ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱  

パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱
スペンサー・ウェルズ



人類は、農耕を開始して以降、劇的に生物的にも変わっている。
第1章では、人間に対する自然選択は、
ヒトゲノムにおける遺伝子変異の痕跡から、
農耕が始まって以降に、その大部分があったことを示す。
農耕栽培という生産手段を得て定住生活を始めたことで、人間の生態的変化は加速し、
そしておそらくそれに伴って文化的変化も加速しているのだろう。

それは決してプラスの面だけでなく、マイナスの面もある。
生物としてのヒトが、環境・文化面の変化に対応しきれていないのだろう。

それどころか、その「対応しきれない」部分を、
ヒトは遺伝子組み換えなどの技術を応用して突破しようとしいる。

ヒトは通常の生物とは全く異なる進化・発達をとげているが、
その生物的側面は、進化の歴史から独立できるものではない。

そのひずみを詳らかにするのが、本書である。

ただ前半はそうした側面が強く非常に興味深かったのだが、
中盤以降、ちょっと焦点がぼやけているように感じた。

「農耕栽培以降のひずみ」というより、
一般的なヒトの問題になっているようだ。もちろんそれもヒトの進化史の延長線上に生じた問題とはいえ、
もう少し進化的・選択的側面からのケース説明などがあってもよかったかと思う。


【目次】
第1章 地図にひそむ謎
(イリノイ州シカゴ/遺伝子のビーズ/変曲点/副産物をふるいにかける/なぜそうしたのか?)
第2章 新しい文化が育つ
(ノルウェー、スタヴァンゲル/空っぽの罠/決壊したダム/山と谷/重複の重要性/社会のガン)
第3章 体の病
(ドリウッド/倹約遺伝子型と贅沢な暮らし/三つの波/ゲノムと環境/炭水化物と虫歯/テネシーの話へ戻ろう)
第4章 心の病
(オーストリア、マリア・グギング/言語障害/火山とマクロ突然変異/現代の暮らしの通奏低音/未来へ向けて)
第5章 遺伝子テクノロジー
(ダービシャー/加速する傾向/干し草にひそむ針/望むのも慎重に/ウイルスと、アリと、嫌悪)
第6章 熱い議論
(ツバル/京都議定書問題の最前線/キャップを手にして/熱い議論/夏のない年/必要は発明の母/海へ戻る)
第7章 新しいミトスへ向かって
(タンザニア、エヤシ湖/囚人、メタ倫理学、強欲/原理主義/フェイスブックと狩猟採集/多くを望まない)


【メモ】
p14
ヒトゲノムにおける強い自然選択が起こった部位を調べたところ、数百個見つかった。
そしてどれもが、過去1万年、350世代程度の間に生じている。
1万年前といえば、農耕を開始した時代である。

p17
8-5万年前の期間は、ヒトの形跡はほとんど残っていない。
遺伝子解析の結果でも、この時期にヒトの集団が激減したことがわかっている。
6万年前頃に何かが起こり、人口が増加に転じた。

p21
熱帯から紫外線量の少ない高緯度地方に進出したときに、ヒトは、肌の奥で十分なビタミンDを合成するため、肌の黒い色素を減少させた。

p22
乳糖(ラクトース)を代謝できる酵素ラクターゼ
ヒトの赤ちゃんでは機能するラクターゼ遺伝子を持っているが、幼児期を過ぎるとオフになり、大人は乳糖を代謝できなくなる。

ただし、家畜のミルクを補助的食品として用いたヨーロッパでは、90%以上が幼児期以降もラクターゼ遺伝子を機能させる変異遺伝子を持っている。
その他の地域では、大人になると乳糖不耐症になる。

p28
ある地域のデータ
旧石器時代の平均年齢:男35.4歳(身長178cm)、女30.0歳
新石器時代(農耕開始):男33.1歳(身長約160cm)、女29.2歳
→農耕のライフスタイルが、結果的に不健康にしている

p35
陸生の動物や植物の栽培は新石器時代の初期に飼養・栽培された種に由来している。
しかし魚、水生植物はごく最近開始。97%が20c初め、1/4はここ10年程度。
養殖漁業は新たな革命。

p55
C3植物:全植物の95%程度
   炭素の選り好みをするため、炭素13を嫌う。
   よって植物体中の炭素12が多い。
C4植物:6500万年前に誕生、トウモロコシ、キビ、サトウキビなど
   炭素の選り好みをしない。
   よって植物体中の炭素12に対する炭素13の比率が多い。

p63
多くの植物は倍数体
遺伝子の重複で、バックアップ用のコピーができることによって選択に余裕が生まれ、結果的に進化論的変化が早まる=1970「遺伝子重複による進化」大野乾(すすむ)

p88
太平洋の中の島嶼への移住=何週間もの生理的ストレス=倹約遺伝子型が有利、カロリー消費の低い者が生き残る
住み着いた後、最近の食生活→倹約遺伝子型が逆に働き、カロリー消費が低く肥満

p97
旧石器時代から現代までの三つ死亡率の波
1外傷  新石器時代の幕開けまで
2感染症 20世紀以前
3慢性病 近年

p109
虫歯 旧石器時代人にはほとんどない
新石器時代に急増

p112
ハチミツ:産業革命以前 ビタミン、ミネラル等もある
ショ糖:産業革命以後、甘いカロリーはあるが何の足しにもならない

近年の化学調味料や天然エキス、糖類はどれも、かつてはそのままで消費されていた食品に入っている。
中でも糖類は、「淡泊な」食品に味を足す。

p114
甘い味:専用の受容体がある。=食べら可能性として認識するため
苦い味:専用の受容体がある。=有害な可能性として認識するため

よって子供の頃は素直に甘い味を好む。
コーヒーなど苦みを受け入れるまでには時間を要する。

糖類はこうした進化の弱点をつくので、その魅力に抗しがたい。



 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 進化論

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

不思議な生き物 生命38億年の歴史と謎  

不思議な生き物 生命38億年の歴史と謎
池田 清彦



最初のカラー口絵がいい。
トゲトゲと、トゲナシトゲトゲと、トゲアリトゲナシトゲトゲがいる。
これを見ると、進化の妙というか、分化の妙というか、
いやはや生き物の世界は不可思議だなと実感する。

本書は生物、特に動物を中心に、様々な面での進化の足跡を辿る。
紹介されているトピックは多岐にわたり、
他書よりもちょっと詳しい解説も多く、動物進化史に興味がある方なら
特に楽しめるだろう。

細胞における死(アポトーシス)がテロメアによってシステム化されていること。
一方で、がん細胞はアポトーシスが阻害されている。
ということは、テロメアによるアポトーシスを回避するという進化もありえたはずだが、
生物は細胞死というシステムを維持することが主流である。なぜか。

またDNAの複製において、右の鎖と左の鎖の複製方法が異なり、
左側は連続的に複製されるのに対して、
右側のラギング鎖は途切れ途切れに複製され、後で結合される。
こうした違いはなぜ生じたのか。

また、これは最近の進化論ではかなり興味深いのだが、
獲得形質が遺伝するというシステムは実際どの程度機能し、それが過去の進化において
どの程度影響しているのか。
DNAのメチル化だけでなく、「遺伝的同化」というかたちでの獲得形質の遺伝があり得ることは本書で初めて知った。

進化論は日本では学校でも習うが、それはかなり単純化されたものである。
そのシステムや機能については、まだまだ分からないことが多い。
しかし現在の世界にひしめく生物は、まぎれもなく長い進化の産物である。
これほど多様な世界に生きていることを感謝しながら、その不思議を少しでも理解していきたい。


【目次】
第1章 かたちの不思議―生き物たちの奇妙なかたち
1 「トゲトゲ」はややこしい
2 14億年かけた生き物の進化
3 生物誕生の頃の地球
4 生き物のサイズと環境

第2章 いのちの不思議―発生・再生・寿命のメカニズムをさぐる
1 地球で最もタフな生き物、クマムシ
2 生命誕生のシナリオを読み解く
3 細胞の分裂と再生
4 寿命をつかさどるもの
5 時間は引き延ばせるのか

第3章 生態の不思議―あたかも思考するがごとく
1 はたして賢いのか、賢くないのか
2 免疫というメカニズム
3 擬態の意味を考える
4 生存のルールは緻密で多彩だ

第4章 進化の不思議―かたちをつくり、いのちを伝える細胞の力
1 遺伝形質をさぐる
2 獲得形質と遺伝
3 DNA進化論の射程
4 眠れる「遺伝子の川」
5 かたちを決める「細胞力」
6 人類が今後目指す進化は?


【メモ】
p15
尺度不変性:
 蝶の翅の模様のように、同種であれば大型個体も小型個体もほぼ同じになること。
 ※通常の物理化学現象では、「場」の大きさが異なれば、多少異なる現れ方をして、相同にはならない。
  翅を構成する高分子の大きさは同じなので、斑紋が相似形になるのは本来不思議。
形態不変性:
 チョウの前翅と後翅のように、独立して発生するにも関わらず調和して特定の形態を示すこと。

p23-
トゲトゲというハムシの仲間。トゲがたくさんあるのが特徴。
東南アジアではトゲのないものがいる
→トゲナシトゲトゲ。

群馬大学の小宮義璋名誉教授
タイで、トゲのあるトゲナシトゲトゲを発見
→トゲアリトゲナシトゲトゲ。(トゲトゲとはトゲの出方が違う)

ニューギニアでトゲアリトゲナシトゲトゲのトゲのないもの
→トゲナシトゲアリトゲナシトゲトゲ(和名ではない?)

p32
・エディアカラ生物群の奇妙な対称性

今生存している動物
不定形の側性(そくせい)動物(海面動物)を除くと、
多くは左右相称動物、ウニなどは放射性総称動物
→みな鏡映対称性(鏡に映った像がそれ自身と同じ)を持つ。

エディアカラ生物群
鏡映対称性以外に、
回転対称性
映進対称性(その面に対する鏡映が、鏡面内にある軸に沿って周期2分の1並進させた像と重なる)
螺旋対称性
といった多様な対称性をもっていた。

つまり、エディアカラ生物群のうち、絶滅を免れたのは鏡映対称性のある動物だけ。

p43
マスター遺伝子
同じDNAを持つ細胞が、各々異なる細胞に分化していくために必要な一群の遺伝子の連鎖的な発現の過程(遺伝子カスケード)を直接的、間接的に制御している少数の遺伝子群

著者:マスター遺伝子のコントロールの仕方を覚えたことが多細胞生物の起源となり、カンブリア大爆発を引き起こした(p44では眼の存在にも触れている)
→(意見)マスター遺伝子が直接の引き金ではないのでは?

p51
植物:
ミトコンドリアの元になる酸素呼吸菌と、葉緑体の元になったシアノバクテリアの双方が入り込んだ生物
動物:
ミトコンドリアの元になる酸素呼吸菌だけが入り込んだ生物

生物史上では、ミトコンドリアの発生はシアノバクテリアよりも遅いが、
真核生物に取ついたのはミトコンドリアが先。
動物の先祖が先に出現し、それにシアノバクテリアが入り込んで植物の先祖が出現。

p68
クマムシの乾眠状態=「隠蔽生活」
隠蔽生活状態のクマムシ=
水が抜けると代わりにトレハロースという糖を作り、それを媒質にして高分子を張り付けている(高分子の位置関係は壊れない)。

