ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

日本の石ころ標本箱: 川原・海辺・山の石ころ採集ポイント  

日本の石ころ標本箱: 川原・海辺・山の石ころ採集ポイント
渡辺 一夫



野鳥観察などで、河原へ行く。
足元に、何の変哲もない石が転がってる。
手に取ってみると、様々な色や模様があり、
「堆積岩」だの学生の頃に覚えた言葉が浮かんでくる。

ところが、その言葉と目の前の石が、リアルに直結しない。

たかが石である。しかし、自分の住んでいる場所の「たかが石」すら分からないとは、
何を学んできたのか、と情けない限りである。

ただ、世はパワーストーンばかり。
それはそれで興味ある分野だが、そういうスピリチュアルなことは抜きにして、
自然を楽しみたい。

また、石図鑑というと「鉱物」が多い。
そんなの身近に見つけられるものではない。

足元の「この石」は何か。少なくとも、何の仲間か。そういうリアルな世界を知りたいのである。

本書は、そうした期待に応えてくれる。
「日本の」と称してるとおり、北海道から沖縄まで、日本各地の河川の石を実際に採集し、
1箇所につき地図と12点弱の石の写真を掲載している。

わが香川では、
ランプロファイアで有名な白鳥海岸と、
大阪城の石垣の切り出し場所である小豆島の3地点。
ちょっと他地方に比較すると少ないのだが、
大きな河川がない悲しさである。

ただ逆に、では他の河川ではどうか、というモチベーションなはなりうる。

また、こうして並ぶと、日本各地での違いが明確になり、「たかが石」のくせに、
多様性に富む世界なのだと感嘆する。

石ころが多く転がる大河川が付近に数本ある地方では、
本書を参考に歩いてみるのも面白いだろう。
石は逃げないので、切羽詰まった夏休みの宿題にも良いかもしれない。


【目次】
※全国95箇所

付録01 石ころの種類と名前を知るキーワード
付録02 石ころ採集のための地形図と地質図
付録03 博物館・参考書
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category: 地学

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今週のまとめ(先週のまとめ)  

本日は五色台とか中讃を走り回りました。
かねてから行ってみたかった国分寺東奥の凝灰角礫岩の白い崖と、
まんのう町木戸の馬蹄石(カキの化石)です。

あいにくの曇りで「白い」崖の写真にはなりませんでしたが、
見事な凝灰岩。
白い崖 遠景
香川にもこんなところがあったんですね。

堆積した層が水で削れて、
さながら香川県のThe Wave。おおげさか。
白い崖 近景


ここでは0.5mm程度のガーネットの小粒も出るそうですが、
残念ながら見つけ出すことはできませんでした。

一方は、旧琴南町の土器川にある馬蹄石。
看板も出ていてわかりやすいです。
馬蹄石看板

香川県指定の自然記念物ですから、削り取るとかはできません。
馬蹄石 刻
近づいてみると、刻印のようになっているもののほか、化石だなと実感するようなものもありました。
馬蹄石
すぐ近くで見られますので、通りがかりに一見の価値はあるでしょう。


さて、本です。
粘菌は、いつか自分で見つけたい生き物の一つです。
森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん」にあるようなメタリックなのに出会えれば最高ですね。

辞書を編む」は、辞書作成の裏側がわかる楽しい一冊。
古い辞書は思い切って処分して、新しい辞書を購入しようと思います。

重要な問題提起がなされているのは「未盗掘古墳と天皇陵古墳」。
日本の考古学界はこれからどういう方向に行くのか。
「未知のもの」に挑む体制が構築されるのか、事なかれ主義に陥ってしまうのか。
様々な分野に共通の問題が、ここにもありました。


森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん

BIRDER (バーダー) 2013年 08月号 高山・高原で涼感バードウォッチング/真夏の天使 アジサシ類を見に行こう!

未盗掘古墳と天皇陵古墳

辞書を編む

国境なき医師が行く (岩波ジュニア新書)

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category: 雑記:今週のまとめ

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辞書を編む  

辞書を編む
飯間 浩明




三浦しおん氏の「舟を編む」が好評である。
こちらは新しい辞書、『大渡海』の編纂をめぐる小説であり、
映画化もされている。
ただ僕はフィクションにはちょっと手を出すココロのゆとりがないので、
同じく辞書編纂のノンフィクションである本書に手を出した。ひねくれ者なのである。
「辞書を編む」というタイトルがどうしても「売らんかな」という感じで好みではないのだか、
内容はとても満足できるものであった。
もっと本書独自のタイトルで良いのに、と僕は思うだが、
また出版社には出版社の都合があるのだろう。

さて本書は、「三省堂国語辞典」の編纂者の一人である著者・飯間氏が、
改訂第7版の編纂作業を通じて、
辞書を編纂するということがどのような作業であり、
いかなる苦心と楽しみがあるか、ということを綴っている。

辞典といえばどうしても「分厚いもの」「語数の多いもの」を評価しがちだが、
実際にはそれぞれの辞典ごとのスタイルがある。

また、利用者のニーズも千差版別。

自らのニーズにあった辞典を選ぶことこそ幸せなのだ、
その幸せを生み出すために、「三省堂国語辞典」も、
そのスタンスを変えずに改訂を続けているのだ、という筆者の思いがひしひしと伝わってくる。

当たり前のように存在し、改訂されている国語辞典について、
その舞台裏ではどのような苦闘があるのかを知ることができる、
知的にワクワクできる一冊であった。

なお、「博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話」(レビューはこちら)では、
OED(Oxford English Dictionary)が初めて編纂されるときの、
知られざるドラマを紹介している。
辞書編纂に興味が出た方にはお勧めである。





【目次】
第1章 「編集方針」
第2章 「用例採集」
第3章 「取捨選択」
第4章 「語釈」
第5章 「手入れ」
第6章 「これからの国語辞典」

【メモ】
p65
「チョベリバ」1996年頃話題となった言葉
若者自身が使っている例がさっぱり集まらず、このこ言葉が広く使われているか疑問の声が多く上がる
「こういう言葉が広まっている」と、根拠が曖昧なまま言われた言葉の嶺として有名

p160
百科項目の語釈にあたっては、採集した用例の情報及び専門資料のあたるとともに、
より日常感覚に近づくよう、自らその実物を見たり聞いたり、触ったりすることに努める

p219
「ら抜きことば」
現代日本語では、可能形とは別の次元で、可能表現に関する混乱が生じている。

p230
小型辞典の特色

・「岩波国語辞典」「明鏡国語辞典」
 その言葉が正しいか否か判断を求めたい人
・「新潮現代国語辞典」
 (明治以降)その言葉がいつから使われているか知りたい人
・「新潮国語辞典」「広辞苑」「大辞林」「大辞泉」「日本国語大辞典」
 (明治以前も含め)その言葉がいつから使われているか知りたい人
・「新明解国語辞典」
 その言葉について、その辞書なりの解釈を知りたい人
・「三省堂国語辞典」
 その言葉が、今広く使われているか確かめたい人

p252
これまでの辞書では、小型辞典なら6万語、大型辞典なら20万語などと分けて考えられていたが、
電子辞書の普及によって収録語数は同じ土俵になることになった

しかし、むやみに増加することで、
逆に追加すべき語か否かに対する選択基準が曖昧になったり、
適切な語釈か否かの検討も少なくなる懸念がある。

 
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category: ノンフィクション

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国境なき医師が行く  

国境なき医師が行く (岩波ジュニア新書)
久留宮 隆



「国境なき医師団」http://www.msf.or.jp/のCMを、近くのイオンでよく見かける。

また、名簿業者から得た情報で、ダイレクトメールを打っているようだ(別に違法ではない)。

こうしたCMや積極的な寄付促進は、ちょっと日本では馴染みが薄く、
どうしても敬遠されがちである。
しかし、自ら獲得した資金で、独立的な活動を行うというスタンスは、欧米では一般的なスタイルだろう。

こうした積極性のみに対して批判的になるのではなく、
その活動内容を見て賛同するか否かを判断するべきである。

そのためには、実際の活動を知ることが一番である。

本書はその一助となる。
初めて「国境なき医師団」に参加した医師が、
最初の任期を終えるまでを綴ったもの。

こうした活動に参加する医師は、いわば何でもできるヒーローかと思いがちである。
しかし実際には、ごく普通の(熱意は別として)医師であり、
様々な悩みや苦しみを抱いていたということは、
考えてみれば当然であるものの、
僕としては新鮮な驚きであった

