちら)を読んだが、併せて見つけたのが本書。

街道というより、そもそも「道」ってどう形成されたのか、ということについて。
そういえば、これまで考古学の本をいくつか読んできたが、やはり古墳をテーマにしたものが多い。
僕の興味の方向性もあるが、考古学と言えば古墳を思い浮かべるくらい、メジャーなテーマなのだろう。
そういうことを考えれば、古代の道に興味が湧いただけでも、ちょっと新しい視点が得られたと満足である。

さて、本書は大きく3部に分かれる。
1つ目は、古代(5世紀頃)の葛城氏の道。
2つ目は、推古朝に造られた直線道路。
3つ目は、律令国家が全国に造った駅路である。

どれも興味深いが、古代史との関わりからすれば、
1の葛城氏の道が面白い。古代の有力部族の栄枯盛衰が、どのようなルートに道を作ったかに反映されているというもの。
現在からすれば、全ての道は存在しているが、かつては特定のルートしかなかった。
それを管理する、もしくは廃絶して新しいルートを設けることが、
権力に直結していた時代があるというもの。

葛城氏については、「謎の古代豪族 葛城氏(祥伝社新書326)」(レビューはこちら)に詳しく、これを踏まえて本章を読むと更に楽しめる。



また、律令国家において整備された駅制(駅路、駅家(うまや))も興味深い。
縁あって広島県福山市周辺へ行くことが多いのだが、かの地に
「駅家」という地名がある(旧駅家町)。
駅と家? 不思議な地名だなと思っていたが、本書によって「駅家(うまや)」があったためじゃないか、と気が付いた。
調べてみると、やはり奈良時代に町内を山陽道が通っていて、宿駅が設けられていたことに由来するらしい。
「駅家」という地名の来歴が分かれば、今後の往来が楽しみになるもの。

「道」という、なじみ深くて当たり前の存在から、歴史を視るという新しい楽しみを教えてくれたプリティラヴ博士氏に感謝である。


【メモ】
p72
・天皇が有力豪族の盟主に過ぎなかった五世紀は、各豪族が朝鮮半島から鉄生産などの技術導入に熱中していた。より多くの鉄と技術者を手に入れることが、勢力拡大に繋がった。
・葛城氏は当時の外交窓口の一つである紀水門を確保し、海外の技術等を直接入手することに成功した。
・紀水門-紀ノ川-葛城に至るうち、紀ノ川の五條市街地から北上し、葛城山と巨勢山古墳群の間を抜け、葛城氏の地へ至る道は、葛城氏の勢力を支える道路だった。
(ここからは、軽に至る道(葛城斜向道路)を経由して都に至る。)

一方、雄略天皇が葛城氏を滅ぼして後、幹線道路は葛城斜向道路から巨勢山古墳群の南を経由する巨勢道に交替し、葛城の地を経由しなくなった。

p181
・律令国家において、当時の中心地である畿内を除く全国を、山陽道、山陰道、西海道、東海道、北陸道、南海道の七つに区分した。「道」とは道路ではなく、現在の北海道の「道」と同じ行政単位。
・都からこれらの行政単位を通過する七つの駅路が設けられた。駅制という緊急通信制度により、駅使(公の使者)が通ると規定された道路。幅は最小6m、最大30mで、直線にこだわった。
・沿線には約16kmごとに駅家(うまや)と呼ばれる交通管理施設が設けられた。「延喜式」では、駅家の名前が列挙されている。
 なお「延喜式」の駅路は平安京遷都後のもののため、奈良時代とは若干異なる。


【目次】
第1章 葛城の道
 古墳時代にも頑丈な道路を造る技術があった
 造ったのは誰か
 付け替えられた国道
第2章 大和・河内の直線古道
 六世紀の道路
 いつ造られたのか
 なぜ造られたのか
 聖徳太子と蘇我馬子
第3章 七道駅路
 古代のハイウェイ
 律令国家と駅路
 古代国家と道路
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category: 歴史

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日本の街道ハンドブック―「旅ゆけば心たのしき」街道小事典  

日本の街道ハンドブック―「旅ゆけば心たのしき」街道小事典
竹内 誠



時々、プリティラヴ博士氏(Dr.プリティラヴ-愛妻に恋する博士の日常-)が、大阪周辺の旧街道や道標を紹介されている(例えばこれ)。
香川県坂出市生まれ・育ちの僕としては、旧い道といえば「遍路道」である。
ただ、東讃方向に行くと「長尾街道」「志度街道」という言葉が生きていて、
「街道」が現在も生きていることを実感する。

でも、そもそも「街道」って何だ?
そん茫漠とした疑問を抱いていたら、本書が目についた。

本書で言う街道は、江戸時代に整備された大街道(道幅六間≒11m)と小街道(三間≒5.5m)。
全国に広がるこれらの約100の街道について、それぞれの来歴、概要をコンパクトに紹介している。

東海道や北陸道というメジャーな街道はもとより、
旅行したことがある地の街道、
自分の人生では縁も所縁もない地の街道まで、
古人が利用した「道」の存在を知ることは、何となくワクワクする。