甲殻類のミジンコ:乾燥させても水をかけると動き出す。
金魚:-200℃以下で瞬時に凍結させると、常温の水に戻すと動き出す。

→一瞬にしてインタクト(無傷の状態)に分子が固定されると、時間の流れを止めたようになる。
 ただしこれが成立するのは、基本的に小さな生物のみ。

魚を-65℃以下で急速冷凍させると、水か小さな状態で凍るため、細胞が破壊されず、
解凍しても水っぽくならない。
冷凍のマグロやサバがおいしいのは、冷凍技術が発達した漁船だから。

p71
生命を支えているのは分子間の位置関係。
それを「クリプト・バイオテック・ステイト(隠れた生命状態)」という。
生命とは、究極的には分子の位置関係。

p75
タンパク質の生成をコード(暗号化)していないDNA=ジャンクDNAまたはノンコーディングDNA
ただし最近、その半数~8割が、タンパク質は生成しないが、遺伝子の発現をコントロールしていることがわかった

p85
細胞=いずれ「アポトーシス」で死滅する。
アポトーシス:多細胞生物における細胞死の一つ。
細胞が分裂すると、「テロメア」という部位がどんどん切れて短くなる。
テロメアは特別なDNA配列で、遺伝子ではないため、少々切れても問題はない。
ただしアポトーシスを抑制している部位がテロメア近くにあり、テロメアが全部なくなってしまうと
アポトーシスを抑制する部位が壊れ、アポトーシスが発現する。

人間の細胞:約50回程度の分裂でテロメアがなくなる。
ゾウガメ:100回以上
マウス:15回ぐらい
この分裂数限界を「ヘイフリック限界」という。

がん細胞や生殖細胞は、このテロメアが切れない。
「テロメラーゼ」という酵素が活性化している。

p92
DNAであれタンパク質であれ、配置が安定的な作動を生み出さなくなったとき、
すなわち循環システムの軌道がそれて動的サイクルが開くと、
我々の体は物理的な系に還元され、ベーシックな物理化学法則だけに支配される。=死

p95
多くの動物は自己修復能力(オートポイエーシス)をもつ。
ただし昆虫は蛹になり、成虫になった後はもう細胞分裂しない。
=自己修復能力がない。

p98
そもそも、人間サイズなら、寿命は30-40年程度。
人間が長生きな秘密は、
「ネオテニー(幼形成熟)」。

ネオテニーはヘテロクロニー(異時性)の一つ。
ヘテロクロニー:子孫における発生のタイミングが、祖先の発生プロセスに比べて変化した現象のこと。
 6つに類型化できる。
・前転位
 ある器官の成長が早まること
・加速
 成長の速度が速くなること
・ハイパモルフォーシス(過形成)
 成長が止まる時期が遅くなること
・後転位
 ある器官の成長が遅くなること
・プロジェネシス(幼形早熟)
 成長が止まる時期が早くなり、早く完成してしまうこと
・ネオテニー(幼形成熟)
 成長の速度が遅くなること

前転位、加速、ハイパモルフォーシスでは、結果的に形態変化が大きく、みてくれが複雑になる
「ペラモルフォーシス」が起こる。

後転位、プロジェネシス、ネオテニーでは、結果的に形態変化が小さく、みてくれが単純になる
「ペドモルフォーシス」が起こる。

p129
擬態はモデルの方がミミックより圧倒的に多いから効果がある。

p130
あるグループの中で同じ遺伝的カスケードがあり、それを使うと同じ斑紋になるとき、
それがたまたま毒がある生物と一致すれば、擬態というカテゴリーにはまるのではないか。

p147
昆虫:
ポリファガス(広食性)は例外的、
モノファガス(単食性)か、オリゴファガス(狭食性)である。

p154
哺乳類にレンズ眼を形成するパックス6遺伝子
→ショジョウバエで発現させると、複眼を形成した

p155
ショウジョウバエに「バイソラックス」という、翅が二対形成される遺伝的変異がある。
前胸-中胸-後胸が、前胸-中胸-中胸
となるホメオティック遺伝子(基本構造を作る初期段階での調節遺伝子)の変異

産卵後2.5-3.5時間の卵を短時間エーテル蒸気にさらすと、約25%がバイソラックスとなった。
→正常な遺伝子を持っていても、環境バイアスで突然変異が生じる
このバイソラックスはエーテル蒸気が遺伝子のスイッチに働きかけた
「表現型模写」といって、通常は遺伝しない。

しかし、この「表現型模写」バイソラックス同士を交配し、その卵にまたエーテル蒸気をあてることを10世代以上繰り返すと、エーテルを作用させなくてもバイソラックスが生じた。

→「遺伝的同化」ジェネティック・アシミレーション
本来のバイソラックスの突然変異はホメオティック遺伝子の異常に起因するが、
この場合ホメオティック遺伝子は正常で、別の眠っていた遺伝子が環境的なバイアスで発現し、
人為的な選択が強力にかかったあと、表現型(形質)として固定した。

表現型模写が適応的なら、遺伝的同化は環境の変化に対応した速い進化プロセスとなるだろう。

p158
ネオダーウィズムの最大の問題点は、「DNAの遺伝情報だけが遺伝する」と主張する点。
現実には、遺伝されるのはDNAだけでなく、その解釈系、言い換えれば生きているシステムそれ自体である。

p164
「サンバガエルの謎-獲得形質は遺伝するか」A.ケストナー
陸生のサンバガエルは、水生のカエルが(水中でメスを抱えるため)持つ「婚姻瘤」を持たない。
しかし、水中で飼育すると、大半は死亡するが、中には生き残り、婚姻瘤を持つ個体が生じた。
またそれは、次世代に遺伝するという観察結果を得た。
(カンメラーは論争に敗れて自殺する。)

カンメラーの実験データがねつ造だったかは不明。
しかし、DNAのメチル化によりイネの背が高くなる場合があるなど、
エピジェネティックに獲得された形質が遺伝することがある。

ただし、しばらくすると徐々に消えていく場合もある。

p168
DNA ヘリカーゼが親の鎖を分離していく
左側のリーディング鎖が合成されるときは、合成の方向と同じ方向にヘリカーゼも進む
=連続的に伸びる
また、1個のDNA合成酵素だけが関与する。

右側のラギング鎖が合成されるときは、ヘリカーゼの進む方とは逆に合成され、新生鎖は切れ切れとなる
「岡崎フラグメント」となる(岡崎令治が発見)。
RMAが関与し、それをDNAで置き換えた後、リガーゼという酵素を用いて「糊付け」する。

p181
相変異フェイズ・バリエーション
生物が個体群密度によってその体型が変化すること
フェイズ・グレガリアPhase gregaria 群生相
フェイス・ソリタリアPhase Solitaria 孤独相
フェイズ・インターメディエットPhase intermediate 中間相

p194
生物は複雑になるのは簡単だが、単純になるのは難しい。
複雑に分化した生物は、進化を後戻りできない。

おそらく新たな門は、カンブリア紀以降新たに生じていない。
現在の昆虫の科がたくさんできたのは700万年前で、おそらく新しい科レベルはもう生じないのではないか。

p204
アキアカネ(石川県立大学・上田哲行教授)
2000年頃から減少し始め、10年で1/100~1/200になった。原因はプリンスという名で流通しているフィブロニルという物質が入ったイネの苗箱処理剤>
この農薬は水田中のアキアカネの幼虫を全滅させる。

蜂群崩壊症候群
-最近、ネオニコチノイド系農薬であることが明確になってきた。
ミツバチの神経系が障害を起こし、帰巣能力を失う。
ネオニコチノイド系農薬はフランスでは2006年から使用禁止。
日本では松枯れ防止剤として空中散布している。


 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 進化論

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

国宝  

国宝



国宝○○、という言葉はメディアでよく出会う。

例えば、香川県坂出市には、国宝建築がある。神谷神社がそれで、建造年が明らかな三間社流造では最古のものという(棟木に建保7年(1219)の墨書銘があり、鎌倉前期の建築)。しかし僕は生まれも育ちも坂出市だが、その存在は25,6歳になるまで知らなかった。
これは僕だけではなく、多くの坂出人にとって、歴史的な場所と言えば八十場と白峰だと思う。

ちなみにこの神谷神社には行ってみたことがある。
あいにく国宝の本殿は柵のために見えなかったが、周囲の山麓が清々しく気持ちよくて、なるほど神の谷だな、と感じた記憶がある。

あとは、香川県立ミュージアムに国宝 藤原佐理筆詩懐紙があるが、あまり馴染みのあるものではない。

そういや社会科の教科書で、「袈裟襷文銅鐸<伝讃岐国出土>」((http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=187182)を見たが、
これは東京国立博物館に収蔵されており、ちょっと縁遠い存在である。
(ちなみにレプリカが、五色台山上にある瀬戸内海歴史民俗資料館にあるのだが、あまり知られていないようだ。)

こうして見ると、国宝という言葉は知っているが、
その実態はほとんど知らないことに気づく。

どんなものが国宝なのか。
指定や保存にどんな来歴とドラマがあるのか。

そうしたことを興味深いテーマ別に紹介しているのが、本書である。

大きく2部に分かれていて、前半はテーマ別国宝解説。後半は国宝建築などの紀行となっている。
わが神谷神社にも来訪されており、興味深く読んだ。

【目次】
国宝大百科
国宝かくれ里紀行
国宝という物語
国宝全リスト

【メモ】
p31
石碑や五輪塔など石造の文化財は多いが、国宝は5件のみ。

p32
国産のやきもので国宝は5点のみ。
刀剣は122点ある。
国宝選定の原案を作成する文化庁文化財保護部美術工芸課に陶磁専門の調査官がいなかったことも原因か。
昭和34年の「志野茶碗」の指定以来、45年間も指定されていない。

p58
平成9年、30年ぶりに建造物の新国宝が指定された。
正倉院正倉。
築1200年の建造物が重要文化財ですらなかつたのは、
宮内庁の管轄のため。(ユネスコの世界遺産に奈良一帯を指定するための措置という。)

宮内庁の傘下の文化財は、文化財保護法の適用外にあるという強固なルールがある。

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 歴史

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

今週のまとめ  

暑い日が続くようになりました。
僕はコーヒー中毒ってくらい飲み続けるのですが、こう暑いとちょっとつらい。
で、僕は炭酸水(炭酸飲料ではない)も好きなので、長らく迷っていたこれ↓買いました。色は青です。

手軽に炭酸飲料が作れます。ボトルを買い足せば、1リットルと500mmリットルを作り分け可能。
電気も使わないし、子どもでも作れます。
また(シロップを使わなければ)砂糖が入っていないので、たくさん飲んでも大丈夫。
子供用には、カルピスを混ぜるのも良いようですね。

ガスカートリッジは詰め替え形式で、販売店に持っていくと、替えのカートリッジが安く購入できます。
ゴミもでなくていいですね。夏場にペットボトルの山を作ることを考えると、いい買い物かな、と思います。