いわゆる紛争地で活動することは多くの困難を伴う。
また、赤十字よりもより危険な地域で活動することも多いらしく(これは僕の伝聞であって、
明確な出典はない)その活動方針について、賛否両論もあるように聴いている。

しかし、実際の紛争地では、「国境なき医師団」への期待は高い。

日本という安全な場所において、資金提供も何もしない立場において、
「国境なき医師団」の活動を否定すること自体、実は紛争地での医療機会を損なっているのかもしれない。

もっと大規模な医療活動もありかもしれないが、
現実の活動選択肢として、「国境なき医師団」というスタンスは評価されるべきと僕は思う。

少なくとも、本書をはじめ、その活動を知らず否定するというのは、フェアではないだろう。
今後も追いかけていきたい活動である。


【目次】
プロローグ
1章 ミッションはじまる
2章 痛い経験
3章 スタッフの面々
4章 リベリアでの生活
5章 体調を崩す
6章 忘れられない患者
エピローグ

【メモ】
国境なき医師団
1971年設立
1999年ノーベル平和賞
本書時点で、世界19ヶ国に支部を持ち、約70ヶ国に年間約4,700人以上の医師や看護師、助産師、ロジスティシャン(物資調達管理調整員)、アドミニストレーター(財務・人事管理責任者)らを派遣している。
日本支部は1992年設立。
2004年からは、オランダやスイスなど5つあるオペレーション支部の中のフランス支部のパートナー支部(東京デスク)として活動を続けている

p173
ナイジェリアで驚いたのは、「国境なき医師団」の認知度の高さ。

また、この国際医療ボランティアに参加し、帰国した医師やその他スタッフに対しても欧米ではその志を高く評価し、就職に関しても広く門戸を開放している。活動に対する社会的認知度も非常に高い。

しかし、日本ではまだまだそのような状況にはない。

※著者は勤務していた病院の外科医長の職を捨てた。

まだ医師は非常勤で勤めたり、医療関係専門の派遣登録もできるらしい。

「しかし、ロジスティシャンやアドミニストレーターといった、一般企業に属していたスタッフは、アルバイト先を探すことさえ難しい。現在、日本のスタッフで一般企業に勤めながら「国境なき医師団」に参加している者はいない。」

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category: 戦争

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未盗掘古墳と天皇陵古墳  

未盗掘古墳と天皇陵古墳
松木 武彦



時折、考古学上の発掘ニュースが報道される。

ほう、へえ、と感嘆しているが、本書で改めてわかったことがある。

それらは、集落や邸宅等の遺構発掘の結果である。
一方で、「未盗掘古墳の墓室を発掘した」というニュースを目にすることは全くない。

それは発見が少ないためかと思っていたが、そうではなかった。
「未盗掘古墳は発掘しない」というコンセンサスがあるのだ。

高松塚古墳での保存ミスもあった。
また、様々な分析技術も進んでいる。
だから発掘しても、
・きちんと保存できるのか。
・全ての情報を収集できるのか。
という懸念が先行するようだ。

保存技術の有無はもとより、
発掘において「何に着目するか」というポイントも、以前は有機体は除外していたが、
近年は非常に細かい繊維片であったり、
また土壌中の花粉など、分析対象と技術は日々進歩している。

今発掘すると、そうした「将来注目される遺物」を損なってしまうのではないか、ということのようだ。

しかし、筆者は運良くというべきか、2基の未盗掘古墳を発掘するという機会に恵まれ、
本書ではその顛末が記載されている。

その上で、次のような見解を示している。


p220
「もし未盗掘古墳の調査が全面的にとりやめられてから数十年がたったとき、日本の考古学と古代史の知見の蓄積や更新にはブレーキがかかり、調査の知識も技術も、それをになう人材そのものも細ってしまうのではないかと憂慮する。そうなると、託すべき未来の考古学の発展そのものがおぼつかなくなってしまう。
明確な学問的目標を据え、そのための知識や技術、人材の確保と組織化がきちんとなされ、綿密な計画のもとに行われるのであれば、未盗掘古墳は発掘されてもいいのではないだろうか。」

全くそのとおりである。

「文化遺産の眠る海 水中考古学入門」(レビューはこちら)では、
これからの考古学である水中考古学の人材・技術育成が遅れ、
そのために日本近海の水中文化遺産や、世界の海に眠る日本由来の水中文化遺産の研究・保護に、
いずれ日本が手を出せなくなる懸念が示されていた。

本書は、それと同様の停滞が、実は通常の考古学界にもあることを指摘している。

「掘ってはならないもの」として、もう一つ天皇陵がある。

巨大な天皇陵や、明確に特定皇族の陵墓に治定されているものはともかく、
いわゆる「陵墓参考地」は、いつかこれを発掘できる日が来るかもしれない。

しかし、現在のように未盗掘古墳は掘らないというスタンスでいれば、
その「いつか」の時には、必要な人材も技術もないみとになるだろう。

むやみに発掘することは当然避けるべきである。

しかし、「やってみる」ことによってこそ、初めて得られる技術もあるし、課題も発見できる。
未知の領域が存在する分野では、手の届く範囲の研究だけをやっても意味がないのだ。


それは、
「はやぶさ 世界初を実現した日本の力」(レビューはこちら)において、日本の宇宙探査におけるスタンスに対して、はやぶさのプロジェクトリーダーであった川口淳一郎が指摘した問題と同じである。

「今見える」限界を意識して、その中で活動するのか。
それとも、その限界を拡大する活動を行うのか。

どうしても日本は失敗を恐れ、小さく狭く考えがちだが、
やはり必要なのは開拓精神であるだろう。




【目次】
第1章 未盗掘古墳とは何か
1 古墳を発掘するということ
2 未盗掘の条件
3 未盗掘古墳の発見史
第2章 二つの未盗掘古墳
1 雪野山古墳の発掘
2 雪野山から勝負砂へ
3 勝負砂古墳の発見
第3章 もし天皇陵古墳を発掘すれば
1 天皇陵とは何か
2 掘られた三つの大王墓
(1)大王をめぐる品々-メスリ山古墳の発掘-
(2)掘りあばかれた「天皇陵」-大山古墳の発見物-
(3)最後の大王墓-見瀬丸古墳の巨大石室-
3 人類の遺産ついての天皇陵古墳
第4章 なぜ古墳を発掘するか
1 はばむ論理、進める論理
2 未盗掘古墳を発掘するとしたら
3 天皇陵古墳を発掘するとしたら

【メモ】
p005
「未盗掘古墳」と「天皇陵古墳」に共通しているのは、「発掘してはならないもの」という政治的・社会的な制限

p016
この本での「未盗掘古墳」とは、約1300-1800年前に造られてから、一度も堀荒らされていないもの。
未盗掘古墳は全国で年間数十基、ときには100基以上も発掘されている。

p066
「威信財」有力者が身分や権威を示す品物。
3世紀中頃-4世紀 三角縁神獣鏡をはじめとする鏡。
5世紀 武具、特に甲(よろい)や冑(かぶと)

p97
三角縁神獣鏡:型式変化は10段階に分かれる。
最も新しいものでさえ、古墳時代の途中から出る須恵器と一緒に出ることは、わずかな例外を除き無い。
製作は4世紀のうちに終了していた可能性が高い。

p101
発掘が盗掘と異なるのは、遺物の位置関係があとからでも復元可能なように、その情報を全て記録すること。
「うまく掘れたかということよりも、うまく記録できたかという点に、発掘の成否はかかっている。発掘の真髄は、記録にある。」

p121
岡山:天狗山古墳
古墳の完成後に埋葬したのではなく、埋葬をしてからその上に古墳を作った。
これは新羅の古墳の造り方と同じ。
古墳の築造が後か先かということは、葬儀全体の根本に関わる大きな思想の違い。

p148
金属製品の表面に残った有機質のかけら(古代の繊維など)は、その位置自体も重要。
最近の発掘では、これを吹き飛ばして金属をきれいに出すようなことは無くなり、
写真も「きれい」にしないで撮る。

p152
古代の皇族の陵墓指定地が近畿から遠く離れた都県にある
=地方もまた万世一系の天皇のもとにあることを見せるよりどころとして設けられたもの。
したがって、なぜその皇族の墓がそこにあるのかという根拠がはっきりしないものもある。

p153
皇室典範では、
「陵」天皇・皇后・皇太后・太皇太后の墳墓
「墓」それ以外の皇族の墳墓

陵墓を実在する古墳にあてはめること=「治定」
現在の陵墓は、明治時代を中心に、1949(S24)までに治定されたもの。

p161
前方部はスタイルによって大きさが変わる。
後円部の大きさこそが、葬られた人の力や地位を反映する。
そこで後円部に注目すると、
最古の前方後円墳:箸墓古墳と、最後の巨大前方後円墳と見られる見瀬丸山古墳ともに、
直径が約150m。
3世紀-6世紀後半まで、この大きさが最高の権威を持つ人の墓の基準と考えられていた可能性がある。

