ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

今週のまとめ  

今週は好みにあう本にめぐりあえ、ペースが進みました。
文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子」は、
別にコロンブスが全部遺したものではないのですが、
栽培植物史と加工史をコンパクトに知ることができて、便利です。

スズメの謎」は、数年前新聞報道もなされた、
「全国のスズメの個体数推測、激減?」という研究の話です。
とても読みやすく、生物調査に興味がある方にはおすすめです。

でも何と言っても、
ダニ・マニア」。こんなにマニアックで密度が濃く、
しかも愛に満ち、ダニに対するイメージが転換する本はなかなか無いでしょう。
ダニっていうだけで恐怖心を覚える方はともかく、
ダニのことなんかよくわからないや、という程度の生き物好きの方は、
ぜひお読み下さい。
フシギな姿のダニの写真は、深海生物の写真を見たときと同じような驚きを与えてくれます。


文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子

面白くて眠れなくなる地学

ダニ・マニア―チーズをつくるダニから巨大ダニまで

スズメの謎: 身近な野鳥が減っている!?

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常


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category: 雑記:今週のまとめ

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ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常  

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常
三上 延
【謎めいてきた度】★★★☆

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
(2011/10/25)
三上 延

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2巻目である。
3巻まですでに入手済みだが、面白いだろうことはわかっているので、楽しみにとっていた。
しかし、
今週、かなり読書ペースが速かったので、つい読んでしまった。

やはり面白い。
ネタバレになるので内容には触れないが(フィクションのつらいところである)、
1巻のうえに積み上げられた面白さ、というのが、きちんとある。
良いシリーズである。

3巻を早く読みたいが、我慢する。

なお、TVは見ていない。やっぱ原作だよ。
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category: 推理小説

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スズメの謎: 身近な野鳥が減っている!?  

スズメの謎: 身近な野鳥が減っている!?
三上修
【自然が調べたくなる度】★★★★




僕も一鳥屋として、スズメを取り巻く環境(営巣環境や採餌環境)は減少していると思っていた。
しかし、それを数値化することは思いもよらなかった。

ところが数年前、スズメの全個体数を推測し、激減している、という発表がなされた。
私の近くの鳥屋でも賛否両論あったのだが、発表された論文
(三上修「日本におけるスズメの個体数減少の実態」、『日本鳥学会誌』第58巻第2号、日本鳥学会)
も読んだが、僕としては納得の調査であった。

本書は、その論文をかみくだき、スズメの巣探しから個体数の推測までの調査過程を、
丁寧に解説している。

文章は平易であり、野鳥に興味がある中・高校生でも読める。
むしろそういう世代に読んでもらい、スズメに限らず、
様々な調査研究につなげてもらうことが本書のねらいだろう。

僕としても、ぜひ多くの方にお読みいただきたい。
野鳥に限らず、野生動植物研究の入門・参考書として、最適の一冊である。
こういうのを学校図書館や課題図書にしてもらいたい。

【目次】
1 スズメを知っていますか?
2 スズメは日本に何羽いる?
3 スズメの減少
4 なぜスズメは減少しているのか
5 スズメが減少するとどんな問題があるのか
6 研究の世界
あとがき
コラム
1 野外調査をする場所として、町の中は安全か?
2 グラフの書き方・読み取り方
3 足環の問題
4 原因究明の難しさ
5 絶滅して何がいけないのか?
6 急速な絶滅
7 おすすめの本

【メモ】
p35
調査が可能かどうか、
「試しにやってみる」というのが効果的

p38
「いつ」「なにを」調べるか
スズメの巣数調査(実際に使用している巣を探した)

p49
商用地・住宅地・農地でのスズメの巣の密度算出
→全国に適用して計算
低くて700万巣、多くて1,100万巣、可能性が高いのが895万2,347巣
900万巣×親鳥2=1,800万巣 ヒナは考慮せず

p59
スズメの減少説の問題
・郷愁によるもの
・記憶によるもの
・情報の偏り
→東京の自由学園でに1963-2008年のデータ
 水稲田の作付け面積と農業被害面積の推移、比
 駆除・捕獲された羽数と狩猟者登録数の推移、比
 自然環境保全基礎調査記録の繁殖確認メッシュの推移
鳥類標識調査のスズメ捕獲数/捕獲数の推移、比


p77
 筆者:1990~2010年の間に、5割減と考えている

p96
 親スズメの連れている子スズメの数
商用地1.41羽、住宅地1.81羽、農村地2.13羽 →少子
今回の調査(NPOバードリサーチ協力の全国報告)で、
5羽連れていたのは1例/約400例

p107
1774、プロイセンのある国王、スズメのサクランボへの害を防ぐため、
庭園所持者 2羽、農民12羽、雇農は8羽、市街の住民は6羽のスズメの頭部を毎年納めさせる
ある年は38万2,919羽、翌年は38万5,560羽 → 2年後に毛虫その他の害虫が大発生


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category: 野鳥

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ダニ・マニア―チーズをつくるダニから巨大ダニまで  

ダニ・マニア―チーズをつくるダニから巨大ダニまで
島野 智之
【マニアック度】★★★★ 【殿堂入り】




天晴れである。
本書のタイトルも極めて潔い。
ダニのマニアである。

本書のような、ダニ入門の一般書など、そうそう出版できないだろう。
おそらく筆者もそう感じているのではないかと思えるくらい、
これでもかというくらい、
ダニは一部の吸血性のもの(憎まれるもの)だけでなく、
腐葉土などを分解するダニもいること、
様々な多様性があること、
そてマニアックな研究方法まで、愛と熱意をもって語る。

その熱意は、成功した、といえるだろう。

僕もダニは、いわゆる害虫のイメージだけだった。
しかし、脚は何本か? という基本的な問いにも答えられなかった。
というより、そんなことを考えたこともなかった。

しかし本書によって、様々なダニの分類群、種類、
体構造、成長史、
そして分解者であるササラダニの存在を知り、
ダニってすげえな、と感じた次第である。

また、毎春に庭のコンクリート壁で歩き回る赤いダニの名前、
(カベアナタカラダニ)、それが花粉を食べていることを知った。
おかげで、今春に見るのが楽しみになった。まさに筆者の思うツボである。

文章も読みやすく、ユーモアにも満ちている。
また、他では見られない、様々なフシギな形態をしたダニの写真、図がある。
これ以上のダニ本は今後しばらく望めないだろう。

ぜひとも、一人でも多くの方にお読みいただきたい。
ナメクジ同様、思いがけない深く面白い世界が開ける。
いや、まさに世界を見る眼が変わるのだ。


【目次】
はじめに
1章 ダニでチーズはうまくなる
2章 ダニの正体
 [コラム]光栄な名前を持つダニ
3章 ササラダニとはどういうダニか
 [コラム]トム・ソーヤの赤いダニ
4章 ササラダニ大解剖
 [コラム]小さなダニ1匹のわずかな消化酵素の測り方
5章 ササラダニの防衛戦略
6章 タイ料理とダニをつなぐ香り
7章 ササラダニ研究最前線
おわりに
引用文献とダニ・マニアのための参考書
付録
 マニアックなササラダニの観察法
ダニ亜綱の高次分類群の和名
ダニ類の体系と土壌から得られるダニ類の特徴・見分け方
種名索引
事項索引



p10-
フランスのマルシェ(市場)、ダニがついてるチーズを販売
※ダニがチーズの熟成に関与、普通の状況
 チーズコナダニ Tyrolichus casei(caseiはチーズの意)
 普通のケナガダニもつく

チーズの熟成方法
・表面にカビを生やさず、乳酸菌や酵素の働きで熟成
・表面にカビを接種し、積極的に熟成させる(カマンベール、ブルーチーズ)
 カマンベール…白カビ
  白カビの学名ペニシリウム=カマンベルティの由来は、カマンベールcamembertチーズ
ブルーチーズ…青カビ
  ブルーチーズは本来ロックフォールroquefortという
青カビの学名ペニシリウム=ロックフォルティ
・チーズを棚において熟成(消極的なカビ)
 ダニがつく。(ダニがカビを食い、適度な量にコントロール?)

p16
ドイツ: アルテンブルガーチーズ(アルテンブルグ地方)もチーズコナダニ飼育
by「ダニにまつわる話」(青木淳一博士、筑摩書房)


p20
日本で記録されたダニ類 約1,800種
人を刺して血を吸うダニ類 20種程度

p22 
一般的な英語では2種
tick 牛や犬につき、血を吸う大型のダニ
mite コナダニやハダニなど小さいダニ


p26
青木博士の本
「自然の診断役・土ダニ」(NHKブックス)

p29
ダニ…目は胴体の側面に1つずつ
ザトウムシ…背中に両方の目がある

p37

節足動物門
-クモ形綱 Arachnida
-クモ目 Araneae
 -ダニ

脚の数:ダニ4対8本、クモ4対8本、昆虫3対6本


p41
春先に駐車場のコンクリートの上を歩き回る赤いダニ
=カベアナタカラダニ Balaustium murorum
 若虫の頃は昆虫に寄生、成虫になると花粉食
コンクリートの上に花粉が落ちている

庭の落ち葉が溜まっている場所など=ササラダニ類

p43
新しい畳:コナダニ類が大発生することがある
コナダニ類は人を刺さないが、これを食うツメダニ類が増える。
ツメダニ類は人を刺す。
対策:部屋全体の湿度が60%以下になると繁殖速度が落ちる

p46
七味唐辛子
…唐辛子、山椒、ケシの実、麻の実、シソの実、黒ゴマ、陳皮(みかんの皮を干したもの)
ケナガコナダニが増えることがある=麻の実を好む

p68
多くのダニ
幼虫期(脚が6本)→若虫期(脚は8本、2期か3期)→成虫(脚は8本)

マダニ類
・若虫は1期しかない
・全ての時期で吸血する

ダニ…一部を除き眼が無い
?なぜマダニは動物の動きがわかるのか
…第Ⅰ脚の先端に「ハラー氏器官」二酸化炭素や赤外線感知

p70
マダニ/オス…吸血量はわずか、全く吸血しないものもいる
マダニ/メス…多いときには2,000個の卵を産むため、1週間以上宿主の皮膚につき吸血
 ※吸血…必要成分だけ接種
※吸血時、皮膚にセメント状物質で固着する

