ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

今週のまとめ  

 昨日はまだヒバリがさえずっていましたが、モズの高鳴きも賑やかでした。春と秋が同居したひととき。
 しかしこういう時期は、あっという間に過ぎてしまう。
 本日は雨。明日から、また寒さが進むでしょう。
 そうそう、自宅近くの池に、オオバンが若鳥2羽つれて滞在中。いつまでいてくれるのかな。

 今週は、昼が仕事でつぶれることが多く、なかなか読書の時間がとれませんでした。しかも「放浪の天才数学者 エルデシュ」が淡々として、いや興味深くはあるけれど、実際疲れる読書でした。でも分厚い読書を経て、最後、エルデシュなきあとに皆が偲ぶシーンには感動するものがありました。

 「強い者は生き残れない」は二度目の読書。前回は流し読みだったので、今回はメモを取りました。進化論は面白いけど難しい。ゲーム理論を丁寧に勉強したいものですが、なかなか歯が立ちません。また実際にいろいろ調査したいけれども、その時間は本当にない。残念。
 「南極越冬記」は、ぜひお勧めしたいと思い、再読。これからの時期にぴったりです。


その他
・「生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見
・「生協の白石さん 学びと成長
・「世界でもっとも美しい10の物理方程式

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今週のSong 山下達郎「潮騒」
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視聴
※リンク先はYOUTUBEです。

いつの間かクリスマスの人になってしまいましたが、僕の若い頃、達郎といえば夏だった気がします。
この唄は、過ぎ行く夏を感じさせる名曲。
山下達郎も崎谷健次郎も、ポップ・センスが良すぎて、ちょっと時代が早すぎたな。
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category: 雑記:今週のまとめ

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強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論  

強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論
吉村 仁
【良かった度】★★★☆

新潮選書強い者は生き残れない環境から考える新しい進化論新潮選書強い者は生き残れない環境から考える新しい進化論
(2009/11/25)
吉村 仁

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 筆者は素数ゼミの研究でも有名な進化論の研究者。専門は数理生物学とのこと。

 進化論は学校の授業では極めてベーシックなところだけ説明されるため、中・高校レベルだとダーウィン的理論しか頭に残らない。しかし現在も新たな理論や論証が続いており、進化論は常に洗練されつつある。

 さて、動植物を観察し、その生態について考えるとき、進化論的発想が必要となるが、あまりに単純なダーウィン的進化論しか土台にないと、かなり誤った解釈になりかねない。そこで動植物を深く知りたいと思うならば、様々な進化論的考え方を身に着けておくことが重要である。

 筆者は本書で、大きく二つの新しい解釈を提示している。

 一つは、変動する環境の中では、絶滅を回避するため中庸な個体ほど最適である、ということ。本書のタイトルでは「強い者は生き残れない」という表現がなされている。最も最適化が進むと、その依存する環境が変化すれば絶滅せざるをえない。よってどのような環境にでも対応できる方が良い、ということだ。

 もう一つは、環境の激変に対応していくために、生物は「共生」という手段を獲得したのではないか、ということ。上記のとおり「強い者は生き残れない」ため、自分自身を最適化することはリスクが高い。そこで共生により、その時々の環境に最適になろう、というわけである。

 この2点の例示として、思いつく事例がある。

 例えばA種とB種の共進化。ある種のハチドリと花のように、嘴と花の形態が1対1で共進化すると、どんどん極端化していく。これを走り出したら(特殊化しだしたら)とまらないという意味で「暴走(ランナウェイ)共進化」というが、このような種の場合、一方の絶滅(環境変化)があれば、対応できない。

 もうひとつ。1681年に絶滅したドードー(モーリシャス島)とカルバリア(Calvaria major)という木の関係。モーリシャス島で、S.テンプル(1973)は原生林の中にカルバリア(Calvaria major)を13本しか確認できず、全て樹齢300年以上であることを見出した。ドードー絶滅も300年前。カルバリアの種子は、そのまま地上に落ちても発芽しない厚い皮がある。そこで1977年、カルバリアの種子はドードーの砂嚢で表皮が削り取られ発芽するのではないか、という仮説を立て、シチメンチョウにカルバリアの種子17個を与えると、3個が発芽した。これも共生が機能しなくなったことが、カルバリアの減少につながっている。

 進化論に関する説明書は多いが、利他行動を血縁選択だけで説明しない、かなり納得のいく本であった。


以下、メモ書き。

P19
例えばモンシロチョウの生涯繁殖成功度。
生涯繁殖成功度=産卵数×成虫(親)になるまでの生存率
産卵された卵が、どれだけ成虫(繁殖可能個体)になるかが重要。

P30-
ダーウィンの自然選択理論では説明できない現象があった。そのひとつが利他行動(altruism,altruistic behavior)。これに対して、「種全体が有利になるように行動する(集団選択)」という解釈がなされてきた(1966.ウィン=エドワーズ)。しかしこれだけでは説明がつかない事実も多い。生物にとってはやはり「種の利益」より「個体の利益」の方が重い。それを説明する方法として、ゲーム理論が発展している。
・囚人のジレンマゲーム
・「個体群がある戦略Xをとっているとき、ほかの戦略の個体が侵入しようとしても侵入できずに排除されてしまうような場合、その戦略をESSという」ESS=進化的安定戦略evolutionarily stable strategy
・ウソつきと正直者のゲーム→正直者だけの集団にESSは生じない。ただしこのゲームには、集団の人数は変化しないという前提がある。実際には人数が変化する。

P46
利他行動を、集団選択ではなく説明する概念
血縁選択kin selection と 包括適応度inclusive fitness
血縁選択=社会性昆虫(アリ、ハチなど)で端緒。

P56
適応進化だけでは説明できないケース=履歴効果historical effect,hysteresis
過去の歴史による適応が影響する。Ex)インカの婚姻制度、1夫多妻→階級の増加に伴い1夫超多妻へ

p61
ユキヒメドリの履歴効果
・A,B群に入る場合 1羽だと警戒時間1、2羽だと1/2、…例えば5羽で採餌効率が最大になる場合、5羽を超えてもAの群れに入る。しかし10羽目が別の群Bの1羽目になった途端、AからBへ移動する個体が増え、A5羽・B5羽になる。最初から5羽ずつになればいいのだが、順番に1羽ずつ入るときには既に個体が入っている履歴効果によって、最適な配分から大きくずれる。