これを踏まえて実際の古墳を見ると、18基。このうち
天皇陵に治定 8基
皇族の女性の墓に治定 4基
陵墓参考地 3基
ノーマーク 3基 このうち2基が岡山、1基が奈良。

だいたい中ごろ、5世紀前半頃から中頃に、後円部の大きさはピークとなるる

3世紀後半-4世紀前半までは奈良盆地の東南部で5代続く。
4世紀中頃から盆地の北部に移って2代。
4世紀後半には大阪平野に移る。
5世紀から6世紀前半までの間に、河内(大阪府南東部)、和泉(大阪府南部)、吉備(岡山)に、数基ずつ。
6世紀後半に奈良に戻るが、巨大古墳はれで終わる。

よって、3世紀後半-6世紀後半の間に、
直径150mの巨大後円部に葬られる人物が18人現れている。

p199
天皇陵を発掘しても、遺骨は残っていない。未盗掘古墳だった雪野山や勝負砂でも遺体は残っておらず、
青銅イオンの影響で断片がわずかに形をとどめていた程度。

また、渡来系の特徴は、天皇陵古墳の1000年前から日本にふつうに見られる形質。

DNAは来歴を示すだけで、個々人の出自を示すものではない。

副葬品も、古墳にはそもそも渡来系文物が含まれており、
地位の高い人を葬った大きな古墳ほど、渡来系でない品を副葬品から探すのが難しくなる。

また一方で、列島固有の風習である埴輪は、前記の18基のうち17基にある。
唯一埴輪のない見瀬丸山も、石室や棺の形は列島で成立したもの。

p206
もし勝負砂古墳の発掘が、大学でなく、国がじかに行政指導できる地方自治体によるものであれば、未盗掘石室の開封は止められていた可能性が高い。
(メモ注、筆者は未盗掘石室の発掘に悩んだうえで結論を出しており、何でも発掘すべきという立場ではない。)

p220
「もし未盗掘古墳の調査が全面的にとりやめられてから数十年がたったとき、日本の考古学と古代史の知見の蓄積や更新にはブレーキがかかり、調査の知識も技術も、それをになう人材そのものも細ってしまうのではないかと憂慮する。そうなると、託すべき未来の考古学の発展そのものがおぼつかなくなってしまう。
明確な学問的目標を据え、そのための知識や技術、人材の確保と組織化がきちんとなされ、綿密な計画のもとに行われるのであれば、未盗掘古墳は発掘されてもいいのではないだろうか。」





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category: 歴史

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BIRDER (バーダー) 2013年 08月号  

BIRDER (バーダー) 2013年 08月号 高山・高原で涼感バードウォッチング/真夏の天使 アジサシ類を見に行こう!




特集は高山・高原。

1999年。まだ雪がしっかりと残る5月上旬に、立山室堂にライチョウを見に行った。
立山

ロープウェイのターミナル付近には少なかったが、山荘付近ではライチョウ・イワヒバリ・カヤクグリが、本当に人を恐れず生活していた。
ライチョウ

僕は室堂山荘に一泊したのだが、特にロープウェイが終了して以後の時間は、まさに別世界であった。
もし行く方がいれば、ぜひ一泊することをお勧めする。

ただ、標高約2,500m。ちょっと山登りもしたせいもあるが、夕方やや頭痛がした。
また何といっても、雪焼けで夜、かなり顔が熱くなり大変だった。
銀世界、スキーをする方は常識かもしれないが、男性は日焼け止めが必須である(女性は化粧で軽減される)。

それにしても、温暖化や俗人化によって、ライチョウなどの生活が脅かされることがないよう、切に願う。

さて、資料としてはアジサシ類のカタログ写真のほか、国内2例目のルリビタイジョウビタキと、国内初のオレンジツグミを各1ページ掲載。どちらも派手で、いかにも南方種である。

期待の野鳥ラボは、「黒いミズナギドリ」。
残念ながら土地柄(香川県)、オオミズナギドリしかミズナギドリ類には縁がない。
今回掲載種について、内容をどうこう語る資格はないので、
ありがたく資料として保存させていただく。

それにしても川口敏氏よ、オオコノハズクは迫力ありすぎである。



【目次】
[第1特集]高山・高原で涼感バードウォッチング

・山の鳥たちはこんな場所で暮らしている[シーン別、山の鳥たちとの出会いかたガイド] 文・写真●戸塚 学
・鳥を見ながらゆる〜りと山を歩こう![山で必要な装備と、覚えておきたい知識] 文・写真●石田光史
・出会いのコツ付き![高山・高原の鳥ガイド] 文・写真●五百沢日丸
・高山の鳥を見るなら、この山![厳選「鳥見」登山コース] 文・写真●石田光史
・上高地は野鳥の楽園  文・写真●前田篤史
・山ごとに違うライチョウの生態  文・写真●中村浩志
・ハイマツのない富士山でホシガラスは何を貯食するのか?  文・写真●西 教生


[第2特集]真夏の天使 アジサシ類を見に行こう!
・夏の海で会いたい! アジサシ類カタログ  文・写真●五百沢日丸
・夏空が似合う鳥! アジサシ類をカッコよく撮る  文・写真●中野耕志
・1年間に地球を2周分! キョクアジサシの長距離渡り  文●植田 睦之
・コアジサシの生活  文●北村 亘

ENJOY BIRDING
・BIRDER Graphics[ミサゴ〜その“素顔”を撮る] 文・写真●松木鴻諮
・Field Report #32[梅雨の時期の楽しみ] イラスト●水谷高英
・Young Gunsの野鳥ラボ #05[“黒いミズナギドリ”の識別と生態] 構成●Young Guns
・鳥の形態学ノート #41[オオコノハズク眼球] 文・イラスト●川口 敏
・私のケッサク!“鳥”写真[第14回募集 入賞作品] 写真●読者の皆さん 選評●叶内拓哉
・Bird Tracking #229[ヒバリ(雛)] イラスト●赤勘兵衛
・ぶらり・鳥見 散歩道[夏の終わりの夕方が狙いめ 大洞の水場(山梨県山中湖村)] 文・写真●♪鳥くん
・野鳥圖譜 #56[コマドリ] 画・文●佐野裕彦
・どこでもバードウォッチング #20[水路沿いの樹林] 文・写真・イラスト●神戸宇孝
・伝説の翼 #20[メンフクロウ(Barn Owl)] 画●長島 充 文●斉藤ヒロコ
・唐沢流・自然観察の愉しみ方 #68[クモ合戦にみる「自然遊びの意義」] 文・写真●唐沢孝一

・BOOK REVIEW
・BIRDER’s BOX
・今月のプレゼント


BIRDER NEWS
・カワイイシリーズ第2弾! “キュートなカラ類”の写真大募集!
・サイトロン「SⅡBL2060×HD-S」インプレッション  文・写真●野村 亮
・開館20周年のアカコッコ館で、三宅島の鳥と未来を考えた  取材・文●BIRDER
・石垣島で観察されたルリビタイジョウビタキ  文●♪鳥くん 写真●中本純市
・トカラ列島平島で観察された国内初記録のオレンジツグミ  文・写真●村岡 豊 協力●山田芳文


【メモ】
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category: 野鳥

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森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん  

森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん
川上新一



菌のくせに動くとは、なんだ。

一度見てみたい生き物というのは、たくさんある。

しかし、身近にいるらしいが、自分の「目」が見つけられていない生き物というのも多い。
そういう場合、せっかくのチャンスを逃しているわけで、
損をしていることになる。

