ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

今週のまとめ  

今週のまとめ


 本日も某所でチョウゲンボウに出会いました。今年は多いのでしょうか。
 野鳥に興味がない皆さんも、ぜひ上空や梢を注意し、野鳥の声に耳を傾けてください。
 日本は四季それぞれ、様々な野鳥が身近にいます。これを知らないのは本当にもったいない。
 
 さて今週は、体調不調で1日寝込み、また1日は祝日でした。
 私は通勤時が読書時間ですので、読書時間は激減です。よって3冊。

 ・「天皇陵」
 ・「ダブル・ジョーカー」
 ・「ナメクジの言い分」
 
 このうち「天皇陵」は、かなり合わない本でした。いい内容とテーマですが、どうも著者のスタンスが解せなかった。
 一方「ナメクジの言い分」は、思いがけないヒットです。嫌いな人はどうしようもないですが、生き物ずきで、ナメクジがこれまで眼中に無かった人は、ぜひお読み下さい。
 でもこうして読書メモをとって感じたのですが、僕はたぶん分類学が好きなんだな。
 
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今週のSong
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「She Believes In Love Again」The Beach Boys
http://www.youtube.com/watch?v=-ejRRbxLWk4
※リンク先はYOUTUBEです。

 The Beach Boysといえば、夏、海、サーフィンというイメージですが、それはデビュー時のイメージ。実際は極めて美しいメロディとハーモニーを備えたグループです。
 それを実感したのが、アルバム「The Beach Boys 」(1985)。国内では「ザ・ビーチ・ボーイズ '85」という名前です。
 このアルバムは海とかサーフィンとかの明るさはなく、商業的には失敗だったそうです。
 しかしハーモニーの美しさは随一。
 高校の頃、最初に聞いたビーチ・ボーイズがこのアルバム。男ばっかりのグループなのに、なんて洗練されて複雑で、かつ美しいハーモニーなんだろうと驚いた記憶があります。
 後からサーフィンU.S.Aとか聴いたので、海とかサーフィンとかいう先入観が無かったのは、本当に良かったと思います。
 お勧めの曲は、このアルバムの中でも僕が特に好きなもの。リリカルな一曲です。
 他に収録された曲も、美しい曲がたくさん。
 ビーチ・ボーイズはサーフィンだけの能天気なグループと思っている人、ぜひ聴いてみてください。

ザ・ビーチ・ボーイズ’85ザ・ビーチ・ボーイズ’85
(2008/06/11)
ビーチ・ボーイズ

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category: 雑記:今週のまとめ

thread: 日記 - janre: 日記

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ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)  

ナメクジの言い分

足立 則夫
【そうだったのか!度】★★★★

ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)
(2012/10/05)
足立 則夫

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 生き物好きとしては、全く知らない事実を知ることは大きな喜びである。

 これまで眼中になかったナメクジという生き物について、いったいどんな「事実」があるのか。軽い気持ちで手に取った本書だが、良い意味で期待を裏切られた。

 本書によると、日本には様々なナメクジがいるが、通常よく見られるのは通称フタスジナメクジ。
 ところが明治時代にはキイロナメクジという外来種が侵入。全国に広がりつつあったが、忽然として消滅。
 代わって侵入したのが、チャコウラナメクジ。これが米軍基地を足がかりに拡大中。
 ところが、このチャコウラも実は3種が混在しているらしい。
 詳細な分類は不明で、2種はまだ未記載。

 いや、たかがナメクジと思っていたが、ここにも外来種問題があったとは。

 移動速度が速い外来種が拡大すれば、遅い在来種を捕食していた在来の天敵種は対応できないだろう。ここがベースとなって、生態系が変化している、かもしれない。
 今後は地域の生態系を考えるうえでは、ナメクジの外来種問題も視野に入れる必要があるだろう。眼からウロコである。
 これから僕もナメクジを見る眼が変わるだろう。香川の分布について、自分自身の目で調べてみたいものである。


 なお、ナメクジなんて気にも留めていなかったが、本書の中に少し知った名前を見つけて嬉しかった。
 盛口満氏。「ゲッチョ先生」として著書多数である。ナメクジにまで手を出していたとは。
 相良直彦氏。モグラノセッチンタケとモグラ、ブナ類の樹木の共生関係を解明した人である。先日紹介した「モグラ博士のモグラの話」でも出ていた。この人もたぶん、いろんな生き物が知りたくてたまらないタイプなのではないだろうか。

 そして、香川県情報提供者 矢野重文氏。香川県の貝類研究では有名な方である。そうかナメクジも貝類だもんな。納得。ちなみのこの方は、僕が高校の頃、その学校で先生だったはずである。ニアミスしていた。今なら生き物の話でいろいろご教授いただきたいことは山ほどあるのだが、当時僕は生き物より文学であり、矢野先生に教えを乞う機会が無かった。残念である。


【目次】
1 晩秋のナメクジ
2 銀の筋は何なのだ
3 闇に包まれたライフスタイル
4 なぜ生き残ったのか
5 ナメクジに引かれた人たち
6 ナメクジに学ぶ


【メモ】
まえがき
「いみじうきたなきもの なめくぢ」枕草子、清少納言


p6
全国の大都市周辺の住宅街や農村部=和名「ナメクジ」が生息。
7、8cm。頭部に甲羅が無い。背中に筋があるので通称「フタスジナメクジ」。

○キイロナメクジ
地中海原産、明治時代に侵入。
7、8cm。頭部に甲羅があり。黄色。
「ヴヰナス」第17巻(1952)、黒田徳米
「一九二〇年より前に神戸にいたと伝え聞いた。これが東京や奈良へ。三六年には京都市内の知人の住宅厨房に出現。五二年には京都の自宅庭で発見。約五キロ攻略するのに一五年を費やしたことになる。」1年に約300m。
・キイロはフタスジより乾燥に強い。
ところが突如撤退する。
・1982年11月、香川県観音寺市大野原町の矢野重文氏の観察を最後に目撃されていない。
・なぜ絶滅したのかは不明。

○チャコウラナメクジ
イベリア半島原産。茶褐色。
5、6cm。頭部に甲羅あり。
南極・北極を除く全世界に進出。米軍基地から周辺に侵入。
乾燥に強い。

なぜキイロが絶滅し、チャコウラが増加したのかは謎。

P27
・近畿地方の海岸線はチャコウラの天下。
・京都市郊外の情報提供者
 相良直彦氏。モグラノセッチンタケとモグラ、ブナ類の樹木の共生関係を解明した人。

P29
・四国 チャコウラ、フタスジ。チャコウラが多い。
・丸亀市 鳥居耀蔵が幽閉されていた跡地でチャコウラ。
 「蛞蝓亦出で」(「鳥居甲斐 晩年日録」(1983、桜楓社))
 このころはフタスジだったはず。

P31
・沖縄/盛口満 「ゲッチョ先生のナメクジ探検記」
 与那国島 イボイボナメクジ(本州の山梨以南。2~3cm、肉食性)。


P33
・外国
 ヨーロピアンブラック、アカコウラなど。日本未侵入。山岳部に入ると、
在来のヤマナメクジが脅威にさらされる。

P42
・粘液 7機能
 カーペット機能、保湿機能、断熱機能、洗浄機能、護身機能、ナビ機能、ぶら下がり機能

P44
・移動速度(テーブル・ラップ上)
 フタスジ 3~7cm/分
 チャコウラ 8~20cm/分

P47
・ナメクジ駆除剤の成分「メタアルデヒド」
 体内でアセトアルデヒドに分解され、神経を麻痺させる。
 身体の小さいペットや野鳥が食べると痙攣を起こす可能性がある。

P63
・繁殖期 晩秋から春
  寒い季節、落ち葉を餌とすること。
  幼体が夏の高温に耐えにくいこと。
  天敵が少ない(不活発)こと

P65
・広東住血線虫 ナメクジに寄生
 沖縄県内11箇所での調査
 アシヒダナメクジ 21/281 (7.5%)
 チャコウラ    1/56 (1.8%)
 チャコウラ類似種 76/227(33.5%)
 フタスジ      0/5 (0%)
 ヤマ        0/1 (0%)

P83
・チャコウラは実は3種類いる
 狩野泰則(東京大学大学院理学系研究科准教授)