P70
進化は連続的に起こるのではなく、安定期-環境激変・絶滅-適応放散-適応(最適化)-安定期 の繰り返し。S.J.グールド=断続平衡説/生物進化は急激かつ断続的に起こる。

P97
親になって1度しか繁殖しない形態=1回繁殖(セメルパリティ、semelparity)
何度も繁殖する形態=多回繁殖(イテロパリティ、iteroparity)
ほとんどの種は1回繁殖。昆虫など。早く成体になれる。多回繁殖は体が大きい。環境の激変に強い大人の時期が長い。多回繁殖の方が存続確率が多いことはわかっているが、1回から多回へ進化する条件はわかっていない。

P98
子どもの個体が環境の変動をうけやすいタイプ=リスキー型=多死・多産
子どもの個体が環境の変動をうけにくいタイプ=セイファー型=少産

p113
死亡率は性比に大きな影響を与える。繁殖前の雄の死亡率が高いと、繁殖期に雌に偏る。よって雄をたくさん産めばよい。

P124
最も強い者が残るのではない。Ex)身長が高いほど強いが、180cm以上だと死ぬ場合。平均180cmだと半分が死ぬ。よって最適は、180を超さないが、十分高い分布。例えば平均は170cmとなれば、合計の適応度は高くなる。
Ex)鳥の一腹卵数(クラッチサイズ)。実際には余裕がある。しかし産卵・育雛中に環境変動がおきた場合、クラッチサイズの最大数を産んでいれば、全雛及び親が死ぬ。環境が良い年の最適なクラッチサイズは大きいが、環境の悪い年には小さい。もし環境が良い年の最適クラッチサイズで常に産むと、環境が悪化した際に親も死んで滅亡する。

P130
筆者の環境変動説
進化理論  /環境  /選択    /適応度w    /生き残る遺伝子型
ダーウィン /A   /自然選択  /w(x)>w(y)>w(z) /x
総合学説  /A→B /方向性選択 /w(x)>w(y)>w(z)→w(z)>w(y)>w(x)  /x→z
環境変動説 /A←→B /絶滅回避 /w(x)>w(y)>w(z)←→w(z)>w(y)>w(x)  /y

p144
アメリカのオオカバマダラ
メキシコ(越冬地)から、北上は約3世代かけて行なう。しかし南下は、1世代で行い、同じメキシコの地点帰ってくる。このメカニズムはわかっていない。

P173-174
「共生の進化史は、環境からの独立の進化史でもある。厳しい環境変化に生物はどう対応してきたのか? 答えは、『お互いの協力』によってである。共生は、様々な生物同士が協力して環境に対抗する方法である。」
「共生という手段はもっとも有効な生き残り方法だったのである。」

p224-225
自由競争=利益の最適化を目指す
しかし、自然増殖にたよる産業(農林水産業)の場合、生物の増殖率による限界がある。
例えば水産業だと、水産資源を維持しながら漁獲できるのはせいぜい2~5%(クラーク,1990「数理生物経済学」)。よって自然の繁殖率に頼る漁業の利益率も最大2~5%。しかしビジネスの利益率は平均7~8%。よって漁業を自由競争で考えれば、一時的には最大利益が得られたとしても、資源が枯渇するのは必然。


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category: 進化論

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放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)  

放浪の天才数学者エルデシュ
ポール・ホフマン
【良かった度】★★☆☆

文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)
(2011/10/04)
ポール・ホフマン

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 ポール・エルデシュ。数学を愛し、問題を解き、また仲間と解くために、スーツケースに荷物をつめ、世界各地を旅して生きた男。数学以外には身の回りのことは何もできなかった男。しかし多くの数学者は彼を愛し、彼と共に数学の世界を探検することを喜びとしていた。

 1913年3月26日-1996年9月20日。彼がつい20年前まで生きていたことに驚く。こうした人物が同時代にいることを知っていたら、どんなに勇気づけられていただろう。

 数学は不思議な学問だとつくづく思う。全てが頭の中の勝負である。観察や実験を伴わないため、いつ・どこででも可能である。しかしそれは裏返せば、いかなるときも数学から離れることはできないということだ。でも、生活には雑事がつきものだ。だから多くの数学者は、生活と数学の間でバランスをとっている。

 エルデシュは、最初からバランスをとることなど考えてもいなかった。

 しかし彼は、数学と素晴らしい人間性とのバランスはとっていた。
 多くの仲間にアイディアを与え、例え自分が結論をだしても、皆との共著として残している。共著がある人は、エルデシュナンバー1が与えられている。数学者の間では、本当に愛されていたんだなと思う。
また彼は、子どもを愛した。本書の巻頭にいくつかの写真があるが、子どもとの写真2葉だけ、エルデシュは笑っている。

 なお、もしかしたら、と思って探したら、YOUTUBEに映像も残っていた。
 例えばこれ。
  https://www.youtube.com/watch?v=my0L2icGooU
 ※YOUTUBEの日本語検索ではヒットしない。「Paul Erdős」とかで検索されたい。

 なお、ちょっと分厚く、淡々とした内容。読みきるのは体力が必要。
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category: 数学

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南極越冬記 (岩波新書 青版)  

南極越冬記
西堀栄三郎
【良かった度】★★★★ 【殿堂入り】



 南極。

 ペンギンを見るツアーもあるし、今はかなり身近な場所である(とは言っても、かなり縁遠い場所だが)。
 しかし現在に至るまでには、シャクルトンをはじめ様々な探検家の歴史がある。それらを綴った南極探検史というものが書かれるとすれば、南極大陸での越冬というのも、重要なステップとして記録されるだろう。

 本書は、日本初の第一次南極越冬隊(1956年(昭和31年)出発)の隊長の手による、生の記録である。出版からかなり年数も経過しており、新書の新刊が溢れる中、書店で偶然出会うのは難しいかもれない。しかし、ぜひ手にとってほしい一冊である。
 著者は、南極大陸到達の状況、輸送、越冬施設の建設、隊員のマネジメントなどを、情緒豊かな文章で綴る。つくづく思うのだが、この時代の人の文章は、どうしてこんなに落ち着いて滋味溢れるものなんだろうか。この文章を楽しめるだけでも、幸せである。