せっかく同時代・同時期に生きているのなら、とにかく様々な生き物を見たい。
全ての生き物には、地球と生物の歴史が閉じ込められているからだ。

で、そういし気になってるものの、一向に見つけられていないのが粘菌である。
ただ、自分がきちんと気にして探しているかというと、そうでもなく、
偶然の出会い任せにしている。
たぶん粘菌は、それでは出会えないのだろう。

フィールドで見つけるには、まず「目」を慣らす必要がある。
色、形、雰囲気を掴んでいれば、自ずと気づく場合も多い。

本書は、そんな事前の準備に最適である。
粘菌とは何か。その生活史はどうなっているのか、という基礎知識とともに、
79種の粘菌がカラーで掲載されている。とてもお手軽な一冊である。

なお、単純にいうと粘菌は移動している変形体と、胞子を出すための子実体の2時期があるが、
本書の図鑑部では、特徴が多い子実体の写真を採用している。
もしじっくり粘菌と付き合う気なら、もっと詳しい図鑑を探した方が良いかもしれない。

それにしても、多種多様な形、中にはメタリックな色を持つものもあったりと、
本当に不思議な生き物である。

しかし、粘菌の存在が、不植物の分解スピードの抑制を担っているというあたり、
自然のバランスというのは絶妙なものだ。

【目次】
1 知る―どんな生きもの?変形菌
2 探す―森へ探しに!変形菌
3 見る―いろいろいるよ!変形菌ずかん
 ツノホコリのなかま(原生粘菌)
 クビナガホコリのなかま
 アミホコリのなかま
 フンホコリのなかま
 ハシラホコリのなかま
 ドロホコリのなかま
 ウツボホコリのなかま
 ケホコリのなかま
 モジホコリのなかま
 カタホコリのなかま
 ムラサキホコリのなかま
※変形菌図鑑の掲載種=11グループ79種

4 楽しむ―おたのしみ的変形菌

【メモ】


p8-9 変形菌の一生
胞子
発芽
粘菌アメーバ
分裂 → 休眠体(シスト)
接合
若い変形体
変形体 → 休眠体(菌核)
子実体形成
未熟子実体
成熟した子実体
胞子

p22
粘菌アメーバの好物=バクテリア
変形体=バクテリアやカビ、酵母、キノコ
※変形体を飼っている人は、オートミールを与えている

p24
子実体は虫、カビなどに食われる。
特にマルヒメキノコムシ。
また、小さな甲虫、トビムシやダニなども子実体を食べる。
ただしそれらによって、胞子が運搬されている。

p26
変形菌は、バクテリアや菌類といった「分解者」を食べることによって、
落ち葉や倒木の分解スピードを抑える役目を果たしている。

p28
変形菌などのアメーバ類が、植物に窒素を供給していると考えられる研究結果がある。
また、ミネラルも体内に保持している。
ex)モジホコリやカタホコリなどの子実体に見られる白っぽいかたまりは炭酸カルシウム。
これはアメーバ運動に必要だが、これが土壌や朽木に溶け込んでいく。

p31
昭和天皇は新種(新変種を含む)としてオオミマルウツボホコリ、アミクビナガホコリなど8種を、日本新産としてチョウチンホコリ、カワリモジホコリなど5種を発見した。
南方熊楠は、キャラメルの空箱に変形菌を入れて献上した。

p34
多くの変形菌は、高温多湿の梅雨時に成長。
梅雨明けに子実体をつくり始める。
一方、気温の低い冬は苦手。

見つかりやすい場所は、腐りつつある倒木、落ち葉、枯れ木など。
変形体は手のひらくらいの大きさがあるので見つけやすいが、子実体は小さいものが多い。
10-20倍のルーペが便利。
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category: 菌類

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今週(先週)のまとめ  

3連休です。いかがでお過ごしでしょうか。
何となく先週から頭がもやっとしていて、読書が進まない。

こういうときは、掃除と整理整頓です。
視野に入る乱れが、心を乱していることがよくあります。

僕のやり方は、小さい手帳に、各部屋ごとに気になるコト、思いつくコトをだーっと書き出して、
あとはそれを見ながら、機械的にできそうなコトから片づけていく。

全部をする必要はありません。
一つでもできれば、よかったと思って十分。
まず動くこと。それが大事ですね。


そうそう、動きに注目しているニホンオオカミの探究ですが、先日「ニホンオオカミは生きている」の著者である八木氏を中心に、トークショーが開催されたようです。

ニホンオオカミを探す会の井戸端会議

ニホンオオカミはいるかいないか、と言えば、僕はいると思っています。
問題は、「いない」と簡単に言う人の多くが、
自分の持っているイメージのオオカミをもって「ニホンオオカミ」と思っているところ。
「そんな特徴的な動物は見られていないし、大きな群れもないだろう」とか。
こうした認識不足は、実は国の姿勢の反映でもあります。
「いないだろうから、探す必要もない。だから特徴を正確に周知する必要もない。」
悪循環ですね。
その結果、しっかりとした特徴や生態の研究を踏まえた、十分な調査すら実施されていない。
それなのに「いない」と言うのは、
「慎重」ではなく「短絡」なのだと、僕は思います。

ネッシーじゃあるまいし、かつてはこの国の食物連鎖の頂点に位置していた重要な哺乳類なんだから、
もうちょっと真剣に調査してほしいものです。

詳しくは、「ニホンオオカミは生きている」(レビューはこちら)。この本が、たぶん最も客観的・科学的にニホンオオカミの特徴を精査したものです。




さて、本の話。
生き物の進化について知りたい僕としては、
なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ」が満足。
生物地理学を知ることによって、各土地の生物相のがリアルに感じられるとともに、
外来種の侵入がいかに問題かが明確になってきます。

こうした視点を得ると、
里山昆虫記―さぬきの里・山・池」のようなローカルな昆虫記録も、
実はリアルタイムの生物地理学の資料だと分かるわけです。
全ては繋がっている。面白いですね。

さて、長らく読みたかった、「神々の山嶺」を、漫画版ですが読了。
一気に読みました。
原作読んでないけど、これは漫画版で正解なんじゃないかな、と思います。
冬山の迫力は、半端でない。



神々の山嶺

なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ

ダ・ヴィンチ 2013年 08月号

里山昆虫記―さぬきの里・山・池

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category: 雑記:今週のまとめ

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神々の山嶺  

神々の山嶺
夢枕獏・谷口ジロー




原作は夢枕獏の小説である。
刊行当時、「山岳冒険小説の傑作」と、かなり騒がれたような記憶がある。

いつか読みたいと思っていたが、どうも夢枕氏の文体があわないので、
見送っていた。

そんな中見つけたのが、この谷口ジロー氏によるコミックである。
後書等を読むと、夢枕獏氏もコミックにするならこの人、と決めていたようで、
おそらく原作者のイメージに近しいコミックとなっているだろう。
原作とコミックが乖離しているものが多い中で、これは安心できる、と入手。

実際、まるで映画のようなダイナミックな映像は、本書の内容に極めてマッチしており、
小説版に手を出していない人にもお勧めである。
僕が購入したのは文庫版で、全5冊。Amazonとかなら5巻セットでも売っているし、
たぶん1巻だけで終える人はいないので、まとめて入手する方が得と思う。

さて、内容である。
エベレストを初登頂したか否かが不明なまま遭難したマロリー。
物語は、そのマロリーが残したカメラをきっかけに、
日本登山界で異質な存在であった羽生という男を縦軸に、
自己を喪失しつつある山岳カメラマンの深町を横軸として、
エベレストを舞台に二人の人生がめぐりあい、そして山男として昇華する生き様を描く。

マロリーはエベレストに登頂したのか、という謎もさることながら、
羽生という男は何を求めているのか、
深町はどこへ行こうとしているのか、目が離せない物語が展開されている。

それにしても驚くのは、この羽生のような人間が実際に存在したことだ。
その人の名は森田勝。

森田氏の山男ぶりと、
この希有な冒険小説まで造りあげた夢枕獏のストーリーテラーぶりに、脱帽である。

興味がある方は、できれば5巻入手し、
冬の夜、静かに読破されたい。


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category: 冒険小説

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里山昆虫記―さぬきの里・山・池  

里山昆虫記―さぬきの里・山・池
出嶋 利明

里山昆虫記




20年くらい野鳥は追いかけているし、香川県の野鳥関係文献はほぼ全て目を通しているので、野鳥であればその個体数の増減や、いつが初確認か、またどんな種が見られなくなったか、だいたい分かる。
子どもが生まれてからフィールドに出る回数はめっきり減ったが、それでもたまの観察時に、出会た野鳥
香川県の自然史においてどういう位置づけにあるかがわかるというのは、楽しいものだ。