また本書によって、自分の住む地の街道を明確に認識できたことも、収穫の一つ。
香川県で収録されているのは、下記のとおり。

・丸亀街道    丸亀-琴平
・高松街道    高松-滝宮-琴平
・高松(丸亀)街道 高松-国分-坂出-宇多津-丸亀
・多度津街道   多度津-善通寺-琴平
・志度街道    大阪峠-白鳥-三本松-津田-志度-高松
・長尾街道    三本松-長尾-高松
・讃岐街道    丸亀-観音寺-川之江-西条-小松

先述の長尾街道・志度街道という呼び方・道は、自動車で往来する今でもよく使う。
しかし、高松街道や高松(丸亀)街道って、あまり言わないような気がする。
高松街道(高松-坂出-丸亀)と讃岐街道(丸亀-小松)が国道11号として整備され、
その呼び名(国道11号)と概念(高松-松山の道)が定着したためかと思うが、
詳しいことは知らない。
ただ、道をどう認識するか、ということが影響しているような気がする。
こうした視点が得られただけでも、本書を読んだ価値はあったと思う。

また、本書p208では、「讃岐の道は金比羅に通じる」という言葉が紹介されている。
香川県の土着民でありながら、実はこの言葉を聴いたことが無かったのだけれど、
なるほど旧街道の構造を見ると、香川では他藩に通じるか、琴平に至るかの2パターンしかない。
かつての金比羅山の影響力の凄さを感じた。

現在住んでいる滝宮は、やはり高松-琴平の「高松街道」の重要な町である。
今後は「街道」という意識をもって、旧い道を通ってみようと思う。

【メモ】
p8
徳川幕府は治世の初めから、東海道など五街道の整備を急いだ。
大街道では道幅六間(約11m)、小街道は三間と定め、担当の大名に銘じて畳の厚さに砂利・小石を敷き詰めさせた。

p207
高松街道
 綾川町滝宮は、仁和2年(886)、讃岐国司に任じられた菅原道真が政務をとった官舎があったところと言われる。延喜3年(903)道真が没し、天暦2年(948)に空澄(くうちょう)が滝宮天満宮を建立、
室町時代の細川氏、江戸時代の生駒氏・松平氏と、讃岐の守護等に損じられ、滝宮は門前町として栄えた。また、金比羅参りの宿泊地としてもにぎわった。
高松街道(高松-滝宮-琴平)は阿波、東讃から金比羅参りをする人々に利用された。

p208
「讃岐の道は金比羅に通じる」


【目次】
旅行けば心たのしき―街道風俗事情
江戸からみちのくへ
江戸から常総・武甲へ
江戸から京へ
北国と結ぶ
古都のある道
京から西へ
四国路
九州路
海上の道
主な歴史資料展示施設
索引
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category: 歴史

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世にも奇妙な人体実験の歴史  

世にも奇妙な人体実験の歴史
トレヴァー・ノートン



自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝」(レビューはこちら)の類書である。「自分の体で」は医学テーマが多かったが、こちらは深海や超高度への挑戦などの技術開発も含む、より広範なテーマを取り扱う。
また、「自分以外」で実験した事実も取り上げられていることが、異なる。

自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝」のレビュー(こちら)でも書いているが、自分が同時代に体験した知識や技術の発展は、とてもわかりやすい。

しかし、すでに存在しているものについて、僕らはそれがどんな苦労によって得られたものか、
何も知らない。

もちろん知識や技術の恩恵を受けるにあたり、その開発者の試行錯誤を知る義務はない。

しかし、試行錯誤の苦しみを知らないことために、
近代以降、人間は大した苦労もなく様々な知識や技術も獲得してきたと誤解していないだろうか。

その誤解の延長に、今の課題も容易に技術開発できるはずだ、という無責任な考えがある。

知識や技術の発展について、無責任な期待や、不必要な過信を抱かないためにも、
人間がいかに苦労して知識や技術を得てきたかという事実は、もっと知られる必要がある。

【目次】
淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師―性病
実験だけのつもりが中毒者に―麻酔
インチキ薬から夢の新薬まで―薬
メインディッシュは野獣の死骸―食物
サナダムシを飲まされた死刑囚―寄生虫
伝染病患者の黒ゲロを飲んでみたら―病原菌
炭疽菌をばら撒いた研究者―未知の病気
人生は短く、放射能は長い―電磁波とX線
偏食は命取り―ビタミン
ヒルの吸血量は戦争で流れた血よりも多い―血液
自分の心臓にカテーテルを通した医師―心臓
爆発に身をさらし続けた博士―爆弾と疥癬
ナチスドイツと闘った科学者たち―毒ガスと潜水艦
プランクトンで命をつないだ漂流者―漂流
ジョーズに魅せられた男たち―サメ
超高圧へ挑戦し続けた潜水夫―深海
鳥よりも高く、速く飛べ―成層圏と超音速
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category: 技術