 Lehmannia valentiana
  背に二本の黒い筋がある
  ヨーロッパ・イベリア半島原産
  列島南部に多くが分布
 
 L sp.A
  背に黒くて細かい点が散らばる
  南ヨーロッパ原産か、現地でも認識されていない新種の可能性
  北海道~関東

 L sp.B
  背に模様がなく、明るい茶色
  イタリア・シチリア島原産のとよく似ている
  北海道~関東

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category: 軟体動物

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ダブル・ジョーカー (角川文庫)  

ダブル・ジョーカー
柳 広司
【楽しめ度】★★★☆

ダブル・ジョーカー (角川文庫)ダブル・ジョーカー (角川文庫)
(2012/06/22)
柳 広司

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 「ジョーカー・ゲーム」の続編。

 スタイルは前作と同じく、短編集である。ネタバレになるので詳細は書かない。
 出張まで残しておくつもりだったが、入手できたので読んでしまった。
 娯楽としての読書という意味で、十分に楽しめる一冊である。
 あと1冊、「パラダイス・ロスト」が残っている。亦楽しからずや。
 しかし来週には読んでしまいそうだ。

 短い感想で恐縮ですが、一級の娯楽小説です。
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category: 冒険小説

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天皇陵 (中公選書)  

天皇陵
矢澤 高太郎
【残念度】★★★☆

天皇陵 (中公選書)天皇陵 (中公選書)
(2012/10/09)
矢澤 高太郎

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 本書は、読売新聞で23年間古代史・考古学担当記者であったジャーナリストによるものである。

 裏表紙には、「天皇陵の謎を追い続けてきたジャーナリストが、被葬者を巡る最新の学説を紹介し、さらに発掘成果をセンセーショナルに報道するマスコミのあり方への違和感、日本の文化財保護行政に対する疑問などを率直に綴る」とある。
 嘘は書いていない。素直に受け取れば本書はジャーナリストによる学説紹介と冷静な現状批判となる。ただ、そのウェイトはかなり異なる。正直なところ、学説紹介のかたちをした自説開陳と、自己中心的な主張が強く感じられた。
 考古学的興味から手にとったが、新しい知見が得られる喜びよりも、著者の主張に辟易して何も頭に残らなかった。残念である。
 

まず本書の主な主張は、下記のとおりと把握した。
①実際の研究結果と比較すると、宮内庁による陵墓及び陵墓参考地の同定は誤りが多い。
 宮内庁は姿勢を改め、陵墓及び陵墓参考地の同定を見直せ。
②陵墓及び陵墓参考地として指定するエリアも中途半端であり、必要な保全がなされていない。
 墳丘頂上部だけ指定したり、陵墓の直近にラブホテルが建つなどという状況を改善せよ。
③研究者による調査と一般国民の立入りを許可せよ。

 しかしながら、本書の底辺に流れるのは○行政を批判することが正義というジャーナリズム、○自分こそが価値あるテーマに取り組み、正義と真実を貫く記者である自信、○それの裏返しとして、他分野の記者や他社を見下した批判である。

 なるほど、陵墓及び陵墓参考地指定の問題や、遺跡管理など宮内庁や所轄官庁の問題は確かにあるだろう。しかし、陵墓にラブホテルが隣接する現状に対して、「こんな風景を創造してしまったのも、過去の政治家と、行政の怠慢や意識の低さによるものだろう」と、官批判のみでまとめるのはあまりに単純である。周囲の市民の美意識や歴史意識、郷土を守る意思、ラブホテルを建設した民間人、そこを利用する者たちの「民間」にも問題があるのではないか。ジャーナリズムとは、官批判が目的ではないはずだ。
 特に、「われわれ国民の血税で維持される宮内庁のあるべき姿ではないだろうか」という記載は、「官を攻撃する新聞記者」として、あまりにステレオタイプな結論の持っていきかたである。

 また、民は善という感覚からか、筆者は研究者による調査と一般国民の立入りを許可せよ、と主張する。高松塚などで現代技術と行政制度の限界が露呈しているのにも関わらず、こうした主張をするのはあまりに無邪気だろう。宮内庁の陵墓及び陵墓参考地指定に問題があるにせよ、その結果多くの古墳がそのまま次世代に残されていくという状況にはメリットもある。
 

 他分野の記者や他社を見下した批判としては、次のような記述がある。
 「現代の文学なるもののレベルへの疑問、作家という人種と、それを取り巻く各出版社の編集者との付き合いがまったく肌に合わなかった。」
 「芥川賞・直木賞に代表されるごとく、作品の質、内容よりも話題作りに奔走する関係者と、それに疑問すら感じることなく提灯記事を垂れ流す各紙の文芸記者の集団には絶望的なものを感じていた。」
「私は朝日という新聞社はライバル紙という以前に、その主義、主張、社論、社風が大嫌いだが」
 フェアに行くと、最後の引用文はそれでも朝日の一事業については褒めている。
 しかしジャーナリストが、これほどまでに私的な感情を、他社から刊行される本に記載するものだろうか。公私混同というか、少なくとも天皇陵、というテーマで官行政を批判するのに、こうした私的主張は全く必要ない。

 繰り返すが、著者はジャーナリストとして本書を書いている。本書の目的がジャーナリズムとして行政を批判することにあるなら、陵墓及び陵墓参考地指定については考古学者の学説紹介で足りるはずであり、著者の見解は不要である。
 また長年の文化専門記者として陵墓及び陵墓参考地指定問題に自己の見解を述べるのなら、純粋な考古学的検討のみで良く、ステレオタイプな行政批判は不要である。
 いずれにしても、他紙・多分野を批判する必要性は全く無い。
 一読して感じたのは、著者はどういうスタンスで、どういう目的をもって一書にまとめたのかという疑問である。後半になるほど、過去に書いたものの修正収録があるためか、統一感のなさは加速する。
 結論として、純粋に考古学的興味を持つ人ほど、本書には手をださない方が無難と感じた。
 ただ、これは私の私的な感情である。人によってはすごく共感するかもしれない。 
 いずれにしても、考古学の本でありながら、好き嫌いが分かれる稀有な本だろう。
 
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category: 歴史

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今週のまとめ  

いきなり寒くなりました。
冬がどんどん近づいていて、先日は自宅近くでチョウゲンボウを見ました。
また、昨日はひどい雨でしたが、その中でこれも自宅近く、
ツグミが100+羽ほど電線に並んでいました。移動中だったのが降りていたのかもしれません。


今週は以下の5冊。
イワナの謎を追う」は再読です。非常にいい本ですので、復習しました。
メモをとらなければならない部分が多く残っています。
生き物の「調査好き」の人には特にお勧めです。

闇を裂く道

富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題

イワナの謎を追う

哄う合戦屋

BIRDER 2012年 12月


★さて、とりあえず「今週のまとめ」だけ、コメントを受け付ける設定にしました。
 何かありましたら、ぜひご意見をお聞かせ下さい。


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今週のSong
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「Music For A Found Harmonium」Penguin Cafe Orchestra

※YOUTUBEで視聴できます。


これも「フュージョン」「イージーリスニング」という括りで、
レコードが発売されていました。
柔らかなテーマーが何度も繰り返されるうちに、いつの間にか大きなうねりとなっています。
Penguin Cafe Orchestra (PCO)は、僕の大好きなグループのひとつ。
でもかなりマイナーです。日本にPCOのファンってどのくらいいるのかな。

僕が入手していたのは、ちょうどCDへの過渡期だったような気がします。
最初はレンタルレコード屋で知り、
後にCDを町のレコード屋に注文していました。かなりマイナーなので、
手に入るかどうかいつもどきどきしていた思い出があります。
リーダーのSimon Jeffes がなくなってしまい、新譜が聴けなくなってしまったのは悲しい限りです。

お勧めは次の1枚。僕もこの1枚からスタートしました。
高校生の頃、本を読む時にはいつもこれを流していました。

ブロードキャスティング・フロム・ホーム(紙ジャケット仕様)ブロードキャスティング・フロム・ホーム(紙ジャケット仕様)
(2008/09/26)
ペンギン・カフェ・オーケストラ

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category: 雑記:今週のまとめ

thread: 日記 - janre: 日記

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BIRDER (バーダー) 2012年 12月号 冬のワシタカ類ウォッチング  

BIRDER 2012年 12月
【資料度】★★☆☆

BIRDER (バーダー) 2012年 12月号 冬のワシタカ類ウォッチングBIRDER (バーダー) 2012年 12月号 冬のワシタカ類ウォッチング
(2012/11/16)
BIRDER編集部