P76
北部カリフォルニア~チリ中央部の
ホソゲマヨイダニ科のダニ
餌=花蜜が中心、花の中で生活、別の花に移るためにハチドリの嘴を利用する


p85
ハダニの天敵:トゲダニ亜目のカブリダニ
日本でも、ヨーロッパ産のミヤコカブリダニNeoseiulus californicusが農薬代わりの天敵として販売
在来のケナガカブリダニN.womersleyiの利用も研究

利点
・農薬を使わないで野菜等を栽培できる
・公園や遊園地で農薬を使わない
・イチゴなど背が低く、農薬のかかりにくい植物の葉の裏のハダニに対しても有効


p86
ツツガムシ病;:ある種のツツガムシ(ダニ)によって病原菌であるリケッチアの一種である
オリエンティア=ツツガムシ Orientia tsutsugamushiが媒介される
国内でリケッチアを媒介するのは4種
アカツツガムシ Leptotrombidium akamushi
タテツツガムシ L.scutellare
フトゲツツガムシ L.pallidum
トサツツガムシ L.tosa
それぞれのダニの0.1~3%がリケッチアを保菌する有毒ダニ
かつては山形、秋田、新潟なでで、信濃川、阿賀野川、最上川などの河川敷で感染する風土病
戦前に猛威をふるったアカツツツガムシ=夏に孵化=夏に被害
戦後はタテツツガムシとフトゲツツガムシ=春~初夏、秋~初冬に孵化、よって現在はこの時期にピーク

p97
学名:二名法
属名(名詞)+種小名(形容詞または属格の名詞)


p99 
ササラダニ類
名前の付いているものだけで世界に1万種近く、名前無しも含むと10万種程度か
森の落ち葉の分解者(生きた植物でなく落ち葉、小枝、カビなどを食す)
動作がゆっくり
普通の森でも1平方メートルに2~10万匹


p104
スベスベマンジュウダニConoppia palmicincta
原記載は1884年、日本で青木博士が発見したときに、
スベスベマンジュウガニへの親しみをこめて和名をつけた

p117
土壌の構成

A0(0は数字、小さく下付けで書く)
 -L 落葉落枝層 litter layer
-F 腐葉層 fementation layer
-H 腐植層 humus layer
A 上層土
B 下層土
C 風化母材
D 母岩

研究者がササラダニを集める際はF、H層を集める

持ち帰りにポリ袋は使わない(紙袋が良い)
・ミミズやオサムシなど、大型の土壌生物が紛れていると酸素を使い果たしてダニが死ぬ
・微生物の呼吸と発生することもある有害な気体でダニが死ぬ

p148
ササラダニ
 単為生殖も有性生殖もある
荒地に最初に進出するパイオニア種のササラダニは単為生殖の傾向


p151
「ドロの法則Dollo's law」=いったん進化したものは元に戻らない

p157
ササラダニを捕食する動物:ダニから脊椎動物まで
そのため
・形態に基づく防御
 ・防御に特化した背毛
・ミネラルを蓄えた外皮
・庇構造や翼状突起
・特別な体のかたち
・行動に基づく防御(跳ねる)
・化学物質に基づく防御
 ・フェロモン
・防カビ
・外敵の忌避
が発達

P173&188-
ヤドクガエルが生息している地域のササラダニから、
ヤドクガエルの毒の成分の一つが発見された

ヤドクガエルの毒:20マイクログラムで人間の大人が死ぬ
筆者らがアヅマオトヒメダニから発見した成分
・プミリオトキシン251D 強毒性
・プミリオトキシン237A(類似物質)
・デオキシプミリオトキシン193H(類似物質)
ササラダニは自分でこれらを合成している

これまではヤドクガエル=アリ由来と考えられていたが、アリがダニを食べていた


p177
コナダニ:2週間ほどで成虫になる
ササラダニ:早くて数ヶ月、状況によっては何年もかかる
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category: 節足動物

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面白くて眠れなくなる地学  

面白くて眠れなくなる地学
左巻 健男
【眠くなくなる度】★★☆☆

面白くて眠れなくなる地学 (「面白くて眠れなくなる」シリーズ)面白くて眠れなくなる地学 (「面白くて眠れなくなる」シリーズ)
(2012/12/15)
左巻 健男

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地学には興味があるのだが、なかなかきっかけがない。
地学というと、宇宙、気象、地中の中と、範囲が広いためかもしれない。
特に気象については学びたいが、どうしても途中で眠くなる。合っていないのかもしれない。
さて、本書は様々なトピックについて解説する。
パニック映画でお馴染みの設定になったものもあるので、親しみやすい。

・地磁気逆転は、日本人が発見したこと
・伊能忠敬の時代にはたまたま偏角が0近くで、誤差が少なくなったこと
・マグマの生成起源には定説が二つあること
・5回の大量絶滅を「ビッグファイブ」と呼ぶ場合があること
・大量絶滅に対して、通常の淘汰による絶滅を「背景絶滅」と呼ぶこと
は、初めて知った。

なかなか高度な話もわかりやすく書かれている。
ただ、ちょっと範囲が広く、テーマのレベルもまちまちなので、読者によっては物足りないかもしれない。


【目次】
1 ダイナミックな地球のはなし
 アトランティス伝説の真実
世界はもともと一つだった?
アイスランドは地質学的宝庫
世界一高い山はエベレストではない!?
ヒマラヤ山脈はまだ高くなる?
日本の火山は何タイプ?
火山を愛した郵便局長
化石になるのも楽じゃない
地球は大きな磁石なの?
地球の磁気は逆転している!?
大量絶滅はどうして起こったのか?
スノーボールアース仮説の衝撃
2 知ると楽しい気象のはなし
 お風呂の水を抜くと渦はどっち巻き?
台風はなぜ八月と九月に多い?
夕焼けがきれいなら明日は晴れる?
ジェット気流が運んだ秘密兵器
山の頂上でお菓子の袋がふくらむ理由
高いところが寒いのはなぜ?
夏にひょうか降るふしぎ
冬、新幹線が関ヶ原付近で徐行するわけ
3 やっぱりふしぎな宇宙のはなし
 地球が宇宙の中心だった!?
 ガリレオが望遠鏡で見た宇宙
 宇宙の誕生と元素の合成
地球と金星の運命を分けたもの
月は地球のきょうだいだった!?
流れ星を確実に見る秘訣
太陽は永遠に燃え続けるの?
地球にすめなくなったら、どこに移住する?
おわりに
参考文献


【メモ】
p021 磁気の化石=2本の(同形状の)磁気移動の軌跡=ウェゲナーの移動説の証拠
熱残留磁気
 高温の溶岩が冷えて固まるとき、その時の地球の磁界の向きに磁化される。
堆積残留磁気
 海や湖で細かい粒子が沈殿して堆積岩を作るときに磁化される

p28
アイスランドのラーキ山/人類が経験した最大の噴火のひとつ
1783年6月、長さ約25kmものラーカギル火口群 約120個の火口
人口5万人のうち1万人が志望
エイヤフィヤトラ氷河の火山 2010年に噴火
アイスランドは大西洋中央海嶺上に位置している

p32
糸魚川-静岡構造線
東側が北米プレート、西側がユーラシアプレート、
2つのプレートがこすれて粘土となった粘土化帯(断層年度)が見られる

p36
測地学では、世界の海面の平均位置に最も近い「重力の等ポテンシャル面」を「ジオイド」と定め、指標としている。
日本では、東京湾の平均海面(平均的な海水位)をジオイドとしている(離島を除く)。

p46
マグマができる仕組み=いくつかの説
「低融点成分の混入説」
プレートの沈み込みによって大量の水がマントルに持ち込まれることにより、岩石の融点が下がり、マグマが生じる
「減圧融解説」
高圧の地下から低圧の地表に持ち出されることで岩石の一部が溶け出す

p51
「鬼界カルデラ」屋久島に近い、鹿児島の南方の硫黄島と竹島の間
約6,300年前に形成。大規模火砕流で、一度噴出した溶岩や火山灰がさらに溶けるほどの高温
火砕流は九州一体を襲った
火山灰は北海道でもつもり、厚さ10cmの場所もある
カルデラ=噴火によってできた窪み。

p66
方位磁針のN極=場所によってずれる=東京では約7度西=「偏角」
350年前には東側に8度ずれていた
=地磁気の移動=「地磁気の永年変化」によるもの

200年前の伊能忠敬:ちょうど偏角が0の頃で、方位磁石と天体観測でもずれが生じなかった

p76
・地球の磁界が逆転した時代があること
 地球物理学者 松山基範、1926年に兵庫県の玄武洞で、熱残留磁気を調べたところ逆に磁化されていた
その20年前にもフランスのプルーンが同様な発見をしていたが、何を意味するか特定できなかった

地磁気逆転
 78万年前~現在 プルーン正磁期
258万年前~78万年前 松山逆磁期
 ここ360万年間に11回逆転

p82
 生物種の絶滅
「背景絶滅」= 自然淘汰による絶滅
「大量絶滅」= あるタイミングで、多くの種が一斉に絶滅

p83
 大量絶滅:ビッグファイブ
・オルドビス紀:シルル紀の間
・デボン紀:石炭紀の間
・ぺルム紀:三畳紀の間
・三畳紀:ジュラ紀の間
・白亜紀(英:Cretaceous 独:Kreide):古第三紀(最近まで単に第三紀Tertiary)の間
 =K-T境界

p121
 風船爆弾放流跡地の碑
・茨城県北茨城市大津町五浦(いづら)の海岸沿いに建っている
・夜間には上空の気温が低下して気球が縮む→気圧が一定以下になると錘を捨てる仕組みがあった
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category: 地学

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文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)  

文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子
酒井 伸雄
【栽培植物が面白くなる度】★★★☆

文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)文明を変えた植物たち―コロンブスが遺した種子 (NHKブックス No.1183)
(2011/08/26)
酒井 伸雄

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本書を一読し、あらためて自分の生活の多くが、
新世界起源の植物に依存していることを痛感。
これを品種改良し、また様々な加工法を発見してきた人間の知恵に驚くとともに、
大きな気候変化や流通事情の悪化が生じた場合には、
自分の生活は根本から崩れる怖さもある。
(本書では触れていないが、F1種の独占問題もある。)