なお、Amazonの並行輸入品は、ガスカートリッジが付属していません。

これがないと意味がないので、興味がある方は、楽天か、お近くのリアル店舗で。


さて、先週紹介したものは、どれも楽しめる本でした。

日本の昆虫1400」は、常備・フィールドに持参する昆虫図鑑としては、
久々にこれ、と確信をもってお勧めできるシリーズです。

また、
昆虫採集の魅惑」。
昆虫の世界だけでなく、昆虫屋さんの世界をも垣間見ることができる、得難い一冊です。
フィールドに出たいなあ、とウズウズしている人には、逆効果かもしれません。

「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」。
人を見かけと印象だけで判断してはいけない、と思い知った一冊でした。
本書で初めて、金子氏の生き方(そして死に方)を知り、
自身の参考になる方も多いのではないでしょうか。
情報に命をかけた氏ならではの、「生と死への向き合い方」について、氏から贈られた、
最初で最後のお得情報ともいえる一冊。
食わず嫌いでいるのはもったいない、
良い本です。ぜひ。


日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ

昆虫採集の魅惑

僕の死に方 エンディングダイアリー500日
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 雑記:今週のまとめ

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

僕の死に方 エンディングダイアリー500日  

僕の死に方 エンディングダイアリー500日
金子 哲雄




ある時期から、TVのトレンド情報で金子哲雄氏を見かけるようになった。
その独特の雰囲気と語り口は、正直僕は合わなくて、申し訳ないが氏の情報を見よう、という気にはならなかった。

しかし本書を読むと、金子氏が意識的に主婦目線からの分析・解説を行っていたため、
嗜好性が主婦と全く異なる僕は合わなかったのかな、と思う。


そして「主婦目線」はもとより、メディアへの露出、自分の立ち位置、そうした諸々のことについて、
金子氏が周到に準備し、出るべくして世に出てきたのだということを、初めて知った。

金子氏は 2012年10月2日に肺カルチノイドで死去したが、
それまで闘病生活にあることは一切公表せず、
自身の死に向き合い、死の準備をやりとげてから亡くなった。

死への準備についても驚かされるが、
何よりも「流通ジャーナリスト」として世に出てくるまでの努力と工夫である。
自らの強みを分析し、それを最も有効に活用できるよう努力と工夫をかさね、
そして思い描く未来に向かって進んでいく。
その姿からは、イチローにダブるストイックさを感じるくらいである。

「お得情報」という「使い捨て」の情報を追い続ける仕事ではあるが、
金子氏はそれを天職として見抜き、天職として全うしていた。
その生き方は、日々に迷う僕らに対して、大きな励みとなる。

金子氏が生きていたときに、その隠れた努力と工夫はほとんど知られなかったが、
本書を残してくれたおかげで、希有な生き方を後世に示してくれるだろう。

TVのイメージだけで敬遠していた僕のような方にも、
ぜひ一度読んでみていただきたい。
人はこれほどまでに強く、やさしく、謙虚になれるのだなと、改めて思い知らされた。


【目次】
第1章 流通ジャーナリストと名乗って
第2章 昼も夜も時間が足りない
第3章 発病。あふれてしまう涙
第4章 最後の仕事は死の準備

【メモ】
p21
「やっぱり好きなことで勝負しないと勝てないんだな。
高校2年生の私は、その時はっきりと悟ったのだ。」

p36
「私は喜ばれるにはどうしたらいいか、といつも考えている。それは今でも変わらない。」

p54
女性週刊誌に初めての記事、掲載ページに付箋をつけ、TV局の喫煙室に置いた。
「『喫煙室は手持無沙汰』という読みがあったからだ。」
「記事を読んでもらえれば、面白いと思ってもせえるという自信があった。」

p58
「私はそんな中で、主婦の視線で話ができ、かつビジネスに関連する話題も発信していける。こういう希有なポジションを獲得できたのだ。」

p60
スーパー、最初にチェックするのは牛肉の値段(トップとボトム)
牛肉の値段は地域の商圏の経済力を反映
鶏肉や豚肉はさほど変わらない
経済力が高ければ高い肉が売れる。庶民の街ではリーズナブルな値段が人気商品となる。

p65
4白(牛乳、食パン、卵、とうふ)が安い店を探す
これらが安く、品ぞろえが良いのが良いスーパー
カレーの食材も同じ

p78
「大学病院の医師は、治癒率を気にかける。それが業績や評判に直結するからだ。」

p80
「妻も働く身だ。決して時間に余裕があるわけではない。睡眠時間を削って、私の闘病を支えてくれた。『申し訳ない』何度もこの言葉が口から出かかり、慌てて飲み込んだ。言って済む話ではない。謝られても、向こうが困るだけだ。その代わり、『ありがとう』と言おう。」

p126
「死んだ人を悼む気持ちは同じなのに、お金で争ってしまう。争いたくなくても、そこがはっきりしなければ、揉める可能性がないとは言いきれない。
それがわかっているのに、当人である自分が何もしないのは、やはりおかしい。そのための遺言-エンディングノートにしたかった。」

p130
「『感謝の全国キャラバン』なんて、くだらないことを考えていると思われるかもしれないが、これは今の自分にできる、最大限のことなのだ。相手を喜ばせるための仕事を、今、私はできていない。その代わりに、葬儀と葬儀後をプロデュースすることで、相手に喜んでいただきたいのだ。」

p146
「そもそも私は、流通業界を切り口に、情報番組や情報誌という媒体で、いわば使い捨ての情報を追いかけることを生業としていた。使い捨ての情報は、報道やドキュメントとは異なり、何かを社会に対して提言し、世の中を変える一端を担うものではない。どちらかと言えば、暇つぶしみたいなものかもしれない。
しかし使い捨ての意地もある。
だから最後まで妙な格好をつけたくない。」
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 医学

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ  

日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ



図鑑は、大きく2つのポイントで分類できる。

1 掲載種: a)全種(もしくはほぼ全種)図鑑か、b)抽出種図鑑か。
2 図  : a)写真図鑑か、b)イラスト図鑑か。

メリット、デメリットを整理しよう。

1掲載種-a)全種図鑑
・メリット:
 全ての種について、漠然としてでも知識がつく。
 「目指す種はこの中にある」という確信と安心感。
・デメリット:普通種と希少種が混在するので、初心者は検索が困難。
 分厚く重くなり、携帯性が低下。

1掲載種-b)抽出種図鑑
・メリット
 検索しやすく、コンパクト。
・デメリット
 どの種を掲載するかというセンスが悪いと、使い物にならない。

2図-a)写真図鑑
・メリット
 馴染みやすい。間違いはない。
・デメリット
 掲載個体が標準と思い込みやすい。
 識別点がわかりにくい場合がある。
 アングル・明るさなどの違いで、類似種と比較がしにくい。

2図-b)イラスト図鑑
・メリット
 標準的な個体を示せる。 
 識別点がわかりやすい。
 類似種との比較がしやすい。
・デメリット
 間違っている場合がある。
 その時点で知られていない識別点は、正確に描かれていない場合が多い。


これを踏まえて組み合わせると、図鑑の性格がわかる。

【1】a)全種図鑑--a)写真図鑑
 資料価値は高い。中級者以降も使える。
 製作(撮影)が大変。重くなりがち。

【2】a)全種図鑑--b)イラスト図鑑
 類似種の比較がしやすく、初心者から中級者まで使える。
 古くなる(新しい識別知見が増える)と資料価値が下がる。
 

【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑
 どの種を掲載するかというセンスが正しければ、フィールドでの有用性は高い。
 ただし類似種との比較が難しい。

【4】b)抽出種図鑑--b)イラスト図鑑
 検索しやすく、最も初心者向け。
 ただし、慣れると物足りなくなるのも早い。

言い換えると、【1】は中~上級者向け、【2】は初~上級者向け、【4】は初心者向けである。

中途半端なのが【3】。
出版社にすれば作りやすいのだが(写真はほどほどで良いし、単価も安くて良い)、
往々にして初心者には使いにくく、中級者以外には使えない図鑑ができる。
最も作り手のセンスと工夫が問われる図鑑と言える。
(全種図鑑の方が物理的な苦労は多いが、「種を選ぶ」という判断は不要なので、
とにかく力技で作ることができる。)

正直、野鳥図鑑では【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑で良いものは思いつかない。
トキとかアホウドリとかヤンバルクイナといった、有名種(普通種ではない!)が掲載され、
その分普通種の掲載が減っているのが多い。全くもっと無意味である。

昆虫は種数が多い分、全種図鑑も難しく、
よくあるのが「甲虫図鑑」や「蝶図鑑」など、特定の分類群だけに集中したものが多いようだ。

しかし、本書はあえて抽出図鑑で勝負している。
しかも、刊行元は全種図鑑を得意とする文一総合出版である。

それだけの自信があるのだ、というのが、本書を見た感想である。

本図鑑は【3】b)抽出種図鑑--a)写真図鑑である。
検索の難しさがネックになりがちだが、本図鑑では

生態写真を、類似種はほぼ同じアングルで、背景を白抜き加工して掲載している。
おそらく相当の労力を要したのではないか。

しかしそのおかげで、極めて明瞭な写真で比較検討が可能となっている。
また、識別が難しいグループには、検索図も作成。だいたいの種を検索していける。

生態写真の採用と、極めてコンパクトな体裁は、とにかくフィールドに持ち出すことを
前提としているのだろう。

また、掲載種はよく見かける種とその類似種となっており、実際に野外で見たことあるな、という種ばかり。

久方ぶりに、興奮できる図鑑が刊行されたと言える。
虫の糞や卵、セミの抜け殻の識別などもあり、使い勝手はかなり良さそうだ。

フィールドで昆虫でも見てみようかという方、
庭や畑で見かけた昆虫を調べたいという方、
また小さい子供がいる家庭には、特に向いているだろう。

何か良い昆虫図鑑がないかな、と思っている方は、ぜひ検討していただきたい。

本図鑑では731種を収録している。
続編の (2)トンボ・コウチュウ・ハチ では660種収録、あわせて約1400種となる。



【①の目次】
チョウ目(チョウ、ガ)
ゴキブリ目
カマキリ目
バッタ目
ナナフシ目
ハサミムシ目
カメムシ目(セミ、アメンボ、タガメ、カメムシなど)
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 昆虫

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

昆虫採集の魅惑  

昆虫採集の魅惑
川村 俊一



文献記録や標本、写真の検討による識別が好きな鳥屋の端くれとして、
羨ましいのが昆虫屋や熱帯魚屋のハイアマチュアの専門性である。
学会誌や論文、海外誌を読み、分類を検討し、自己の意見を持つ。
残念ながら野鳥屋は裾野は広いのだが、
ちょっとでも学名で覚えている人の方は少ない。
また、識別でも、論文や海外の文献を参照し、亜種、換羽や翼式などを考慮した識別をしている人はなかなかいない。普通は国内の図鑑頼りである。
そして、記録を文献に残そう、とい人は更に少ない。

この差は何だろう、というのが長年の疑問である。

一方、本書は一人の虫屋が、昆虫商として活動していく姿を縦軸に、
様々な虫屋さんの活動を横軸に、
「昆虫趣味」の奥深さを紹介する。
昆虫そのものの情報ももちろん多いが、
それよりも、ハイアマチュアの昆虫屋が追い求める世界を見せてくれることで、
稀有な一冊である。