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シギ・チドリ類との出会い、繁殖期を迎えた野鳥たち  

シギ・チドリ類との出会い、繁殖期を迎えた野鳥たち
2014年5月4日 野鳥観察会@姫浜

あれもしよう、これもしようと思いつつ、結局は連休もあと僅か。
「家にいてもすることがない」という方もいるようですが、
僕はまだまだ足りません。家族とのベントはいくつかできましたが、
僕個人の時間ってのは、ほとんどありませんでした。残念。

さて、昨日は野鳥観察会を開催。連休中とあって参加者は少なかったですが、
観察できた野鳥内容は満足。久しぶりに本のレビュー以外の話題として、ご紹介しましょう。

この時期は、日本を春秋に通過するシギ・チドリ類が楽しみなところ。
地味な野鳥ながら、限られた時期に、ほんの僅かの日数しか出会えないところが、
ワクワク感を募らせます。

昨日は、観音寺市姫浜町の姫浜でした。
潮干狩りの方も多くて大丈夫かなと思いましたが、探せばいるものです。

僕らのグループのHPでも報告していますが(こちら)、こちらではもうちょっと個人的な思い入れを強くして、ご紹介しましょう。

まず、シギ・チドリ類の仲間から、キョウジョシギさん。
シギ・チドリの仲間は地味なのが多いのですが、このシギは地味ながらも派手。
石を嘴でひっくり返して餌を探すので、英名はTurnstoneです。
石だらけの中からこの種を見つけ出した時の喜びといったら…。
20140504キョウジョシギ

お馴染みのツバメも、上から見ると不思議な感じ。
ぱっと見は黒く見えますが、実際は青い光沢があります。たぶん構造色でしょう。
20140504ツバメ2

ちなみに飛翔も撮影してみました。翼が鋭い!
20140504ツバメ

アオサギお馴染み、翼の裏干しポーズ。気持ちよさげです。
たぶん何も考えていないと思います。やや若い個体ですので、まだ繁殖する気にならないのでしょう。
20140504アオサギ

かと思えば、巣材運びに熱心なアオサギもいました。呆けてばかりではありません。
嘴・足がピンク色を帯びていますが、婚姻色ですね。
201405アオサギ2

コサギは飾り羽が伸びて優雅です。こちらも目先が若干ピンク色の婚姻色。
20140504コサギ

季節の変わり目を体感できるっていうのは、野鳥だけでなく、自然観察の醍醐味ですね。

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category: 雑記:日々のこと

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自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝  

自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝
レスリー デンディ,メル ボーリング,C.B. モーダン



iPS細胞に限らず、科学の世界は日進月歩である。
昨日まで無かった知識が突然提示されれば、大きく世界は変わる。
現在話題となっているSTAP細胞の真偽についても、いずれ決着するだろう。
同時代に経験している知識や技術の発展は、自分個人の経験の一部でもあり、その流れは体感しやすい。

一方、すでに自分の時代には当たり前に存在していた技術や知識は、
何となく「かなり昔から」あったように誤解する。
それが安全に普及していればいるほど、特に問題もなく発見され、定着したのだろうと思いがちだ。

しかし、実際は異なる。
多くの知識や技術は、先人たちの、血を吐くような試行錯誤の果てに得られたものだ。
人間は全知全能ではなく、ほんの数mmずつ進歩してきたに過ぎない。

本書は、その「血を吐くような試行錯誤」のうち、
文字通り「血を吐く」ような試行を行った科学者たちの歴史である。

人間は何度までの高温に耐えられるのか。また、何Gまで耐えられるのか。
どのようにして食べ物が吸収されるのか。
どのように麻酔が発見され、安全なレベルまで確立されたのか。

これらの疑問は、本書に収録されているエピソードの一部だ。
いずれもとても身近なものであり、現代ならそれこそWikipediaですぐに分かる。
しかしそれは、多くの先人が実験によって得てきた事実の積み重ねだ。

「自分の体で実験したい」というタイトルから、エキセントリックな科学者を想像しがちだ。
しかし本書に登場する人々は、
他人に危害を及ぼすような実験は好ましくなく、また自分なら冷静な判断・記録が可能だ、という
極めて単純かつストレートな思考により、自分で実験した人々である。
ただ、自分が正しいのだから死ぬわけがない、という自信があるのだから、
自己犠牲とはちょっと違う。
何だか愛すべき強烈な人々なのである。
その生き様を知るだけでも、本書を読む価値はあるだろう。


類書に、「世にも奇妙な人体実験の歴史」(レビューは次回)があるが、
本書の方が「自分での実験」に限定し、また文章もこなれていて、読みやすい。先に読むならこちらだろう。
ただ、本書は医学的エピソードが中心である。技術開発は「世にも奇妙な人体実験の歴史」の方が詳しい。


【目次】
第1章 あぶり焼きになった英国紳士たち
第2章 袋も骨も筒も飲みこんだ男
第3章 笑うガスの悲しい物語
第4章 死に至る病に名を残した男
第5章 世界中で蚊を退治させた男たち
第6章 青い死の光が輝いた夜
第7章 危険な空気を吸いつづけた親子
第8章 心臓のなかに入りこんだ男
第9章 地上最速の男
第10章 ひとりきりで洞窟にこもった女
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category: 技術

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