さて、本書ではジャガイモ、ゴム、カカオ(チョコレート)、トウガラシ、タバコ、トウモロコシに焦点をあてる。
ジャガイモやトウモロコシのように、広範囲で栽培されることによって影響を与えた植物もあれば、
カカオやゴムのように、産地は限られているが用途が広い(使用量が多い)ことにより影響を与えている植物もある。各種の植物の栽培と活用史がコンパクトにまとめられ、読み物としても充実している。

本筋から離れるが、現在の大手会社(ゴムならグッドイヤー、ミシュラン、カカオならパン・ホーテン)が、それぞれ革命的な加工技術を発見した会社であった、ということは初めて知った。
逆に言うと、そこと張り合う日本企業はすごいものである。

あと、ポルトガル・スペイン間の南アメリカの領土の配分を定めた
「トルデシリャスの条約」
は、初めて知った。
南米がポルトガル圏とスペイン圏に分かれているのが、早い者勝ちだったにしてはちょっと等分だな、という感じを抱いていたので、納得であった。

栽培植物史を知りたい方には、特におすすめである。



【目次】
はじめに
第1章 ヨーロッパ発展の原動力ジャガイモ
第2章 車社会を支えるゴム
第3章 お菓子の王様チョコレート
第4章 世界の調味料になったトウガラシ
第5章 生活の句読点だったタバコの行方
第6章 肉食社会を支えるトウモロコシ
終章 コロンブスの光と影と
あとがき
引用・参考文献

【メモ】
p6
新大陸原産の植物の中でも、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシは、面積あたりのエネルギー収穫量の多さで、飢餓から人類を解放した。

p18
かつてヨーロッパでは、秋の終わりに繁殖用以外のブタは殺し、塩漬けにして貯蔵していた。
ジャガイモができることによって、オオムギやエンバクが人間の食料から飼料となり、
また余ったジャガイモも飼料となることで、冬にも家畜を養うことができるようになった。

p21
文明が発達するためには、食料の生産と供給のシステムが整う必要がある。
イモ類は重く、穀物に比べて腐りやすいため、輸送手段が発達していないと再配分は難しい。
世界的に見ても、イモ類をエネルギー源として国家らしい体制ができた例は少ない。

(アンデスのティワナク文明とインカ文明 は、ジャガイモしか選べなかった。
p26
アンデスでは、ジャガイモを真冬にさらし、凍結→日中解凍を繰り返し、
ブヨブヨになったものを踏み、水分を抜く(これでアク抜き)。
それを乾燥させた、「チューニョ」という乾燥ジヤガイモを作っている。
これは有害物質が除かれ、保存性に優れ、運搬しやすい。)


P23
かつて、ほとんどのイモ類は有害物質を含んでいて、アク抜きが欠かせなかった。
(ジャガイモなどは品種改良されている)
動物の食害を避けるため。自然薯以外、ほとんどの野生イモは有害か味が悪い。

P30
ヨーロッパでジャガイモが移入された当初、ゴツゴツの風貌から、
ジャガイモを食べるとハンセン病になるのでは、という風評が立った。
(アクにあたって湿疹を発症する者も絶えなかった。)

p32
ドイツでの普及は、フリードリッヒ2世(フリードリッヒ大王)の普及策による。
救荒作物として注目し、栽培令の徹底を図った。

p36
アイルランドではジャガイモの栽培が普及し、18世紀末の依存度はきわめて高くなった。
しかしジャガイモの病気が5年間も連続発生し、飢えが原因で死んだのは150万人に達し、
ほぼ同数が新大陸へ渡った。→アメリカへの移民の増加。

p37
熱帯のパナマ地峡の高温多湿な気候はジャガイモ栽培に適しないため、
アイルランド移民から北アメリカでジャガイモ栽培が広がった。

p41
ジャガイモに含まれるビタミンc
35mmg/100g
熱に対して比較的安定していて、加熱しても失われるビタミンcは少ない。
熱によってアルファ化したでん粉が糊状になり、ビタミンcが水中に流出するのを防いでいるのではないかと思われる。


p66
チャールズ・グッドイヤー
 ゴムと硫黄を混ぜたものを加熱することによって、四季を通じて堅さが変わらないゴムを作った。
(生ゴム+1~5%の硫黄を圧力をかけつつ加熱することで、-30~130で堅さが変わらない弾性ゴムができる。)
 この「加硫法」は、ゴム加工技術の中でも最大の発明。

p71
フランスのミシュラン兄弟
 自転車で生まれた空気入りタイヤを、(より重い)自動車に取り付けることに成功した。


p73
ゴム+カーボン・ブラック
 最初は種類を見分けるためだけだったが、これによって通常のゴムタイヤよりも10倍以上
耐摩耗性の強いタイヤができた。

p80
 マレー半島でゴム生産が盛んとなり、
1922年には全世界の93%、1932年には98%を作っていた。(残りはブラジル)
第二次世界大戦で日本がマレー半島を占領するまで、イギリスは世界の天然ゴムを独占していた。

p85
 合成ゴムは、様々な用途に応じて作成できる。しかし、ある部分の特性を伸ばすと、他の特性が損なわれる。
天然ゴムは、どの性質をとっても80点以上のよさを持っている。
どうしても天然ゴムしかできないもの
・飛行機のタイヤ 高度1万m以上の-50~60度という低温から、着陸時の衝撃、高温に耐える。
・コンドーム ピンホールも存在せず、0.03mmの薄さを保てる


p95
 カカオ豆
果皮の中に、甘酸っぱい汁を含んだ果肉があり、その中に30~50粒の種子(カカオ豆)がある。
この豆を手作業で取り出すのは困難。
ただ、果肉を大きな木の箱の中で放置すると発酵し、果肉が液化して、簡単に取り出せる。
また、発酵が始まるとカカオ豆は発芽する。
しかし進むことによって温度が50度を超えると、豆は死ぬ。
ところがこの発芽過程がないと、美味しいチョコレートができない。
発酵中にカカオ豆のえぐ味が除かれ、色調もいい香りのもともこの時にできる。

p104
 1494年、ローマ教皇の仲裁のもと、スペインとポルトガルの間で
「トルデシリャスの条約」
が交わされた。
アフリカ沖のベルデ岬諸島の西方370レグア(約2000km)の地点、
西経46度30分を走る経線を境界線として、
その東側で発見された土地をポルトガル領、
西側で発見された土地をスペイン領とした。

この結果、カカオ豆の産地は全てスペインの勢力圏となり、スペインが独占した。

p111
スペイン
 カカオ豆の産地との結びつきが強かったため、(飲料としての)チョコレートが普及。
イギリスは東インド会社を通じた中国、日本との結びつきで紅茶が普及。
フランスはコーヒーを産出する植民地が多かったためコーヒーが普及した。

p113
 カカオから不要物を除去したニブ(実)にはカカオバターと呼ばれる脂肪分が55%程度含まれている。
そのため、油っこく、濃厚な味。
オランダの科学者コンラート・バン・ホーテン
1828年、ニブからカカオバターの2/3程度を搾り取る方法を考案し、ココア粉の製造法の特許を取得した。
さらに、ニブにアルカリ溶液を加えると、酸が中和され、刺激性の味がなくなることを発見。
今でもココア粉の製造は、
・ニブにアルカリを反応させる
・カカオバターを搾り取る
という工程が基本。

p114
 スイスのアンリ・ネスレ
牛乳から粉ミルクを作る方法を発明。

p133
 ニワトリはトウガラシを好んでついばむという。
「和漢三才図会」や「大和本草」でも、トウガラシは鳥が好むことが書かれている。

ペンシルバニア大学の研究員メイソンの話
鳥は2%のカプサイシン溶液(溶解度の限界)を与えても平気。
人間がカプサイシンの辛味を感じる濃度
 15~20ppm(1万分の1%)でも辛味を感じる。
2%=1000倍

p135
 世界中で栽培されているトウガラシ:分類学上は4種しかない。
現在でも、3種は南米大陸のごく一部でしか栽培されていない。
1:アンデスの高地
2:南米大陸
3:アマゾン流域

4 カプシカム・アンヌーム Capsicum annuum
 世界各地のトウガラシは、すべてメキシコ原産のアンヌーム種の仲間。
アンヌーム種の特徴
 滑らかで光沢のある厚手の果皮をもっている
果実の中には果肉がなく空洞である
空洞には数十粒の種子が入っている

p153
 李氏朝鮮時代に編纂された「芝峰類説(チボンリユソル)」1613
トウガラシは日本から伝わったので、俗に倭芥子と呼ばれている、との記述がある
(「食文化の中の日本と朝鮮」) 





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category: 植物

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今週のまとめ  

本日、久しぶりに野鳥を見に行きました。
多くのシロハラをはじめ、クロジ、ビンズイなど、なかなか楽しめるひと時でした。
写真は、アオキの実。

アオキの実


写真の実を見ると、青い実は無傷ですが、
赤い実にはすこし傷がありますね。
これは、ヒヨドリが軽く噛んだ跡です。

というのも、植物散布する実の多くは、熟すと赤くなり、
ヒヨドリはアオキの実を食べるのですが、
赤くなりだすと、食べごろかな? と少し噛んで熟し具合を確認するのです。

というように、鳥がいないところでも楽しめるのが、面白いところですね。

さて、今週紹介したのは以下のとおり。
Collinsは、いつか紹介したいなあと思っていた図鑑です。
今週のヒットは2冊。
「ネアンデルタール人 奇跡の再発見」と、
「ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで」。

失われていた「何か」を再発見する、本当に興奮する話ですね。


COLLINS BIRD GUIDE

BIRDER 2012年2月号

法医学者、死者と語る

世界の特殊部隊作戦史 1970-2011

ネアンデルタール人 奇跡の再発見

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで
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category: 雑記:今週のまとめ

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ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで  

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで
高橋 大輔
【知的冒険度】★★★★

ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまでロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで
(2010/04/22)
高橋 大輔

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ネアンデルタール人 奇跡の再発見」もそうだったが、
自分が知らない「失われたもの」があり、
それが「再発見」される過程というものは、とてもワクワクする。
本書に出会えたのは、ほんとうにラッキーだった。