 第一次の越冬隊であるため、全てが手探り。著者は国民に対する責任を意識しながら、山男的な慎重さで着実にこなしていく。到着早々、物資を運びきる前に一部が流失したり、ある施設が火事になったり、トラブルは絶えない。それでも筆者は任務を達成するために最大限の努力をしつつ、生活物資の心配よりも最低限の観測機器すらない状況を憂える。「越冬すること」が目的なのではなく、越冬は手段であり、「観測し、科学的な成果を得ること」が重要なのだ。そのような姿勢に、著者の高い見識がうかがえる。

 ところが第2次越冬隊との交代時に、気象条件の悪化などから、残るはずの第2次越冬隊が退却する事態となってしまう。この結果、あのタロとジロで有名な、犬の置き去りが発生したのだ。

 さて、Wikipediaなどでも、この第2次越冬隊の退却がやむをえないもので、第1次越冬隊が退却するにあたり、犬を鎖につないだまま残してきたように記載されている。
 しかし実際は、第2次越冬隊が甘い準備、判断の結果、紆余曲折を経て交代できずに戻ってきたのだ。著者らの第1次越冬隊は、第2次越冬隊が犬になれていないため、とりあえず鎖につないで引き継ごうとしたにすぎない。また著者らの一部は、このまま残っても良いとまで思い、その主張もしていたが、その提案も却下されてしまう。責任は第1次越冬隊ではなく、安易に引き継げると思っていた第2次越冬隊と日本政府にあったのだ。
 第1次越冬隊は努力と工夫し、初の「越冬」を達成した。それが日本からは、「越冬は簡単だ」と誤解した。パイオニアの成果を見て、「あんなの簡単だ」というのはたやすく、今もそうした風潮は多い。それがどれだけくだらない考えなのか、この時代に明らかになっている。僕たちは学ばなければならない。

 第2次越冬隊とともに退却せざるをえない局面にいたって、筆者の文章から豊かさは失われている。

 ところで、もう10年くらい前に北海道へ出張に行ったとき、北海道大学植物園で野鳥観察して時間をつぶした。そこには小さな展示館があった。まあ北海道ならではの動植物がいるだろう、と軽い気持ちで入り見ていると、思いがけなく犬の剥製があり、「タロ」とある。なんとあのタロの剥製が、北海道にあったのだ。何も知らなかったので、ものすごく驚いた。帰ってから、初めて2匹とも剥製が残されており、ジロは国立科学博物館にいることを知った。会いに行くことは、ちょっとした宿題であった。
 そして昨年、やっと「ジロ」の剥製も見ることができた。
 
2匹とも思っていたよりも遥かに大きく、精悍な犬だった。

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category: ノンフィクション

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生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見  

生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見
福岡伸一
【良かった度】★★☆☆



 「生物と無生物のあいだ」で有名になった氏の本である。

 タイトルはいかめしいが、内容と直結しない。それどころか、本文に「パラドクス」という言葉は(たぶん)出てきもしない。タイトルで気を惹こうとしているようだが、売らんかなのタイトルは読みたい人に届かず、タイトル買いした人の期待を損なうだけである。本書にも、もっと内容とテイストにあったタイトルがあると思う。
 この点は、著者ではなく、編集担当者の力不足である。

 さて、前書きを読むと、なんだか村上春樹的な運びの文章である。ちょっと文体が影響される時があるようだが、気にしないで読み進む。内容は福岡氏のエッセイであり、個々の項目は基本的に独立したものである(時々テーマが続くことはある)。生物学的なエッセイが特に多い訳でもなく、雑談的に進む。偏った観点もなく、所々にある主張についてはもっともと感じるしだいである。終盤、執筆した時点でフェルメール関係の書籍を作成していたためか、フェルメール関連の話題が続く。著者が積極的に関わっている分野であるためか、他の項目よりも文章的にも読みやすく、また好奇心をそそられる内容であった。

以下、気になった部分をメモ。→は僕の意見。


p25
「フロバイスヒトリジメ」必須アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、メチオニン)の覚え方
→久しぶりにこういうのを見た。覚えよう。

P47
1845イギリス、ロンドン、ソーホー地区でのコレラ大発生、疫学の始祖、ジョン・スノー、地図に発生地点を調べ、地区内で共同井戸を使っていないビール工場では発生していないこと、共同井戸から水をもらっている地区外の住民に発生していることから、共同井戸が発生源と突き止めた。
→ちょっと前にTEDでも話していたような気がする。このエピソードについては、関係書を読んでみたい。

p51
ある事象Aと事象Bに関係があるとき、言えるのはAとBの間に相関関係があるということだけであって、因果関係があるとはいえない。
→野鳥の生態とかにちょっと詳しくなると、陥りがちな罠。観察会で注意喚起しよう。

p67
大正10年の丹那トンネルの落盤事故。吉村昭の「闇を裂く道」
→読もう。

p75
「ニワトリ、カイコ、ブルドッグ…人間がその進化のプロセスに介入し、自然になりかわって選択者としてふるまい、新たに生み出した生命。その生命たちはもはや人間なしでは生きていくことができない。」/「人が作り変えたいのち。それに対して人間はきちんと責任を取らなければならない。」
→激しく同感。家禽・ペットと野生動物は、それぞれ別の尊重の仕方がある。野生動物をペットのように扱うのが「保護」で、ペットを野生動物のように逃がすのが「愛玩」と勘違いしている人間が多い。

p84
「もし「退化」が受け継がれ、種の中で広がり、形質として固定されるためには、その退化に積極的な理由が必要となるのだ。つまり「退化」には進化的な意味がなければならない。」
→改めて認識。例えば、使わない=退化ではなく、使わない=その器官の維持に必要なエネルギーの節約=退化。使わない器官を維維持することにメリットもデメリットもなければ、その器官は残ることもある、と考えてよいか。

p87
「色素色も構造色もあわせもった欲張りな方法で着飾っている生物がいる。」/「錦鯉である。」
→野鳥も構造色と色素色をあわせもつものが多い。構造色については勉強したい。

p101
「化学物質としてのDNAには、たとえば文字を表す環の一部に、メチル基というほんの小さな標識が付くか付かないかで、その部分のDNA情報をRNAにコピーするかどうかを決めるような仕組みがあることが判明した。さらに驚くべきことは、どこにメチル基が付くかということは、親から子にそのまま伝わりうるという事実だった。つまり遺伝子のオン・オフの様式が「遺伝」しているということ。」
→まじですか。

p198
「もしフェルメールのデッサンが見つかれば、レーウェンフックの記録にあるスケッチとの類似性もはっきりする。そうなれば「知り合いの画家」が誰かに答えを出すことができるかもしれない。」/「(レーウェンフックの手稿に挟み込まれていたスケッチは拙著『フェルメール 光の王国』〔木楽舎〕で見ることができます)」
→この本も読んでみたいなあ。