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今月号の特集は、ワシタカ類である。
冬といえばワシタカ、というのは鳥屋的には定番である。
それだけに、BIRDER誌でも過去に何度も特集があり、なかなか切り口が難しい。
個人的には今号も、識別のためには写真が小さく、かといって生態面で新しい切り口が多いわけでもなく、やや不完全燃焼の一冊であった。

僕とてはそれよりも、カラフトワシである。
鳥見をはじめ、県外の鳥状況を知りだして耳にしたカラフトワシ。
だが当時はまだ学生で、とても鹿児島まで見に行けない。
いつか見に行きたい、でも行ける頃には渡来して無いだろうなあ-そう思っていた。

就職し、車を入手。そこで年末年始は念願の九州へ行くことにした。
別府から上陸し、福岡をまわり、熊本、出水へ。ある程度ツルを楽しんだあと、
最後に出会えたのがカラフトワシであった。
やっと会えた、間に合った、というのが実感だった。その頃はまだカラフトワシは若かった。

これを含め、結局1999前後の4回くらいの年末年始、九州へ行き、カラフトワシに挨拶した。

あれからもう10年以上になる。

いまだカラフトワシが渡来してくれていることに、驚きを感じる。

どれだけ多くの人が、この個体と出会い、長い人生(鳥生)のひと時を共有しただろうか。

野鳥には当然寿命があるが、長生きして今後も渡来してもらいたい。



【目次】
[FEATURE ARTICLES]
特集 冬のワシタカ類ウォッチング
・冬のタカ観察の魅力とは?  文・写真●若杉 稔
・冬のタカ、種別観察ガイド
- チュウヒ、ハイイロチュウヒ  文・写真●亀嶋一哉、平野敏明
- ノスリ、ケアシノスリ、オオノスリ  文・写真●大西敏一、中津 弘、千葉夕佳
- クマタカ  文・写真●井上剛彦
- イヌワシ  文・写真●先崎啓究
- オオワシ、オジロワシ  文・写真●先崎啓究、井上大介、白木彩子
- カンムリワシ  文・写真●本若博次

・冬のタカ 見どころ早見表  構成●BIRDER
・冬のタカ観察MAP  文・写真●中野泰敬
・鹿児島のカラフトワシの今昔  文・写真●所崎 聡
・知って得する!冬のワシタカ「雑学集」  文・写真●植田睦之、中村忠昌、東 淳樹
・特集別体 BIRDERオススメ! この冬のワシタカ観察会情報  構成●BIRDER

[ENJOY BIRDING]
・原寸大野鳥図鑑 #33[シメとイカル] 文・写真●叶内拓哉
・BIRDER Graphics[見る者を魅了するイヌワシの姿] 文・写真●村上良博
・Field Report #24[関東のタカの渡りの謎�] イラスト●水谷高英
・鳥の形態学ノート #33[カワウ胴体] 文・イラスト●川口 敏
・私のケッサク!“鳥”写真  写真●読者の皆さん 選評●叶内拓哉
・Bird Tracking #221[ツミ(雄成鳥)] イラスト●赤勘兵衛
・ぶらり・鳥見 散歩道[ヨシガモの個体バリエーション観察を楽しむ(静岡県大井川河口野鳥園)] 文・写真●♪鳥くん
・野鳥圖譜 #48[マヒワ] 画・文●佐野裕彦
・どこでもバードウォッチング #12[渓流(東京都奥多摩)] 文・写真・イラスト●神戸宇孝
・伝説の翼 #12[グリフォン] 画●長島 充 文●斉藤ヒロコ
・唐沢流・自然観察の愉しみ方 #60[犬吠埼の地質、海鳥、文学碑] 文・写真●唐沢孝一
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category: 野鳥

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哄う合戦屋 (双葉文庫)  

哄う合戦屋
北沢 秋
【楽しめ度】★★☆☆

哄う合戦屋 (双葉文庫)哄う合戦屋 (双葉文庫)
(2011/04/13)
北沢 秋

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戦に天才的な才能をもつ石堂一徹。しかしなぜかその才能は生かせず諸藩を流浪し、1人の供を引き連れるだけ。
それがある小豪族の娘とであった時から、大きく時代が動き始めた-。

場所は信州。時代は戦国時代の初期。まだ上杉謙信も武田信玄も拡大を始めた頃で、まさにその狭間の地で、石堂一徹は生きている。

本書を戦もの、として読むとちょっと物足りないだろう。
戦闘シーンが延々と続くわけではないし、三国志のように「なるほど!」という知略が続くわけではない。
本書は一方で、文武に天才的な才能を持ち、だが人間的には不器用なほど実直な石堂一徹と、朗らかな豪族の娘・若菜とのぎこちない愛の物語でもある。

それをふまえて読めば、良質のエンターテイメントである。

なお、本書には前史にあたる「奔る合戦屋」と、続編である「翔る合戦屋」が刊行されている。

「翔る合戦屋」は、いつか読みたいと思う。

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category: 小説

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イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)  

イワナの謎を追う
石城 謙吉
【知的冒険度】★★★★ 【殿堂入り】

イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)
(1984/07/20)
石城 謙吉

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 香川県に住んでいると、渓流という言葉はちょっとよそよそしく感じられるし、イワナは縁遠い魚である。
しかし他県では、渓流釣りも盛んだし、イワナももっと身近なようだ。この点はうらやましい限り。
 そのため、本書のタイトルを見てもあまりピンとこなかった。そもそもイワナじたいがよく分かっていないのだから、謎ってなんだ?という感じである。

 本書は北海道で、ふと釣りの際に見た二つの河川でのイワナの斑点の色の差から、それまで分類が混乱していたイワナについて、少なくともこれらは別種だ、と明確な解を示した研究過程を明らかにしている。

 章立ては著者の研究発展の流れをふまえている。例えば分布調査一つにしても、特定地域の平面的な分布から垂直的な分布、そこから北海道全域での分布調査と広がっていく。
 また稚魚の捕獲の苦労話からスタートし、2種の生育段階の違い、河川型と降海型の存在などに発展していく。
本書は分類学のケーススタディとして、知的冒険に満ちた一冊である。

 また研究過程で、河川の形態分類、生存競争、食いわけ、すみわけ、K・r淘汰など、様々な観点からの検討もあり、生態研究の基礎を学ぶこともできる。

【目次】
第1章 不思議な淡水魚
 幽谷の華/世界のイワナ/原野の雑魚/熱い論争
第2章 二つのイワナ
 根釧原野/赤い斑点と白い斑点/戸籍調べ/細分主義と統合主義/種とは何か
第3章 原野の王国
 二つの陣営/山の川と湿地の川/共存河川の分布関係/変異か、すみわけか
第4章 同じ川の中で
 稚魚はいずこ/それぞれの生い立ち/発育の過程/帰ってきた降海型/清流の純血主義
第5章 旅立つ者と残る者
 降海型と河川型/分かれ道/ゆきつ、戻りつ/幽谷の鞍馬天狗
第6章 食いわけとすみわけ
 円卓の騎士/ガウゼの仮説/形質の分化/干渉の手段
第7章 水槽の稚魚たち
 秩序ある社会/二つの制度/弱者の位置/種間競争の論理
第8章 壮大なドラマ
 北海道における分布/上下の拮抗/道南の落人部落/壇の浦の戦い/古き者、新しき者
あとがき


【メモ】
※本書にはかなり有益な記述が多い。下記はごく一部。

p15
・イワナはサケ科の中でも特に冷水性が強いため、分布は北方域に偏る。また同じ水系では最も上流を好む。
・イワナ属は多様な形態の変異を持ち、分類に役立つ客観的な形質的差異がなかなか見つからないため、魚類の中でも特に分類が混乱している。

p16
・イワナ属は大きく三つ。
 カワマス(1種)、レイクトラウト(1種)、それ以外のアルプスイワナ群。

p30-
・筆者は北海道の忠類川では斑点が赤いイワナ、当幌川では斑点が白いイワナを得た。
これらの分類はかっても議論された。
著者の研究:
・両者は生息域、繁殖形態に明確な差異があり、赤点型はオショロコマSalvelinus malma、白点型はアメマスS.leucomaenisとなる。
オショロコマは河川型のみ。アメマスは降海型もある。
ある個体が河川型か降海型かになるのは水温も影響。オショロコマはより冷水温に適応。そのため低水温の同環境化では、アメマスは成熟が進まず河川型が生じにくい(降海型が増える)が、オショロコマは河川型が増える。オショロコマはより北方種。
北海道はアメマスとオショロコマが生存競争を行なっている場所。水温の高い北海道の西南部ではアメマスが主。中央部では標高が高い場所にのみオショロコマ。
特別なのが知床半島付近。冷涼な気候、河川が急で河口付近まで山岳渓流の形態であることなどから、オショロコマが優位。→北海道での最後の砦。
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category: 魚類