あの漂流者ロビンソン・クルーソーに実在モデルがいて、
その住居跡を、一日本人が、特定した。

なんと興奮する物語だろう。


ロビンソン・クルーソーのモデルとなったのは、アレクサンダー・セルカーク(1676or1680-1721)。
筆者は南米チリ領の島で、外国人の素人ながら、様々な個人・団体の支援を受け、
ついに住居跡と思われるものを発掘する。

発掘そのものだけでなく、
発掘作業ができるようになるまでにも幾度と無く発生するトラブルに対して、
筆者がなんとか乗り越えていく様は、まさに「探検」である。

また、ナショナル・ジオグラフィック協会や、探検家クラブなどの諸団体で後援を受ける経緯なども紹介されている。
「ナショナル・ジオグラフィック」誌を飾る探検家の裏話を聞くようなものであり、興味深い。

実現した「夢物語」を読みたい人には、ぜひお勧めである。

【目次】
プロローグ
第1章 ニューヨークで夢を
第2章 探検のスタートライン
第3章 サンチャゴの夏
第4章 ロビンソンの島へ
第5章 発掘
第6章 失われた古道
第7章 一六ミリの発見
第8章 検証
第9章 希望の家
エピローグ

P19
ロビンソン・クルーソーに実在のモデル
アレクサンダー・セルカーク(1676or1680-1721)
 スコットランド人、
 1703年、キャプテン・ウィリアム・ダンピアが率いるプライベティーヤ(私掠船による海賊)に加わり、サンク・ポーツ号に乗り込む。マスター(航海士)だったと考えられる。
船長のトーマス・ストラドリングとそりがあわず、
南米チリ領のファン・フェルナンデス諸島のファン・フェルナンデス島(現在のロビンソン・クルーソー島)で船長ともめ、自ら船を降りると言い出した。
直前に翻意したがそのまま置き去りにされ、4年4ヶ月無人島で生活した。
1707年2月1日、キャプテン・ウッズ・ロジャーズに率いられた英国船(デューク号とダチェス号)が水・食料の補給のため立ち寄り、セルカークを救出。
しかし、島のどこで暮らしていたかは分かっていなかった


・同時代の資料
救出した キャプテン・ウッズ・ロジャーズによる「世界巡航記」(1712)
キャプテン・エドワード・クック「南洋および世界周航記」(1712)
セルカークにインタビューしたジャーナリスト、リチャード・スティールのエッセイ「英国人」(1712)

・デフォー「ロビンソン漂流記」(1719)、「その後の冒険」(1719)、「反省録」(1720)
カリブ海の島に漂着した設定、赤道直下なのにヤギの毛皮を着ている=実際の記録を使った、
南海貿易促進のための、舞台をカリブ海にしたのではないか


P51
・ナショナル・ジオグラフィック協会の探検応募
探検の要旨を5p以内にまとめ事前審査、目的、日程、予算、メンバー、どのようなストーリーが描けるか
事前審査を通過すると、本審査
 詳細な計画書、地図、見積書、メンバーの履歴書、有識者からの推薦状等
支援を受けられることになれば、グランティ(探検支援資金受給者)とな呼ばれ、
協会の探検隊を率いることができる
 
P98
「ロビンソン・クルーソー300年 探検プロジェクト」
300th Anniversary Expedition of Robinson Crusoe(EC-0193-04)
探検費用2万ドル支給のグランテイとなった


・島のアグエス・ブエナスにある石積みの建物
 上部構造はスペイン人によるもの、しかしその下に掘っ立て小屋の跡
2箇所の焚き火の跡、出土した16mmの青銅製ピン先(=当時の航海士がもっていたディバイダの先?)
セルカークの見張り台に近いこと、かつて古道カミノ・コロノがあったこと、
ASと刻まれた石があること、小川がセルカーク川と呼ばれていること。

p207
「ナショナル・ジオグラフィック日本版」2005年10月号に記事が掲載された。



P21
・アメリカの探検家クラブ
 三色旗(エクスプローラーズ・クラブの頭文字のEとC、コンパスのデザイン)
 審議会で意義や価値が認められると旗を貸し出す
アポロ計画、植村直巳の1978年の北極点犬ぞり単独行など

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category: ノンフィクション

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ネアンデルタール人 奇跡の再発見 (朝日選書)  

ネアンデルタール人 奇跡の再発見
小野昭
【知的冒険度】★★★★



教科書でおなじみのネアンデルタール人。
それほど有名なのだから、たぶん発見当初から遺跡の保全も行なわれ、
きちんと研究されたのだろうな、と漠然と思っていた。

だが、そうではなかった。


1856年、ネアンデルタール渓谷の「小フェルトホーファー洞窟」で発見された人骨は、
ネアンデルタール人の模式標本となった。
ところがこの洞窟から出た土は捨てられ、洞窟を含むネアンデル渓谷そのものが、
石灰岩採掘で消滅した。

そして時代が流れ、どこに洞窟があったのかすら分からなくなっていた、という。

本書は、その洞窟を特定しようとする2人の学者の活動と、それがもたらした
奇跡の再発見の物語である。

なんと、2人が1997年に発見した骨片が、1856年発見のネアンデルタール人の模式標本の左大腿骨に接合(接合は1999年)した。これによって、洞窟の位置が確認できたのである。さらに同じく模式標本に接合する頭骨の一部も発見されたり、他のネアンデルタール人の人骨も発見できたという。

ここまでうまく行くのも珍しいが、なかなか興奮できる一冊であった。

なお本書の第2章と第3章は、現在のネアンデルタール人研究が端的にまとめられている。
他書では得がたい情報である。


【目次】
プロローグ
第1章 忘れたられたネアンデル渓谷
第2章 ネアンデルタール人骨の発見
第3章 ネアンデルタール人の生業と道具立て
第4章 追跡の開始
第5章 人骨標本をDNAの分析に
第6章 人骨出土地点を絞り込む
第7章 出土地点の再発見
第8章 発見場所の特定
第9章 新しい研究の地平
エピローグ

【メモ】
1983~85年 ケルン大学のG.ボジンスキー教授が洞窟の位置を特定するための発掘 失敗
1997年、ラルフ・シュミッツとユルゲン・ティッセン 別の場所で発掘を行なった
 2週間の発掘期間、第5トレンチで洞窟の壁が残っている部分を発見し、捨てられた堆積物の中から後期旧石器時代の遺物も発見(発掘はすぐ3週間延長が許可された)

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category: 歴史

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世界の特殊部隊作戦史1970-2011  

世界の特殊部隊作戦史1970-2011
ナイジェル カウソーン
【マニアック度】★★★☆




本書を読んでいる日々に、
アルジェリアで人質事件が発生した。
思うところ多々である。


本書は、グリーンベレーやシールズ、SASといった特殊部隊が関わった事件・作戦について、
章立てで紹介している。
成功したものもあり、「ブラックホーク・ダウン」のように大失敗に終わったものもある。

ただ筆者のスタンスとしては、特殊部隊の活躍を賞賛している。
おそらく最終章の「オサマ・ビンラディンの殺害」が本書の執筆契機であり、
そのためにオバマ大統領の演説が全文引用されているのだろう。

あと、本書を読んでも感じたのが、
アメリカにおける味方の死体回収にかける努力である。
そのために撤退が困難になったり、更なる犠牲者が発生することもある。
しかし、そこまで徹底していることが、国に対する信頼にも繋がるのだろう。
翻って、日本はいまだに戦没者の遺骨収集すらままならない。

特殊部隊が良いとか、交戦中に新たな犠牲を払ってでも死体を回収すべきだとまで言うつもりはないが、
時代が落ち着けば、やはり全ての死体は回収する努力を徹底すべきと思う。


【目次】
第1章 ソンタイ捕虜収容所への奇襲作戦
第2章 海の特殊作戦
第3章 ミュンヘン・オリンピック事件
第4章 マヤグエース号事件
第5章 エンテベ空港奇襲作戦
第6章 「イーグル・クロウ」作戦
第7章 在英イラン大使館占拠事件
第8章 行方不明者(MIA)救出作戦
第9章 フォークランド紛争
第10章 「アージェント・フュリー」作戦
第11章 アキレラウロ号事件
第12章 「ジャスト・コーズ」作戦
第13章 ソマリア
第14章 砂漠の盾と砂漠の嵐
第15章 ブラックホーク・ダウン
第16章 カライジャンギの戦い
第17章 トラボラの戦い
第18章 アナコンダ作戦
第19章 「イラクの自由」作戦
第20章 デベッカ峠の戦い
第21章 トランプの指名手配者
第22章 ジェシカ・リンチの救出
第23章 サダム・フセインの捕縛
第24章 イラクの人質救出作戦
第25章 「レッド・ウィング」作戦
第26章 タスクフォース88
第27章 タリバン=アルカイダの幹部狩り
第28章 ソマリア海賊からの救出
第29章 「セレスティアル・バランス(天の配剤)」作戦
第30章 ハイチ地震
第31章 オサマ・ビンラディンの殺害




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category: 戦争

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法医学者、死者と語る~解剖室で聴く 異状死体、最期の声~  

法医学者、死者と語る~解剖室で聴く 異状死体、最期の声~

岩瀬博太郎
【問題提起度】★★★★



病院以外での人の死亡。
その多くは事故や自然死なのだろうが、客観的な死因究明をしておかなければ、他殺や交通事故の後遺症など、様々な問題を闇に葬ることになる。

それをするのが法医学者だが、
そもそも警察が「事件性がある」と判断したものしか対象とならないこと、
またそれをこなすだけでも、法医学者の善意に頼りっきりであり、システムとして危機的状況にあるという。

日常では全く意識することはないが、自分がもし当事者になれば、
このシステムの問題は、おそらく耐え難いものではないだろうか。

筆者は言う。
「好意のみに頼る制度は、安定した制度とはなりえない。」
まさにそのとおりである。


海外ドラマでは「CSI:科学捜査班」が好評である。
ニューヨーク、ラスベガス、マイアミと舞台の異なるシリーズがあり、それぞれ捜査官の所管範囲も異なるようだが、共通して言えるのは
・各専門分野の法医学スタッフが、まとまった活動する部署があり、しかも複数の班がある
ということだろう。

日本ではここまで必要がない、という判断かもしれないが、
それは著者が指摘するように、
病死以外の全遺体を検証していないためである。もしそれをやるなら、
それなりの施設と人員は必要だろう。