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category: エッセイ

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生協の白石さん 学びと成長 (一般書)  

生協の白石さん 学びと成長
白石昌則
【安らぐ度】★★★☆


生協の白石さん 学びと成長 (一般書)生協の白石さん 学びと成長 (一般書)
(2012/07/12)
白石昌則

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「生協の白石さん」の続編である。

 「世界でもっとも美しい10の物理方程式」に示されるような深遠なる知的活動も重要だが、白石さんのように温かみとウイットに富んだ回答ができる感性もまた、人間に必要なものだと痛感する。
 この本を読んで、ちょっと優しく、ユーモアのある応答を心がけたら、世界はちょっと居心地がよくなるかもしれない。

 などという理屈を述べるまでもなく、楽しめた。そういう本だよね。
 

 でも何となく、やっぱりキレは第1冊目の方があったかな。インパクト性かもしれないけど。
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category: その他

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世界でもっとも美しい10の物理方程式  

世界でもっとも美しい10の物理方程式

ロバート・P・クリース (著), 吉田 三知世 (翻訳)
【手ごわい度】★★★★


世界でもっとも美しい10の物理方程式世界でもっとも美しい10の物理方程式
(2010/04/22)
ロバート・P・クリース

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 関心や知識があるほど、その分野の本を読むことはたやすく、楽しい。
 
 しかしそれだけでは、視野が狭くなるし、新しいアイディアも得ることができない。10冊に1~2冊は、自分とは縁がない分野に手を出したい。

 そこで「フェルマーの最終定理」を読了し、同時平行で「放浪の数学者」(未読了)も読んでいるため、自分に若干の数学的語鐙に対する慣れが残っているうちに、以前から興味があった本書を手に取った。

「最も美しい」のはどんな式か?それが選ばれる基準は何か?というのが興味の出発点である。

目次は以下のとおり。
 第1章 文明の礎―ピタゴラスの定理
 第2章 古典力学の魂―ニュートンの運動の第二法則
 第3章 科学革命の頂点―ニュートンの万有引力の法則
 第4章 数学的理想美の基準―オイラーの等式
 第5章 科学におけるシェークスピア戯曲―熱力学第二法則
 第6章 一九世紀最大の出来事―マクスウェルの方程式
 第7章 方程式のセレブ―E=mc2
 第8章 金の卵―アインシュタインの一般相対性理論の方程式
 第9章 量子論の基本方程式―シュレーディンガーの方程式
 第10章 不確定性と共に生きる―ハイゼンベルクの不確定性原理
 おわりに 奇妙なものを持って帰る


 各章では主に、それぞれの物理方程式が見出された課程が描かれている。現在の物理学の進捗にあわせるように、最初の数項目は馴染みのある、知覚可能なこの世界の自然科学的「真理」が数式化されている。しかし項が進むにつれ、知覚できない世界をも含む真理を表す物理方程式となる。それらの概念は何となくわかるとしても、表現された数式の持つ意味は、僕には既に理解できない。
 ただ上記のとおり、個々の物理方程式があらわす概念は、どこかしらで目にしているものである。これらの意味と成立過程を概観しておくことは、決して無駄ではないだろう。

 しかし、この本を手に取るきっかけとなった、この10の方程式が「美しい」とする基準は明確にされていなかったと思う。これの数式は確かに重要であり、各概念の到達点という意味では、比類なき数式である。しかしそれが美しいか否か、それはまた別の話だろう。ここまで重要な数式でないとしても、その美しさゆえに人々が感嘆するような数式が他にもあるのではないか、という感じはした。その点で、本書は「美しい」物理方程式ではなく、「重要な」物理方程式を集めていると思われる。

 数式の中に「美」を見出す行為について知りたいという興味からすれば、ややミスリードなタイトルかと思う。それにしても、こうしたアルキメデスの定理から、最後のに至るまでの、人間の知的展開の複雑さと高度化には、驚くばかりである。
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category: ノンフィクション

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今週のまとめ  

昨日は思いのほか暖かく、自宅近くではヒバリがさえずっていました。
でも冬鳥は、ちらほら来ています。
シロハラがいた、という便りは、10月上旬にはありました。
一方、まだ、夏鳥のクロツグミがいた、という話もあります。
ちょうど渡りの真っ最中。
通常、渡り鳥は茂みの中を通過することが多く、出会うことは難しいものです。
今年はちょっとラッキーなようです。

しかし秋が深まるにつれ、夏鳥の便りもなくなるでしょう。

さて今週もいくつか読みましたが、中でも「フェルマーの最終定理」が、疲れましたけど面白かった。

僕は完全文系ですが、論理的思考ってのは大好きですので、好みにあう本でした。


新動物生態学入門―多様性のエコロジー」は、既存本の紹介。
 いい本です。
 野鳥観察・撮影愛好者には、「珍しい鳥」を追いかけるのが好きな人は少なくありません。
 いやそれもいいし、人は人なんですが、
 せっかく見るなら、「なぜ」を常に抱いていたい。

 動物生態学の本はあまり一般的ではないですが、無秩序そうに見える動物の世界が、こう、
 ぱっと開けてくる感じを抱かせる、手かがりを与えてくれます。
 (このくだり、この本のレビューに入れればよかったな。)

 
そのほかは、読んだのは、以下。
BIRDER2012年11月号
超音速漂流
天皇の影法師
隠された証言―日航123便墜落事故

あとは週刊アスキーでした。

……………………………………………………………………………………………
★今週のSong
……………………………………………………………………………………………
 「Lake Como」Sweet People
 ※リンク先は、YOUTUBEです。

 むかーし昔、「お休みの前に」というラジオがNHKだかでありました。
 そのエンディングテーマです。
 落ち着いた内容の、いいラジオ番組でした。
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category: 雑記:今週のまとめ

thread: 日記 - janre: 日記

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フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで  

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
サイモン・シン
【良かった度】★★★☆
10月16日開始、17日読了



フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまでフェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
(2000/01)
サイモン シン

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 「3以上の自然数n について、x^n + y^n = z^n となる0でない自然数 (x, y, z)の組み合わせはない」