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富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)  

富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題
野口 健
【前向きに何かやりたくなる度】★★★★

富士山を汚すのは誰か    ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)
(2008/05/10)
野口 健

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「①こういう課題がある。②改善策としてはこれこれがある。③だから僕はこうする。」
おそらくこれが野口氏の行動サイクルと思う。
野口氏にあるのは明確な問題意識であり、それを解決するにはどうすべきかというビジョン、そして行動力である。

過去の過ちを明らかにすることがあっても、それを非難することが目的ではない。

しかし多くの人は、「③だから僕はこうする。」だけを見て、野口氏の「勝手な」行動を憂う。
「出る杭は打たれる」という言葉で表される精神。しかしそれは、何も生み出さない。

また一部の人は、「①こういう課題がある。」と野口氏が示すことを、「問題をほじくりかえして」と思う。これもまた、何も生み出さない。

こうした見方が、かなり野口氏を誤解する風潮を生んでいるのではないだろうか。


野口氏の行動は、確かに「目的は手段を正当化する」というような、ちょっと賭け的なものもある。
しかしそれくらい荒療治でなければ、日本の大多数は動かないのも事実。

本書は、野口氏の問題意識、それへの取り組み方、清掃登山の経緯を詳しく知ることができる一冊である。
また「行動するとはどういうことか」を教えてくれるケーススタディとしても有益であり、
何らかの問題意識を抱えている人にはぜひ読んでいただきたい。
もしかしたら、自分なりの行動を始めるきっかけになるかもしれない。


【メモ】
p31
「過去にごみを捨ててきたことを、あれこれ詮索して責めようなどというつもりはない。ただ、それを知っているならば、気がついた時点で反省し、悔い改める努力をすればいいじゃないかと思った。いまからなんとかすることを考えるべきではないのか。」
→野口氏の考え方のスタンスを端的に表している。

p52
登山スタイル:
・極地法:
 ベースキャンプと上層部のキャンプを何度も往復し、ルート工作をしたり、必要な物資や食料を荷上 げする。成功率が高い。
・アルパイン・スタイル:
 少人数で、様々なものに頼らずにアタックをかける。
 日本は80年代以降、極地法でエベレストに挑んだ。大人数大規模なので、ゴミもよくでる。
 欧米隊はアルパイン・スタイル。ゴミが少ない。
 当時のゴミ意識もあるが、スタイルの違いでゴミの出る量も大きく差があった。
 現在は日本もアルパイン・スタイルが多く、ゴミが少なくなっている。一方、現在韓国隊が大規模隊で登頂している。
 なぜ大規模隊か? → その時点の当該国が、「登頂しないとならない」というプレッシャーがある。成功率の高い極地法を選択。

→山でのゴミの出し方に、登山スタイルが大きく影響していることを実感。

p84
「富士山の山頂は県境が明確になっていない。富士山は、行政区分がなされるはるか以前から山小屋の利権やら何やら綿々と続いてきたところだけに、簡単には線引きできないのだ。」


p88
「何かを伝えたい、変えたいというのに、人に共感されないやり方をやっても意味がない。伝え、広めるためにはどうしたらいいか、表現の仕方は重要だ。」
→自分の活動を振り返って、反省。

p163
「日本人がレジャーとして求めているのは、たぶん自然と触れ合うことではなくて、観光スポットなのだ。」
→強く納得。

p166-167
スウェーデンには、世界で唯一「自然享受権」という権利があるそうだ。
「なぜスウェーデンでは自然享受権が認められているか。
 環境教育を徹底させている強みがあるからだ。四歳ごろから環境教育を始めているという。だから、自然とか環境に対してどう接したらいいかをみんながしっかりと理解している。モラルを逸脱した行為をしないという大前提ができている。自分の責任の範囲内で自由にどうぞと言っても、その自然環境を傷つけるとか、過剰に採ってしまうことがない、そういう発想が国民に根付いているという自信が可能にするのである。」
→日本では自然が身近すぎるのではないか。客観的に自然と相対することはできない。

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category: 環境

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闇を裂く道 (文春文庫)  

闇を裂く道
吉村昭
【良かった度】★★☆☆


闇を裂く道 (文春文庫)闇を裂く道 (文春文庫)
(1990/07)
吉村 昭

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久しぶりに吉村昭を読む。
生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見」で知った一冊である。

 大正10年に大規模な落盤・生き埋め事故があった「丹那トンネル」。その開通にいたるまでのドラマである。落盤・生き埋め事故が本書の全てかと思っていたら、そうでもなかった。

生き埋め事故は難工事のいわば端緒であり、大量の湧水、度重なる落盤事故、地震、トンネル上部の地域の渇水など、トラブル続出である。よくぞこの工事をなしとげたな、というくらいで、おそらく現代でこれほどトラブルが続出すれば、技術的には可能とはいえ中止に追い込まれるのではないだろうか。


現在当たり前のものとして享受している生活基盤が、こうした苦難のうえに成立したことは、やはり知っておくべきだろう。

ところで本書を読んで感じたのは、吉村昭氏の職人芸のような精緻かつ密度の濃い文章である。

僕も薄っぺらい文章を書くので言えた義理ではないが、吉村氏の文書と比較すると、最近の文章が平易だなあ、ということを痛感した。

様々な歴史について、吉村氏の文章と眼差しによる諸作品が残されているということは、幸福である。
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category: 歴史

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今週のまとめ  

寒くなってきました。本日は雨です。
もう11月中旬に突入してしまいました。今週の初めには、自宅近くで冬鳥のアオジを見たところ。
野鳥の世界も冬模様です。

池にはカモも渡来してますし、例年通りツグミ類も来てくれれば、賑やかな冬になるのですが。
野鳥を見ていると、同じ冬がない、ということを痛感します。

今年もあと2ヶ月弱。少しでも良く過ごしたいものです。

さて、今週は以下の4冊でした。

・モグラ博士のモグラの話
http://birdbookreading.blog.fc2.com/blog-entry-44.html

・サイエンス・サイトーク ウソの科学騙しの技術―科学の最前線に鋭く迫る
http://birdbookreading.blog.fc2.com/blog-entry-43.html

・日本恐竜探検隊
http://birdbookreading.blog.fc2.com/blog-entry-42.html

・人類vs感染症
http://birdbookreading.blog.fc2.com/blog-entry-41.html

中でもお勧めは、「モグラ博士」です。読み物としても面白いですし、新しい世界を知ることができるでしょう。

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今週のSong
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「Our House」 Crosby Stills Nash & Young
※YOUTUBEで視聴できます。

60年代後半から70年代前半のアメリカン・ロックが好きです。ウッドストック前後ですね。
The Doors や SLY & Family Stone、Janisなどハードなのも多いですが、
スローな名曲もたくさんあります。

ハーモニーが俊逸なのは、スティヴン・スティルス、デヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュのCrosby,Stills & Nash に、ニール・ヤングを加えた CSN&Y。

中でもこの「Our House」は、小さな、つつましい生活の幸せを、繊細なハーモニーで描きます。

Life used to be so hard.Now everything is easy 'Cause of you.
人生はとっても大変だったけれど、今は君のおかけでうまくいってるよ・・・

時々、しみじみと聴いています。


Deja VuDeja Vu
(1994/09/27)
Crosby Stills Nash & Young

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category: 雑記:今週のまとめ

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モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)  

モグラ博士のモグラの話
川田 伸一郎
【良かった度】★★★☆

モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)
(2009/08/20)
川田 伸一郎

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 これもジュニア新書恐るべし、である。
 著者は国立科学博物館の研究員。モグラとはいかなる生き物であり、研究はどこまで進んでいるか、ということを始め、日本のモグラの分類について整理する。また中には著者がいかにしてモグラ研究者となったかの話もあり、読み物としても面白い。中学生頃にこれを読むと、かなれり影響されそうだ。

 さて、モグラである。僕もそれほど出会ったことはない。記憶を手繰ってみると、小学生の頃に死体を発見したことを初めとして、10回も出会っていない。しかし今年、我が家の庭にモグラが侵入し、モグラ道が形成された。それを考えると身近にいる動物である。