そして大事故、医療過誤、保険金詐欺、虐待などが日常的になっている今、
いつ被害者となるかわからない国民の権利を守るものとして、
法医学システムの充実は急務であるはずだ。

小さな政府を求め、公務員削減ばかり主張するが、
そもそも日本では全く不十分な分野が多数ある。
そこを増強することを認めず、安易に削減のみ進めていけば、
いつかこの国の公共システムは機能しなくなるだろう。

今日もまたどこかで、検視する必要がある遺体は発生している。
状況から警察が「事件性がない」と判断することと、
検視によって客観的に「事件性がない」と判断することは、全く意味が異なる。

一刻もはやいシステム改善を望む。

【メモ】
P39
「つまり、司法解剖は、法医学教室職員の善意のみで成り立っているといえる。
 言い換えれば、日本には死因究明を生業として雇用されたプロが存在しないということだ。これはたいへん恐ろしいことで、司法解剖という社会基盤がいつ自然消滅するのかわからない状況にあるし、このような国は、ほかにはないと思う。」

P57
 「承諾解剖」…警察が一度犯罪性はないと判断した遺体は、遺族の承諾によって解剖、画像診断、薬物検査ができる。
→一見遺族の心情を考慮しているようだが、遺族が承諾なければ死因はうやむやのままになる。
事件性(殺人だけでなく交通事故による損傷があとで発生した場合など)がわからないままとなり、後で問題が発生したり疑惑を抱いても対応できない。

P60
法医学者は、刑事訴訟法に基づき、解剖後に遺族に会うことを禁止されている。
日本の司法解剖では、誰が遺族の対応に責任を負うか不明瞭。

P67
針刺し事故などによる感染症の危険があるにも関わらず、危険手当はない。

P71
検査設備が不十分で法医学教室で実施できない検査の場合、警察に任意提供し、警察が科学捜査研究所に鑑定を依頼する。
科学捜査研究所は警察の機関であるため、検察や海上保安庁が、このルートを利用することは難しい。


P77
「好意のみに頼る制度は、安定した制度とはなりえない。」

P87
裁判員制度
裁判で鑑定結果をわかりやすくプレゼンテーションするのは法医学者の仕事か?
中立的な鑑定を行なうのが法医学者であって、
プレゼンは起訴する検察の仕事ではないのか?

P112
変死の解剖率
北欧諸国 100%、アメリカ50%、日本は程遠い。
「夜警国家は最小限の国家とされるが、日本が小さな政府を目指すとしても、いまはもはや夜警さえできていない状態だ。それなのに一向にインフラを整備しようとしない政府は、常識的に考えて異常だ」

P159
「いまでも解剖執刀医、中毒学者、DNAの専門家、歯科医らの『ボランティア精神』『善意』だけで、日本の死因究明が維持されている。善意に頼るということは悪意に頼ることでもある。」
 
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category: 法医学

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BIRDER (バーダー) 2013年 02月号 野鳥図鑑活用術/鳥の分類が変わる  

BIRDER (バーダー) 2013年 02月号
【資料度】★★☆☆

BIRDER (バーダー) 2013年 02月号 野鳥図鑑活用術/鳥の分類が変わるBIRDER (バーダー) 2013年 02月号 野鳥図鑑活用術/鳥の分類が変わる
(2013/01/16)
BIRDER編集部

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特集は野鳥図鑑と、日本鳥類目録改訂第7版の変更点、新規追加種である。

野鳥図鑑活用術としては目新しい内容はないが、近年に開始した人は、
様々な図鑑が紹介されているので参考になるだろう。
僕のおすすめは
COLLINS BIRD GUIDE 2nd EDITION である。
僕は第1版を持っているが、非常に精緻なイラストと解説で、有用である。

日本鳥類目録改訂第7版の変更点は、ネットでもいろいろ紹介されている。
本誌では、新規追加種の写真(今号はスズメ目以外)が掲載されているので、
雰囲気を味わうことができるだろう。


【目次】
第1特集『野鳥図鑑活用術』
・図鑑を「作る」仕事とは?
1. 図鑑を「書く」
2. 図鑑を「撮る」
3. 図鑑を「描く」
・地方で使えるオススメ野鳥図鑑&探鳥地ガイド
・海外図鑑を使いこなそう
・Web図鑑を使ってみよう
・もっと図鑑を使いこなせる「図鑑活用小ネタ集」
・野鳥のプロたちが使う図鑑
・今さら聞けない!?「鳥用語クイズ」
バードウォッチャーに聞く、野鳥図鑑意識調査

第2特集『鳥の分類が変わる』
・鳥の分類はなぜ変わるのか
・分類が変わった鳥たち
・私たち、日本の鳥になりました[前編(非スズメ目の鳥)]

・原寸大野鳥図鑑 #35[ウソとアトリ]
・Field Report #26[Fukushima]
・鳥の形態学ノート #35[カワウ足]
・伝説の翼 #14[鳳凰Ⅱ(fenghuang)]
・唐沢流・自然観察の愉しみ方 #62[早朝散歩の楽しみ]
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category: 野鳥

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Collins Bird Guide  

Collins Bird Guide
Lars Svensson、Killian Mullarney 他
【鳥屋の実用度】★★★★

Collins Bird GuideCollins Bird Guide
(2008/03/29)
Lars Svensson、Killian Mullarney 他

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僕が持っているのは第1版である。2版が欲しいものである。

本書は、ヨーロッパ圏のガイド。左に解説、右にイラストという構成で、
文字はかなり小さい。
イラストも細かく、ややチョロQ(古い例えだ)のような雰囲気があるものの、
特徴を明確に記載している。

ありがたいのは、ある種の性差や齢差、また類似種について、
「これ、比較したいな」と思うものはだいたい同ポーズで描かれていること。
実用的である。

2007年、香川県でセアカモズLanius collurioが出たとき、最初は第1回冬羽であった。
セアカモズも類似種のオリイモズL.isabellinusも日本にはいないので、日本の図鑑にはない。
そこで送られてきた写真を本書でチェックすると、セアカモズ 1st-winterの図と明確に一致し、オリイモズ 1st-winterの図とは一致しなかった(当然、この2種も同ポーズで描かれている)。
鳥学会誌での報告では翼式まで確認しなければならなかったが、本書の威力を痛感したできごとであった。

*****************************
セアカモズについて
*****************************
識別でこのサイトに辿りつく方が多いようですので、追記します。

セアカモズの報告は、
「セアカモズLanius collurioの香川県初記録」古市 幸士, 曽根 俊二, 遠山 穎輔, 岩田 篤志
日本鳥学会誌 Vol. 59 (2010) No. 2 P 189-193 
です。

鳥学会のこのページで、PDFでみられると思います。

オリイモズとの比較、翼式なども中で説明しています。ではでは。

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category: 野鳥

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今週のまとめ  

明けましておめでとうこざいます。
先週はまだ正月気分でしたので、今週のまとめまで書いていませんでした。
今後は、いつものペースで投稿したいと思います。
今年もよろしくお願いします。
本ブログが、誰かの参考になることを願っています。

今週は以下のとおり。「ベクター・ケースファイル」は、
未読の巻を入手して読んでいます。特にレビューは入れていません。
(リンクは第1巻のレビューです。)
巻が進むにつれ、お色気度が増すのはちょっと興ざめですが。年ですか。

切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう?

カエル―水辺の隣人

パンデミックを阻止せよ!: 感染症危機に備える10のケーススタディ (DOJIN選書)

エンジェルフライト 国際霊柩送還士

(参考)
ベクター・ケースファイル ―稲穂の昆虫記 (チャンピオンREDコミックス)


さて、今週は良い本に巡りあえました。
まずは「パンデミックを阻止せよ!
「阻止せよ」というとおり、社会的にパンデミックを阻止するために、
各段階でとれのように推測し、判断するかの教科書・演習です。
個々のケースについて非常に詳しく解説されていますので、お勧めです。

次に、何と言っても、
エンジェルフライト 国際霊柩送還士」。
こういう仕事があり、こういう方々が携わってくれていることに、感銘を受けました。
一人でも多くの方にお読みいただきたい一冊です。


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今週のSong
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「Le Poisson Des Mers Du Sud」
Isabelle Antena(イザベル・アンテナ)、1986,「Hoping For Love」より
http://www.youtube.com/watch?v=uQ7vILBLmBA
※リンク先はYOUTUBEです。

この曲は、中学校の頃、ラジオで流れてきました。
テープに録音しましたが、誰の、なんて曲かさっぱりわからない。
いつか探し出したい…と思っていましたが、全く手かがり無し。
ところが、大学生になってかな、
CD屋でジャケ買いした中に偶然発見!!!
その喜びといったら…。
崎谷健次郎氏の「夜明けまでは」と並ぶ、
長い想い出のつまった曲です。

さて、曲はジャジーで、ゆったりした曲。
収録アルバムはボサノバ的な曲も多く、
もしかしたらTVとかで聞いたことがあるかもしれません。

愛にエスポワール愛にエスポワール
(2001/02/21)
アンテナ

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category: 雑記:今週のまとめ

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エンジェルフライト 国際霊柩送還士  

エンジェルフライト 国際霊柩送還士
佐々 涼子
【読んでおくべき度】★★★★【殿堂入り】




海外で亡くなった日本人を受け入れ、遺族まで運ぶ。
また、日本で亡くなった外国人をエンバーミングし、国外へ送り出す。
こうした仕事が必要であることはわかるのだが、
これまで全く意識することは全くなかった。

本書は、日本で初めてこの「国際霊柩送還」専門に設立された、
エアハース・インターナショナル株式会社の仕事のルポである。
海外旅行が普通となった今、こうした国際霊柩送還の現実を知っておくことは、
非常に重要である。

また国際霊柩送還に限らず、
本書によってエアハースという存在を知ることができて、本当に良かったと思う。

この分野だけでなく、その質、心もまさしくトップランナーである。
単に遺体を整えるだけでなく、遺族がきちんとお別れをできるよう、
心をこめて行なわれるエンバーミング。
そのクォリティは、まさに日本人ならではであり、
同社を設立した山科・木村両氏の人格に負うところが大きい。
お二人と、お二人に続く同社の方々の働きぶりに、
人として教えられることが多くあった。