 という、17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーの記載。フェルマーはこれを証明したらしいのですが、詳細は残していませんでした。そして第三者がこれを証明することができないまま幾多の年月が過ぎ、なんと約360年後の1995年に、アンドリュー・ワイルズによってやっと証明されます。つい最近ですね。

 本書は、この最終定理に繋がる数学の歴史を縦軸に、そしてその時代時代にこの最終定理に関わった人物のドラマを横軸としながら、最終的にワイルズが証明するまでを描きます。

 何となく「谷山・志村予想」という日本人が絡んでいたのは記憶にありましたが、本書ではその二人の日本人も詳しく紹介されています。フェルマーの最終定理の証明過程において、同時に「谷山・志村予想」が証明されたことに重要な価値があった、というのは初めて理解できました。

 また、最終段階になってワイルズが足踏みする姿、そしてそこから最終解決に到達する姿は、非常に感動的でした。

 それにしても「博士と狂人」でもそうでしたが、本当にレベルの高い仕事をするためには、やはり完全に集中できる環境と、精神力が必要なようです。

 数学ものではありますが、ドキュメンタリーとして理解しやすく記述されています。やや密度の濃い読書、異質な世界を知る読書がしたい方には、オススメです。
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category: 数学

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新動物生態学入門―多様性のエコロジー (中公新書)  

動物生態学入門―多様性のエコロジー
片野修
【必須度】★★★☆


新動物生態学入門―多様性のエコロジー (中公新書)新動物生態学入門―多様性のエコロジー (中公新書)
(1995/11)
片野 修

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 単純に、野鳥を見る・撮影するだけでなく、やはりその生態をじっくり観察したい。
 常に感じ、また他者に伝えていることです。

 しかし生態を観察すると言っても、餌の捕り方といった細かい視点から、種間競争による分化促進といった大きなレベルまで様々あります。
 例えば野鳥であれば、細かい生態としては、採餌方法、繁殖方法・時期、つがい形成などがあります。それを他種と比較すれば、その種が鳥類や生態系家においてどのような位置を占めているのか、見えてきます。

 そして、比較のバックグラウンドとして必要なのが、「動物生態学」の知識。
 これによって、採餌やつがい形成がどのように種間競争や多様性に関わるか、という視点を得ることができます。

 その入門編として、おおすめしたい数冊のうち1冊が、本書。

 「多様性」という視点を中心に、個体、群、種がどのような戦略をとり、どのように種間競争し、そこから多様性が発生しているかというベーシックな各種理論を、様々な事例をあげながら解説してくれます。
 動物はどのように他種と関係していて、それがどのような結果を生んでいるのか。
 多様性とはどういう働きの結果であり、なぜそれを保つことが、「健全」なのか。
 そうした疑問を検討するために必要な、最低限の知識を学ぶことができます。

 タイトルで「入門」とあるとおり、大学の一般教養で「生物多様性」という講座があれば、その教科書として使われるような感じです。これ一冊を読んでおけば、動物関係の本がより深く楽しめるでしょう。
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category: 動物

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tag: 新書  動物 
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BIRDER (バーダー) 2012年 11月号 鳥たちの冬物語  

BIRDER 2012年 11月号

文一総合出版
【良かった度】★★☆☆
10月19日開始、19日読了


BIRDER (バーダー) 2012年 11月号 鳥たちの冬物語BIRDER (バーダー) 2012年 11月号 鳥たちの冬物語
(2012/10/16)
BIRDER編集部

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2012年11月号の特集は「鳥たちの冬物語」。

野鳥の冬の生態に注目した内容です。ついつい珍しい野鳥探しに夢中になる冬ですが、やはりこうした生態をじっくり見ることに醍醐味があると思います。冬期の野鳥観察のヒントになるでしょう。

ただ内容的には、各種のエピソードを寄せ集めた感があります。各種または各生態ごとに、深く突っ込めば、それぞれだけで特集がなりたつようなテーマです。また、カモ、カワウ、ジョウビタキ、ガンと、扱う種もやや広いかなと。
 例えば水辺の冬鳥の生態、などとした方が、よりまとまりがあったかと思います。

 他に気になった記事は、「鹿児島県のコウライアイサの越冬記録  文・写真●所崎 聡」。
 昨冬、僕の地元でも「出た」という噂を聞きました。やはり当たり年だったんですね、

 コウライアイサは、もう10年以上前に、岡山県の旭ダムで見ました。雄の白地に黒線模様は、他種には見られないシックさを漂わせていたことを覚えています。
 また出会いたいものです。

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category: 野鳥

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天皇の影法師 (朝日文庫)  

天皇の影法師
猪瀬直樹
【良かった度】★★☆☆
10月18日開始、19日読了

天皇の影法師 (朝日文庫)天皇の影法師 (朝日文庫)
(1999/12)
猪瀬 直樹

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 本書は、天皇にまつわる「元号」、「葬送」、「恩赦」という側面を取り上げたものであり、なかなか類書はないと思われます。
 「元号」は、「昭和」という元号を決める間際に発生した「光文」元号誤報事件の顛末、そして森鴎外の関わりを。「葬送」は、天皇の棺をかつぐ「八瀬童子」、八瀬村の歴史を明らかにします。
 「恩赦」は敗戦に反してクーデターを起こした人に対する「恩赦」です。
 「光文」元号誤報事件については、元号を選定する過程を丁寧に追うことで、「光文」という元号が実際に「大正」に続く元号として決定していたのか否か、という問題に結論を出します。

 元号誤報事件については類書がありそうな気もしますし、僕としては何より、「八瀬童子」という地味な存在に着目し、どのように八瀬村の「人々」が「八瀬童子」たりえるのか、その経緯を明らかにする章が、最も興味深いものでした。
 あまり天皇家と地域が直結することは無いと思うのですが、こういう繋がり方があるところに、やはり連綿たる歴史の流れを感じます。

 ノンフィクションを読む目的の一つは、やはり自分が知らない事柄を知ることにあると思います。その事柄が、自分が全く気がつきもしなかった存在・問題であれば、その驚きと楽しみはひとしおです。
その意味で、得がたい一冊でした。

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category: 歴史

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隠された証言―日航123便墜落事故 (新潮文庫)  

隠された証言―日航123便墜落事故
藤田日出男
【読むべき度】★★★★
10月17日開始、17日読了

隠された証言―日航123便墜落事故 (新潮文庫)隠された証言―日航123便墜落事故 (新潮文庫)
(2006/07)
藤田 日出男

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 「風にそよぐ墓標」の著者は、123便の事故原因を「しりもち事故の補修ミスによる隔壁破壊による急減圧」として批判していました。しかしかつて、この原因に疑義を示していた本を読んだことがあったなあ、と思い探索。それがこの本でした。

 著者は日航のパイロットであり、「日本乗員組合連絡会議」の事故対策委員。123便の事故現場にも入っています。この方がパイロットとしての経験・知識と、内部告発者から提供された資料をもとに達した結論は、「隔壁破壊による急減圧はない」ということ。この結論に至る検討はぜひ本書をお読みいただきたいと思います。

 よくある陰謀説ではなく、著者は「科学的に現在得られるデータを整理すれば、こう判断せざるをえない」という姿勢を貫いています。この結論が妥当かどうかは分かりません。しかし実際に、123便の尾翼の回収努力がされていないこと、そしてこうした疑問が生じる余地が残っているということは、当時の事故調査委員会の結論が不十分であったと感じざるを得ません。

 123便の事故が、123便の機体独自の問題なのか、外的要因があったのか、それともジャンボ機に共通の問題があるのか。それを検討するためには、123便の事故原因を可能な限り追究する以外にありません。

 123便だけではなく、大規模事故は、当事者のみならず多くの関係者に、消すことのできない傷を残します。飛行機事故という枠だけでなく、日本における事故調査レベルの向上のためにも、疑問が残っていれば何度でも再調査・検討していくという流れを確立してほしいものです。
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category: 事件・事故

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超音速漂流 (文春文庫)  

超音速漂流
ネルソン・デミル&トマス・ブロック
【良かった度】★★☆☆
10月15日開始、16日読了

超音速漂流 (文春文庫)超音速漂流 (文春文庫)
(2001/12)
ネルソン デミル、トマス ブロック 他

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 誤射されたミサイルが超高度を飛行するジャンボを直撃。急激な気圧低下により、大多数の旅客は低酸素脳症により死亡または凶暴化。一方地上では、この事故を「無かったもの」にしたい複数の思惑が…。

 パニックものの定番である航空機もの。映画でも、「エアポート'75」などがあります。子どもの頃、日曜洋画劇場で見たなあ。

 本書も定番的な話であり、航空機破壊-素人のみ残る-どうやって助かる? という筋です。ちょっと違うのは、地上側が「落とそう」と努力するところ。こうしてみると「目新しさが無いなあ」という気もしますが、実は本書はそもそも1979年に刊行されたもの。現代から見ると「ありふれた」と感じますが、実際はオリジナルなんですね。
 内容的には、時代の経過を感じさせないプロットであり、十分楽しめます。息抜き的な読書にオススメです。
 
 ただ結末はなあ。本人たちはいいけど…。
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category: 冒険小説

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洞穴学ことはじめ (岩波新書 青版 688)  

「洞穴学ことはじめ」
著:吉井良三
【良かった度】★★★★ 殿堂入り

洞穴学ことはじめ (岩波新書 青版 688)洞穴学ことはじめ (岩波新書 青版 688)
(1988/04)
吉井 良三

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 本書は名前で損をしています。
 このタイトルでは、ケービング、洞窟探検が好きな人のための本としか思えません。

 実はこの本は、素晴らしい生物学の本なのです。全10章のうち、実に1~6章は、「洞穴」に棲むトビムシの調査記録です。

 トビムシとは、昆虫類の中でも、最も原始的なグループのひとつ。

 筆者は全国各地の洞窟性のトビムシを調べ、新たな視点から分類を確立し、分析を進めます。
 その結果、ついに太古の日本と現在の日本との違い(それが何かは伏せます)に至ります。
 
 非常にダイナミックな、本当に生物分類学の醍醐味を味わえる本なのです。
 生き物を「調べる」のが好きな方は、ぜひお読み下さい。

 また、洞窟探検の面でも、筆者はパイオニアとして有名だそうです。

 本書は埋もれた良書です。ぜひお勧めします。

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category: 昆虫

tag: 昆虫  新書 
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カモメ観察ノート  

「カモメ観察ノート」
著:永井正人
【実用度】★★★★

カモメ観察ノートカモメ観察ノート
(2006/04)
永井 真人

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 ある程度野鳥に馴染むと、目の前に立ちふさがるのがカモメ類。外見の類似性による識別困難性だけでなく、そもそも観察できるのが主に冬期の海辺であるという、鳥屋の根性を試されるグループです。

 また、千葉県銚子市などのように他種多様な種を比較できる環境ならともかく、西日本には個体数・種数とも少なく、観察力を養うことすら難しい地域もあります。

 そんな地域におすすめの一冊。

 もちろん「カモメ類ハンドブック」(文一総合出版)という基礎文献はありますが、あちらはイラストのみ。やはり様々な個体のバリエーションを実感するには、写真が必要です。

 本書は著者が撮影した各種について、様々なバリエーションの写真を掲載。
 その種の「雰囲気」をつかむのには最適です。

 類書は日本にはありませんので、カモメ類にチャレンジしようという人は必携です。
 
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category: 野鳥

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BIRDER (バーダー) 2012年 10月号 セキレイ類 全16種完全ガイド  

「BIRDER」 (バーダー) 2012年 10月号
【実用度】★★★★

BIRDER (バーダー) 2012年 10月号 セキレイ類 全16種完全ガイドBIRDER (バーダー) 2012年 10月号 セキレイ類 全16種完全ガイド
(2012/09/15)
BIRDER編集部

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 特集は「セキレイ類」。
 16種完全ガイドとして、セキレイ類(様々なタヒバリ類も)を紹介しています。
 ハクセキレイは亜種レベルで紹介。
 タヒバリ類では、日本未記録の種の写真も掲載しています。

 特にタヒバリ類については、現行の図鑑だけでは情報量が少なく、できるだけ様々な写真や識別点がほしいところです。ですから今月号は、資料編として価値があります。
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category: 野鳥

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ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。: サトウキビの島は戦場だった  

「ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。: サトウキビの島は戦場だった」

【良かった度】★★☆☆

ぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。: サトウキビの島は戦場だったぼくが遺骨を掘る人「ガマフヤー」になったわけ。: サトウキビの島は戦場だった
(2012/08/31)
具志堅 隆松

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 「散るぞ悲しき」繋がりではないですが、先の第二次世界大戦関係の書を手に取りました。本書は沖縄で、戦没者の遺骨収集を行なっている方による、自らの活動・理念紹介の本です。

 日本政府が成没者の遺骨収集に熱心ではない、ということは、野口健氏の活動でも知っていました。しかしながら、沖縄ではまだこれほど「放置」されているということは知りませんでした。著者は日本政府が業者に委託すること、そして業者の作業方法が非常に乱暴なものであり、遺骨を遺族に返すことを目的としていないことに、憤りを感じています。

 その「作業方法」に対する批判はもっともです。また、筆者の丁寧な作業により、遺骨と遺族がついに出会うことができた、という事実を見ると、著者の活動方針は誤っていないと感じました。

 ただ、著者は業者に委託するというスキームを、「遺骨収集を金儲けにした」と非難し、全く検討していません。これはちょっと理想的過ぎるかなと思います。もちろん遺骨収集は国が責任もってすべき事業です。しかし公務員だけで実施できず、民間人に作業を依頼するのであれば、それは当然「委託事業」となり、経費は作業員の日当だけではなく、労務管理や書類作成者の人件費や事務費も含まれます。それが当然です。また当該企業が継続し、翌年度も事業を受注しようと思うのであれば、それなりの利益を得ることも必要です。これを悪と断じるのは、あまりにも理想主義すぎると思いました。
 実際、筆者の作業でも、ボランティアだけでは作業が完了できず、筆者(NPO)が厚生省の緊急雇用創出創出事業を利用し、ホームレスや失業者を雇用して作業を終えました。この事業主体である「筆者(NPO)」が「企業」になるだけで、「金儲け」として否定すべきでしょうか。
むしろ別の一面から見ると、NPOが事業主体となるということは、事業の継続性や労務管理(労災発生時)などの面で、企業よりも不安が残ります。善意発がいけないとは言いませんが、善意発が全て正しいというわけではありません。

 ではどうすればよいのか。

 本書を読みながら感じたのは、この丁寧な遺骨発掘作業は、埋蔵文化財の発掘と同じだ、ということです。
 ですから、国が遺骨収集に関わる公益法人を設立し、その法人が埋蔵文化財の発掘知識のある人を雇用し、そこが中心となって国内外の遺骨収集にあたるのはどうでしょうか。その公益法人が、個々のNPOと協力しながら事業を行なうわけです。こうした公益法人を作れ、と国に呼びかけ、適切な団体を作らせることこそ、筆者(NPO)の重要な仕事ではないのか、と感じたしだいです。
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category: 戦争

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散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道  

「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」
【良かった度】★★★☆
10月5日開始、10月9日読了。


散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道
(2005/07/28)
梯 久美子

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 第二次世界大戦で、激戦の場所であった硫黄島。僕は正直、その程度の印象しかなく、「なぜ激戦となったのか」、「どのような激戦だったのか」、そういう問いすら持っていませんでした。しかし本書によって、硫黄島が激戦地となった経緯と必然性を知ることができました。非常に得がたい一冊です。
 現在、世界中がキナ臭い状況となっていますが、日本人としては、先の大戦中にこのような思いで戦い、死んでいった人がいることを肝に銘じ、安易な戦いに突入しないようにしたいものです。

 それにしても、本書の初版は2005年。硫黄島の物語が本書にまとめられ、日本全国で手にとることができるようになるまで、終戦から60年を必要としたということに、改めて深く感じるものがあります。


 蛇足ながら、生き物関係で気がついたことを1点。

 身近な野鳥であるメジロには、国内で6亜種が記録されています(日本鳥類目録改訂第7版)。この中に、亜種イオウトウメジロZ.j.insuralisというのがあります。小笠原群島、硫黄島、南鳥島でしか記録がなく、普通は硫黄島にしか生息していませんので、ほとんどの野鳥好きには全く縁がない亜種です。
 さて一方、現在メジロなどの野鳥の密猟が依然として行なわれており、特に西日本ではメジロの密猟が多発しています。メジロ密猟の摘発にあたっては、押収されたメジロの亜種を鑑定する必要があり、この鑑定に関わる者であれば「亜種イオウトウメジロ」は、ちょっと聞いたことがある亜種です。僕も鑑定に関わることがあるため、この亜種の存在は知っていたのですが、やはり「名前だけ」の存在でした。

 ところが本書の中で、硫黄島へ赴いた軍人の中には、激戦が始まる前のひと時、この亜種イオウトウメジロを捕獲して声を楽しんでいたという記述がありました。

 もちろん言うまでもなく、この戦時中と現在では法整備も全く異なり、こうした事実があったからといって、現在の野鳥密猟が許されるものではありません。
 ただ人と野鳥(メジロ)との関わりの歴史の中には、こうした戦争中ならではのもあったのだなぁと、初めて知ったエピソードでした。
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category: 戦争

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風にそよぐ墓標-父と息子の日航機墜落事故-  

風にそよぐ墓標-父と息子の日航機墜落事故-
【読んでおくべき度】★★★★
10月4日開始、10月5日読了

風にそよぐ墓標-父と息子の日航機墜落事故-風にそよぐ墓標-父と息子の日航機墜落事故-
(2010/08/05)
門田 隆将

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1985年8月12日、事故が起こりました。
僕は当時13歳。夏休み中、TVで知りました。
まだまだ人ごとで、この事故の重みを知ったのは、ずいぶん後になってからでした。

さて、これ以後、様々な大事故が発生しています。
ただなぜか僕は、特にこの事故については、
様々な記録・書籍を読まなければならない、という気がしています。

その理由は、わかりません。

ただ、こうした本を読み続けることで、
常にこうした事故を起こしてはならないということを再認識し、
また毎日を過ごしていかなければならないと思います。

また、子として読むか、親して読むか。
それによって、本書の重さも異なると思います。

ぜひご自身でお読みいただいた後、ご家庭でも共有していただきたいと思います。
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category: 事件・事故

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博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話  

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話
【おすすめ度】★★★★
10月3日開始、10月4日読了




英語辞書の最高権威であるOED-Oxford English Dictionary、その作成にはあるドラマがありました。
タイトルでもうバレてますが、
関係者は「博士」と「狂人」。
二人がこの困難にミッションにどう関わったか、いや、全く知らない話でした。
この本、もっと知られてもよいと思います。