一方、興味はあるのだが、植物・昆虫・魚類などには門外漢。
特に昆虫の場合、捕まえてじっくり確認しないとわからないものが多く(という印象があり)、
識別すら覚束ない。

しかし、野鳥ですらその個体数や分布は年々変化している。
昆虫や植物の移り変わりを知ることができれば、もっと自然を見る目は変わってくるだろう。

その手がかりとして、最適なのが地域限定の文献である。

動植物は、その地域ごとに長年追っかけている人がいるものだ。その人が書いた文献なら、
その地域での各種の位置、変遷などがよくわかり、全国単位の図鑑よりももっと深い理解ができる。

本書は2005年1月16日から2008年3月16日まで、四国新聞に連載された「さぬきの昆虫誌」を書き改めたもの。著者は瀬戸内むしの会会長、香川県での昆虫分野を代表する一人であろう。
目次の各標題ごとにほぼ5種がまとめられ、全部で153種の昆虫について語られている。
残念ながら初掲載日が収録されていないが、ほぼこの3年間の香川県における昆虫の分布状況や、
リアルタイムな変遷がコンパクトにまとめられている。

こうして通して読んでみると、都市化と温暖化の影響というのはかなりのものだ。

また子供の頃、オオミノガのミノとイラガのマユばかりだった記憶があるが、
ここ10年くらいはほとんど見かけなくなっていた。
これらの種についても掲載されており、やはり感覚は正しかったのかと思ったものである。

香川県に住む生き物好きの方には、特にお勧めしたい。
県内の全小中学校に置いておくべき、必須の本である。

また、こうした地域文献は、実は地域外に住む人にとっても有益である。
鏡のようなもので、「ではウチのトコロではどうなのだろう?」という疑問がわくし、
また地元のみの変化なのか、他地域での変化もあるのかを知る材料にもなる。

製本はしっかりとしており、全ページカラー。
読み応えもあり、持っておいて損はない一冊である。



【目次】
自然は変化している
どこかで春が
春・ため池
夏の陽光を浴びて
梅雨の晴れ間に
夏・ため池
秋は夏に隠れて
秋・ため池
小春日和の散策
寒さに耐える
冬に探索する
春を求めて
春来たりなば
初夏 讃岐山脈を歩く
草原を舞う
昆虫酒場の酔客
稲穂は垂れて
秋 讃岐山脈を歩く
晩秋の河川中流
冬 讃岐山脈を歩く
春へとうごめく
春の河川中流
新緑から深緑へ
渓谷は雨の季節
夏 讃岐山脈を歩く
海岸 夏の終わり
里の秋
晩秋のため池
温暖化の冬に
冬の里山
春よ来い!

 
【メモ】
p22 オオミノガ
1995年にハエの研究者が、福岡市内のオオミノガのミノから、日本にいなかった寄生バエを発見した。
発見の翌年には、福岡市内のオオミノガが食い尽くされた。
寄生バエは九州に広がり、1998年にこの情報を得て高松市内を確認したが、すでにオオミノガはいなくなっていた。
原因を特定することは難しいが、中国で街路樹を守るためオオミノガの天敵である寄生バエを大量に放ったようである。
それが何らかの方法で日本に入り込み、餌はあるが天敵のいない環境で爆発的に増加したらしい。

p42 ヨツボシトンボ
ヨツボシトンボやフタスジサナエ、トラフトンボが見られるのは水生植物の多い自然度の高い池。
水生植物が多ければ、トンボ以外の昆虫も多いはず。
しかしブルーギルはゲンゴロウ類なども餌にする。
ただしトンボのヤゴは水底でじっとしているため、食われにくい。
そのためブルーギルの多い香川県のため池では、水生植物が豊富で、ヨツボシトンボがいてもゲンゴロウ類のいない池がある。

p242 ヤコンオサムシ
イヌシデの自然林の残る大川山山頂では、アワオサムシ、オオオサムシ、ヒメオサムシの3種が知られていた。しかし10年前(本書は2005-2008の新聞連載)の調査で、3種以外に平野部や低山、中山地で見かけるヤコンオサムシが取れた。大川山山頂が荒れ始めているのではないか。

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category: 昆虫

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ダ・ヴィンチ 2013年 08月号  

ダ・ヴィンチ 2013年 08月号

特集「わたしを本好きにしてくれた、わたしの街の本屋さん」



ダ・ヴィンチはフィクションよりだから僕には向いていないと言うのに、
ついついチェックしてしまう。で、後悔するのだ。

今月号の特集は「わたしの街の本屋さん」。

正直なところ、別に本屋さんが好きなワケではないので、こういう切り口には全く興味がない。ごめんなさいである。

でもせっかくなので、今回は「本屋」というテーマで語ろうと思う。すごく個人的なことである。


そもそも僕の実家は、元本屋であった。
僕は生まれた時から本屋だったので、正直「本屋になる」のは夢ではなく、既定路線と思っていた。
「将来の夢は何」と問われたら、いろいろ回答していたが、
「でも結局は本屋になるのだろう」と思っていた。

しかし、父の代で新刊書店は終わった。
その後一時期、祖父が古本屋をしていたが、祖父が亡くなったのを機に店は閉じた。
そして僕にとって本屋とは、
「なりたく、なるはずのもので、なれなかったもの」となった。普通の人とはかなり違う存在である。


さて、本特集では、香川県を本拠地として全国を席捲した宮脇書店が取り上げられている。
「四国八十箇所宮脇遍路」。
北尾トロ氏らが、四国内の宮脇を3泊4日でめぐるという企画である。
宮脇遍路の結果、北尾氏らは宮脇書店を、全国展開する「巨大チェーン店なんだけど、書店というより本屋と呼びたくなる。」とわりと好意的に見ている。

しかし香川でも、かつては小さなエリアにもっと多くの書店があり、それぞれに品ぞろえが異なっていた。
だからA店にはあるがB店にはない、ということも多く、
複数店舗を回れば、それだけ本との出会いがあった。

一方で宮脇の支店は、どうしても同じ本を同じ店舗レイアウトで売る。

その結果、同規模の店は同じ本、小さい店は大きい店の一部を売る、という感じであり、
新しい出会いは無くなる。(もちろん品切れによる差異はある。)

丸善などのメジャー店舗は大きな商業施設の一部に入ることが多い。
一方宮脇書店は、独立店舗で進出する。
だから実際のところ、地元ローカルの本屋を消滅させる可能性が高いのは宮脇ではないかと思う。


事実、僕の街でも、宮脇が香川県で拡大する時期に、
宮脇になるか、店をたたむか、という選択をすることになり、消滅して行った。

時代の流れや企業努力もある。
本屋という厳しい商売において、ここまで成長した宮脇は、やはりすごいことだろう。
我が家を含む街の本屋が消えるのも、経営努力の差と言えばそれまでだし、
個人的に宮脇への恨みもない。

しかし、やはり宮脇書店とは、
独立系本屋を消滅させるチェーン店なのだと思う。

今回の特集で取り上げられた多数の「本屋」も、現在の最大の競合相手は宮脇なのではないだろうか。
(あ、Amazonもあるか。これは我が家の本屋時代にはなかったライバルだ。)

僕としては、全国のロードサイドの本屋が宮脇になるのほど、つまらないことはない。
これからも、これらの「本屋」が生き残ることを切に願う。
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category: 読書

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なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ  

なぜシロクマは南極にいないのか 生命進化と大陸移動説をつなぐ
デニス・マッカーシー



そうか、僕の興味があるのは「生物地理学」という分野であったのだ。

「生命の驚異的な多様性はどこかよくわからない場所で生まれるわけではない。
 場所はとても重要なのだ。
 分布について学習すると動植物の進化と特定の場所を結びつけて考えるようになり、その種の進化の背景を実感として理解することができる。
 さらに、環境はそこで起こっている進化による変化と分離した単なる消極的な背景ではなく、目に見えないながらも積極的に進化に参加し、変化への機械的な推進力を与えていることもわかる。」