一人でも多くの方に、お読みいただきたい。
僕としては、今年のベストの一冊である。

【目次】
遺体ビジネス
取材の端緒
死を扱う会社
遺族
新入社員
「国際霊柩送還」とはなにか
創業者
ドライバー
取材者
二代目

親父
忘れ去られるべき人
おわりに

【メモ】

P16
「特に国境を越える遺体は、海外でどんな扱いをされようと遺族の目が届きにくい。
 そんな状況に加えて、死を語ることを極端に避ける日本の国民性が加わり、国境を越えての遺体搬送の現場を「未開」ともいうべき混沌とした状態にしている。信頼できる人のアドバイスをもらえた遺族は幸運だが、たまたま悪質な業者の手にかかったら、いったい何が正常なのかの判断すらできないまま、不当な扱いを受けることになる。」

P28
外国人や日本人の遺体を故国に搬送する会社
 :エアハース・インターナショナル株式会社
 =日本初の国際霊柩送還専門会社、2003年設立
会長 山科昌美氏
社長 木村理惠氏

P31
日本は他国と陸続きの国境を持っていない。そのため国際霊柩送還が発達せず、専門的な知識を持つ業者がいなかった。だから未だに海外搬送のための知識が一般に乏しく、取り返しのつかないミスが繰り返されているという。


P94
エアハースへの依頼
①保険ケース
 海外旅行傷害保険加入、または海外旅行傷害保険付きのクレジットカード所有者、勤務先がアシスタンス会社と契約
②プライベートケース
 個人で依頼 

個人が自分だけで行なうのは、手続き、金額で大きな負担


P97
国際霊柩送還の重要な仕事
・遺体や遺骨の処理
 公衆衛生上の観点から、エンバーミングしていない遺体は航空機で運べない。
現地でエンバーミングされるが、貨物室内での気圧差や、長時間の輸送が遺体に損傷をあたえる
現地の業者も様々、技術・方法もばらばら

アメリカ:ライセンス制
 南北戦争が契機、国土が広いためエンバーミングが発達
 90%以上がエンバーミングされる
日本・韓国
 アメリカでライセンスをとったエンバーマー、ただ日本はアメリカほど発達していない
ギリシャやイタリア
 技術が未熟な場合が多い
インド・ネパール・スリランカなど
 処置自体がおざなりな場合が多い

P122-123
非非日常的な葬送儀礼=眼に見えるかたちでこの世とあの世をつなぐ
因習=過去の葬送の記憶=かつて親類縁者を送り出した儀式
それによって、家族は先祖と同じところへ旅立つことを悟る
地域での代々続く葬儀業=そうした葬儀の形を伝えるもの
振興企業の参入によって、失われつつある


P125
遺体に触ったこともない葬儀業者がいる
葬儀社はイベント司会業ではない(エアハース:山科)


P131
スマトラ沖大地震
日本人観光客も多数死亡、2005年の発表では死者40人、不明者2人


P135
東日本大震災以前にも、世界各地では悲劇が繰り返されてきた。

「他人事(ひとごと)」という名の楽観と麻痺


P269
ジャーナリスト山本美香氏の事件
父親のコメント
「…凶弾に倒れて無念ではございますが、実家に帰ってきて昼過ぎまで寝ていて、『眠い、眠い』と言っていたときと同じような顔で帰ってきてくれた。それがせめてもの救いです」

P274
「生きなさい。ふり返っていのちを無駄にしたと後悔しないように。
 生きなさい。してきたことを悔やみ、別の生き方を望むことのないように。
正直で、じゅうぶんな人生を生きなさい。
生きなさい。」
エリザベス・キューブラー・ロス(「人生は廻る輪のように」上野圭一訳)

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category: ノンフィクション

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パンデミックを阻止せよ!: 感染症危機に備える10のケーススタディ (DOJIN選書)  

パンデミックを阻止せよ!: 感染症危機に備える10のケーススタディ
浦島 充佳
【きちんとした基礎知識になる度】★★★★




どうしてこの分野に続けて手を出すのか自分でもよくわからないが、最近コンスタントに刊行されている分野であるパンデミック関係からまた一冊。
また装丁はあっさりしているし、また同じような本かなあ、と思ってたらアタリであったのは嬉しい誤算である。
「社会的な感染症対策」関係の基礎本がほしい方には、うってつけであろう。


本書は、そもそもどのような感染拡大によりパンデミックとなるのか、またパンデミックに至る各段階でどのような因子が関与しているのか、という点をまず説明する。この段階で感染症の数理モデルが詳細に解説されている点が、類書とは全く異なるポイントである。こうした数理モデルや分析手法を一般人が日常で用いることはないとはいえ、本当の専門家はこうした判断を行なっているのか、と信頼することができる材料となるだろう。(逆に、自称専門家やコメンテーターの意見について、こうした数理モデルをふまえていないな、と察知し、否定する材料にもなる。)

そして、次に過去のパンデミック事例を詳細に解説する。
各ケースは時系列で、何日に誰がどのような症状になったか、という具体的な事実が詳細に述べられるとともに、随時「どのようなことが推測できるか」「どのような対応が可能か」という机上演習が挟まれる。
これも類書とは異なる点であり、医学的な部分も知識よりも、目に見える状況からどのように判断するか、という見地のものが多い。だから医療従事者でなくとも、演習に取り組むことは可能である。
ということから、本書は医療従事者だけでなく、大企業・行政の危機管理担当に非常に有益である、ということがわかる。感染症研究者による類書もあるが、それらが単なる事例紹介(かなり専門的である
によせよ)である一方、本書はパンデミック対策の教科書となりうるのである。これは決定的に異なる。

こういうスタイルの本を書けるのはどんな人なのか、と確認する。袖の略歴からは、特殊な経歴はわからない。しかし本書p137では、筆者は2008年6月、ベルリンで開催された日本とアメリカのバイオテロに対する合同演習で、CDC捜査官と共に司会を行なっていることが紹介される。納得である。

なお本書を電車内で読書中、隣のマスク姿の女性がずっと咳をしていた。
1時間程度だったが、タイムリーでかなりスリリングな時間であった。



【目次】
はじめに
第1章 感染症封じ込め 七つのステップ
ステップ1.症例(Case)、 クラスター(Cluster)、共通した症状・徴候(Common Characteristics)、症例定義(Case definition)
いつものパターンと同じか?/ほぼ全員に共通する点は何か?/症例を定義せよ
ステップ2.原因となる微生物(Causative agent)
既知のエージェントと比較?/未知の感染症かもしれない。どうする?
ステップ3.流行曲線(Curve)と感染中心(Center of epidemic=(epicenter)))、伝染性(Communicable)、致死率(Case-fatality rate)
感染流行曲線-拡大速度は速いか?/最初の患者は?/感染源は?/感染性か?/感染経路は?/ヒト?ヒト感染するか?/致死率は高いか?/自然発生のものか、バイオテロなど人為的なものか?
ステップ4.コミュニケーション(Communication)と対策(Countermeasure)
ステップ5.ケース・コントロール研究/コホート研究Case-Control and/or Cohort study
ステップ6.封じ込め/撲滅(Containment/eradication)とサーベイランスの継続(Continuing surveillance)
天然痘撲滅/サーベイランス
ステップ7.生態系の変化(Change in ecology)
◆コラム◆One Healthの動き

第2章 感染症の数理モデル
R0(Basic Reproductive Number)/基礎となる感染症数理モデル/偶然の影響/数えてR0を算出/サージ・キャパシティ/発症前感染+不顕性感染(=θ)/カオス

第3章 病原性大腸菌O104-ハンブルグ

第4章 豚インフルエンザ(H1N1)-メキシコシティ
◆コラム◆WHO本部にて

第5章 SARS-広東省
一通の電子メール/香港/ベトナムへの飛び火/ハノイからの警鐘/グローバル・アラート/SARSウイルスの発見/シンガポールへの飛び火/カナダへの飛び火/香港アモイ・ガーデンでのSARS集団発生/SARS流行の終息
◆コラム◆SARS封じ込めに成功したタン・トク・セン病院

第6章 炭疽菌テロ-フロリダ
◆コラム◆G8バイオテロシナリオ演習

第7章 西ナイル熱-ニューヨーク
◆コラム◆蚊の駆除方法-マニラの例

第8章 ニパ脳炎-マレーシア
◆コラム◆イースター島の教訓

第9章 鳥インフルエンザ-香港
最初の症例/鳥インフルエンザ/サーベイランス/コホート研究/ケース・コントロール研究/香港では二人が鳥インフルエンザに罹患し一人が死亡/ベトナムでの発生/タイの家族内感染例/WHOサーベイランス
◆コラム◆新型インフルエンザ対策

第10章 エイズ-ロサンゼルス
最初のクラスター/原因の検討/感染経路は?/リスク・コミュニケーション/診断法の確立
◆コラム◆ニードル・エクスチェンジ

第11章 エボラ出血熱-ザイール
ミッション/ウイルスの発見と疾患定義/スーダンでのアウトブレイク/エコロジー/アメリカ人患者/オランダ人患者
◆コラム◆映画『アウトブレイク』

第12章 スペイン風邪
内務省報告書/超過死亡/夏-秋-冬のスペイン風邪/アメリカ四三都市の対応/なぜフィラデルフィアでは超過死亡がもっとも多かったのか?/なぜニューヨークでは超過死亡が比較的少なかったか?/なぜセントルイスでは死亡の二つのピークをもつのか?/日本における四七都道府県の超過死亡率
◆コラム◆ビタミンDのインフルエンザ予防効果

第13章 アウトブレイク対策の批判的吟味
あとがき
引用文献


【メモ】

P20
ザイール・エボラは、スーダン・エボラより致死率は高いが感染力は低い傾向にあった。
「致死率が高いということは、ヒトの死とともにウイルスも死ぬわけであるから、ウイルス種の保存の観点からは合理的ではない。致死率を落としてでも感染力を増すほうが、種は繁栄する。ウイルスが分裂を繰り返す過程で遺伝子変異を繰り返し、宿主への影響が小さく(重症化しにくく)、かつ感染力が強い変異株がやがてそのウイルスの主流になっていく。ライフサイクルがきわめて速いウイルスは進化のスピードも段違いに速い。」