日本ではOEDじたいがあまり知られていないので、仕方がないのかなあ。

それにしても、こういう地道な作業って大変ですね。
先のエントリでの「日本鳥類目録改訂第7版」も、こうした地道な努力の積み重ねです。
さすがに「狂人」は関わっていませんが…まあ、ある程度鳥屋はマニアックですが…

なお本書の著者が、もう一人の関係者であるG.Mに対して、的確で優しいまなざしであることに、
感銘を受けました。

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category: ノンフィクション

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日本鳥類目録 改訂第7版  

日本鳥類目録 改訂第7版
【必須度】★★★★

目録第7版
 詳細は鳥学会のページ
 
 日本鳥学会が編集する日本鳥類目録の改訂第7版が刊行されました。本書は、日本にどんな野鳥が記録されているかの公式記録であり、また学名・和名の基準でもあります。

 今回の改訂で、ついに世界的な潮流にあわせ、配列は分子系統学を考慮。大きく目・科も変更されました。

 例えばタカ目。ハヤブサ類が独立し、ハヤブサ目が新設されました。またコウノトリ目としてなじんでいたサギ科はペリカン目へ。またツグミ科はヒタキ科に吸収統合され、全て「ヒタキ科」になりました。

 また新規追加種や、新たな分布記録など、ちょっと真剣に野鳥を見ようと思うと必須の本です。
 価格 5,500円(会員割引4,000円)+送料実費 、やや高い本ですが、
 おそらく今後10年程度役立つでしょう。

 通常の野鳥観察には関係ないと思うかもしれませんが、現在の図鑑がアビ類で始まり、カラス類で終わるのは、この目録の配列順なのです。ですから今後、一般的な図鑑で掲載種の追加、学名・和名の変更、掲載順の変更などの影響があるかもしれません。

 なお僕も、某県の記録整理で協力しています。
 作業でやはり困ったのは、

 「この種、記録があるのは間違いないんだけど、基準にできる文献記録が全くない…」
 
 というものです。

 皆さんの県で珍しい種や行動等を見たら、できるだけ文章化して、紙媒体に発表してくださいね。
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category: 野鳥

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ジョーカー・ゲーム  

ジョーカー・ゲーム
【良かった度】★★★★
9月26日開始、9月27日終了

ジョーカー・ゲームジョーカー・ゲーム
(2008/08/29)
柳 広司

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ミステリは、結末を楽しむもの。
冒険小説は、過程を楽しむもの。
どっちも好きですが、どちらかというと冒険小説が好きです。

本書のようなスパイ小説は、冒険的要素もありつつ、ミステリでもある。

僕としては、はずせないカテゴリです。

さて本書、これも評判高く、シリーズ3冊目まで刊行されています。

日本で設立されたスパイ機関をベースに、様々な人物を主人公として、短編形式で続いています。
視点、プロット、どれもバラエティに富んでいて、いや、楽しめました。

出張のときの持参本がハズレだと悲しいのですが、
本書の2冊目・3冊目はまさに上質の「出張本」。

今後にとっておこうと思います。
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category: 冒険小説

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殺戮にいたる病 (講談社文庫)  

殺戮にいたる病
【良かった度】★★☆☆

殺戮にいたる病 (講談社文庫)殺戮にいたる病 (講談社文庫)
(1996/11/14)
我孫子 武丸

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最近濫読なのです。
本書は9月21日開始、9月24日読了。

大学の頃はミステリを読みまくっていて、
島田荘司、有栖川、法月、森など、いわゆる新本格は片っ端から読んでいました。
でも本書はなぜか未読のまま。

「唖然とする」のが好きと書きましたが、いくつかのブックレビューで、
最後に「唖然とする」と書かれていましたので、選びました。


確かに描写はグロく、うーん、心に毒がある人でないと、フィクションとして楽しめないかもしれません。

まあそれはさておき、最終ページ。



ほんとに、唖然としました。


いや、自分が何を読んできたのか全くわからなくなり、電車の中で混乱してました。


そういうことだったのね・・。

叙述ミステリとしては、確かに一級品ですね。

ただ正直なところ、僕は叙述ミステリは、なんというか、小説の中の「唖然」ではなく、
明らかに読者そのものの世界での「唖然」なんですよね。

たとえが難しいですが、J.P.ホーガンの「星を継ぐ者」は、小説世界の中でカタルシスがあり、
それが現実世界にまで及んでいるようにすら感じる「唖然」でした。

叙述ミステリは、そういうのとはちょっと違いますよね。
まあ嫌いではないのですが。
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category: 推理小説

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ジェノサイド  

ジェノサイド
【良かった度】★★★☆

ジェノサイドジェノサイド
(2011/03/30)
高野 和明

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 なかなか読書の時間がまとまって取れなくなってから、フィクションは避けていました。

 細切れの時間では、せっかくのワクワクも途切れてしまう。
 また、限られた時間を「架空」を「楽しむ」だけで消費するのもつらかった。

 しかし、図書館で「ダ・ヴィンチ」を読み、皆がフィクションを楽しんでいるのに嫉妬。そこで復帰決定。
 リハビリ第1弾として選んだのがこの本です。
 9月18日読了。

 「ハリウッド映画みたい!」と評判高いどおり、楽しんで読めました。
 舞台はグローバル、設定も「なるほど」と感じる、オリジナルなアイディアでした。
 
 ただ、個人的にはこれならもっと大風呂敷が広げられたかな、と感じました。

 というか、最後がきれいにまとまりすぎ。僕は最後の1ページで、「唖然」とするのが好きなのです。
 
 でも、秋の楽しみにはいいですよ。 
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category: SF小説

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いきものずかん 2 (電撃コミックス EX 150-4)  

「いきものずかん」第2巻
よかった度 ★★★☆


いきものずかん 2 (電撃コミックス EX 150-4)いきものずかん 2 (電撃コミックス EX 150-4)
(2012/09/27)
もりちか

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以前、週刊アスキーで連載していて、現在はWebで公開されていたと思う。
長い間リアルタイムでは読んでいませんが、単行本化されたので、入手しました。
あいかわらず、様々なジャンルの動物が出て、ウンチクがちりばめられています。
どっちかと言えば、哺乳類が多いですね。
自分は鳥屋なので、ちょっとものたりない部分がありますが、だからこそ「知らない世界」として
楽しめます。

1年に1巻、手軽な楽しみとして、今後も続いて欲しいものです。
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category: 動物

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