そこから上記の疑問が解決できるのでは、と読み始めた。
その結果、
昆虫屋さんはマイナーな種、マイナーな国になるほど、
自身が研究者にならなければ収集・整理すらできない。
そのために、どうしても対象者の論文を読み、専門性を高めていく。

一方鳥の場合、かなりが一目でわかる「わかりやすさ」がある。
また、昆虫のように「チョウ」「カミキリムシ」などと細分化したグループのみで楽しめるほどの種数がないため、普通は識別困難な種はスルーすることができる。
ジシギやセグロカモメグループなど、特化して見ている人の方が少なく、
そうした人の識別情報で満足している、ということかと思われる。

まあたかが趣味であり、人それぞれではあるが、
裾野だけ広がるようでは先はないだろう。

ところで本書は、一般人が訪れない国々での昆虫採集という、一種の冒険譚としても楽しめる。
昆虫にアレルギーがなければ、結構楽しめるのではないか。

なお著者には、姉妹編ともいうべき「昆虫標本商万国数奇譚」がある。
こちらも楽しい一冊であった。




【メモ】
・8月最終日曜 インセクト・カーニバル 東京
10月 東京、11月 仙台、以降 大阪、東京、名古屋
・インセクト・フェア 2月中旬

■P48 ハニングトンウスバシロチョウ
5,500m チベット、5月上旬~6月初旬 砂や岩礫地を好む

■P79 Agrias属(アグリアス)
メキシコ南部~南米
黒地に赤、青、黄、緑
アマゾン川支流ごとに個体変異
40m樹上、幼虫の食草はコカの一種
→採集困難
→標本は19世紀、ヨーロッパで、ロスチャイルド銀行などの担保になった。


■P77 完模式標本(ホロタイプ)と副模式標本(ハロタイプ)
ありかが明確
★考え方は、文献記録にも使えるか?

■P122 昆虫趣味の水準向上
1970年代から80年代は、日本の「虫の趣味」の水準がヨーロッパ諸国に追いついた時期だった。
それを象徴する「世界のアゲハチョウ」「日本産鳥類大図鑑」「トリバネアゲハ大図鑑」「図説世界の昆虫」全6巻などの素晴らしい大著が続々と出版された。
例)1980「東南アジア島嶼の蝶」亜種まで解説
2002 第5巻を刊行


P152 ハイアマチュア
アゲハチョウの収集
→集める範囲が分かっている、図鑑も揃っている

ハナアブ亜科、コガネムシ科、カミキリムシ科など
→種名すら分からないものも多い

★各分野の研究者による分類や、同定も定まっていない。
そのため、自分で外国の文献や、原記載を取り寄せて、 調べながら集めなければならない
→★ハイアマチュアの理由か?

P154 「雌雄型」
体の半分が♂、半分が♀。写真掲載


P206 キューバ 亜種の消失

Phoebis avellaneda
アベリャネータ・オオベニシロチョウ
P.philea huebneri
フィレアオオキチョウ(亜種ウェブネリィー)
P.argante fornex
アルガンテオオキチョウ(亜種フォルナックス)

赤い。
キューバとアメリカは、8000万年前に分離。
フィレア、アルガンテは黄色いが、隔離の結果キューバの亜種は赤くなった。
しかし食草がマメ科のCassia属が主で、開墾に伴い、大陸の黄色いタイプが飛来、交雑。
近年は赤い個体はいなくなった。
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 昆虫

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

今週のまとめ(先週のまとめ)  

昨日は、アカショウビンを期待して、大滝山で野鳥観察会。
集合場所に行く道が道路工事でものすごく迂回することになったり、
途中から雨が降ったりと、
ちょっと残念な観察会となりました。

しかし、梢で囀るオオルリや、斜面で高らかに囀るミソサザイなどを見ることができました。
かすかな雨模様の渓谷、谷間に響く野鳥の声、
そこで過ごしたひと時を、一緒に行った子供たちがずっと覚えていてくれることを願います。

さて、先週の読書。
樹木ハカセになろう」が、街路樹入門としても良い一冊でした。

また先週初めて読んだというわけではありませんが、
ご紹介した「日本動物大百科(平凡社) 鳥類Ⅰ、鳥類Ⅱ」。
刊行時点までに得られていた知見をコンパクトに整理した本書は、
その資料価値は損なわれることなく、長く使えると思います。

珍しい鳥を追いかけるというスタイルではなく、
生物としての野鳥とじっくりと付き合いたいという方は、
ぜひお手元に持っておいて損はありません。
書店などで、ぜひ一度お確かめください。

BIRDER(バーダー)2013年6月号

日本動物大百科(平凡社) 鳥類Ⅰ、鳥類Ⅱ

立花隆の書棚

マグロが減ると、カラスが増える?―環境問題を身近な生きものたちで考える

樹木ハカセになろう
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 雑記:今週のまとめ

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

日本動物大百科(平凡社) 鳥類Ⅰ、鳥類Ⅱ  

日本動物大百科(平凡社) 鳥類Ⅰ、鳥類Ⅱ
樋口 広芳

【鳥類Ⅰ】


【鳥類Ⅱ】



野鳥図鑑はよく売れるようだが、あれはあくまで識別のためのもの。
識別=名前を知るということは、実は動植物とのつきあいの入口にすぎない。

その先にある生態、形態の妙こそが面白いのだが、
昨今、識別できたら珍鳥・迷鳥に流れる人ばかりで、嘆かわしい限りである。

スズメにしても、一腹卵数、抱卵日数、育雛日数なんてベーシックな情報をはじめ、
分散、つがい形成、営巣場所、イエスズメとの競合等々、
楽しいテーマがいっぱいである。

しかも、種ごとにそのトピックは異なる。

セグロセキレイとハクセキレイの競合。ここには古いセグロセキレイの存在と、
分化の流れを見る面白さがある。

セグロといえばセグロカモメ。分類学の最前線。

コゲラの縄張り範囲は。なぜホオジロは秋にさえずるのか。カワラヒワのつがい形成はどのような流れなのか。エナガのヘルパー性とは。オオヨシキリのメスによるオス選択とは…。

こんなに面白い世界が待っているのに、種名だけでいいの、と思いながら観察会を開催し、
できるだけ楽しいトピックを提供できるようにしている。

ただこうした識別重視・生態軽視の風潮は、
おそらく、世に識別図鑑は溢れているが、
こうした生態学を含んだ分野では、「そもそもどれを読んだら良いのか、分からない」のも一因だろうと最近思う。

そこで、まず基礎文献として紹介したいのが本書である。
2冊で当時の日本産種をほぼ網羅。
全種について、分布、サイズ、特徴、生態を解説しているほか、
主要な種については、各研究者による解説が掲載されている。
これが結構詳しくて、非常に役に立つ-いや役には立たないけれども、
その種の生物としての「生き様」を教えてくれる。

珍鳥マニアでない野鳥好きであれば、とても楽しい一冊になるだろう。
また、観察会の案内をするような立場の方は、持っておいて損はない。

(なお、上記の各野鳥のトピックが、全て本書で解説されているわけではありません。念のため。)
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 野鳥

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

BIRDER(バーダー)2013年6月号  

BIRDER(バーダー)2013年6月号



今号では、様々なカワセミ類が掲載されており、
見た目にとても楽しい号となっている。
ただこれだけ美しいグループなのだから、その色彩について
構造色的側面からの解説を期待したが、それは無かった。残念である。
構造色については「モルフォチョウの碧い輝き―光と色の不思議に迫る」(レビューはこちら)が詳しく、


カワセミの構造色については、おそらく同書の著者によるブログ「構造色事始」に詳しい。
http://blogs.yahoo.co.jp/kozoshoku/45168737.html
おすすめである。

その他の記事では、Youn Gunsの野鳥ラボが、
ムナフヒタキ、ロクショウヒタキ、マダラヒタキ、クロエリヒタキを紹介していて、
ちょっと写真は荒いし解説も淡泊だが、資料にはなるだろう。
ただ厳しいことを言うと、このコーナーは
「種だけでなく亜種や性、齢も同定し、さらには形態だけでなく生態にも注目して鳥の識別を掘り下げていく」とうたっているのだが、第3回目で早くも珍鳥解説になったのは残念である。
次号以降に期待である。

付録は日本産鳥類のチェックリスト。
まだ新分類に従った全種図鑑は刊行されていないので、
珍鳥を追いかけることが多く、かつライフリストを付けている方には、
新分類での種数をカウントするのに便利だろう。



【目次】
特集 もっと知りたい!カワセミ類
・カワセミ人気の秘密を探る—カワセミが愛される理由  文●柴田佳秀 写真●BIRDER
・おなじみから新顔まで、日本の翡翠総カタログ  文●大西敏一  写真●井上大介、大西敏一、川上和人、♪鳥くん、中野耕志、西村光真、西村美咲、松村伸夫、本若博次、吉田巧、BIRDER
・カワセミ類の奇妙な体〜カワセミの体形を笑うな〜  文・写真●川上和人
・知って得する? カワセミ類豆知識
- アカショウビンとリュウキュウアカショウビンの羽毛の比較  文・写真●藤井 幹
- 建物に衝突するカワセミ類  文・写真●水田 拓
- 幻の鳥・ミヤコショウビン  文・写真●山崎剛史
・大都会の真ん中でもカワセミと出会えるのか? 東京都心部でカワセミを探す  取材・文●BIRDER 協力●志賀 眞
・カワセミ類の楽園、ケアンズへ行こう!  文・写真●松井 淳
・26年前に多摩川中流域に現れたヤマセミ  文・写真●西村眞一
・谷津干潟公園のヤマショウビン騒動  文●星野七奈 写真●谷津干潟自然観察センター
・ミラーレス一眼でカワセミを撮る  文・写真●大橋弘一

ENJOY BIRDING
・BIRDER Graphics[カンムリカイツブリ〜水辺の愛情物語] 文・写真●山田芳文
・Field Report[里に桜、山に雪、空にはサシバ] イラスト●水谷高英
・Young Gunsの野鳥ラボ[ヒタキ科・カササギヒタキ科の珍鳥たち] 構成●Young Guns
・鳥の形態学ノート[アカショウビン足] イラスト・文●川口 敏
・私のケッサク!“鳥”写真[第13回募集 入賞作品] 写真●読者の皆さん 選評●叶内拓哉
・Bird Tracking[ウズラ(雄)] イラスト●赤勘兵衛
・ぶらり・鳥見 散歩道[あこがれの鳥たちが営巣するキャンプ場(鳥取県八頭町)] 文・写真●♪鳥くん
・野鳥圖譜[メボソムシクイ] 画・文●佐野裕彦
・どこでもバードウォッチング[神社] 文・写真・イラスト●神戸宇孝
・伝説の翼[ロビン(Robin)] 画●長島 充 文●斉藤ヒロコ
・全日本“鳥”フォトコンテスト作品募集のお知らせ
・唐沢流・自然観察の愉しみ方[原風景を振り返る……] 文・写真●唐沢孝一

BIRDER NEWS
・ニコン「モナーク5」を持って、春の河原を歩く
・カメラマンは野鳥の天敵か? それとも共存できる相手なのか?  文・写真●戸塚 学
・カールツァイス双眼鏡「Victory HT」インプレッション  文・写真●野村 亮