P29
旧ソ連から亡命した生物兵器関係の科学者、ケン・アリベックの著書「バイオハザード」
スペルドルフスクの事例
1979.4.2、技術者がフィルターを付け忘れたたため、生物化学兵器工場から炭疽菌がリーク。
風に乗って数十キロメートル離れた動物まで殺傷。
ソ連崩壊後の調査:4.4~18の間、腸炭疽菌(実際は吸入炭疽と思われる)79例(致死率81%)、皮膚炭疽17例(致死率0%)


P42
疫学研究
「ケース・コントロール研究」
結果発生者(ケース)と結果を反映してないコントロール(年齢・性別等の因子をマッチさせた集団)を比較する
「コホート研究」
曝露/非曝露群で結果の発生率を比較する


P50
R0(0は小文字、アール・ノー)基本再生産数
「ある感染者がその感染症に免疫を全くもたない[感受性のある人:S(susceptible)]集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均人数」

R0<1:その感染症は最終的に消滅するであろう。
R0=1:その感染症は増えも減りもしない。
R0>1:その感染症は流行するであろう。

時間tのとき、その時点の再生産数Rは、
R(t)=R0×S/N
N=合計人数
となる。


P65
発症前感染+不顕性感染=θ
発症前感染…症状の発症前に感染性を帯びること
不顕性感染…症状はほとんどないが感染性を帯びること

SARS…θは0に近かった。だから早期診断・早期隔離が極めて有効だった。天然痘も同様。

P67 カオスモデル

池にいる被捕食系生物と捕食系動物の時間的推移

Xn:現在の被捕食生物の数
Xn-1:前の被捕食生物の数
r:被捕食生物の成長率

Xn=rXn-1×(1-xn-1)

r=2、X=0.4…定常状態
r=3.7、X=0.4…周期性が明確でなくなる
r=4、X=0.4…予測不可能(カオス)

P101
2010年、WHOインフルエンザ担当官:新藤奈邦子氏

P144
WNV(西ナイル熱)
1999-2010年の間に南北アメリカに拡大
180万人が感染、36万人が発症、1万2,852人が脳炎か髄膜炎に罹患、1,308人が死亡
蚊が媒介、年配者が屋外活動を減らすなど行動変化
一方、行動変化できない野鳥には深刻なダメージ、数百万羽が死亡し、一部の地域ではある種の鳥(カラス、アメリカコガラ、シジュウカラ、ミソサザイ、ツグミ)が半減したこともある。一部は回復したが、そのままの地域もある。
ツグミ…イエカに刺されやすく、郊外の住宅地がヒト、イエカ、ツグミをつなぐ環境となった

P146
気温が1℃高くなると、蚊の生存日数も伸びる。その結果、患者数は増える。

P157
ニパ・ウイルス=自然宿主オオコウモリ
エルニーニョや温暖化による大雨、洪水、旱魃
→自然環境が破壊
→コウモリの餌不足、栄養不良、免疫低下
→オオコウモリのもつウイルス量の増加
→アウトブレイク?
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category: 感染症

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カエル―水辺の隣人 (中公新書)  

カエル―水辺の隣人
松井 正文
【基礎知識充実度】★★★☆


カエル―水辺の隣人 (中公新書)カエル―水辺の隣人 (中公新書)
(2002/06)
松井 正文

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再読である。

2002年刊行なので、僕としては新しいと思っていたが、
もう10年前の本である。ベーシックな内容なので古くなることは無いが、
分類や研究については、現在はもっと進んでいると思われる。
この前、佐渡島で新種のカエルも発見されたしね。

本書では、カエルの進化史から始まり、
日本産カエル各種について紹介される。
筆者が分類屋さんであるためか、分類的観点からの話が多い。そちらが好きな方には特にお勧めである。
カエルに関する詳細な類書はあまりないと思うので、入門編として読むのには良いだろう。
(そういや文一総合出版が原寸大図鑑を作っていたが、一度見てみたいものである。)

僕としては、アマガエル色素異常のメカニズムについて、具体的に知ることができたのが収穫である。

なおカエルツボカビについては、本書末尾で少し触れられている。
現状を踏まえて、続編を期待したい。


【目次】
Ⅰ カエルは両生類
両生類と他の脊椎動物の関係
両生類の特徴
両生類の起源と進化
現生両生類の三グループ
いろいろなカエル
変わった体形の両生類
鳴くのが好きな両生類

Ⅱ 日本のカエルたち
日本のカエル相
本土のカエル
琉球のカエル
日本のカエルの分類研究の将来

Ⅲ 世界の変わったカエルたち
すみか
かたち
繁殖
悪食なカエル
役に立つカエル

Ⅳ 消えていくカエル
カエルの特性と環境指標としての有用性
世界各地でのカエル個体群の減少
日本の実態
カエル現象の原因
カエルを消してしまわないために

【メモ】
P25-26
サンショウウオ 48.5種数/科、6.8種数/属
アシナシイモリ 27.5種数/科、5.0種数/属
カエル 182.5種数/科、13.0種数/属

カエルに極端な多様性が生じた原因
・温度や湿度など、様々な物理的勾配をもった環境に進出
・カエルだけが鳴き声という情報によって繁殖前隔離する など


P32
カエルの進化
まず頭部が変形し、あとでジャンプ運動と直接関係する胴体や手足の変形が起こったと考えられる

なぜ、カエルは卵から生まれたときからカエルの形ではなく、オタマジャクシなのか
この問題は解き明かされていない


P33
カエルの舌
付け根が下顎の先端近く、口の中で舌は後ろ向き
エサを食べるときは反転して飛び出す

P34
カエルの鳴き方
空気が、鳴嚢と肺の間を何度もすばやく行き来する

カエルの鳴き声
ラブ・コール:広告音
・雌雄両性が出会う確率を増やす
・近くの雄に知らせ、距離を保たせる
その他:縄張り音、遭遇音など

P40
日本

両生類:世界の4.8%の種
カエル:世界の0.8%の種
しかし、日本産カエル42種のうち、30種(71.4%)は固有種
※このまえ、佐渡で新種のカエルが見つかった

P51
ヒキガエル
・自分の生まれた池までの臭いを覚えているらしい
・長命 36年の記録 野外では8歳くらいが最高

P52
生物において、見分けがつかなく、複数の種が一つの種とされていることがある。
=隠蔽種
筆者の発見したナガレヒキガエルも隠蔽種だった

P62
ナガレヒキガエル
卵の動物極は薄い褐色:温度の過度な上昇を防ぐためと思われる


P61
アマガエルの色
色素細胞:皮膚の内側の真皮にある
外側:黄色細胞-虹色細胞-黒色細胞:内側

木の葉
 黄色細胞の色素が広がり、虹色細胞で反射(青色)。これが黄色細胞を通過するため、緑色に見える
地上など
 黄色細胞も虹色細胞も色素が広がり、黒色細胞に到達

青色のアマガエル
 何らかの原因で黄色細胞がないもの
金色アマガエル
 何らかの原因で黒色細胞がないもの
アルビノ、劣性遺伝子による突然変異

P63
染色体 カエルは通常26本
26本
 ニホンアカガエル、ツシマアカガエル、リュウキュウアカガエル、タゴガエル、ナガレタゴガエル
24本
 エゾアカガエル、ヤマアカガエル、チョウセンヤマアカガエル

P78
ツチガエル 腹まで汚れた灰色
ヌマガエル 腹は白い
ツチガエルはいやな臭いの毒性のある粘液を出す、他のカエルと一緒に入れると他のカエルが死ぬ

P82
モリアオガエル
四国や九州の記録は疑わしく、何度行っても見つけられない

P90
ミヤコヒキガエル もとは宮古島だけに生息
屋久島と台湾の間で、なぜここにしかいないのか謎
化石も出たので、移入種ではない

P94
イシカワガエル
近縁種は中国・台湾にいない
なぜ沖縄と奄美だけに分布しているか謎

P167
オレンジヒキガエル
オーストラリア・ブリスベーンから北に160kmの森林で1973年発見
当初は1晩に100匹近く見つけられたが、1979年以降は発見されていない

P185
カエルは生物的な複合環境の良否を判定し、その推移を監視していくための絶好なバロメーター
カエルの繁栄状態は、それを含む生態環境の状態をきわめて忠実に反映

 
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category: 両生類

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切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう?  

切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう?
宮崎 武史
【マイナー生物度】★★★☆

切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう?切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう?
(2012/11/28)
宮崎 武史

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生物好きなら聞いたことがあるプラナリア。
切っても切っても再生する、という話である。
しかし実際に眼にしたことがない。
というより、実験動物だから、そんな身近にはいないだろう、と決めてかかり、
探そうとも思っていなかった。

本書は、そんなプラナリアにとりつかれた、理科教師の方による書である。
授業・部活で用いる経験からだろう、
大きく前半は種類・採取・飼育、後半は再生実験となっている。

プラナリアにこんな種類があり、採取・飼育可能とは(しかも餌がレバーなどの動物質とは)知らなかった。
暖かくなったら探してみたいものである。
そして、ナメクジでも驚いたが(「ナメクジの言い分」)、プラナリアにまで外来種があるとは。本当に生態系的には世も末である。

前半は「生物」としてのプラナリアの話なので、面白い。
後半は、多頭個体をつくる再生実験なので、賛否がわかれるだろう。
各頭それぞれに脳が形成され、それぞれが独立しようとする、というくだりもあるが、
じゃあなおさら、興味本位で(記録挑戦であっても)多頭個体をつくるのはいかがなものか、という気が僕はした。
まあ人それぞれである。

あと、どうも前半はばたばたと書いたのか、ちょっと繰り返し記述が多い。
「なぜプラナリア類が全能性幹細胞(万能細胞)を成体になっても持ち続けることが可能なのかは不明」
と類似の文章が、何度も出てくる。「あれ、読み飛ばしたのか?」と不安になるのであった。


【目次】
第1章 プラナリアってどんな生き物?
第2章 プラナリアの体制と再生の仕組み
第3章 プラナリアを切ってみよう
第4章 いろんな形のプラナリアを作ってみよう
第5章 多頭世界記録への挑戦
第6章 プラナリアの秘密(少し専門的な話編)