全ての生物の在り方は、他の生物との関わりや、その場所にいる歴史抜きには語れない。

分布と多様性は、お互いに深く関係している。

おかげで、今身近なフィートルドにいる生物も、
その形や生態、なぜここにいるのか、という点で、大きなロマンを秘めている。

僕はそれを知りたいのだ。

南極にはシロクマはおらず、エンペラーペンギンがいる。
つい現在の視点から考えて、不毛の地である南極にエンペラーペンギンが進出したと思いがちだが、
実際は南極大陸が他の大陸から分断されたことにより急速に低温化し、
それまでの生物がエンペラーペンギン以外死に絶えたのである。
こうした長い地質学的時間をふまえた視点は、言われれば納得だがなかなか思いつかないものだ。

またガラパゴスにいるイグアナも、生物としては現在のガラパゴス諸島よりも長い歴史を持っている。
そこから、すでに沈んだ島の存在が見えてくる。

こうしたダイナミックな視野が開けるのも、生物地理学の利点である。

なによりも、本書によって、「なぜこの生物はこのような形態・生体で、なぜここにいるか」を紐解く視点が得られるだろう。それは多様性と外来種問題を考えるうえで、絶対に欠かせない視点である。


本書のタイトルは、最近多い「なぜ○○○○○は○○○なのか」というスタイルであり、
極めて安易である。

だからあんまり期待はしていなかったのだが、地史と進化史をリンクさせた、なかなか読み応えのあるものだった。

装丁もインパクトがなく、どうも出版元である化学同人が(ここはいい本を出すのだが)、ちょっと親しみやすさを優先させて、本書の持つテイスト伝えきれていない気がする。
装丁とタイトルだけで、雑学と思って手を出すような人には、たぶん歯が立たないだろう。

一方、進化史に興味がある方なら読んで損はない。
本書の内容は、装丁以上に有益なものである。


【目次】
序 あの偉大なる分野
第1章 ガラパゴスの啓示
第2章 メソサウルスの問題
第3章 ピグミーマンモスと謎の島々
第4章 世界を変えた火山の環
第5章 南アメリカの無惨な敗北と三畳紀のムカシトカゲ
第6章 魔法の水
第7章 エデンをめぐる戦い
第8章 生物と地球の偉大なる融合

【メモ】
pxiii
「物理学は今も重力(一般相対性理論)と電磁気(量子力学)を結びつける大統一理論を模索しているが、生物地理学はすでに生命(進化)と地球(プレートテクトニクスと地学)の大統一理論となりえたのだ。」

p30
ウォレス線:マレー諸島を走る二つの海峡を結ぶ線、東アジアの有胎盤哺乳類が姿を消す線
ウェーバー線:有袋類の西限
この二つの間の地域:ウォレシア アジアとオーストラリアに住む動植物が少ないながら共存している

p51
ガラパゴスのリクイグアナとウミイグアナは、遺伝子解析の結果、両方とも島よりももっと古い年代から存在していることが判明。
諸島:3-400万年前
イグアナ:1-2000万年前
実際は、今は水没している島がかつてあり、そこで進化した。島が沈み、また新しく形成される過程で移動していた。げ

p59
ガラパゴスフィンチ:
フィンチのヒナは父親から求愛ソングを学ぶ。ある集団が違う島に住むと、遺伝子だけでなく歌にもバリエーションが生じる。隔離された2グループの歌は急速に異なり、再びであった際は、求愛ソングによって繁殖隔離が発生する。つまり、それほど距離が離れていなくても、繁殖隔離と種分化が生じる可能性がある。

p63
太平洋上の島にはヤモリ、特にイエヤモリとオガサワラヤモリが基本的にどこにでもいる。
ヤモリの多くの種は、卵が海水に耐性があり、流木による分散がありうる。
またオガサワラヤモリは、単為生殖で繁殖する。すべての個体が雌のため、1匹流れ着けば繁殖できる。

p83
気候学では、オーストラリア大陸、特に南タスマニア海嶺が南極から分離したことが、始新世の終わり(3700万年前ごろ~3400万年前頃)に、突然世界の気温が低下した原因の一つと考えられる。南極大陸を囲む現在の配置が完成され、大陸に流れ込む暖かい海水の量は激減し、南極の海面温度は摂氏8度ほど低下した。
このとき、氷河も発生し、南極で生息していた有胎盤類・有袋類・爬虫類・鳥類・淡水魚類は死滅し、コウテイペンギンだけが残った。

p161
分子時計の分析では、ヒトにおいて、白い肌が生じたのは2万年以内。
金髪が生じたのは1万1000年ほど前。
青い瞳は6000-1万年前。

p178
我々は人類を、動きが遅く、弱々しくて無防備で、知恵だけで生きていると思いがち。
確かに個々の能力なら様々な動物に劣るが、
泳ぐこともでき、木登りもでき、また泳ぎ・木登りに負ける動物には走ることで勝てる。
人類は総合的な運動能力としては第一級の能力を持っている。

これは、人類が突出した均一性を維持している鍵。

陸上での移動能力が高く、放浪する本能があり、困難な障害に立ち向かい、新たな未知に挑む大胆さのおかげで、人類は長年遺伝的に隔離された地域ができなかった。
そのため大きな差異が出ていない。
これほど広い地域で同一性を保っている生物は、人間のほかに発見されていない。

p197
生物地理学で最も刺激的な新ジャンルは、ジャレド・ダイアモンドが「銃・病原菌・鉄」で開拓した、思想・技術などの文明の産物への適用。

p198
「生物地理学から我々は、プロセスと場所の両方を表す「起源」という言葉を連想する。生命の驚異的な多様性はどこかよくわからない場所で生まれるわけではない。場所はとても重要なのだ。分布について学習すると動植物の進化と特定の場所を結びつけて考えるようになり、その種の進化の背景を実感として理解することができる。さらに、環境はそこで起こっている進化による変化と分離した単なる消極的な背景ではなく、目に見えないながらも積極的に進化に参加し、変化への機械的な推進力を与えていることもわかる。」

p206
「生物地理学の秘密にかかわっている者は、真実を発見することによって、生物多様性への本質的な理解を深めていく。」

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category: 進化論

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今週(先週)のまとめ  

ブログのデザインを変更してみました。
以前の方が好みではあるのですが、
どうもリンク文字が小さくなって読みにくいなあ、と思っていました。

また気が向いたら変更するかもしれません。


それにしても暑いです。夏です。
まだ7月あたまと思うと、先が思いやられます。

何か気の利いたことを書きたいのですが、
今日はだめですね。まあそんな日もあります。

皆様も熱中症にはお気をつけて。

街路樹を楽しむ15の謎

人類とカビの歴史 闘いと共生と

週末ナチュラリストのすすめ (岩波科学ライブラリー)
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category: 雑記:今週のまとめ

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週末ナチュラリストのすすめ (岩波科学ライブラリー)   

週末ナチュラリストのすすめ (岩波科学ライブラリー)
谷本 雄治



フィールドに出たしと思えども、フィールドはあまりに遠し。
子育て世代としては、なかなか野鳥を追って県内を走り回ることができない。

しかし、フィールドは身近にもあるもの。
また野鳥だけでなく、生き物全てが楽しめるはずだ。

そんな自然観察の手ががりとなるのが本書。
庭、畑、公園などで見かけることがある生き物を中心に、
こういう場所でこのポイントを気にしていると、こんな発見があるよ! と教えてくれる。

そんなに分厚くもなく、手軽に読める一冊である。

ただ、ある程度生き物に親しんだ人には、ちょっと物足りない内容かもしれない。
おそらく幼稚園や小学校の先生や子供会のリーダー、
生き物にあまり興味がないのに、子供が生き物好きになってしまった親など、
そういう方が入門の手ほどきとして読むのに最適かもしれない。



【目次】
第1章 見る
 生きている博物館
 木の幹じろじろ宝探し
 出会い頭にライオン級!
 一点豪華もまた楽し
 たまにはナイトウォーキング
第2章 拾う
 みすゞコレクション
 古着の探偵団
 死んでいたってボロだって
 空クジなしの海岸歩き
 手わざ磨いてプレゼント
第3章 撮る
 ものぐさ御用達カメラ
 目は口以上にものを言う
 玄関立ちんぼ撮影術
 ホントの顔はどこにある?
 整理だけはいくらかマジメに
第4章 飼う
 米とるだけが田んぼじゃない
 スネーク・ゼリーの魔力
 いつのまにか生態圏
 ペットボトル飼育術
 シルクロードに思いをはせて
第5章 知る
 アリストテレスが提灯ぶら下げた?
 山海名物博覧会
 コオロギが国を滅ぼす
 天から降ってきたオカリナ
 本のこてしらべ