特別付録
・2013年版 新分類完全対応「日本の野鳥チェックリスト」
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 野鳥

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

立花隆の書棚  

立花隆の書棚
立花 隆



正直なところ、あまり立花隆氏に興味はない。
ただ、「知の巨人」とか言われているし、
ブックガイド的な本も結構出している。
良い本に出合うにはたくさん読んでいる人に聞くのが良い方法の一つなので、
そういうスタンスで、機会があれば見ている。

で、そういう方の蔵書はいかなるものなのか、という興味から手に取った。
もう一つは、色々なレビューでも触れられているが、
本書の潔い「太さ」に惹かれた。厚さ6cm弱あります。国語辞典とか英和辞典とかより厚い。

内容は、立花氏の書棚の写真と、それぞれの書棚にある本、カテゴリについて、
立花氏が思いつくままに語るというもの。

共産党史とか東大紛争とか政治史に興味がある方なら、
良いブックガイドになるかもしれない。

僕は生物関係に興味があったので、頑張って全部読んだが、まあそこそこでした。

気になる本としては、ヨーロッパの聖者の伝説を集めた本「黄金伝説」。


「名画でたどる聖人たち もう一つのキリスト教世界」(レビューはこちら)でもよく引用されている。

いつか読んでみたいものである。


あと、ちょっと納得がいかない点があるので述べておきたい。

①ホンダのアシモについて
立花氏は人工知能的観点からアシモを例に出して、けちょんけちょんに述べている。

p75
「人工知能でせいぜい可能なのは、ホンダの作ったアシモのようなロボットでした。けれども、アシモは見かけ上は、いかにもロボット自身が自発的にアクションしているように見えるけれども、実は全て舞台裏で人間が操作しているのと同じ。言ってみればラジコンと同じです。もちろんラジコンよりは、レベルの高いことをしますが、原理的には同じです。舞台の上でロボットが動いていても、それはロボットが自発的に動いたのではない。」

いや、アシモは人工知能ではなく、二足歩行ロボットであり、
運動能力、反射能力、バランスなどでの技術追求ではないのか。
ホンダのホームページでアシモのコンセプトを見ても、
どこにも人工知能なんて言ってない。
ちなみに記載されているコンセプトは以下の通り。
・親しみやすいデザイン
・小型軽量化
・より進化した歩行技術
・より柔軟で速い動き
・簡単な操作性
僕もアシモのショーを見たが、確かに「人工知能」っぽいショー仕立てではあった。
しかし、誰もアシモの売りが「人工知能」だなんて考えてないだろう。
立花氏の批判というロボット限界論は、何だかかなり的外れであり、
F1マシンにカーナビがないと文句を言っているようなものである。
何だかよくわからない。

②原発について
原発に関する立花氏の他の著作は読んでないので、正しい立場や主張は知らない。
ただ本書に限れば、
・福島原発は古いタイプであり、人為ミスと設計ミスが事故原因。
・最新の原発は安全である。
・他国では原発研究が推進されている。
・日本だけ原発から撤退するのは損である。
というものと思う。

しかし、福島原発事故で立証されたのは、福島原発が古いタイプの原発だったかどうかではなく、
「原発にも人為ミスと設計ミスはある」
「事故が起きれば、その被害はコントロール困難」
ということできなかったか。

立花氏がいうように、最新の原発は二重三重に安全なのかもしれない。
しかしそれも、正しい設計と正しいコントロールがあってこそである。
いかなるモノにも「人為ミスと設計ミスはある」、そして
一度破綻すれば「その被害はコントロール困難」であれば、
少なくとも国土に余裕がない日本では、商業原発は困難と考えざるを得ない、と僕は思う。

もちろん、色々なご意見はあるだろうが、
ちょっと立花氏の主張は、無邪気に技術を信頼しすぎているような気がした次第である。


なお、僕がこのシリーズで見てみたいのは
刊行されていないが「荒俣宏の書棚」である。


【メモ】
p57
中央公論社の「自然選書」シリーズは、いい本が多かった。

p146
「黄金伝説」は、ヨーロッパの聖者の伝説を集めた本。
カトリックの聖人伝説は、ギリシア・ローマ神話が古典古代において果たしたのと同じ役割を、中世・近世ヨーロッパにおいて果たしている。そのため、ヨーロッパ文化を深いレベルで知ろうと思ったら、「黄金伝説」は欠かせない。

p348
国外に離散状態でいるユダヤ人(デイアスポラのユダヤ人)は、みな潜在的にイスラエル国民であることになっているため、国籍が欲しければいつでも獲得できる。

中東で戦争が起これば、ユダヤ系アメリカ人は義勇軍として参加することが法的に認められている。


p75
「人工知能でせいぜい可能なのは、ホンダの作ったアシモのようなロボットでした。けれども、アシモは見かけ上は、いかにもロボット自身が自発的にアクションしているように見えるけれども、実は全て舞台裏で人間が操作しているのと同じ。言ってみればラジコンと同じです。もちろんラジコンよりは、レベルの高いことをしますが、原理的には同じです。舞台の上でロボットが動いていても、それはロボットが自発的に動いたのではない。」

p115
「原発不要論というのは、つまり『原発というのは人間にはコントロールしきれないメカニズムなのだ』という主張ですが、現実には、とっくの昔にそうではなくなっています。人間のコントロールが及ばないのは、むしろ今回福島で事故を起こした、あの旧タイプの原発ぐらいのものなのです。」
・設計者がアメリカの竜巻を念頭に置き、地下に予備電源を配置した。

p117
「今回の事故は、東電の様々な事後処理ミスやGEの設計ミスがなければ、むしろ原発の安全性を証明することになりえた事件だった。」

p123
福島の原発 第二世代
完全安全体制をとったものを三・五世代、もしくは第三世代+
第三世代++にはAP-1000という非常に有名なシステムがついていて、現在はこれが基本
第四世代 緊急時に多重防護システムが電源なしで働く

p128
「原発が怖いといっても、周囲の国はすべて原発大国を目指しているわけです。日本だけが脱原発をしたところで、完全に原発のリスクから逃れられるわけではありません。そうであるなら、少なくとも自分たちでコントロールできる技術を持っておいた方がいい。今後の原発政策は、国内事情だけでなく、国際的な視点を持って決めるべきだと、ぼくは思います。」

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 読書

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

マグロが減ると、カラスが増える?―環境問題を身近な生きものたちで考える  

マグロが減ると、カラスが増える?―環境問題を身近な生きものたちで考える
小澤 祥司




生物は独立して存在しているのではなく、他の生物との関連性の中にある。

もちろん特定の個体だけなら、他の生物とほとんど関わらず死んでいくものは少なくない。

しかし種レベルでみれば、必ず他の生物と関連がある。
いやそけどころか、その形態・生態そのものが、他の生物を含む環境要因によって左右された結果である。

その具体的事例について、おおむね中学生でも理解できるようなレベルで説明したのが本書である。
とはいえ、紹介されている事例は結構専門的なものも多く、最近の生態学関係の本を読んでいなければ馴染みのない話題も多い。
本書を手掛かりとして、興味のあるテーマに発展させるのが、正しい利用のしかただろう。

ただ、気になった点を一つ。
ニホンオオカミについて、本書では既に絶滅し、

「最近でも時々、オオカミを見たという話が話題らなることがあるけど、どれも野犬を見間違えたものだね。」(p29)

と断定している。
その上で、タイリクオオカミなどの導入論を紹介し、

「実は日本にもオオカミを復活させるべきだと主張している人たちがいるんだよ。」
「日本にいたオオカミと近いものを外国から連れてきて放すことも、間違った考えではないということになる。」
「日本でオオカミを復活させようとしたら、まだまだ解決しなければいけないことが多いだろうね。でも議論することは必要だと思うよ。それは、人間と野生動物の関係をもう一度考え直すことにもなるからだよ。」(p35)

と、それもアリかもね、というスタンスで説明している。

そもそも、出発点が間違っているのではないか。

「最近見た」という事例は、例えば本ブログでも紹介した秩父の事例などのことだろう。

※その内容は「ニホンオオカミは生きている」(レビューはこちら)に詳しい。


僕は、この事例はかなり検討に値すると思う。
というか、この本の著者と動物学者の今泉吉典氏が詳細に提示した、
「様々な特徴と先行研究を踏まえると、これはニホンオオカミの可能性が高い」という仮説(としておく)について、実はいまだに客観的な検証はなされておらず、
また公的機関による現地での再調査なども全く無い。

すなわち、
「どれも野犬を見間違えたものだね。」
と断定できる根拠の方が無いのである。

そもそも、ニホンオオカミとはどのような特徴を持っている動物だったのか、という認識が重要である。
実際は、外国のオオカミとはかなり異なる「見た目」のようだ。
にもかかわらず、多くの人は、外国のオオカミ像と秩父の事例を比較し、
「これは違う」「よってニホンオオカミは絶滅している」とする。
しかしこれは極めて安易な結論である。

むしろ、タイリクオオカミの導入論を云々する以前に、
ニホンオオカミとはどうな形態なのか、どういう個体差があるのか、様々な標本の差異はどう整理するのか、それの結果と秩父の例はどう一致し、矛盾するのか、そして目撃例が多い地域での再調査り結果はどうなのか…等々、なすべき事の方が多い。

一度日本に外来種を導入すれば、取り返しがつかなくなる。
もしタイリクオオカミを導入した後、秩父でオオカミ的動物が捕獲されたら、
それはどう評価すべきなのか。

本書は、若い世代に生態系の複雑さ、価値を紹介し、
守るべきもの、と理解させるのが目的だと理解している。

であれば、
在来種の絶滅の判断に疑問符があるにも関わらず、
安易に外来種導入論を紹介するのはいかがなものか。
もっと慎重な扱いをすべきではなかったのか。

それぞれの動物には固有のニッチがある。
ニホンオオカミのニッチと、タイリクオオカミのニッチは近接しているかもしれない。

しかし、「日本の生態系」のニホンオオカミをタイリクオオカミに置き換えられるかといえば、
そんな安易なものではない。
「日本の生態系」とは「ニホンオオカミ」がいるものであり、それが失われた、もしくは失われつつあるという連続性こそが重要なのではないだろうか。

よって僕は、現在行われている大陸産トキの繁殖・放鳥にも反対である。
遺伝子的問題等々もあるが、何よりも、
「日本産トキは日本人が絶滅させた」という厳しい現実を直視すべきと考える。
日本産トキを絶滅させておいて、大陸産トキを放鳥して「復活した」などという、
つまらない誤魔化しは許されるべきではない。



【目次】
はじまり 地球の生きものたちはつながっている
捜査ファイル1 シカが増えると山崩れが起きる!─山の動物たちに異変
捜査ファイル2 ハチが消えて農作物がとれなくなった!―自然界で受け渡されているもの
捜査ファイル3 田んぼが変わり、メダカが消える!―川の魚たちの危機
捜査ファイル4 マグロやイワシが減っているのはなぜか?―海の生きものたちの危機 捜査ファイル5 アオマツムシとカラスはなぜ増える?―温暖化と都市化と生きものたち
捜査ファイル6 人間がつくりだす“毒”が地球をめぐる―公害と生態系