【メモ】
P14
プラナリアの仲間
・ナミウズムシ Dugesia japonica
 日本全域、採取しやすい、再生力強い、飼育しやすい
・ミヤマウズムシ Phagocata vivida
 山地の渓流や冷泉
再生力は強い
飼育環境は17℃以下くらいに保つ必要がある
・キタシロカズメウズムシ Polycelis sapporo
 北海道全域と青森県など
多数の小眼(60~130個)を持つ
再生力は強い
・コガタウズムシ  Phagocata kawakatsui
 京都府亀岡市の湧泉流で最初に発見、金沢市、松本市、高松市、岡山市で報告
水温変化がそれほど大きくなく、流れの緩やかな水域
再生力は普通

○近年は熱帯魚や水草の輸入に伴い、外来種3種が確認済み
・トウナンアジアウズムシ Dugesia austroasiatica
 1960年代から日本各地の熱帯魚水槽や魚の飼育池で発見、小型
原産地は東南アジアか
京都府深泥池で野外定着
・アメリカナミウズムシ Girardia tigrina
 北米原産の普通種
身体には小さい斑紋が多数、両眼の間隔が狭い
1980年代に、名古屋市と横浜市の熱帯魚水槽で発見
日本各地で発見
・アメリカツノウズムシ Girardia dorotocephala
 北米大陸原産、中米(メキシコ)でも確認
京都市(鴨川)などで野外定着
頭部左右の耳葉(感覚器官)が長く、水中で活発に動かす

プラナリアは同定が難しい
・分類群や種類数が多い
・体色や模様は同一種でもかなり異なる
・生殖器官の構造がポイント


P21
エサ
 牛または鶏のレバーを1週間に1度、(100匹=レバー5g)
 好まない場合は釣りエサのアカムシ(ユスリカの幼虫)や冷凍アカムシ
給餌後は必ず水替え、壁面掃除
給餌後2~3日は毎日1回水替え

体長30mmくらいの大きな個体=冷蔵庫(5℃以下)で数ヶ月エサ無しで生きる、
ただしかなり小さくなる

P22
 体色は本来茶褐色、エサによって緑色か赤色に変化

P25
 大きく育てるコツ…
水温は低温(5~10℃)
暗いところ

P28
 無性生殖と有性生殖
有性生殖…一定の低温(10℃くらい)をへて生殖器が発達、
野生環境では秋から冬に生殖器が発達、春に産卵

1匹が1年間に1~3子しか複合卵をうまない
 複合卵…2mmくらい、3~10匹孵化、3mm前後

性的成熟個体
…覆面から見て、口と生殖孔の2つの孔が見える

P39
 再生…「形態調節」と「付加形成」
「形態調節」…残部から完全に調和した個体を再編成=プラナリア
「付加形成」…傷や失った部分を修復

プラナリア…全能性幹細胞(万能細胞)を成体になっても保持している
ヒト…受精卵の発生から数日間のみ

なぜプラナリア類が全能性幹細胞(万能細胞)を成体になっても持ち続けることが可能なのかは不明


P94
Janis Lus(1924) 10頭の重複プラナリア

P107
筆者 最終的に14頭のプラナリア
多頭虫は、頭の数だけ脳が形成されている可能性が高く、各脳は神経で繋がっているが、独立した状態に近い=それぞれが勝手に行動しようとする


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category: 軟体動物

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本脈―発見!本と本とのつながり  

本脈―発見!本と本とのつながり
柏本 湊



本ブログも、おかげさまで1年以上継続できました。
訪れてくれる皆様、ありがとうございます。
また、このブログのおかげで、本を読もうという意識づけと、
自分の読書記録が残るようになりました。

300冊近い記録は、自分自身の糧になっています。
願わくば、皆様も本選びの参考にもなりますよう。

(ここからはいつもの文体にて。)

さて、こうして本を読んでいると、あるテーマからさらに発展したり、
ある著者が新しい本を出すことで、
次に読みたい本、読むべき本が展開していく。
これもまた、本書でいう「本脈」であろう。

本書では、各書籍中の「人」つながりで様々な本が紹介されていく。
基本的には自己啓発本が多い。
僕も読んだことがある本もいくつか含まれており、
それに対する著者の取り上げ方、またその本からの展開を興味深く読んだ。

また本書では、こうした自己啓発本作家として生きていく著者の工夫、思いが横軸となり、
それぞれの本が語られる。そうした面でのオリジナリティを楽しむことができるだろう。
僕個人は、著者による本の選択とか、ピックアップするテーマに親近感を感じることができたので、
この中でも読んでみたい本がいくつかあった。

自己啓発本ガイドブックとして、気軽に読んでみることをお勧めする。

【目次】
1 生き方や夢について考える
2 お金や時間について考える
3 知の巨人や偉人の考えに触れる
4 芸能人や著名人の考え方に学ぶ
5 様々な方法論を知る
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category: 読書

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掘辰雄の周辺  

掘辰雄の周辺
掘多恵子
【しみじみ度】★★★★

堀辰雄の周辺堀辰雄の周辺
(1996/03)
堀 多恵子

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 高校の頃、掘辰雄の「美しい村」を読み、続けて「風立ちぬ」を読んだ。
風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫)
(1951/01)
堀 辰雄

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 高原の村、結核、サナトリウムと、弱々しいイメージばかり先行する作家だが、
僕は他の作家からは得たことが無い美しさと、底知れぬ、不可思議な強さを感じた。

 そこで他の作品にも手を出したが、読めば読むほど、
「美しい村」と「風立ちぬ」の人工的な完成度、硬質な強さが際立ってきた。

この「強さ」は、いったい何なんだろう?

この疑問は、僕の思考の中心に位置した。

そして堀辰雄は、僕の人生の目印となり、大学と大学院でも、堀辰雄ばかりやった。
 
何かを解明した、とは思わない。
しかし、自分にとっての掘辰雄を深めることはできた。
それは、僕の人生に不可欠の作業だったと思う。

 堀辰雄は、萩原朔太郎の「青猫」に対して、次のように記している(本書P126)。

「わたしが人生の入り口で、このような詩集を知つて、それにあれほど夢中になつて自分を打ち込むことができたといふことは、随分いいことだったとおもふ」。

この「詩集」という言葉を「堀辰雄の作品」と置き換えれば、僕の思いそのものである。

 さて、本書は堀辰雄の妻である掘多恵子氏による、堀辰雄をめぐる諸人物の思い出、エピソードを綴ったもの。
穏やかな文章を通して、掘をめぐる人々の優しさを知ることができる良書である。
いい本だなあ、と思って掘辰雄の諸本を集めている本棚を探ったら、
もう1冊出てきた。
刊行当時は就職したて。堀辰雄から一旦距離を置こう、と思って、購入したが
大事にとっていたのだ。忘れてた。

あと、気になって調べて見たが、掘多恵子氏は平成22年4月に亡くなっていた。
いつか、堀辰雄という存在が僕にとってどんなに大事だったのか、
お知らせしたいと思っていたが、手遅れとなってしまった。残念である。


なお、長野県軽井沢町には、堀辰雄文学記念館がある。
http://www.town.karuizawa.nagano.jp/ctg/01613100/01613100.html
 
平成5年、僕は大学の卒業旅行にあわせて、追分を訪れた。
その時、偶然にも、の記念館のオープン当日に訪れることができた。゜
 何の情報もなかったのに、そんな日にめぐり合えたのは本当に幸せだった。
  こればかりは、堀辰雄を中心とした人生を送っていた僕に、
掘がちょっとご褒美として、手招きしてくれたのではないか、と思っている。

 いつかまた行きたいものだ。

チケット
 ↑第1号の入館券。

文庫
↑開館当日、持参した文庫にも日付印を押印してもらった。


 さて、ジブリの次回作は、「風立ちぬ」。
 堀辰雄の「風立ちぬ」と、零戦開発者の話をモチーフとしたものという。
 正直なところ、ちょっと戸惑っている。

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category: エッセイ

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ドングリの謎―拾って、食べて、考えた  

ドングリの謎―拾って、食べて、考えた
盛口 満
【良かった度】★★☆☆


ドングリの謎―拾って、食べて、考えたドングリの謎―拾って、食べて、考えた
(2001/08)
盛口 満

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 盛口氏の生き物をめぐる「調べ物記録」の一冊である。

 本書の主役はドングリ。ドングリという言葉はいったいどの植物の実をさすのか、ということから始まり、ボルネオのドングリ、沖縄のドングリに話は広がる。
 
ふだん良く目にし、秋が深まるとついつい子どもが拾うドングリだが、
そのハカマやタンニン含有の意味を考えたことはなかった。
 筆者の探求により、新しい知見を得ることができ、今後の探索も楽しくなるだろう。

ただこれまでのシリーズと比較すると、本書は植物であることから、
ややワクワク度が薄かった。
これは僕が、動物屋であるせいかもしれない。


【メモ】

P34
キナバル山:コナラの仲間11種、マテバシイの仲間34種、シイの仲間12種。
ドングリは、熱帯のほうが種類数が多い。

p44
貝原益軒「大和本草」
クヌギには4種ある。
1:大ナラ=クヌギ。
2:小ナラ=実はマテバシイに似ていてドングリという。
3:ナラガシワ
4:アベマキ

P60
ドングリのハカマ(殻斗)=枝が変化したもの

p72
ドングリに産卵するハイイロチョッキリ、コナラシギゾウムシ=ハカマの上から産卵する
→ドングリは堅い殻を持っているが、ハカマの下はまだ成長中なのでやわらかい。

p78
ドングリは種子の中に大量に水分を持っていて、乾燥すると発芽能力を失う。
ネズミ、リス、カケスなどは貯食のために埋めるので、乾燥しない。

p87
マテバシイ=日本固有種

p129
ボルネオの熱帯雨林:「一斉開花」現象がある。
主役はフタバガキの仲間。約5年に1度、一斉に開花し、果実を実らせる。
この引き金は、ある期間続く低温。

p152
ブナ科の植物は、1つの殻斗に複数の果実が入っているのが普通だった。

P156
クヌギのドングリを割っていると、1つのドングリの中に2つの種子が入っているものがあった。
=一種の先祖がえりでないか。


P166
タンニン:コナラ属のドングリだけ、特異的にタンニンを多く含む。
=一度にたくさん食べられないため。
マチバシイは、殻を厚くする、という方法をとった。

P198
タンニンは水溶性のため、渋抜きに木灰を加える必要は無い。

P199
トチのアクの成分:水に溶けないサポニンやアロインを含んでいる。
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