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category: 環境

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人類とカビの歴史 闘いと共生と  

人類とカビの歴史 闘いと共生と
浜田信夫



梅雨を経て、カビの季節である。
風呂場や洗濯機でカビと戦っている方も多い。正直なところ我が家もそうである。
わりと高頻度で掃除をするのだが、いつのまにかヌメッと発生している。もちろん手が付けられないような状況ではないが、汚れているだけで嫌ではないか。

ただ、そもそもがカビって何だ、と言われるとよく知らない自分がいる。
カビはカビだ、と言ってしまいそうだが、菌類? コケ? 
その正体を知れば、より適切な対処も可能となるだろう。
そこで見つけたのが本書である。
と言うもっもともらしい弁明をしたが、正直変な生き物好きの血が騒いだだけである。

さて、本書はカビ研究者が、特に身近な環境におけるカビについて、
それぞれの特色・生態・対処法などを説明している。
既に発生したカビ除去に役に立つかというと、そういう効果は少ないだろう。
しかし、
それぞれの環境の「何が」カビから見て「生息に適した環境なのか」、
そして、それによって「どんな特徴のカビ」が発生するか、
また、どんな状況になると「成長が促進されるか」、が示される。

これは裏返せば、予防策になりうるだろう。
また、
なぜ柑橘類にカビが生えやすいかという生態的側面から、
つい民間療法的に信じてしまそうな「カビ退治に酢」という方法は、
実は無意味であることを説明する。
こうした論理展開は、研究者ならではであろう。

僕としては、風呂場に生じる赤っぽいヌメリ、カビが、紅色細菌や赤色酵母である、と正体がわかったことが収穫であった。
本日も「このカビめ」ではなく、「この赤色酵母め」と、適切に戦ったところである。


【目次】
第1章 カビとは何か
第2章 食品とカビ
第3章 住居とカビ
第4章 カビと健康
第5章 カビと人の関わりの変遷

【メモ】
p9
カビは呼称であり、学術用語ではない。
同じ菌類のキノコの仲間にも非常に小さいものがあり、どこからカビかも明確できない。
菌類は、胞子を大量に作り、菌糸と呼ばれる一般に長い糸のようにつながった細胞でできている。

カビ、キノコ、酵母では、細胞の大きさに大差はない。
ただし一般に、酵母の細胞は糸のようにつながっておらず、増殖しても球形の粘性のある固まりになる。
酵母もカビとは深い関連があるが、発酵など実用面で重要なものが多いため、カビとは区別されている。

p19
カビはいずれも好気性の微生物。
また、10℃以上ならほとんどのカビが生息する。30℃を超えると生息が鈍る。
なお50℃を超える環境で良く育つものを好温菌という。
缶詰は空気をなくすことで、好気性のカビが生えないようにしている。

p20
柑橘類にはアオカビが良く生じる。
カビと細菌は生存競争にあり、酸性の柑橘類では細菌が育ちにくいため、カビが勝つ。
pH5以下の酸性条件では、細菌の増殖が抑えられる。しかしpH2くらいのレモンソーダでもカビは生息できる。

p22
カビ臭の成分として、ゲオスミン、2メチルイソボルネオールなどが知られている。
これらの成分は多くのカビが生産し、ごく少量でもヒトが感知できる。

p27
粘菌は人の筋肉と同じタンパク質を大量に含んでいる。
ATPを使い、菌体内のアクチンとミオシンの伸縮作用によって動いている。
粘菌は世界で約1000種。

p36
食品汚染が問題となる現在、カビの種類がわかれば汚染された地域がわかると思う人が多い。
しかしカビは世界共通で、ある地域固有のカビは非常に少ない。
また十分な調査もなされていない。
ただし成長具合から、汚染後の経過日数はだいたいわかる。

p47
昔、餅にカビが生えるのを防ぐため、冬の間に大きな樽に塩水を入れ、モチを浸けていた。
水が汚れると取り替える。
こうして10月まで食べることができたという。

p51
ブドウの表面には他の果実よりも多い野生酵母が付着している。ブドウが偶然つぶれて果樹が出ると、アルコール発酵が始まる。これがワインの始まりと考えられる。
紀元前6000年前のシュメール。腐りやすいブドウを保存するため、アルコール発酵させていた=ワイン。

p53
日本酒では、コメの主成分であるデンプンをカビによって分解してブドウ糖にし、その後酵母で発酵させている。このような醸造はアジアに多い。
日本酒ではデンプンの分解(糖化)と発酵を同時に行う。
ヨーロッパでは、大麦を発芽させた麦芽をまず糖化し、その後発酵させてビールやウイスキーを作る。

p59
プーアル茶:紅茶を多湿状態にして、カビの発酵作用によって作る。

p60
カワキコウジカビ:好乾性のカビ
カツオ節の生産に用いる。
煮立てたカツオを断続的に12回程度乾燥(焙乾)し、天日干し。水分量25%程度。
これを整形したのが裸節、削ったのが花カツオ。
その後、「カビ付け」し、生えたカビを取り除くことを3-4カ月間に3-5回繰り返す。
水分量15%程度ねタンパク質はアミノ酸に分解され、うまみ成分のイノシン酸が作られる。

カワキコウジカビによってアミノ酸が生じ、同時に脂肪が取り除かれる。
発酵学者:小泉武夫
「カツオ節が油の出ないだしだからこそ、日本料理は繊細になった。」

p75
洗濯機のカビ:
水道水=塩素殺菌されている。
風呂水=胞子が発芽して成長し、成熟して再び胞子ができるまで3日以上かかる。これほど長く残り湯はためていない。

p82
一般のカビは合成洗剤(界面活性剤)を栄養にできないが、スワレコバシディウムは可能。
このような特殊なカビが洗濯機で増殖している。

p84
欧米では約60℃の熱水を用いて選択するため、カビは発生しなかった(ただし近年の省エネ傾向から、今後は増殖する可能性がある)。

p87
洗濯機に対する「酢」によるカビ除去も、カビが酸性食品にも生えるように、効果は疑問。

p88
洗剤等の泡がたまった部分にカビが多く生じているので、
洗濯機のカビ取り剤を使うときは、いつもの水量より多く水を入れる必要がある。

p96
エアコン内部にカビが多いと、つけた直後に多くカビの胞子が放出される。
使用直後には窓開けすることが簡単かつ有効。
なお、フィルターが元凶と思われているが、実際にどこに多いかはまだ不明。
ただし熱交換器付近に多いことは確か。

p98
エアコンのカビが成長するのは、内部が結露したとき。
内部が結露=使用し、電源を切ったあと。

p106
熱めのお湯(45℃程度)を使って風呂掃除を繰り返せば、効果的。
※なおかなり厚いと、配管やパッキンを傷それがある。

p108
風呂のピンクのぬめり=紅色細菌や赤色酵母。
赤色酵母は汚れなどの栄養がないと、色がつかない。
よってピンクの場所だけでなく、その周囲も取り除く必要がある。

またユニットバスでは、クロカワカビが少なく、エキソフィアラやスコレコバシディウムなど、界面活性剤を好むカビの比率が高い。

p114
シリコンの黒いカビ:フォーマというカビ。
丸い壺状の子実体の中に胞子を持つ。
この子実体は次亜塩素酸に対して抵抗力があり、塩素系カビ取り剤に強い。

p128
古文書などの黄色い斑点:フォクシングfoxing現象
好乾性カビのカワキコウジカビやA.レストリクタスなど。

p134
室内の湿度が高いとカビが生えるというが、水蒸気は水の代用ではない。
カビは水蒸気を生育に利用することはできない。
実際は、それが結露することによってカビの生育を促す。

p145
最も毒性の強い天然毒の一つ=アフラトキシン
コウジカビ属のA.フラバスが作ったカビ毒
ただし、ナッツ類に感染すると大量にカビ毒を作るが、
穀物では少量にしかつくらない。また株によって生産量も異なる。
厚生労働省の検疫では、アフラトキシンの検査も行われている。

p210
スリランカ:19世紀半ばにはコーヒーの産地であり、イギリスに大量に輸出されていた。
しかし19世紀末にサビ病菌というカビによって全滅し、代用品としてお茶の木を栽培するようになった。

p230
歴史的に最も古くから知られていたカビ毒=麦角
ライ麦などがC.プルセアという菌類に侵され、黒い爪のような菌体が穂のあちこちから出る。
これを食べて起こるのが麦角中毒。