【メモ】
p22
シカは雪が苦手、シカが増えたのは雪が増えたせいという説もある
・雪=餌がとれなくなる
・深い雪=脚をとられて身動きがとれなくなる

p29
「最近でも時々、オオカミを見たという話が話題らなることがあるけど、どれも野犬を見間違えたものだね。」

p35
「実は日本にもオオカミを復活させるべきだと主張している人たちがいるんだよ。」
「日本にいたオオカミと近いものを外国から連れてきて放すことも、間違った考えではないということになる。」
「日本でオオカミを復活させようとしたら、まだまだ解決しなければいけないことが多いだろうね。でも議論することは必要だと思うよ。それは、人間と野生動物の関係をもう一度考え直すことにもなるからだよ。」

p40
アメリカのミツバチ:ヨーロッパから持ち込まれた。その後ヨーロッパでミツバチの新しい病気が発生し、以降は持ち込まれなくなった(20世紀初め)。
→遺伝子の多様性が低い?

p50
マルハナバチの仲間は、一匹のハチがその時期ごとに、訪れる花を決めている。

p57
セイヨウミツバチ:他のハチの蜜を盗む性質がある。


 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 環境

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

樹木ハカセになろう  

樹木ハカセになろう
石井 誠治




堀辰雄の作品に、確か「フローラとファウナ」というのがある。

作家は「フローラ」(動物的)と「ファウナ」(植物的)に分けられる、というのがベースの内容だったと記憶しているが、自然愛好者にも「フローラとファウナ」があるのではないか。

植物と動物、どちらも同じように親しめれば良いのだが、
人によっては向き不向きがある。

僕は間違いなくファウナであり、
動物は鳥のみならずだいたい興味深く見ることができるが、
植物グループは苦手である。
できるだけきちんと見ようとしてはいるのだが、どうにもハマらない。
種類を覚えるのも苦手だし、識別するのも難しい。
ついつい「木Sp」「草Sp」と言ってしまう。

それではいけないので、時折植物系の図鑑、書物に手を出している。
本書もその一冊。
ジュニア向けの体ではあるが、樹木について、
ベーシックな知識を学ぶことができる。
特に人間に近いところに存在している樹木(街路樹や公園、社寺林の樹木)について詳しい。

視点は、きちんと樹木の生態を理解し、そのうえで樹木を見守っていこうというもの。
例えば、サクラにつく毛虫(モンクロシャチホコ)は、
散るべき落ち葉の直前を採食しており、
ケムシ=食害=植物に悪影響、その木は弱い などと短絡的に考えてはいけない場合があることなど、
新しい見方を教えてくれた。

入門書としては全うで良い一冊と思う。

【目次】
1 木のこと、どれくらい知っていますか?
2 木の生き方を知ろう
3 木たちがかわいそう
4 樹木ハカセになるために
5 木がもつ不思議な力

【メモ】
pⅲ
都会で見られるサクラの約8割=ソメイヨシノ
遺伝的に同じ形質であるため、感受性が揃い、桜前線という指標が成立する

pvii
ソメイヨシノは、9月には葉が落ち始める
(今年の新葉は枝の伸びに従い、下から成葉になり、落ち葉になる)
落葉の直前(8月頃)にモンクロシャチホコ(ガ)が産卵し、
9月にあちこちに広がる
不快害虫として駆除されるが、落ち葉(になる葉)を糞として分解しやすくしている
大事な来年の花芽や葉芽を包む芽鱗は堅く、毛虫にき食えない
葉が早く無くなった枝でも翌年の成長に支障はない

p13
ミカンの葉=葉を透かして見ると、白く透き通っている丸い模様(油点(ゆてん))が見える
=精油成分で揮発性

p22
楠:南から来た木という意味と思われる
樟:樟脳成分を含むため
成長が良く、材が腐りにくいため、巨樹として神木になりやすい
本来は亜熱帯の木、九州・四国から太平洋側の神社に多いのは、人間が植えたため

クスノキの実:黒紫色に熟し、鳥散布
霜が降りなければ発芽するが、タネの状態で霜や雪には耐えられない


p31
縄文杉:1966年に発見、1973年に著者が訪れた際は目の前まで行かないと、どの木がそうかわからなかった
→その後、手前の木々が切り払われた
→土壌が流出
→石を運ぶ運動
→根がいたむ
→人を近づけないよう隔離された

p39
クロロフィル(が多くつめこまれたもの=葉緑体)=窒素を多く含む
秋、クロロフィルを分解して窒素を葉から枝に回収し、水分と光合成化合物の通り道である
維管束を閉じる
→葉の内部に糖分が残り、糖濃度が上がると赤や紫の色素であるアントシアニンが作られる
→紅葉

緑の色素であるクロロフィルが分解し、黄色の色素であるカロチノイドが目立つ
→黄葉

p44
樹木に聴診器を当てて水の音を聞く
→水分の移動は細胞間の伝達なので音はしない、
実際に聞こえているのは根や枝葉からの雑音

p55
マツは菌根とのつきあいが深く、菌根と共生しているマツと菌根がつかないマツを比較すると、
その生育量は5倍ほども差がある

p62
根に障害がある(水分ストレスがある)=根から最も遠い枝の先端の葉が枯れる
ただし葉に出るサインは軽傷、致命傷は幹へのキノコ発生

腐朽菌として危険なキノコ
=ナラタケ、ナラタケモドキ、ベッコウタケ

p76
ポプラ=中国には多い
材は白く柔らかい
楊枝の楊=ポプラ
ちなみにシダレヤナギなどは「柳」と区別される

p87
巨樹ほど移植して残したいとされるが、1年以上準備しないと活着しにくい
図面上では簡単に移植できるが、現実には困難

p92
現在の日本の山は、(樹種は別として)有史以来最も木が生えている状況

p95
大腸菌O157=細胞の半分を使って毒素を作るため、他の常在菌である大腸菌が多いと競争に負けて
普通は増殖できない

p143
イチョウ:奈良・平安の文献には登場しない
中国から持込み神社仏閣に植えられた
(中国では珍しくないので伐採され、逆に最近はどこにも見当たらない)

p157
初期に上陸した植物=コケ
移行、シダに進化し、木のようになったようなシダから針葉樹が生まれ、
やがて葉の広い植物が出現し、より乾燥した地域に進出。
このとき、木から宿根草が現れる
よって、木と草では、草の方が新しい。
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 植物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

今週のまとめ  

本日、am3:40に起きて、
5年ぶりの野鳥調査のため、朝5:00から山に入ってました。眠い…。
雨上がりで最初はガスっていたものの、日が昇ると日差しが差し込み、何とも幻想的な世界に。
キビタキ、センダイムシクイなど夏鳥もよく囀っていました。
黒いジャンパーを着て、しゃがんで記録をとっていたところ、
コジュケイが飛来して5m先を歩いたり、
キビタキが2羽、争いながら周囲を飛んだりと、
久しぶりに楽しいひと時でした。

何かで読んだのですが、
「人が、一生に見られる日の出の回数は、それぞれ決まっている」という文章。
実際にどうかは別として、
やはりフィールドで日の出を迎えるのは、結構ワクワクするものです。

この時期、早朝はうるさいくらい、山では野鳥がさえずっています。
ぜひ一度、早起きして出かけてみてください。
夜明け直前から入っていると、結構感激しますよ。


さて、まとめです。
今週のお勧めは、生物好きなら「雨の日は森へ -照葉樹林の奇怪な生き物-」。
昨日、久しぶりに雨が降りましたが、この本のことを思い出して森へ行きたくなりました。
(なので、今日行って満足。)

また、「地球全史の歩き方」は、旅好きの方ならバーチャルツアーとして良いと思います。
ではまた。


雨の日は森へ -照葉樹林の奇怪な生き物-

目で見る聖遺物と聖書―イエスと聖人ゆかりの品々に秘められた謎と奇蹟

地球全史の歩き方

ワクチン新時代―バイオテロ・がん・アルツハイマー


 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 雑記:今週のまとめ

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

ワクチン新時代-バイオテロ・がん・アルツハイマー  

ワクチン新時代―バイオテロ・がん・アルツハイマー
杉本 正信,橋爪 壮



鳥インフルエンザやウエストナイル熱、SARSなどのウイルス関係の本を読んできたので、
その対抗策であるワクチンに関係するものとして選択。
ポリオワクチンでは、生ワクチンと不活化ワクチンの違い、そしてそれが選択された歴史を紹介。
がんやアルツハイマーに対するワクチン開発など、最近の動向も盛り込む。

またワクチン史というものがあるとすれば、その一大成果である天然痘の撲滅にいて一章を割いて説明。
ただ一方では天然痘がバイオテロに用いられる可能性を具体的に説明する。
ただ救いとして、著者らが開発したLC16m8ワクチンの存在が紹介される。天然痘が撲滅された時点では不要になったのだが、バイオテロに備える防備として活用されるようになったのは歴史の皮肉だろう。

全体にやや専門性が強いが、ワクチンとは何ぞや、ということを学ぶのには良い一冊である。

【目次】
1 ワクチンとは何か-歴史と原理
2 高病原性インフエンザの脅威
3 ポリオ-生ワクチンと不活化ワクチン
4 高齢者の大集団の出現-がん・アルツハイマー
5 拡散するウイルスとバイオテロの脅威
6 天然痘、その惨禍から根絶、そして復活
7 天然痘バイオテロワクチンの切り札LC16m8
8 ワクチンの理論と今後の課題
おわりに
参考文献


【メモ】
p15
従来の季節性インフルエンザ=気道の粘膜細胞でしか増殖せず、ウイルスが直接肺炎を起こすことも稀で、他の臓器にも感染しない
高病原性インフルエンザ=全身の細胞で増殖

p21、39
インフルエンザ、エイズウイルス、ポリオウイルス=RNAウイルス
DNAウイルスに比べて遺伝子が一般に不安定で、遺伝子変異を起こしやすい

ポリオウイルスのような一本鎖RNA遺伝子の変異率:1000分の1~1万分の1
DNA遺伝子の変異率:1億分の1~1000億分の1

p25
インフルエンザに対する抗ウイルス薬
=ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセタビル(商品名「タミフル」)をはじめとする薬

