ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)  

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待
【良かった度】★★★★




 野生生物に、加速度や日照時間を記録する機械(データロガー)を装着。
 なんとかして、後日(時には数年後)回収。
 データを解析するとその個体の装着機関中の行動が把握できる、バイオロギングという研究手法がある。

 本書は、日本におけるバイオロギング開拓者の一人である著者による研究成果の紹介である。

 最近はスマートフォンにあるように、小型の加速度センサーも開発され、これからますますバイオロギングという研究手法は盛んになっていくと思われる。
 実際私の知人も、鳥類のブッポウソウにバイオロガーを装着して調査している。

 本書ではウミガメ、マンボウ、ペンギン、オオミズナギドリなどが主な題材である。

 バイオロギングは、例えばハクチョウ類に発信機を取り付け、
 人工衛星経由でリアルタイムに位置情報を取得するような大掛かりなシステムではない。

 装着期間中はただデータを蓄積し続けるだけで、そのデータロガーを回収して初めてデータが入手できるシステムである。つまり、必ず同位置に戻ってくる(もしくは短期間でデータロガーは分離するが、確実に回収する手法がある)必要があるため、対象種は限定される。

 しかしうまく使えば、かなり面白いデータが得られるだろう。

 ここでネタをばらすと面白くないので控えるが、標題のように秒速2メートルで泳ぐ、というのはほんの1例で、
本書では、データロガーなしには把握できなかった、様々な種の生態が紹介されている。
 これらの知見から、新しい世界が開けていく興奮を覚える。

 バイオロギングは、これからも応用範囲は広がっていくだろう。
 本書の著者は継続チェックが必要である。
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category: 動物

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tag: 調査  動物  野鳥 
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モンシロチョウ―キャベツ畑の動物行動学 (中公新書)  

モンシロチョウ -キャベツ畑の動物行動学
【良かった度】★★★★




 モンシロチョウの雄は、どのようにして独身雌を識別しているのか。それを探求した1冊である。
 
 ネタばらしとなるが、結論のひとつは紫外線色の色彩差である。ただ他にも手がかりとなる生態があり、
紫外線色の色彩差も含めて、何がどのように影響しているかを解明していく。著者の研究はアジアのモンシロチョウとヨーロッパのモンシロチョウの違いに及び、モンシロチョウの祖先種にまで至る。

 身近な「モンシロチョウ」が、まだまだ謎めいた野生生物であると気づかせてくれる良書である。
 
 ちなみに、本書で取り上げられた紫外線色は、植物の蜜源や、一部の鳥類の性差や齢差にもあることが確認されており、まだまだ開拓の余地がある面白い研究分野である。
 
 人間が見ることができる世界が、この世界の全てではない。

 その事実に気づけば、鳥類であれ植物であれ、性・齢が識別困難な種を見る目が変わる。

 目からウロコ(紫外線フィルターか?)を落としてくれる本でもある。
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category: 昆虫

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tag: 昆虫  新書 
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ニホンオオカミは生きている  

ニホンオオカミは生きている

【よかった度】★★★★




 先日、「見狼記~神獣ニホンオオカミ」という番組を観た。秩父においてニホンオオカミを探索し、1996年についにそれらしいイヌ科動物に出会い、撮影した八木博氏の活動を中心に、「神の使い」としてのニホンオオカミについてコンパクトにまとめた内容であった。これを見つつ、昔雑誌「シンラ」に連載していた「山根一眞の動物事件簿 狼」を思い出した。この連載は、ライデンにある標本を中心に、様々なニホンオオカミをめぐる問題を整理したものである。
 書庫を探したところ、スクラップが数回分残っていた。単行本になっているかと思い探索したが、残念ながら刊行されていないようである。ただその探索中出会ったのが本書である。

 本書の著者は、19歳の時に聞いた遠吠えを原体験に、ニホンオオカミ探索を定年後のライフワークと計画していた方である。ところが定年を目の前に調査を開始したところ、2000年に謎の「イヌ科動物」に出会う。
 本書は鮮明に撮影されたこの「イヌ科動物」がニホンオオカミか否か(及びそれを巡る騒動)を中心に、執筆時点における著者の到達点を示した本である。またおそらく現在、最もニホンオオカミの存否問題について明解に整理した書だと思う。その調査姿勢や検討内容は信頼に足る内容であり、安易な決め付けでこの「イヌ科動物」がニホンオオカミだと主張しているわけではない。フィールドワークの真撃な実施例としても示唆に富む内容であり、野生動物の調査に興味がある方全てに強く推薦したい。

 さてまず、本書の「謎のイヌ科動物」がニホンオオカミであるか否か、という問題はさておき、ニホンオオカミについてはいくつか問題がある。

 ①タイプ標本は複数の(おそらく別種を含む)個体からなっており、タイプ標本だけでは特徴がわからない。
 ②残存するいくつかの剥製・骨は、様々な性・齢が混在しているため、その特徴が種共通の特徴なのか特定の性・齢の特徴なのかわからない。
 ③頭骨での識別点は判明しているが、生体を外見で識別ができるか否かはわからない。

 わからないことだらけである。
 「ニホンオオカミは既にきちんとした研究があり、専門家が間違うはずは無い」と思いがちだが、結局のところ、詳細な研究前に絶滅した(とされている)ため、研究はストップしているのが現実と思われる。

 そこで、本書に戻る。
 著者は「謎のイヌ科動物」の明解な写真を撮影した(本書にカラー写真も多数収録されている)。この写真を元に、著者と動物学者の今泉吉典氏はニホンオオカミの資料を再精査し、ついに「生体の外見上の識別点」を見出し、この「謎のイヌ科動物」はニホンオオカミだ、という結論に至る。この検討過程は明解でかつ論拠も多く、単なる思いつきとは言うことはできない。
 そして、様々な写真・文献記録を踏まえて、今泉氏らがニホンオオカミの「生体の外見上の識別点」を見出したということは、ニホンオオカミの識別学は新しい段階に入った、ということを意味する。

 よって、これに対して、

 ニホンオオカミを「生体を外見で識別できるか否かはわからない」から、
 「この個体がニホンオオカミとは識別できない」、
 よって「この個体はニホンオオカミではない」

という、従来の反論は成立しない。
前提としているニホンオオカミを「生体を外見で識別できるか否かわからない」という、研究上の限界が突破されてしまったからである。よってこれに正しく対抗するには、今泉氏らの挙げる識別点はイヌにもあり、識別点にはならないということを論拠を示して反論するしかない。しかし本書執筆時点では、そのような反論はなされていないようである。

 現時点では、西田氏・今泉氏が提示した「ニホンオオカミの外見上の識別点」に、本書の「謎のイヌ科動物」が一致する以上、この個体はニホンオオカミである(もしくは極めてその可能性が高い)、と結論するのが当然と考える。
 将来ニホンオオカミが再発見された暁には(その日が来ることを願う)、本書は正しく整理された本であったと評価されると思われる。少なくとも本書によって、ニホンオオカミに関する理解が格段と進むことは疑いようがない。

 さて以下は、本書ではなく、ニホンオオカミの扱いに対する意見である。

 本書の「謎のイヌ科動物」はニホンオオカミか否か、ということの結論に関わらず(私は上記のとおりニホンオオカミと識別するしかないと考える)、西田氏の主張するとおり、やはり国レベルで丁寧な再調査が必要と思われる。

 現在のニホンオオカミの「絶滅」は、長期間信頼に足る目撃情報がないということにすぎない。
 そして、様々な目撃情報が「信頼に足る」ものではないと判断されたのは、前述のニホンオオカミを「生体を外見で識別できるか否かはわからない」という研究上の限界があったためである。
 これが突破された以上、西田氏や八木氏を初めとする様々な目撃情報は、控えめに言っても「信頼に足るか否かわからない」情報となる。
 であれば、日本の野生生物の保護管理上、やはり国は再調査する義務があると考えられる。

 クニマスは1940年に絶滅したとされていたが、2010年に再発見されたのは記憶に新しいところである。
 おそらくクニマスの打ち上げられた死体は数多くの人々が見ていただろうが、誰も外見では識別できなかったのだ。
 ウグイスの亜種ダイトウウグイスは、1984年の北大東島での記録を最後に絶滅したと考えられた。しかし2001年、沖縄本島でダイトウウグイスと区別できない個体群が見つかり、2008年に喜界島で再発見された。
 「絶滅した」と言うのは簡単だが、実は人間が識別できないだけ、ということは多々あるのである。
 そしてもしそれが生息していた場合、保護が手遅れになる可能性すらありうる。
 しかしニホンオオカミについては、八木氏や西田氏の写真情報があるにも関わらず、未だ「その写真の個体がニホンオオカミか否か」という論争で留まっている。放置しておいて良い問題ではない。

 なお、ニホンオオカミそのものについての研究も不十分、現在の生息状況の調査もなされていない不透明な状況において、大陸産のオオカミ等を導入しようとする計画は、残念ながらあまりに無邪気であり無責任なものと考えられる。


なお、同様に秩父でニホンオオカミ(の可能性が高いと鑑定されたイヌ科動物)を目撃した八木氏は、
現在も精力的に探索活動を続けている。
ニホンオオカミを探す会の井戸端会議
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category: 哺乳類

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日本の野鳥 (山渓ハンディ図鑑)  

増補改訂新版 日本の野鳥 (山渓ハンディ図鑑)
叶内 拓哉、上田 秀雄、 安部 直哉
【良かった度】★★★★

日本の野鳥 (山渓ハンディ図鑑)日本の野鳥 (山渓ハンディ図鑑)
(2011/12)
叶内 拓哉、上田 秀雄 他

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 一部で「叶内図鑑」と呼ばれる写真図鑑である。

 いわゆる山野と水辺の野鳥を1冊にまとめ、かつ性・齢・亜種の識別について最低限の写真・解説を掲載し、しかも分布図まで入れている。
 それまでに無く実用的な写真図鑑として、初版刊行当時はかなり衝撃的だった。「ほぼ全種を網羅する写真図鑑」の先駆けでもあり、日本の野鳥図鑑史(なんだそれ)のエポックメイキングな1冊である。

 私も長く愛用しており、自宅用と車載用の2冊を購入した。九州で車のフロントかリアに置きっぱなしで発車し、自車で轢いたのも昔のことである。

 今回30種を追加、ページも増加、既掲載種も写真・解説を見直して増補改訂版として刊行された。
 初版からもう10年以上経過していることに驚きだが、確かに内容的には過去の図鑑になりつつあっただけに、嬉しい改訂である。ただ厚さが4cm近くなり、その重さも相まって、図鑑というよりレンガである。

 ただ、形態を理由に買わないのは、識別力の向上にそれほど食欲でない人くらいだろう(海外のHandbookなんてレンガどころかブロックである)。若干紙質が良く(厚く)なったような気もするが、私の初版が経年劣化しているだけかもしれない。

 類書はあるものの、やはり最新知見と写真が掲載された写真図鑑として、ちょっと野鳥に詳しい層は必携だろう。 また初心者でも、自宅でぱらぱら見て野鳥に馴染むのに最適な1冊である。
 
 なおセアカモズの写真キャプションが「高松市」となっているが、「まんのう町」の誤りである。香川県におけるセアカモズは、2007年1月14日~4月25日に、まんのう町の県立満濃池森林公園で観察・撮影された個体のみである。
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category: 野鳥

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メタセコイア―昭和天皇の愛した木 (中公新書)  

メタセコイア―昭和天皇の愛した木 (中公新書)

【良かった度】★★★★

せっかくなので、もう1冊紹介しよう。

メタセコイア―昭和天皇の愛した木 (中公新書)メタセコイア―昭和天皇の愛した木 (中公新書)
(1995/01)
斎藤 清明

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 私の隣町の公園にはメタセコイアが育っている。
 私は香川県在住である。
 私の持つメタセコイアの知識といえば、「発見者の三木博士は香川県出身である」という程度に過ぎない。

 香川県で野外観察を案内することがある人間として、これではいけない。

 そこで少し勉強しておくため、タイトルで選んで入手。結論から言えば大アタリであった。

 著者が新聞記者であるためか、研究者が書く無味乾燥な入門書とは異なり、本書の射程距離はとても広い。

 単なる「メタセコイア」という樹木の入門書ではなく、「メタセコイアを巡る人類史」とでも言うべき内容となっている。
 簡単に整理してみよう。

 全体は4章から成る。

 第一章 発見
 第二章 三木茂
 第三章 アケボノスギ
 第四章 時の流れに


これらに含まれる内容は、おおむね次のようなものである。

・セコイヤ・メタセコイヤの化石林を発見した大航海時代の話題。
・化石種メタセコイア(メタセコイア属)を発見した三木博士の生涯。
・中国における現生種メタセコイアの発見。
・化石種メタセコイアの研究結果及び現生種メタセコイア発見情報の世界への分散。
・メタセコイアの種、苗木の収集・贈与史。
・昭和天皇のメタセコイアへの愛着。
・メタセコイア自生地への紀行。

 盛りだくさんである。

 こうして本書が包含する内容を知ると、初めて副題がわずか1章しか反映していないことに気づく。
 もったいない話である。

 メタセコイアを巡る知的冒険史ともいうべき、良書であった。
 
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category: 植物

tag: 植物  新書 
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BIRDER (バーダー) 2012年 03月号 [雑誌]  

「BIRDER」文一総合出版 
やはり、まずはこの雑誌から初めるべきだろう。

BIRDER (バーダー) 2012年 03月号 [雑誌]BIRDER (バーダー) 2012年 03月号 [雑誌]
(2012/02/16)
不明

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 本紙は国内唯一の野鳥をテーマにした雑誌である。
 私は1994年頃から定期購読しているので、だいたい18年になる。
 とりあえず本紙の変遷を語る程度の資格はあると思うので、ちょっとトータルな感想を述べておきたい。

 この約20年を概観すると、野鳥観察・撮影愛好者数は確実に増加した。
 デジタルカメラ、デジスコが普及し、誰でも高倍率・鮮明な写真を撮影できるようにった。
 インターネットによって渡来情報を入手しやすくなった。
 良質の写真図鑑が出版され、洋書の入手も簡単となり、識別に関する知見も広がった。

 とりあえず、層も厚く、質も向上したと言って良いだろう。
 ならば本紙もかなり充実しただろうと思われるが、残念ながらそうではない。

 最も多数の層、おそらく「珍しい種を観察・撮影するために、種と簡単な性くらいは識別できる層」にアピールするため、写真は大きく、細かい識別は少なく(識別に関係の無い生態記事はもっと少なく)なった。
 まあ、野鳥のグループ、季節性に大きな変化は無いので、毎年同時期には同じテーマになりがちなのはやむをえないが、それでもかつては、詳細な識別・生態に関する単発記事や連載が少なからずあり、毎号に資料的価値があった。 実際私は2冊購入し、1冊を保存、1冊をスクラップして整理用としていたものだ。

 しかし最近はそこまでの魅力を感じない。自分自身の知識が増えた物足りなさもあるが、やはり全体的な内容レベルは低くなっているだろう。(時々ハイレベルな記事はあるが、頻度は少ない。)

 とは言え、唯一無二ではあるので、購読をやめることもないだろう。
 とりあえず本紙が継続するうちは、マニアックな記事や図鑑が期待できる。

 愚痴は以上として、今月号のレビューに移る。
 
 残念ながら上に述べたとおり、ちょっと目先の変わった特集を思い立ったと見られる。参考になるかと言えば、正直ならない。
 それぞれの道のスペシャリストを「図鑑的」に紹介するのではなく、
 例えば各氏の情報収集・識別・撮影・データ整理の方法等を細かく紹介する方が有用ではなかっただろうか。

 「人の図鑑」、というコンセプトだけが走った残念な号となった。
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category: 野鳥

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中の人

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