 ナガエノスギタケ(モグラノセッチンタケ)は、生き物の世界がどのように入り組んだ関係をもっているかを示す例。
 また分類では、形態、染色体、DNAのそれぞれの手法で、異なる分類の結論が出るとのこと。これはこの前の日本鳥類学会誌にもあったが、分岐途中の複数種について、どのような段階を「種」とするかという問題に関係するのだろう。

 なお著者は、広島県で開催されたモグラサミットが、研究者になったきっかけの一つと語る。

 実はBIRDER誌で「鳥の形態学ノート」を連載している川口敏氏は元々モグラ屋であり、川口氏もこのモグラサミットに参加していたはずだ。リアルタイムでこのサミットの話を聞いていたので、ちょっと親近感が沸いた。


【目次】
 Ⅰ モグラ博士のモグラ紹介 -生態学的モグラ入門-
 Ⅱ 僕がモグラにハマるまで -研究者への道- 
 Ⅲ 世界のモグラを探しに -フィールドワーク入門-
 Ⅳ モグラの体を調べつくせ! -分類学入門① 形態分析-
 Ⅴ モグラの来た道 -分類学入門② 染色体・DNA分析-
 おわりに
 【付録】世界のモグラ種名一覧


【メモ】
P13
・動物の毛は、後ろに向かって斜めに生える。=「毛流」
 モグラは体にほぼ垂直に生える。これによってスムーズに前後に動ける。
P14
・モグラの鼻先=「アイマー器官」 微弱な電流を感知する
P17
・モグラは北海道にはいない。理由は不明。
P18
・アズマモグラ 関東以北 約17cm
・コウベモグラ 中部以西 約20cm
・サドモグラ  佐渡島のみ
・エチゴモグラ 新潟 サドモグラに近縁
・センカクモグラ 尖閣諸島の魚釣島のみ。1匹のみ採取

身体の大きいコウベがアズマを追いやっている状況。

P30
・モグラの巣について調べた研究者 相良直彦氏=キノコの専門家
 ナガエノスギタケ=モグラの巣に近い地下数十cmの糞場から、「長い柄」を伸ばして生える。
 このキノコは、モグラの糞とブナ科の樹木が両方揃ったときに初めて菌糸を伸ばす。
 モグラの糞に含まれるアンモニア成分を分解。 
 相良氏は「モグラノセッチンタケ」と呼んでいる。

P36
モグラは人工飼育下での繁殖事例はない。

P37
モグラは1度に3~6匹産む。子どもが成長すると、母親は追い出す。この時期が分散期で、子モグラは地上に出て新しいすみかを探し回る。この時期が唯一地上でモグラを見る時期。

P40
できたばかりのモグラ塚は凸凹。

P48
モグラは、科に属する全ての種で、一度も飼育下での繁殖に成功したことがない珍しいグループ。

P78
筆者がモグラ屋になったキッカケのひとつ。
1997年の広島県比和町(現・庄原市)の町立自然科学博物館(現・庄原市立比和自然科学博物館)で開催された「モグラサミット」。この町の自然史研究家の湯川仁氏が収集した国内外のモグラの標本がある。

P142
・1960年頃までは、現在の四種の日本のモグラは同種と考えられていた。

P153
・モグラで非常に重要なのは、歯の数。モグラ科で一番多いのは44本、ヨーロッパのモグラ。
 日本のモグラはほとんどが42本。

P155
・歯の磨耗により齢査定。乳歯が生えた後、独立して行動するようになるまでに永久歯。その後は生え変わらない。だいたい4段階で、モグラの寿命は3~4年程度。ただし別の方法で齢を調べた研究者は、1個体だけ5歳のものを見つけている。

P162
・哺乳類なので、モグラも耳小骨は3つ(アブミ骨、キヌタ骨、ツチ骨)。
 ただし耳小骨の形は、どんな、どのくらいの音を利用しているかによって変わる。
 例えば日本のモグラと中国のモグラでは大きく異なる。この中国のモグラ(ニオイモグラ)は、砂漠に棲む。もしかしたら昆虫を採餌しているのではないか。

P166-
台湾のモグラ=台湾北西部の平野にいるタカサゴモグラだけでなく、山地から南東部に「ヤマジモグラ」がいる。ヤマジモグラの記載は筆者。

1985-1945頃、鹿野忠雄と岸田久吉が台湾の自然誌を研究。
鹿野が採取し、日本の岸田が台湾の高地で捕獲したモグラを見て、タカサゴモグラとは違うと気付き、「ヤマジモグラ」(「ヤマジヒメモグラ」というのものある)と書いているが、記載はしていない。
そこで筆者は、Mogera kanoana と記載。kanoanaは鹿野への献名。和名は岸田を尊重した。

P172
分類には、形態学的な手法のほか、筆者は染色体、DNA方法を採用している。
種によっては全部結果が異なる場合もある。
アカネズミ:
 形態では、日本列島アカネズミと三宅島のアカネズミ。
 染色体では、中部地方より東が48本、西が46本の2グループ。
 DNAは、検査部位にもよるが、さらに異なるデータ

P184
日本のモグラ
単腕性の染色体を八組持つコウベモグラ 最も古い
 →両腕性への変異が進み、
単腕性の染色体を七組持つアズマモグラとエチゴモグラ、
さらに単腕性の染色体を四組しか持たないサドモグラに分岐した、か。


P185
モグラは、北半球にしかいない。
北半球でも、温帯にしか分布していない。最も南方なのはマレーシア。熱帯だが、このモグラが生息しているのは1,000mを超える山で、比較的温暖で降水量も多い。

なぜ熱帯にいないか?
 熱帯は常緑のため、落ち葉が少ない。あってもすぐに分解され、土として堆積しない。そのため土壌が非常に硬い。

P202
センカクモグラ
比較的標高が高い山があって、湿潤であるため。しかしヤギによる植生破壊により、危機的状況にある。


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category: 哺乳類

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サイエンス・サイトーク ウソの科学騙しの技術―科学の最前線に鋭く迫る (新潮OH!文庫)  

サイエンス・サイトーク ウソの科学騙しの技術―科学の最前線に鋭く迫る
日垣 隆、千石 正一 他
【良かった度】★★☆☆

サイエンス・サイトーク ウソの科学騙しの技術―科学の最前線に鋭く迫る (新潮OH!文庫)サイエンス・サイトーク ウソの科学騙しの技術―科学の最前線に鋭く迫る (新潮OH!文庫)
(2000/12)
日垣 隆、千石 正一 他

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 本書は、「サイエンス・サイトーク」というタイトルでラジオで放送した対談内容に、放送ではカットした部分も加筆修正して文庫化したもの。内容は四章からなる。

第一講は特定のジャンルというより、科学は仮説の積み重ねに過ぎない、というテーマの対談。
第二講は、犯罪者の精神鑑定もしている中谷氏の知見を踏まえたものであり、具体的な事例も提示されており興味深い。
第三講は、今は亡き千石氏によるもの。動物の擬態を中心に、「騙す」という行為を語る。
第四講は予言、占い、ギャンブルを通じて、それらに「騙される」ことを語る。

 ラジオトークの文庫化ではあるものの、結構細かい点まで話されていて興味深い。
 本題とはずれるが、人間がよけいなエネルギーを浪費して、無駄な採取を行なうことについて、千石氏が「過剰な部分を貨幣に置き換えることができる」という指摘をしていた点に納得。
 なるほど、貨幣という抽象的価値に獲物を一時的に置き換え、それによって過去のエネルギー投資と現在のエネルギー投資が連結される。これには高度な言語活動と共通理解が必要であり、人間がいかに特殊な生物かと感じた。


第一講 科学はただの仮説である / 山梨大学・池田清彦
第二講 記憶は嘘をつく / 筑波大学・中谷陽二
第三講 これが動物の情報戦略だ / 自然環境研究センター・千石正一
第四講 信じる者は足すくわれる? / 信州大学・守一雄  


【メモ】
P52-53 池田氏
「転向した人というのは、転向しない人に比べて狂信的になるんだよね。」
「信じるということは、一種の快感だと思いますよ。」
「だから、相対性や自己懐疑っていうのを常に担保しておくことがとても大事になってくる。AからBに転向した後でも、いつかまたCになるかもしれないっていうことを、どっか頭のなかに留保しておく。さしあたって私はこれが正しいと思っているけれども、何か別のことが起きたときに自分の考えをいつでも変える準備がある、という姿勢があるかないか。これは科学者としての、仁義の問題だよね。」

P163-164 千石氏
「他の生き物だったら、自分が食べる以上には絶対捕まえたりしません。無駄ですからね。採取するためには自分のエネルギーを使って損するわけですから。ところが人というのは、過剰な部分を貨幣に置き換えることができるので、むやみやたらに捕ったり殺したりしても、それを蓄積できるんですね。その蓄積できるところが人間の場合、文明というものにつながっていったわけです。」

P174 日垣氏
「仮にですよ、もし仮にそういうアクシデントが本当に起こってしまったら、ああ、あの予言は当たっていたんだなあということになる。でも、死ぬまでそれが起きなくても、死の前日まではその可能性は残されているわけだから、この予言は絶対に外れない。」
「当たったときだけ、強く想起される、というのがまあ一般的な占いの実態だといえます。」



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category: その他

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日本恐竜探検隊 (岩波ジュニア新書)  

日本恐竜探検隊
真鍋 真、小林 快次 他
【日本産恐竜に関するマニアック度】★★★★

日本恐竜探検隊 (岩波ジュニア新書)日本恐竜探検隊 (岩波ジュニア新書)
(2004/11/19)
真鍋 真、小林 快次 他

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 岩波ジュニア新書は、あなどれない。
 ということで、続いて岩波ジュニア新書から、「日本恐竜探検隊」である。

 「日本恐竜探検隊」というタイトル、そして表紙もいかにもジュニア向けである。
 しかし騙されてはいけない。

 前書きでは、恐竜を発掘する者、化石のクリーニング者、化石の研究者、隣接分野の研究者、地層の研究者などなど、様々な人が集まって研究するので、「探検隊」と呼ぶのがふさわしい気がする、と軽く書いている。

 では本書は、そういう人のそれぞれの活動紹介かというと、そうではない。

 本書は、日本国内各地の恐竜の研究者、それもアマチュアではなく、実際に国際学会や国際学会史で発表している研究者が、自己の専門の対象種(しかも日本で発掘された種)について解説するという、かなりマニアックな書である。
 各章は、日本の代表的な恐竜発掘地別に、そこで研究の中心となっている個体の発掘・研究経緯と、実際に他種との比較研究をした成果などが細かく述べられている。巻末に「本書でとくに解説した論文一覧」が掲載されているが、個々の研究論文をふまえた概説という感じである。

 これ、高校生でも難儀するんじゃないか。
 岩波新書として、「日本の恐竜」というタイトルで刊行されていても不思議ではない一冊である。


【目次】
本書は各章ごとの執筆者が異なる。参考までに記載しておく。

はじめに (真鍋真)
地質年代表
恐竜の骨の名称

1 恐竜とは何だろう (小林快次)
2 サハリンのニッポノサウルス (鈴木大輔)
3 夕張の鎧竜 (早川浩司)
4 神流のスピノサウルス類 (真鍋真)
5 手取層群の恐竜たち (真鍋真)
6 勝山のフクイサウルス (小林快次)
7 鳥羽のティタノサウルス類 (冨田幸光)
8 御船層群の恐竜たち (池上直樹)
9 日本の恐竜研究はいま (小林快次)
編者紹介・執筆者紹介
本書でとくに解説した論文一覧
 


【メモ】
p5 分岐学では、「生物のグループ(分類群)は、ある祖先とその子孫を全てふくんだもの」とされ、

これを単系統群と呼ぶ。鳥類や哺乳類は単系統群である。一方、両生類や爬虫類は、そこから進化し

た哺乳類や鳥類を含まない。よって単系統群ではない。これらのように、「ある祖先とその子孫を全

てふくん」でいないものは、多系統群または側系統群と呼ばれる。

p14
 近年最も注目されているのは
 竜盤類-留脚類
    -獣脚類-ケラトサウルス類
        -カルノサウルス類
        -コエルノサウルス類 のうち、コエルノサウルス類である。
 コエルノサウルス類には、下記が含まれる。
 ・ティラノサウルス類
 ・オルニトミムス類
 ・コンプソグナトゥス科
 ・アルバレッツサウルス科
 ・テリジノサウルス類
 ・オヴィラプトル類
 ・トロオドン科
 ・ドロマエオサウルス科
 ・鳥類
 
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category: 恐竜

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人類vs感染症 (岩波ジュニア新書)  

人類vs感染症
岡田 晴恵
【良かった度】★★☆☆

人類vs感染症 (岩波ジュニア新書)人類vs感染症 (岩波ジュニア新書)
(2004/12/21)
岡田 晴恵

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 岩波ジュニア新書は、あなどれない。
 図書館でタイトルを眺めただけでも、かなり多岐にわたり、かつ深いテーマが多いことに気づく。
 ぱらぱらめくって見ても、とても子ども向けとは思えない内容である。

 本書は、ジュニア新書でこんなブラックかつリアルな話を書いてよいのか、というほど。ハンセン病、天然痘、ペスト、エイズ、風疹・麻疹、新型インフルエンザについて、それぞれの発生の歴史、天然痘などは根絶の歴史を細かく述べる。新型インフルについては、どのように変異が発生するかを詳細に説明。他の新書で感染症関係の本を読んでいるが、それらと遜色の無い内容である。
 むしろ、ペストが流行していたときのヨーロッパの状況など、類書には無い説明も多い。

 当時も劣悪な環境に隔離されていたハンセン病患者は、激烈かつ持続するペストによって多くが死亡。それによってハンセン病はより珍しい病気となり、さらに差別が増加した、という歴史があったことは知らなかった。
 また妊婦が、妊娠四ヶ月までに風疹にかかると先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれる危険性は約20%とされているとのことだが、1965年の沖縄で、世界にも稀にみる先天性風疹症候群の大発生があり、この事態に気付き、対策を立てた植田浩司医師の話も始めて知るものだった。


【目次】
序章 エリザベートとハンセン病
第一章 神の仕業から病原体発見へ
第二章 天然痘根絶への道
第三章 ペストの歴史から学ぶ
第四章 身近に迫るエイズ
第五章 風疹と麻疹
第六章 新型インフルエンザの脅威に備える
終章 いのちのあたたかさ-あとがきにかえて
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category: 感染症

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ハチはなぜ大量死したのか  

ハチはなぜ大量死したのか
ローワン・ジェイコブセン
【こんな状況は知らなかった度】★★★☆



 2006年秋から2007年にかけて、北半球で養蜂されているセイヨウミツバチの約4分の1が消失した。
 巣には死体も残っておらず、死んだかどうかもわからない。いえることは、「突然いなくなった」ということだけ。
 蜂群崩壊症候群Colony Collapse Disorder=CCDといわれるこの現象は、当時大きくニュースで取り上げられていた記憶がある。
 その現象を追いながら、現代の養蜂ビジネスと果樹栽培ビジネスが抱える問題を明確にしたのが本書。

 アメリカでは既に蜂蜜栽培のための養蜂はビジネスベースには乗らなくなっている。代わりに盛んになっているのが受粉媒介ビジネスだ。大規模・単一栽培を行なうことで、果樹園の周囲の受粉昆虫は消滅。そこで受粉時期には、養蜂されたセイヨウミツバチを大量に導入することになった。
 CCDによるセイヨウミツバチの消滅は、この受粉ビジネスの担い手が消滅したということだ。それはリンゴやアーモンドなど、虫媒果樹が受粉できなくなることであり、果実がとれなくなることである。世界の食糧事情が一変する危険性があるのだ。

 CCDそのものの原因は、不明だという。ネオニコチノイドやイミダクロプリドなどの殺虫剤説や、遺伝子組み換えしたトウモロコシの花粉を餌にしているためという説など、様々な説がある。しかしどれもその可能性はあるがそれが全てではない、という。農薬の複合汚染、複数世代にわたって蓄積された問題など、色々の要因がからみあっているようだ。

 また筆者は、同時に現在の養蜂用の巣板で作られる巣房は直径5.4mmだが、このサイズで規格化されたミツバチはダニに対する行動が妨げられることも伝えている。4.9mmの小型巣房ならダニを攻撃できる。しかも自然の巣は、5.4mmも4.9mmも、様々なサイズが混在している。これによって、自然状態ならばダニに対して適切な対応がとれていたという。人間が養蜂を行なう歴史の中で、最も子効率が良い5.4mmに統一したことが、潜在的なダニ耐性の低下を導いていたのだ。
 人間は様々なサイズの巣房を作るハチを不器用と思っていたが、そこのも理由があった。
 
 CCDがそうだ、というつもりはないが、人間が「分かったつもり」で効率化を進めることが、潜在的なリスクを増加させていることが多いようだ。そして現在、それらの蓄積されたリスクが複数相まって、様々なかたちで爆発している。
 
  
 本書はCCDを題材にしているが、実際は現在の効率性・経済性を追求した世界が、どんなに危ういバランスの上にたっているかを明らかにする重要な一冊である。

 今のところ日本ではCCDの爆発的な蔓延はないようだが、本書を読み、その日が来ないよう、小さなところからでも意識を変化させていきたいものだ。
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category: 昆虫

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今週のまとめ  

今日、自宅近くでジョウビタキを見ました。ちょっと遠かったので雄雌は不明ですが、もう冬ですね。近くの池ではハシビロガモが泳いでいます。
 これまた遅いですが、本日ほったらかしにしていたサツマイモとラッカセイを掘り上げました。
 
 さて、今週は何と言っても 「永遠の0」。これに尽きます。
 フィクションを読んで、「読んで良かった」と感じることはなかなかありません。
 久しぶりの体験でした。

 「生物進化を考える」は、かなり手ごわい本です。またじっくり再読したいと思います。
 
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今週のSong
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「Blue Ballet」 Joe Sample

http://www.youtube.com/watch?v=tpfcWIqjLPs
※リンク先はYOUTUBEです。

かつて、「フュージョン」といわれたジャンルになります。
LPレコードで持っています。
この曲は、リリカルなジョー・サンプルの曲のうちでも、
僕としては屈指の名曲。

青い大空を舞う鳥の姿-ブルー・バレエ。

じっくり1曲を聞く間、目を閉じると、広大な空に舞う鳥の姿が眼に浮かびます。

もし生涯であと1曲しか聴けない、というとき、僕はこの曲を選ぶような気がします。
それほど、色々なイメージを広げてくれる一曲です。

ザ・ハンターザ・ハンター
(2005/10/12)
ジョー・サンプル

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category: 雑記:今週のまとめ

thread: 日記 - janre: 日記

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永遠の0 (講談社文庫)  

永遠の0
百田 尚樹
【良かった度】★★★★ 【殿堂入り】




 ノンフィクションは、どんなにダメ本でも、反面教師としての価値を持つ。
 フィクションのダメ本は、時間の無駄でしかない。

 しかし時に、1冊のフィクションが、心の「どこか」を打つことがある。それは知識にはならない。しかし、確実に「経験」となり、自分の中に留まる。
 
 (自分にとっての)フィクションの傑作は、そうそうあるものではない。
 ハズレの方が圧倒的に多い。だからついついノンフィクションに手が伸びてしまう。
 しかし本書のような1冊に巡りあえれば、やはりフィクションの力を信じざるを得ない。

 
 さて、本書である。

 終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べることになる。
 祖父は、終戦直前、特攻によって命を落とした零戦パイロット、宮部久蔵。
 単なる一兵士。
 しかし祖父の戦友を訪ね歩くうち、祖父は「必ず生きて帰る。」と言い続け、天才パイロットとして生き残る力も持っていたことを知る。
 では、なぜ死んだのか。
 
 ネタバレは大嫌いなので、これ以上は書かない。


 ただ、「読もうかな」と思っている方は、ぜひ今のうちに読んでほしい。

 来年映画化される。そうすると、自然とネタが耳に入る。
 この本は、それまでに、自分で体験するほうがいい。そして自分で傑作か駄作か、自分の本棚に残すか否かを決定してほしい。
 いずれにしても、ニュートラルで読める期間は、残りわずかだ。

 また、文庫本を買った方、解説からは読んではけない。
 かなり途中までストーリーを明らかにしている。この点、残念な解説である。

 なお、Amazonのレビューでは難点をあげているものもあるようだが、フィクションの価値は様々だ。プロット、描写、視点。1冊のフィクションも、ある面で傑作であり、駄作である。
 本書は、この題材を、このようなプロットにまとめあげた点において、確実に傑作である。
 その他の不満があったとしても、それは本書の価値を落とすものではない。
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category: 小説

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日本鳥学会誌 第61巻 第2号(2012年10月22日発行)   

日本鳥学会誌 第61巻 第2号

image1 [2]



進化づいているのか、今号は種分化と種分類であり、自分としてもタイムリーな内容だった。まあ日本鳥類目録改訂第7版が刊行されたし、その分類変更の考え方について整理するという視点もあると思われる。

目次は下記に記載。なお鳥学会誌のHPにもある。
http://ornithology.jp/cgi-bin/osj/jjo/content.cgi?vol=61&no=2

今号でのメモ。

・DNA バーコーディングと日本の鳥の種分類
 様々な「種」という概念について整理。現時点の鳥類学において、分類が課題となっている種を視野に入れつつ、具体的に解説。様々な「種」概念が、種分化の各段階を捉えているということ、また系統群と系譜の違い等について解説。「種」概念の基礎知識としてかなりまとまった知識が得られる。

・鳥類における種間交雑と遺伝子浸透
 種間交雑や遺伝子浸透があった場合、これを考慮しないまま系統推定を行なうと誤った結論に至る可能性がある、という指摘。

・危急種アホウドリPhoebastria albatrus は2種からなる!?
 ちょっと前に新聞か何かでも報道されていたような気がする。ミトコンドリアDNAでの差異、形態上の差異、尖閣諸島で生まれた個体と鳥島で生まれた個体の番形成において、交尾前隔離が不完全ながらも生じていることなどから、実は異なる2種がある?、という指摘。
 分子生物学が進むことによってこうした指摘が可能となるが、こうした「ある面での」種分化は、特定の「種」概念上において「2種」とカウント可能となる。上記「種分類」を読んだあとでは、ここでいう「2種」を「種」として考えるべきか、という点も課題となるのではないか。


・熊本県熊本市におけるオニカッコウEudynamys scolopaceus の落鳥記録
・鳥取県鳥取市で確認された亜種リュウキュウアカショウビンHalcyon coromanda bangsiの記録

 かなり南方種が北上しつつある印象。今後、特に西日本では沖縄以南の亜種識別も留意しておきたい。


・沖縄県国頭郡金武町におけるヨーロッパムナグロPluvialis apricaria の日本初記録
 こういう種は、「見れども見えず」ということが多いような気がする。本稿によって識別点が整理されたこと(まあ一部の図鑑では記載されているが)、そして「日本に来ている」と確認されたことによって、おそらく今後日本各地で、本種をチェックし、発見する事例が続くような気がする。




【目次】
特集:鳥の種分化と種分類
総説
・DNA バーコーディングと日本の鳥の種分類   西海 功
・鳥類における種間交雑と遺伝子浸透   長谷川 理
・鳥類における種分化の加速と減速   山崎剛史
・危急種アホウドリPhoebastria albatrus は2種からなる!?   江田真毅・樋口広芳

原著論文
・標識調査情報に基づいた2000 年代と1960 年代のツバメの渡り時期と繁殖状況の比較
 出口智広・吉安京子・尾崎清明

短報
・冬期におけるコハクチョウによる地下茎への採食圧が翌夏のマコモ群落地上部の成長に与える影響
 渡辺朝一

・愛知県西三河地域におけるミゾゴイGorsachius goisagi の営巣樹種と立地環境
 石川正道・浜口 寛・小西恭子・藤田一作・大鹿裕幸・川上和人

観察記録
・新潟市日和山海岸の埋め立て地で観察されたコシジロウズラシギ
  千葉 晃・高辻 洋
・熊本県熊本市におけるオニカッコウEudynamys scolopaceus の落鳥記録
  坂梨仁彦
・兵庫県南西部におけるキタヤナギムシクイPhylloscopus trochilus の観察記録
  大西敏一・黒田治男
・沖縄県国頭郡金武町におけるヨーロッパムナグロPluvialis apricaria の日本初記録
 宮島 仁・山城正邦・田仲謙介
・鳥取県鳥取市で確認された亜種リュウキュウアカショウビンHalcyon coromanda bangsiの記録
  小林さやか・中森純也・亀谷辰朗

書評
・アビ鳥を知っていますか─人と鳥の文化動物学─ 百瀬淳子(著) 福村出版 258頁
・Birds Note(バーズ・ノート)野生の不思議を追いかけて 山岸 哲(著) 信濃毎日新聞社 269頁
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category: 野鳥

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生物進化を考える (岩波新書)  

生物進化を考える
木村 資生
【学び度】★★★★

生物進化を考える (岩波新書)生物進化を考える (岩波新書)
(1988/04/20)
木村 資生

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 進化論続きで読む。

 著者は、生存に有利な(個体または群の)形質が、自然により選択されることが進化である、といった自然淘汰万能説に対し、分子生物学のレベルでは「中立」な変異が常に起こっているという中立説を提示した(かなり乱暴な要約ですいません)。

 本書は前半で様々な進化論の概説を行い、後半では中立説を詳しく紹介する。かなり専門的な内容もあるが、分子生物学の視点、中立説の概念、そして進化論史における中立説の位置について提示者本人からレクチャーしてもらえるわけであり、非常に有益な書である。

 特に著者は、各種における分子進化の速度は一定であるということを実証し、分子レベルでの変異速度から「分子(進化)時計」という概念を導き出した。これによって、各種の分子的な変異度から、その系統上の分岐時期を特定することが可能となるが、既に鳥類の分野でも、その分類は分子生物学の知見を無視することはできなくなっている。本書では、その概念を基礎から学ぶことができる。

 かなり濃密な内容であり、じっくり何度も復習したい。そう、本書はまさに中立説の教科書といえるだろう。

【目次】
第1章 生物の多様性と進化の考え
1 生物の多様性
2 事実としての生物進化
3 進化論発達の歴史

第2章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
1 波乱の幕開け
2 集団遺伝学の形成
3 進化総合学説と淘汰万能主義
4 分子進化の研究と中立説
5 その他の進化理論

第3章 進化の道すじをたどる
1 生命の歴史のあらすじ
2 脊椎動物の進化
3 哺乳類の進化
4 霊長類の進化と人類の出現

第4章 進化要因としての突然変異
1 遺伝学的生命観
2 突然変異の性質と種類
3 遺伝子突然変異の本質
4 遺伝子突然変異の表現効果

第5章 自然淘汰と適応の考え
1 ダーウィンによる自然淘汰の考え
2 自然淘汰説の近代的発展

第6章 集団遺伝学入門
1 集団遺伝学とは
2 遺伝子頻度と交配様式
3 遺伝的な平衡について
4 遺伝的浮動について
5 集団中における突然変異遺伝子の行動

第7章 分子進化学序説
1 分子進化研究の前夜
2 分子進化を理解するための基礎知識
3 分子進化の速度の推定
4 分子進化の特徴
5 突然変異の種内への蓄積過程

第8章 中立説と分子進化
1 中立説による説明
2 分子レベルの種内変異
3 分子進化時計と分子系統学
4 中立進化に関連した他の話題
5 分子進化と表現型進化の橋渡し

第9章 進化遺伝学的世界観
1 進化の産物としてのヒト
2 優生の問題を考える
3 積極的優生と人類の未来
4 人類の宇宙的発展と進化

参考文献
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category: 進化論

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新書がベスト (ベスト新書)  

新書がベスト
小飼 弾
【良かった度】★☆☆☆

新書がベスト (ベスト新書)新書がベスト (ベスト新書)
(2010/06/09)
小飼 弾

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 書評ブロガーとして有名な著者による、新書ガイド。

 ・片手で読める新書がベスト
 ・ハードカバーは装丁でごまかせる
 ・ハードカバーで気になるテーマがあれば、同様の新書がある
 ・本当に良い本はハードカバー以外の形態でも刊行される

等々から、著者は新書を数多く読むことが「生き残る」ためには新書を大量に、また様々なジャンルで読むことが必要と、と語る。

 その主張には一理あるが、そこに留まる。
 新書は出版社からすれば簡単に出せる形態なので、ダメ本や流行本を出す率も高いと思う。ある程度の読書習慣をつけるまでは、まあ新書か文庫に拘るのもいいかもしれない。
 しかし本に対する嗅覚ができれば、版型に関係なく、「読みたい本」を見出すことができる。その段階で、「新書じゃないから」「文庫になるまで」と保留するのは、本末転倒だろう。

 ハードカバーから文庫・新書になる段階で、カラー写真が除外される、または白黒になる、ということもある。逆に、そのタイムラグの間に著者が加筆訂正して、より良い本になることもある。そこをうまく選り分けるのは経験でしかない。正直なところ、「ハードカバーで読みたい」と思う本もある。
 
 また、数を多く読むのには新書が良いが、別にそんなことは、「本」にするほどのことでもない。

 貧乏だが大量に読みたい学生の頃には(今も同じだが)、選択の余地なく、新書・文庫・古本しか手を出せなかった。そういう時期的な必然もある。ハードカバーを買える財力があるなら、あえて形態で選択肢を狭める必要はないと思う。

 さて、PartⅢはレーベルごとの特徴を説明している。かなりマイナーなものもあり、本書の価値はこの章にあると思う。ただ、ある程度本を読んできていると、ああそうだな、と改めて感じる程度であり、実際にはやはり本棚かAmazonなどでタイトルを見て逡巡することになるだろう。

 ちなみに僕は、中公新書→岩波新書 → その他の新書 と本屋ではチェックする。自分の興味に合うレーベルがわかっていると、便利である。

【目次】

序章 生き残りたければ、新書を読め

PartⅠ 新書の買い方、読み方

PartⅡ 新書を10倍生かす方法
①タイトルから本の出来を測る
②ダメ本も味わう
③疑うことを楽しむ
④洗脳されずに自己啓発本を読む
⑤話題の本とは距離をおく
⑥ジュニア向け新書はこんなに楽しい
⑦複数の新書を同時に読む
⑧本で得た知識を活用する
⑨「超」整理法で本を整理する

PartⅢ 新書レーベルめった斬り!
 
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category: その他

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人体 失敗の進化史 (光文社新書)  

人体 失敗の進化史
遠藤 秀紀
【良かった度】★★☆☆

人体 失敗の進化史 (光文社新書)人体 失敗の進化史 (光文社新書)
(2006/06/16)
遠藤 秀紀

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 二足歩行とでかい脳。人間を特徴付けるこの2つの形態を獲得するため、どのような「無理な」設計変更をしたのか。本書は肩の骨や大腿骨の間接構造、かかとの巨大化など、人間という生物形態が、元々四足歩行だった哺乳類から、いかなる進化を遂げてきたのかを解説する。

 進化がいかなるメカニズムで進むかという進化論は面白い。しかしそれは、かなり膨大なタイムスケールの話であり、なかなか実感は伴わない。
 一方筆者は、動物の遺体を丁寧に解剖し、その形態を比較してきた。最終章では「遺体科学」という言葉を使っているが、そうした実物を相手にして積み上げた経験の中から、「実際にはこれがこう変わった」という具体例を提示する。ほほうなるほど、と感じることしきりであった。ちょっと文章にくせがあるが(客観的事実だけでなく、著者の口上も多い)、一読しておくと、自分のでかい足の親指と踵に愛着を抱くと思う。

 なお動物の遺体を解剖し、様々な発見を重ねていく、というスタイルは、森口満、川口敏などの著書がある。いずれ紹介できたら、と思う。
 ちなみに川口敏は、BIRDER誌に「鳥の形態学ノート」という連載をしており、本書著者と同様に、鳥の形態を解剖学的な見地から解説している。非常にオリジナルな連載で面白いので、本屋でBIRDER誌を見つけたら、読んでみていただきたい。あと川口敏は実は知人であるが(もう長らく会っていないけど)、本人も非常にオリジナルであり、その生き様は天晴れと感嘆する一人である。


序章 主役はあなた自身

第1章 身体の設計図
1-1 肩の骨の履歴
1-2 ハートの歴史

第2章 設計変更の繰り返し
2-1 五億年の戸惑い
2-2 骨を生み出す
2-3 音を聴き、ものを噛む
2-4 四肢を手に入れる
2-5 臍の始まり
2-6 空気を吸うために
2-7 天空を掌中に

第3章 前代未聞の改造品
3-1 二本足の動物
3-2 二足歩行を実現する
3-3 器用な手
3-4 巨大な脳
3-5 女性の誕生

第4章 行き詰まった失敗作
4-1 垂直な身体の誤算
4-2 現代人の苦悩

終章 知の宝庫
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category: 進化論

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