流産や、「身を焼かれるような痛み」という。
中世ヨーロッパ各地で、多くの幻覚を伴う患者・死者が出た。
また、幻覚症状が出た患者を魔女と勘違いしたケースもあった。
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category: 菌類

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街路樹を楽しむ15の謎  

街路樹を楽しむ15の謎
渡辺 一夫




「15の謎」っていいつつ、謎なんて書いてないじゃないか-と思っていたら、
収録種が15種だった。
なるほど15種の紹介なのね。
タイトルに凝りすぎというか、ひねりすぎというか、もう少しストレートでもいいんじゃないだろうか。

内容は、それぞれの街路樹について、どのような「街路樹としてのメリット」があり、
活用されてきたかの歴史や、現状を説明していくもの。
思いのほか、街路樹にも栄枯盛衰や流行り廃りがあるんだなあというのが実感。

社会が変化していくにつれて、求められる街路樹の特徴も変わっていくのだな。

進化論的に興味深かったのは、ヤマボウシとハナミズキの種子散布の違い。

また、イチョウは種子散布者がほとんどいないために、野生化しない(野生個体は絶滅近くになっている)というのも、言われてみると確かにそうだ、というものだった。
やはり恐竜時代の何かが散布者だったのだろうか。

あと、自然界に完全純白の花はほとんどない、というのも興味深い。
本書ではそれは黄色い色素が多少でもある、という説明だったが、
紫外線色で昆虫が花を認識しているのもあるのではないだろうか。
というか、黄色を発色するフラボンやフラボノールって、紫外線色的に働きはないのだろうか?

そう思ってWikiを見てみると、
フラボノール類は「植物の紫外線防御ならびに花色(英語版)に寄与している」とあるし、
フラボンも「植物体を太陽の紫外線から守る役割をしている。」とある。

紫外線防御ってことは、紫外線反射なので、やはり紫外線色を示すのではないだろうか。

すなわち、黄色を発色し、あわせて紫外線を反射して防御する、のではなく、
積極的に紫外線色を発色するために存在しており、紫外線が感知できない人間は黄色として認識する、
という方が、性質的には正しいんじやないかな、と思う。
このあたり、より詳しい情報が欲しいところである。


類書として「樹木ハカセになろう」(レビューはこちら)があるが、と重複はあまりなく、両方あわせて楽しめると思う。カラー図版が少ないのが残念である。




【目次】
ケヤキ(欅)―スリムな樹形のケヤキには、意外な使い道があった
ナンキンハゼ(南京櫨、南京黄櫨)―ロウが採れるかわいい実が引き起こした騒動とは?
イチョウ(銀杏)―全国植栽本数ナンバーワンに君臨する街路樹のエリート
ソメイヨシノ(染井吉野)―街路樹としては欠点だらけ。でも大人気のわけは?
キョウチクトウ(夾竹桃)―好き嫌いが分かれる、美しくて毒のある木
ハナミズキ(花水木)―人気が急上昇した日米友好のシンボル
ニセアカシア(別名ハリエンジュ)―国土を救ったヒーローも、今では侵略者扱いに…
コブシ(辛逸)―花の色香は、なぜ生まれたか?
シダレヤナギ(枝垂柳)―平城京にも植えられた、多芸多才な街路樹
ポプラ(別名セイヨウハコヤナギ)―倒れても、思い出に残るユニークな姿
プラタナス(別名モミジバスズカケノキ)―おしゃれな街路樹っは手間ひまお金がかかる
ヤマボウシ(山法師)―サルが作った、とろりと甘い果実
トチノキ(栃ノ木)―栄養たっぷりの大きな実も、街路では悩みのタネに
タブノキ(椨の木)―酒田大火を体験した火伏せの木
ナナカマド(七竃)―赤い実が美しい、北海道でもっとも植えられている街路樹

【メモ】
p36
野生のイチョウはほぼ絶滅に近い。
日本に移入されて相当の年数がたつが、イチョウが野生化して山野で増えたという事例は聞かない。
ギンナンを植えれば正常に育つので、最大の理由は種子散布する動物が少ないためと考えられる。

p67
ハナミズキは、街路樹に適した性質を持っているが、近年ヤマボウシと交雑させ、病気に強い品種も作成されつつある。(ヤマボウシもハナミズキもミズキ科ミズキ属)
しかし日本では、ハナミズキや、ハナミズキ×ヤマボウシが多く植えられると、
在来種であるヤマボウシとの遺伝子攪乱も危惧される。

p77
ニセアカシアは薪として有用なため昔はよく植えられたが、近年ではむしろ「要注意外来生物リスト」に入れられている。
しかし日本のニセアカシアがなくなると、日本の養蜂業界が大きな打撃を受ける。日本産ハチミツの約4割をニセアカシアが占めており、長野県では約7割を占めている。

p78
クズ:
アメリカでは1870年代に南部を中心に導入されたが、1950年代以降各地で激しく繁殖し、「侵略的外来種」として扱われている。

p84
コブシの花弁を白く見せているのは、特定の色素ではなく、花弁に含まれるたくさんの空気(気泡)。
また一見純白だが、わずかに黄色味を帯びている。
黄色の源はフラボンやフラボノールといった物質であり、これらの物質が混じらない純白の花は自然界にはほとんど存在せず、存在しても子孫を残せない。
なぜなら、昆虫はフラボンやフラボノールのない完全に純白な花を認識できず、従って花粉を運んでもらえないため。
(→紫外線色との関係はどうなっているのだろう?)

p97
シダレヤナギは生命力が強く、枝を切ってさしておくと容易に根がでる。
オスとメスの木があるが、日本の街路樹はほとんどがオスで、種子ができない。
つまり日本のシダレヤナギの多くは、1000年以上にわたり挿し木で増やされたクローン。

p131
ハナミズキの実はヤマボウシよりもずっと小粒で、単果が房状に集まっている。
その実は赤くて食べられそうだが、青臭くて食べられない。

ヤマボウシの実はいくつかの果実が集まって癒着している複合果。また甘い。

ヤマボウシは本州、四国、九州、朝鮮半島に分布。
ハナミズキは北米に分布。

一説によると、両者の祖先は広く北半球に分布していたが、
ユーラシア大陸にヤマボウシタイプの突然変異が埋まり、それをユーラシア大陸のサルが食べて
散布したため、赤く、甘い実になった。
一方北米多陸では、サルが赤色を認識しなかったり、分布域が重ならなかったりしてサルが食わず、
鳥が食べて散布したため、単果で甘くないタイプが存続している、という。
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category: 植物

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今週(先週)のまとめ  

先週末の日曜日は、野鳥調査のため白峰寺遍路道へ。
大雨の二日後とあって、山道もかなり雨に削られていました。

天候はくもり。しっとりとした空気の中、日の出直後から山道を歩きます。
もう囀りの季節には遅く、
キビタキもセンダイムシクイも、一カ月前のようにたくさん聞くことはできませんでした。
でもまあ、フィールドに出られただけでも満足です。

橙色のキノコ。雨後のしっとりした空気でした。名前はよく分からない。
キノコ

ふと見上げると、倒木にコゲラの巣穴あとがありました。いつも思うけれど綺麗な丸ですね。
コゲラ巣穴

良く飛び交っていたホタルガ。自宅近くでも珍しくないですが。
ホタルガ

さて、先週・今週のまとめです。
聖☆おにいさん」は、結局全巻揃えました。うむ。

鳥・人・自然 いのちのにぎわいを求めて」は、野鳥調査好きなら、読んでおいて損はなし。
落ち着いて楽しめるでしょう。

しかし何といっても、知らない世界を見せつけてくれた、
非実用度ナンバーワンの一冊、「ゴム銃大図鑑」。
こういう趣味が成立し、図鑑まで刊行される日本って素敵だなあと痛感。



ゴム銃大図鑑

イラストで読む レオナルド・ダ・ヴィンチ

聖☆おにいさん

BIRDER (バーダー) 2013年 07月号 この夏こそ! 島でバードウォッチング

鳥・人・自然 いのちのにぎわいを求めて



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