市販されたノイラミニダーゼ阻害作用を持つアマンタジンは比較的安かったため、
中国では2004年以降鳥インフルエンザ対策としてニワトリの飼料に大量に混ぜた。
その結果、ほとんどのA型インフルエンザウイルスが薬剤耐性になった。
→CDCはインフルエンザの予防と治療にアマンタジンとその類似薬リマンタジンを使用しないよう勧告(2006.1.18)

p33
ポリオウイルスに対するワクチン
1955、ソークによる不活化ワクチンの開発
1960はじめ、アルバート・セービンによる生ワクチン開発、安価で免疫が長く持続するため、北欧諸国を除くほとんどの国で生ワクチンに移行

p35
日本:最初はソークワクチン(不活化ワクチン)、1960年代にポリオの大流行があり、
生ワクチンの緊急輸入が望まれ、1961年に経口ポリオ生ワクチン1300万人分を緊急輸入

p46
細菌成分を接種し、体の免疫機能を活性化させるがん療法
・溶血性連鎖球菌を用いたピシバニール
・結核菌の多糖体を用いる丸山ワクチン
その評価は定着していない

p47
免疫系はがん細胞の発生を常に監視し、新たに生じたがん細胞を破壊している「免疫監視説」1909、P.エールリヒ

ナチュラルキラー細胞といったリンパ球によるがん細胞の破壊、
ヘルパーT細胞やキラーT細胞といったリンパ球もがん細胞の破壊に関与
→次第に「免疫監視説」を裏付け
ただし、これらの細胞が認識するがん抗原は原則として正常な細胞にも存在するため、ウイルスや最近と言った外来の抗原とは異なるため、強い免疫反応を誘導できない

p57
水痘ワクチンは、帯状疱疹予防のため高齢者にも接種されるようになっている
アメリカ:
 60歳以上の約3万6000人対象=帯状疱疹の発生頻度を約半分、帯状疱疹後神経痛が66%減少
 帯状疱疹予防のための水痘ワクチンの使用承認

p63
天然痘ウイルス、ボツリヌス毒素、鳥インフルエンザウイルス
=製造が安価、危険性の高いものに遺伝子操作することが容易

p67
公式にはごく少量の天然痘ウイルスしか保持していないことになっていた旧ソ連では、
モスクワ北東部近郊のザゴルスク(現セルギエフポサド)にある粗密実験室で、何トンもの
天然痘ウイルスを製造していた
細菌兵器=L、L1=ペスト菌
ウイルス兵器=N、N1=天然痘

p81
日本では1946年に18,000人近い天然痘の流行があり、約3,000人が死亡
1956年以降には発生がない

p83、86

第1世代ワクチン
天然痘予防のためのワクチン
ウシで製造、=100万人あたり20-30人の脳炎・脳症、てんかん、全身性ワクチニアウイルス感染症などの重篤な副作用があった

第2世代ワクチン
第1世代と同じだが細胞培養技術を用いて製造

第3世代ワクチン
弱毒化して細胞培養技術を用いて製造
LC16m8ワクチン=著者らが1975に開発、臨床試験済み、当時の厚生省による製造認可あり、副作用がない(製造の)
MVA、NYVAC 21世紀に開発
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 感染症

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

目で見る聖遺物と聖書―イエスと聖人ゆかりの品々に秘められた謎と奇蹟  

目で見る聖遺物と聖書―イエスと聖人ゆかりの品々に秘められた謎と奇蹟

目で見る聖遺物と聖書


1神教であるはずのキリスト教に、乱造(後世の聖人にはこういう言葉が似合う)される聖人。
また、そこはかとなく漂う偶像崇拝的な気配。
どうもキリスト教もややこしそうだな、と思っていたところ、本書を発見。
映画や小説などで、聖杯やトリノの聖骸布、ヒトラーが求めたロンギヌスの槍などは知っていたが、
聖人・聖女にまつわる聖遺物も多いとは知らなかった。

本書は別冊歴史読本シリーズであり、個々の聖人ごとに著者が異なり、
各聖人の伝説を素直に紹介しているのが多い。
また、予想に反して聖遺物の写真も無いものがあり、この本のために取材したというよりは、
企画先行で記事を依頼し、写真は編集時点で確保できるものだけを採用した感じである。
まあ「別冊歴史読本」なので、多くは求めまい。
ある程度まとめて見ることができるだけでも良しとしよう。

それにしても、
聖人の遺骸が多いこと。あと干からびた手だけとか、頭蓋骨とか、
「モノ」ではなく「死体」が聖遺物になるところ、肉体は単なるモノであるという意識を反映していて面白い。(仏教に仏舎利はあるとはいえ、個々の聖人の手や首を崇拝する習慣はないと思う。)

あと本書冒頭で、聖人「崇拝」ではなく聖人「崇敬」である、崇拝では偶像崇拝につながる、という整理をしていたが、こうして言葉で整理しなければならないところ、
キリスト教の人工的教義と土着宗教的要素との対立が見えるのではないだろうか。

なお、個々の聖人について客観的に整理された本としては、むしろ「名画でたどる聖人たち もう一つのキリスト教世界」をお勧めする(レビューはこちら)。

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 宗教

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

地球全史の歩き方  

地球全史の歩き方
白尾 元理


最近よく進化史の本を読む。
様々な進化史上の事件があるが、まずは酸素を大量に放出したシアノバクテリアの話は欠かせない。
このシアノバクテリアの骸が集積したのがストロマトライトだが、現在はオーストラリアのハメリンプールのものが有名だ。写真もよく掲載されている。

しかし、その周囲はどんな環境なのか。人跡未踏の地なのか、人が近くに住んでいるのか。
交通の便はどうなのか。
そういう現実的な情報は眼にしたことが無かった。
これでは具体的な位置も、環境も、交通手段もわからない地点なんて、極言すれば月面と同じである。

さて、僕は知らなかったのだが、著者は地球における地質学上の重要な地域を訪れ、そこを撮影した「地球全史――写真が語る46億年の奇跡」という写真・解説集を出している。


この舞台裏ともいうべき、それぞれの地点への旅行記でありガイドブックが、本書である。

とにかく辺鄙な場所が多くて、トラブルも多い。その一方、美しい地質構造の写真も多数収録され、手ごろなパードカバーである本書は、旅行記としても楽しい一冊である。

実際に現地にいけるのか。ガイドツアーは実施されるのか。天候は大丈夫か。高山病はどうか。
時には徒歩で、時にはラクダで、筆者は最果ての地を巡る。

本書のおかげで、こうした場所が「行ける場所」(難易度はかなり高いが)ということがわかった。
また、個人的にはバージェス頁岩の産地であるステファン山化石産地と、
始祖鳥の発見地であるゾルンホーフェン採石場の様子が見られたのは嬉しかった。


【目次】
1 太古の海をめぐる
2 カンブリア大爆発をハイキング
3 エディアカラの園と地質の宝庫
4 エベレスト街道を歩く
5 砂漠で古代クジラを探す
6 雨のアファー三角帯をゆく
7 巨大クレーターと星空
8 露頭をめぐってヨーロッパ縦断
9 地質学の歴史が刻まれた大地
10 火山と氷河とスノーボールアース
11 世界遺産になった地質構造
12 さあ、地球の歴史を見に行こう
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 地学

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

雨の日は森へ -照葉樹林の奇怪な生き物-  

雨の日は森へ -照葉樹林の奇怪な生き物-
盛口 満



生物を対象としたフィールドワーカーには、大きく二種類ある。
一つは、特定の分類群や種に特化したスペシャリスト。虫屋、鳥屋など、○○屋と称される人々である。
もう一つは、様々な分類群を広くみるゼネラリスト。こちらは、自然観察会などで活躍している。コース途中の植物・虫・動物等々、何でも知っている(ように見える)人々である。

どちらが優れているというものでもない。
観察対象である生物そのものが、互いに密接に関係している。特定種を深く知ろうと思えば、関係する生物についても詳しく知らなければならない。結局のところ優れたスペシャリストは関係する動植物にも詳しいし、優れたゼネラリストは何かしら専門分野を持っているものである。

ただ、それにしてもよきゼネラリストは、通常気づかない生物に光をあて、生態系での位置を教えてくれる。

そういたゼネラリストの一人が、盛口満氏(ゲッチョ先生)だと思う。
第一作は「僕らが死体を拾うわけ 僕と僕らの博物誌」(ハードカバーはもう絶版なのかな?)。



この時は生物の死体と生徒というミスマッチから始まったが、続いて刊行される数々の著書では優れたゼネラリストぶりを発揮。コケ、ドングリ、ゴキブリ、ナメクジと主軸は変わりつつも、常にゼネラリスト的視点にある。

その盛口氏、近年沖縄に移住した。
本書の主な舞台もヤンバル。暗く深い森の「底」での観察記であり、
主軸となるのは冬虫夏草だ。

盛口氏と冬虫夏草の組み合わせの著書は他にもあるが、本書は沖縄で、というのがポイント。
沖縄の冬虫夏草を語ることで、本州の冬虫夏草との違いが見えてくる。
自分の近くにもあるかな、と探したくなること間違いなしである。

またもう一つ、本書のテーマとなっているのが、
フィールドワーカーの「フィールドに出たい欲」との葛藤。
この時期にはあれ見られるかも、もしかしたら今日はあれがいるかも…。なんて考え出すと、じっとていられない。
しかし現実は厳しい。
そこで多くのフィールドワーカーは、睡眠時間や、日常生活や、果ては人間関係を犠牲にして、
フィールドに出没している。
盛口氏は自身も含めたそんなフィールドワーカーの生態を、本書では妖怪に擬している。
そのため、本書裏表紙には最初はわけのわからない妖怪(らしきもの)が描かれているが、
これは愛嬌の範囲であろう。

【目次】
1章 原風景の森
2章 妖怪たちの森
3章 ドングリの森
4章 冬虫夏草の森
5章 つながりの森
6章 いのちの森

【メモ】
p84
レフュージア:
照葉樹林が氷河期によって押しこめられた地域(寒冷化した時代に暖地性の生物の避難地となった場所)
九州南端部、四国の室戸岬周辺、紀伊半島の南端、伊豆半島の先端部、千葉県館山の沖ノ島など

ex)紀伊半島南端部のレフュージアから照葉樹林が回復し、関西一体に広がった
=関西固有の照葉樹林要素とされる木々が存在している理由

p104-
冬虫夏草:
虫から伸びる菌糸=ストローマ(柄と頭部に分かれる)、
頭部には胞子を放出する器官がり、種によって形態は様々


テレオモルフとアナモルフ:
同一種の冬虫夏草が、
有性生殖を行う場合=テレオモルフ
ストローマが伸び、先端に子嚢殻(中に子嚢があり、その中に胞子がある)の粒がある

無性生殖を行う場合=アナモルフ
シンネマという柄が伸び、先端には粒状の分生子をつける

テレオモルフとアナモルフは形態が異なるため、別種とされる場合も多かった。
近年は遺伝子解析等により整理されつつある。

p178
樹木と共生するツチダンゴ(地下生菌)の栄養を吸収する冬虫夏草(菌性冬虫夏草)があるが、
それに寄生する冬虫夏草もある。

p186
菌根菌:菌根共生:相利共生:
土壌中の水分や栄養塩類などを吸収し、菌根を通じて植物に渡す。植物は講古ヴ世によって作り出した糖分を、菌根を通じて菌根菌に渡す。

陸上植物の9割ほどは菌根をもっている(という)。

タイプ名:植物:菌
AM菌根(VA菌根):コケ、シダから木まで様々:グロムス門の菌
外生菌根:マツ科、ブナ科、フタバガキ科など森の主役たちとなる木々:担子菌や一部の子嚢菌
内生菌根・ラン型菌根:ラン科:一部の子嚢菌・一部の担子菌
シャクジョウソウ型菌根:シャクジョウソウ亜科:一部の外生菌根菌
イチヤクソウ型菌根:イチヤクソウ科(シャクジョウソウ亜科を除く):一部の外生菌根菌
つつじ型菌根:ツツジ目(イチヤクソウ科を除く):一部の子嚢菌

p195
2004年時点、世界のタヌキノショクダイ科全28種中、18種は1回しか採集例がなく、3種は2度しか採集例がない。
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 菌類

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

今週(先週)のまとめ  

G.W.も終わってしまう…。
皆様、納得いく過ごし方はできたでしょうか。
物足りないですよね。

部活を始めたらもう子供たちだけで行動します。
家族全員で出かけ、夕食を食べられるのは、たぶん小学生の間だけ。
それを覚えていてくれることを考えたら、
3歳~13歳までが限界じゃないでしょうか。

つまり、
子供と家族として行動できるのは、実は長い人生の10年程度です。

そうすると、土・日が勤務日の方は別として、
カレンダー上で家族全員が同時に休みになるのが、
年末年始とG.W.しかないっていうのは、
やっぱり子育て世代としては納得できません。

日本人働キスギヨ。


ところで、「標本の本―京都大学総合博物館の収蔵室から」の紹介にも書きました香川県坂出市の沙弥島へ、10年以上ぶりに行きました。
ウミウシを子供たちに見せたかったのですが、あいにく出会えませんでした。
貝殻も探したんですが、
本当にいい貝がなかった。1cm弱の貝ばかりで、昔ごろごろあった
イタヤガイやシドロガイは全くなかった。
浜の生物相は、まだまだ貧弱になったままです。


市民科学者として生きる

役に立つ植物の話―栽培植物学入門

BIRDER 2013年5月号

標本の本―京都大学総合博物館の収蔵室から

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 雑記:今週のまとめ

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

標本の本―京都大学総合博物館の収蔵室から  

標本の本―京都大学総合博物館の収蔵室から
伊藤存



野鳥観察を初めてしばらく経ってから、落ちている羽根を拾った。
それが何の羽根かわからない。当時は羽根図鑑もなく(洋書のTracks and Signs of the Birds of Britain and Europeだけあった)、手掛かりはなかった。
そこで、とにかく拾い、整理し、写真と地域の野鳥と突き合わせて識別していった。
そんな事をしていると、古巣も見つける。これも集め、識別していった。
また、当時働いていた施設で野鳥のガラス衝突事故による落鳥が多く、これも拾得届を出して全て剥製標本にしていった。
現在、羽根はA4のリングファイルに5冊くらい、巣は20個くらい、剥製は50体くらいある。
これを利用して、野鳥展も2回開催した。
(香川の野鳥を守る会 野鳥展2005、2008
http://www5d.biglobe.ne.jp/~kogera/event/yachoten/yachoten.htm
剥製はガラス衝突事故防止、古巣はビニール紐やテグスの放置防止のアナウンス素材としても活用した。)

また、1993年頃には貝類拾いにもはまっていて、坂出市沙弥島に打ち上げられる貝を集めた。
当時はクチベニガイやなんやかんや、数十種類打ち上げられていた。
しかしその後、海浜が狭まったため一度土砂が入れられ、
以降、打ち上げられる貝殻は激減した。おそらく土砂が流れ出し、一度死滅したのだろう。

これらの資料は、学術的にはなんてことないが、やはり僕にとっては重要なものである。
そしてこうした資料を集める際には、必ずどうラベルをつけ、保存していくかという問題がある。
ラベルがないと、ほとんどゴミになってしまうのだ。

こんな体験をしていると、プロの収集物管理に興味がわく。
しかし一般人が、バックヤードを簡単に見られるものではない。

そこで本書である。

本書は、京都大学の収集標本の保管状況を、なかなかシックな大判写真を用いて紹介する。
個々の標本について細かく解説されるわけではないが、
あたかも、標本室をガイドウォークしてもらうような感じだ。
そこはかとなく、防腐剤の香りさえ漂うような気がしてくる。
役に立つ、という類ではないが、一冊手元にあると楽しめる本である。

なお、「フィールドにて―アカネズミを捕獲して標本をつくるまでのこと」では、
標本化そのものの写真はない。まあ仕方がないか。


【目次】
さまざまな標本がある
同定と比較
求め続ける
フィールドにて―アカネズミを捕獲して標本をつくるまでのこと

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 動物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

BIRDER (バーダー) 2013年 05月号  

BIRDER 2013年 05月号


すっかりレビューを忘れていたBIRDERである。
今号では、基本50種の図鑑というか小冊子がついてくる。
BIRDERを過去にも買っているような人は、この程度の図鑑は不要だろうし、
初心者であっても、たぶんBIRDERより先に図鑑を買っているだろう。
(BIRDER1冊分で小さい入門用図鑑が買えるので、初心者はまず図鑑買うだろう。)
そうすると、どうもこの付録のニーズってあるのかと疑問なのだが、まあ深くは考えまい。


さて、第1特集はバードウォッチング、というより野鳥観察会入門、
第2特集はヒタキ類。春だからね。

第1特集。
本当に初めての人には役に立つかもしれないが、
正直こんなの読むよりは野鳥観察会に数回続けて参加しましょう。習うより慣れろです。
観察会のHow toを勉強するくらいなら、早く観察会に行ってバードウォッチングのHow toを学びましょう。

ところで、マナーを紹介したページに、探鳥会でのマナーも書かれていた。
こういうのも必要な時代なんだよな、とちょっと落胆。

まあ、観察会は、いいトコロのはいいです。識別だけでない知識も増えます。
香川在住の方はぜひ香川の野鳥を守る会の観察会へどうぞ。

第2特集はヒタキ類。目新しい情報があるわけでもない。
まあバードリサーチによるキビタキ前線の取り組みが面白いか。ただ、観察し損ねも多いし、精度を高めるのは難しいかな。

識別資料としては、
p28
・千葉県三番瀬で観察された「黒いハマシギ」

p42-44
・Young Gunsの野鳥ラボ #02[大形ツグミ類の中間個体] 構成●Young Guns
が役立つかも。
大型ツグミ類は、ノドアカツグミ、ノドグロツグミ、ハチジョウツグミの交雑個体。
面白いテーマである。ちょっと探したくなりますね。
こうして写真を提示されると、たぶん今後発見例が増えるんだろうな。

そういえば、香川県の我が家近くのツグミは完全にいなくなりました。冬までオサラバ。


[第1特集]バードウォッチングスタートガイド
・鳥を見て、人生が豊かになる5つの理由 文・写真●柴田佳秀
・鳥の探しかたから、鳥見ファッションまで─探鳥会に参加すれば、全部わかる! 文・写真●石亀 明
・♪鳥くんのField Snap 探鳥地で出会ったバードウォッチャーたち 取材●♪鳥くん
・野鳥の辞典~バードウォッチング専門用語集 構成●BIRDER 協力●植田睦之、志賀 眞、中村忠昌
・そうだ、鳥を見にいこう! と思ったときは? ビギナーの疑問にしっかり応えるお助け本&グッズ 文●岩本多生
・胸元をキメてフィールドに出よう! 双眼鏡、最初の1台はコレだ!! 構成●BIRDER
・初心者Welcome! オフィス街のオアシス 丸の内さえずり館」へ行こう 取材・文●BIRDER
・バードウォッチングの「作法」フィールドに出る前に知っておきたい、大事なマナー 文・写真●松田道生

[特別付録]『野鳥基本50種コンプリートブック』 文・写真●國友靖彦


[第2特集]ヒタキ類に会いに行こう!
・新緑の森の「歌姫」たち~大瑠璃、黄鶲、三光鳥 文・写真●永井凱巳、中村利和、山田芳文
・キビタキ前線北上中! 文●高木憲太郎 写真●三木敏史
・都市の公園でオオルリ・キビタキに出会う 文・写真●志賀 眞
・東京23区内のサンコウチョウ 文・写真●西村眞一


[ENJOY BIRDING]
・BIRDER Graphics[闘うタカ] 文・写真●山形則男
・Field Report #29[ビジターセンターを訪ねてみよう] イラスト●水谷高英
・Young Gunsの野鳥ラボ #02[大形ツグミ類の中間個体] 構成●Young Guns
・鳥の形態学ノート #38[アカショウビン翼] 文・イラスト●川口 敏
・私のケッサク!“鳥”写真[第13回 入賞作品] 写真●読者の皆さん 選評●叶内拓哉
・Bird Tracking #226[ジョウビタキ(雄)] イラスト●赤勘兵衛
・ぶらり・鳥見 散歩道[サービス満点のキビタキ登場で大盛り上がり!~Young探鳥会高尾山(東京都八王子市)] 文●♪鳥くん
・野鳥圖譜 #53[カヤクグリ] 画・文●佐野裕彦
・どこでもバードウォッチング #17[平地の大きな湖沼] 文・写真・イラスト●神戸宇孝
・伝説の翼 #17[ドードー(dodo)] 画●長島 充 文●斉藤ヒロコ
・唐沢流・自然観察の愉しみ方 #65[時間をかけて観察を楽しむ] 文・写真●唐沢孝一

[BIRDER NEWS]
・千葉県三番瀬で観察された「黒いハマシギ」 文・写真●♪鳥くん
・野鳥救護の現場から 取材●BIRDER
・放送開始60周年を迎える文化放送『朝の小鳥』 構成●BIRDER 写真提供●蒲谷剛彦、Bird Photo Archives
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 野鳥

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

市民科学者として生きる  

市民科学者として生きる
高木 仁三郎



高木仁三郎は原子力業界から独立した組織、原子力資料情報室の代表として、
脱原発・脱原子力運動を推進した。
ただ、僕はこの方のことは知らなかった。
本書は、高木氏が肝臓にも転移したS字結腸のがんが発覚してから、
自身の生涯、考え方をまとめた一冊。
氏の生き方、考え方のバックボーンを整理している。
後書きでは、1999年7月。
亡くなったのは2000年10月だから、大きな手術をし、
死ぬまでの間に本書をまとめたことになる。
その仕事に、まずは感嘆する。

さて、「市民科学者」とは何か。
本書中に明確に定義づけされているわけではない(されてなかったと思う)が、
軍縮や環境など、市民が大きな関心を持ち、
市民にとって重要な科学分野について、
市民の立場から(政策・企業からは独立して)研究・整理していく科学者、と言えるのではないだろうか。

現在の日本において、こうした明確に立場にたっている科学者が何人いるだろうか、と考えざるをえない。

高木氏の人生においては、
氏の脱原発・脱原子力運動は、まさに「反体制」であり、
そこには軽くしかあれられていないが、様々な圧力があった。

それは残念ながら、日本の大多数が、氏が主張するような原子力の危険性を理解できなかったためだろう。チェルノブイリ、スリーマイル、そして東海村JCO臨界事故など、気づくべき契機はいくもあったが、どこか他人事、またいわゆる原発神話に安心していた部分もある。
また極めて潜在的な部分では、「逆説の日本史」で井沢元彦氏が指摘しているように、
日本人は「最悪の状況」について「語る」ことで言霊が発動する、
単純には「縁起でもない」「考えたくない」という意識があったのだろう。

しかしそのせいで、
日本人は、高木氏らが孤軍奮闘してるときに原発を止められず、
また止めないにしても、十分かつ冷静な安全対策を検討することすらしなかった。

そして高木氏を失った中で、
東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を経て、
多くの日本人が原子力の危険性に直面している。
高木氏の指摘、活動の正当性は、いやというほど実感したはずだ。

今後の日本をどうしていくか。

エネルギー施策や経済対策など、それこそ経済的・政治的側面はあるにせよ、
今求められているのは、我々一人一人が、高木氏のような市民科学者たらんとして、
自分で調べ、学び、判断することではないだろうか。
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: エッセイ

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム