ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

この夏、金魚に出会いたくなる。「金魚はすごい (講談社+α新書)」  

金魚はすごい (講談社+α新書)
吉田 信行



夏と言えば金魚すくいである。
子供の頃採った金魚は、4~5年生きていた。
でも、最近採った金魚は、1年程度で死んでしまった。
採った時点の金魚の体調もあるし、僕の管理の問題、また夏季の気温上昇など、
様々な要因があるだろう。

でも、何にしても、「金魚すくい」という行為は、夏の思い出として一生残っている。

日本人とって、朝顔と金魚は「当たり前」の存在だが、それらについて知っている事実は、
かなり少ない。
まして、作出された様々な品種なんて、申し訳ないがマニアの世界とも感じる。
(まあ、そういうモノほど嵌まると楽しいのだが。)

本書は、江戸時代から創業している金魚屋、「金魚の吉田」の主人による金魚本。
「◯◯はすごい」の柳下のドジョウタイトル本ながら、
とても楽しい一冊である。
巻頭には各品種のカラー写真、また尾びれの違い、
主な品種の紹介・来歴など、まさに金魚入門書として最適といえる。

また、なんとなく最近金魚の品種が多いなと思っていたのだが、
日本では形質が固定されて(同形質の累代飼育が可能となって)初めて品種とするが、
中国ではF1のみでも品種とするとのこと(同じF1の雄雌を掛け合わせても、同形質のF2は得られない。)。
だから品種が乱立していたのかと、納得した次第である。

なお、以前「江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし」(レビューはこちら)を取り上げたが、こちらの店との関係が気になった。

調べたところ、著者の吉田信行氏が三男、先代の現「金魚の吉田」の社長・吉田舜亮氏は次男、
そして長男の吉田晴亮氏が「金魚坂」(吉田晴亮商店)を立ち上げたとのこと。
なるほど。

【目次】
第1章 金魚のルーツと歴史を探る
第2章 本当に金魚はすごい!
第3章 多種多様な金魚を愛でる
第4章 老舗が教える「金魚のススメ」



金魚はすごい (講談社+α新書)



 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 魚類

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

明日から、できる。「毎日が楽しくなる「虫目」のススメ―虫と、虫をめぐる人の話」  

毎日が楽しくなる「虫目」のススメ―虫と、虫をめぐる人の話
鈴木 海花



今年の目標を色々立てているが、その中に「楽しみを掴め」というのがある。
日々の生活では心身ともに消耗すること多々である。
また、休日は雑事に追われたり、怠惰に過ごすことも多い。

「楽しいことないかなあ」なんてボヤくことも多いのだが、
楽しみは自身で見つけるもの、
そして見つけるだけでなく、積極的に「掴む」もの、と考えた次第である。

さて、僕は長らく野鳥のみを専門にやってきたが、趣味を持たねばいかんと考え(この発想がおかしいが)、
近年、昆虫採集、化石採集、イタリア語の勉強を楽しみにしている。

これらをやって初めて分かったのは、やはり「知らないことだらけだなあ」と言うことだ。
それぞれを「楽しむ」ためには、野鳥観察や調査で培った知識やテクニックとは、(一部援用できるとはいえ) 全く異なるものが要求される。
それを見出し、身につける過程がまた楽しいのだが、それにしても知らないことだらけだ。

本書は、「昆虫を観る」という楽しみを、存分に味わっている女性、鈴木海花氏によるエッセイ。
「昆虫をテーマとした旅行記」と言っても良い。
ただ昆虫を追うだけでなく、地元の人と触れ合う楽しみ、地元の料理を味わう喜びなど、
単なる昆虫本とは異なる視点も含まれている。

本書に昆虫情報のみを求める方だと、そうした記述こそ不要と思うかもしれない。
だが、やはりそこまでストイックにならず、昆虫も含め「楽しい」ことが一番だと僕は思うのである。

さて、本書で取り上げられ旅行のうち、特に興味を惹かれたもの。
まずは、日本屈指というか、世界に誇るべきカメムシ図鑑である「日本原色カメムシ図鑑」、「日本原色カメムシ図鑑〈第2巻〉陸生カメムシ類」、「日本原色カメムシ図鑑―陸生カメムシ類〈第3巻〉」。
これを記した人々を尋ねる旅だ。
全ての始まり、第1巻を刊行した高知県の研究者の、情熱と楽しみを訪ねる旅。
第2巻・第3巻に収録されるカメムシを、とにかく集めた採集人、高橋敬一氏。
そして、高橋氏から送られたカメムシを分類していく分類学者、石川忠氏。
「昆虫だから」と敬遠するのはもったいのない、熱い情熱の物語だ。
野鳥でもこうした大部な図鑑は種々刊行されているが、その舞台裏や、著者の想いが第三者によって語られることは、滅多にない。
そうした意味でも、この旅は貴重な記録だ。

そしてもう一編は、石垣島探訪記。
(ネット情報だと、どうも最近は採集禁止等を巡って様々な思惑・意見があるようだが、
そうした話は横に置いておく。著者は採集ではなく観察・撮影が主である。)
僕も野鳥のために訪れたが、いやはや石垣島は楽しいところであった。
独特の林道や植物を思い出しながら、旅行記を楽しんだのだが、僕が訪れたあの頃に昆虫も趣味もしていたら、と思うことしきりである。

ただ、石垣島のような濃厚な地で、野鳥と昆虫の両方を追うと、たぶん破綻するだろうと思うのだが、
それでも、いつか石垣島を再訪した時、僕はやはり、両方気になるだろう。
それでも、「楽しみの掴み方」を知らないよりは、良い。

本書が、多くの方にとって、新しい「楽しみの掴み方」のヒントになることが、著者の願いではないだろうか。


【目次】
いつでも、どこでも「日々虫目」編
図鑑はどうやってできるのだろう 或る図鑑をめぐる人々を訪ねて
旅も虫目で「虫目観光」編
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 昆虫

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

日本の恐竜発掘の黎明期を辿る。「フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ」  

フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ
長谷川 善和



国立科学博物館へ行けば、やはり目につくのがフタバスズキリュウ。
恐竜ではないものの、日本の古代動物に興味があれば、
なにはともあれ真っ先に思い浮かぶシンボリックな化石である。
DSC_0698.jpg

ニッポンの恐竜 (集英社新書 483G) 」(レビューはこちら)でも紹介されているとおり、日本でも恐竜・首長竜等の化石は近年多数発掘されている。

特に、「ザ・パーフェクト―日本初の恐竜全身骨格発掘記: ハドロサウルス発見から進化の謎まで 」(レビューはこちら)のように、恐竜の全身骨格化石まで発掘された。
ハドロサウルス化石の発掘でも並大抵ではない苦労があったが、
それなら今から約50年前、1968年(昭和43年)に発見された日本最初の首長竜では、どのような発掘状況だったのか。

それを明らかにするのが、本書である。

一読、やはり驚くのは隔絶たる時代。
高校生の鈴木直氏が化石の一部を発見し、伝手を辿って国立科学博物館の著者へ連絡。
著者も急ぎ駆けつけ、首長竜の化石であること、しかもほぼ全身が残っていそうだと判明。

ところが、その発掘費はおろか、出張費すら自腹であった。
(博物館からは出なかった。)
そこで現地の石屋さんに発掘を依頼した。

今では考えられないような状況である。
だが、日本本土から中生代の大型爬虫類の化石が発見されるはずがないという考えが定説だった時代、
こうした「出るかどうかも分からない」化石研究に研究費を費やす必要はないという風潮だったのだろう。

だがその結果、頭骨の特徴的な部位やその他の部位が失われるなど、多くの損失が生じてしまう。

一方では、発掘現場は日々見物人が押し寄せる状況。
また発掘現場の目前でかって子供が溺れたからと、急遽「お祓い」をする。
化石のクリーニングにあたるのは「考古学専門の学生」だ。

今となっては考えられない話ばかりだが、
当時としては出来る限りのことをしてくれた、というべきだろう。

その結果得られたのが、冒頭に掲げた新属新種の首長竜化石である。

科博に展示されているのはレプリカだが、その復元も簡単にはいかない。
何しろ日本初の首長竜、参考になる見本も無い。

何とか海外の首長竜のレプリカを入手したりと、前人未到ならではの苦労を重ねながら、
今、僕らは科博でフタバスズキリュウを見られるのである。

本書刊行は2008年。

資料不足等もあり、正式な記載がなされていなかったフタバスズキリュウがFutabasaurus suzukiiという学名が確定したのが2006年5月であるから、この記載を踏まえての総括、という位置づけでもあるのだろう。

こうした第一歩を踏み出した当時の状況は、当事者でなければ語ることができないことを考えれば、
発見から40年、よくぞ刊行してくれた、と感慨深い。

レビューはこちら

 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 恐竜

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

「美しい化石」を堪能しよう。「楽しい動物化石」  

楽しい動物化石
土屋 健



最近は三葉虫の化石を入手しやすくなったとはいえ、
やはり国立科学博物館の化石を見れば、その美しさに圧倒される。

その個体の珍しさ、保存状態、そしてクリーニングの技術。

全てが高いレベルにある化石は、やはり唯一無二の美しさを持つ。
そして失われた動物である以上、美しい化石ほど、その当時の姿を想像させる力は、強い。

本書は、近年の恐竜ブームの立役者というか伝道者である土屋健氏による、
動物化石の逸品の数々を紹介するもの。

最近流行りのアノマロカリスよりも更に古い先カンブリア時代の化石から始まり、
人類と同時代を生きていたマンモスに至るまでの、他種多様な動物化石を紹介する。

土屋健氏だけあって、取り上げられている化石は、それぞれが極めて美しい。
約6億3500万年前という、途方もない過去の生きものの、極めて精細な化石。
複雑怪奇なトゲトゲを持つ三葉虫の数々。
もちろん始祖鳥化石、ティラノザウルスといった有名どころもおさえつつ、
サーベルタイガーやメガテリウム(オオナマケモノ)といった哺乳類まで、これ一冊で素晴らしい過去の旅が堪能できる。
(ちなみにメガテリウムは、2016年に僕も見てきた徳島県立博物館収蔵の化石だった。)

植物化石も同シリーズで刊行されており、気軽に楽しめる一冊である。

なお、随所に「化石トーク」とか「古生物と人々」といったコラムページがある。
さほど専門的な話題でもなく、数冊近年の恐竜本を読んでいれば知っている話題も多い。
初心者向けと考えれば良いと思う。

ただ気になったのは、その紙質である。
化石紹介ページは、わりと厚いマット紙様であり、美しい。
だがコラムページはちょっと粗い紙質のものを用いている。
何という紙かは知らないが、上質なわら半紙のようなもの。
また、文字色も青一色とか赤一色であり、紙自体の色とあいまって、やや読みづらい。

「楽しい」とタイトルに冠するとおり、親しみやすさも狙っているのだろうが、
やや読みやすさと本としての価値を損なっているような気がする。残念。

なお、姉妹本に「楽しい植物化石」がある。こちらも楽しい。

【目次】
1 先カンブリア時代末と古生代(先カンブリア時代の動物たち
カンブリア紀の動物たち
オルドビス紀の動物たち
シルル紀の動物たち
デボン紀の動物たち)
2 中生代(三畳紀の動物たち
ジュラ紀の動物たち
白亜紀の動物たち)
3 新生代(古第三紀の動物たち
新第三紀の動物たち
第四紀の動物たち)


 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 恐竜

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

生粋の研究者が、昆虫少年に戻った。「ホソカタムシの誘惑 第2版: 日本産ホソカタムシ全種の図説」  

ホソカタムシの誘惑 第2版: 日本産ホソカタムシ全種の図説
青木 淳一



著者青木淳一氏は、日本におけるダニ類研究の第一人者、だった。
特に、土壌中で腐食質を餌とするササラダニ類という、目立たないが非常に重要な分類群については、450種以上の新種記載を行っている。
ダニに関する書籍も多く、例えば「ダニにまつわる話 (ちくまプリマーブックス) 」(レビューはこちら )は、そのダニ研究史の過程で起こった様々なトピックスを紹介するものとして、楽しい。

また神奈川県立生命の星・地球博物館長としても活躍し、生き物を調べる「博物学」の楽しさも普及。
博物学の時間: 大自然に学ぶサイエンス」(レビューはこちら)では、その面白さを紹介している。
この本の中で、退職と共に、標本と文献を全て国立科学博物館、横浜国立大学、宮城教育大学に分散して寄贈して全てを後進に委ね、昆虫少年に戻ったという記述がある。

昆虫少年に戻った青木氏が手がけたもの。それは、50年以上前に夢中になったホソカタムシだ。
ホソカタムシとは細くて堅い虫。体長はおおむね2.5mm~5mmといった小さな虫で、枯れ木についた菌類やキクイムシの幼虫などを捕食する。
その習性から、葉が全くない枯れ木に生息している、という。

そして、ササラダニ研究の第一人者になるような極めて学究的で着実な人が、
本気でマイナーな分野の昆虫採集を手掛けたらどうなるか。
その結実が、本書である。

ホソカタムシとは何ぞや、から始まり、
1部では、著者のホソカタムシへの愛情、
再開したホソカタムシ採集によって培われた発見法・採集法の数々、
標本作成法(普通の昆虫標本だけでなく、ホソカタムシ研究のために必要なプレパラート標本の作製法)、
本書でも収録されている細密画の作画法、そして仲間であるホソカタムシ愛好者のエピソード、採集記が収録されている。
ホソカタムシを見つけ、探し出し、研究する楽しさとルートが余すことなく記載されていると言えるだろう。

そして2部。日本産ホソカタムシのリストから始まり、
各種の細密画、解説、日本における分布図(記録がある地点を●でプロット)、そして特徴的な分布をしているホソカタムシの分布状況を収録。
こちらは、刊行当時のホソカタムシに関する知見のほぼ全てを網羅しようという意気込みに溢れている。

もうこの一冊だけで、ホソカタムシが宝の虫のように感じてしまうのは、僕だけではあるまい。
本書が、ホソカタムシという極めて地味な虫の本ながら、「第2版」まで出ているところが、その凄さを示しているのだろう。

たった一冊の本で、ある分類群に対する知見の到達点を纏め上げる。
それだけでも大変なのに、その虫を追う楽しさ、魅力まで伝えてしまう。
非常にマイナーな分野だが、これほど知的な楽しさに満ちた本も、なかなか無い。

【目次】
1部 ホソカタムシの採集と研究の楽しみ
 ホソカタムシに関するQ&A
 ホソカタムシの魅力
 ホソカタムシの研究法
 採集日記から
 ホソカタムシ採りの達人たち
2部 日本産ホソカタムシの分類と分布
 日本産ホソカタムシの種名リスト
 日本産ホソカタムシ図集
 日本産全種の解説
 日本産ホソカタムシの分布図
 日本列島におけるホソカタムシの分布状況


 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 昆虫

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム