ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

気軽な机上の旅を味わおう。「斑猫の宿」  

斑猫の宿
奥本 大三郎



フランス文学者にして虫屋の奥本氏のエッセイ。
タイトルは「斑猫の宿」、斑猫ってハンミョウという虫なので、本書も昆虫主眼の旅エッセイかなと思って読んでいたが、思いのほか虫テーマは少ない。
その代わり、土地の名所・旧跡を訪れることも多々あって、
何だか勝手が違うなと思っていたら、
本書は雑誌「旅」の連載をまとめたもの。「旅」そのものがテーマだったのである。

連載期間は平成10年6月から平成12年4月まで。旅の時期はもう少し早くからと思われるので、
今から20年くらい前である。長良川河口堰問題を始め、日本全国での乱開発が盛んに問われ、
少しずつ方向性が変わってきた(反対運動の成果もあるし、景気の悪化のせいもある)時期だから、
「無駄な開発ばかりする行政と土建屋」に対する苦言が随所にある。
それはそうなんだろうけど、ちょっと主張が重なり過ぎる感もある。

著者自身もあとがきで書いているが、こうして全国津々浦々を鉄道と自動車だけで気軽に旅行できるのも、
数多の開発の成果ではある。

その現状は今も変わらず、
自然保護、開発反対が言われる一方で、荒れ果てて放棄されつつある山間部の維持や、
ますます頻繁になってきた気象災害の防災工事・災害復旧工事なども重要になってきていて、
開発と保護のバランスはやはり難しい。

そうした思いは有るものの、それでも本書に掲載されているとおり、
わずかに遺された聖域、奇跡的に残った虫、それを追う同行の士との語らいなどは、
しみじみと楽しいものである。

北海道、有澤浩氏(鳥屋にはクマゲラの、という方が分かりやすい)と探すオオイチモンジ。
四国、四万十トンボ自然公園。
長野県での地蜂探し。
岐阜のギフチョウ。
フランス・コルシカ島でのファーブルゆかりの木探し。

昆虫と、昆虫好き人々との邂逅によって得られた、
一期一会の体験が、この一冊に残されている。

20年前の紀行エッセイではあるけれど、
こうした視線の旅は中々少ない。
昆虫という著者の軸に関係なく、ちょっと変わった旅を楽しめる一冊である。


【目次】
第1章 西表・波照間の巻―電信柱のカンムリワシ
第2章 小千谷の巻―いざり機とルーズソックス
第3章 富良野・大雪の巻―高貴な蝶は悪食家
第4章 四万十・足摺の巻―叛逆者とトンボの楽園
第5章 白馬・戸隠の巻―利権おいしかの山
第6章 泉州・南紀の巻―微小な生命と神々の国
第7章 岐阜の巻―束の間の蝶、超大粒の山椒魚
第8章 横浜・東京の巻―珍獣奇鳥怪魚は街に棲む
第9章 宮城の巻―ほたるの宴 窓の雨
第10章 長州の巻―防人の島と斑猫の宿
第11章 仏蘭西の巻―コルシカの栗の樹の下で
第12章 日向の巻―石垣と孤高の外交官
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それはこんなカタチである。「ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)」  

ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)
宮田 珠己



僕はウミウシが好きである。
20歳前半の頃、坂出市沙弥島でアオウミウシやらシラヒメウミウシを見て、
そのカラフルさと可愛さにやられたのである。

アオウミウシってカラフルすぎて一瞬びびるけど、
実際は小さくて、グロテスクさのカケラもない。

この素晴らしさを家族に見せたいと数年通ったが、未だ果たせないでいる。
海水温の上昇で海藻が減ったせいかと思うのだが、残念である。まだ諦めていないが。

で、本書著者はウミウシをはじめとした「変なカタチ」の生きものをシュノーケリングで見るべく、
国内外(ほとんどは海外)のスポットを彷徨うのである。

バリカサグ島。パンダラオ島。アポ島。スミロン島。ビヤドゥ島。ピーピー島。
どこだそれ。

フィリピンやインドネシアやバリらしいが、それが「どこか」なんてどうでも良い。
とにかく著者は「変なカタチ」の生きものを見たいのである。

ダイバーに囲まれ、肩身が狭い思いをする。
頑張って到達したら、サンゴが死滅している。
実はあんまり泳げない。

それでもあっちのビーチ、こっちの湾と、
なんだか不思議な行動力でシュノーケルを続けるのである。

本書はその旅行記なんだが、役に立ち度はゼロであろう。

しかし、「自分が見たいものを見に行く旅」なんて贅沢の極みだし、
前記のとおり、絶対に僕には縁が無いような場所ばかり。

そこでの旅を、気楽に追体験できるのが本書である。

随所に著者が見た「変なカタチ」の生きもののイラストもあるが、
イラストというかラクガキである。でも、これも可愛い。
マンジュウヒトデがひっくり返るだけで2p分。
著者が楽しんでいることが嫌と言う程伝わってくるのだ。

なぜか、海外のマニアックな文学作品に強いイメージが有る白水uブックスからの刊行。

たぶん本書に出会う人は少ないと思うけど、
もし見つけたらぜひ気楽に楽しんでいただきたい。
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「自分の旅」を楽しむヒント。「ニッポン旅みやげ」  

ニッポン旅みやげ
池内紀



著者はドイツ文学者。多くの訳書があるので、知らないうちにお世話になっていることも多いだろう。
だが本書はそうした文学話ではなく、
日本各地の旅の途中、ふと見つけた「話したくなるモノ」を積み上げた一冊。

40章で構成されているが、それはすなわち40の町の物語ということ。
それもガイドブックで語られるような名所旧跡ではなく、
その土地に生きる人々の記憶が刻み込まれたような建物等が紹介される。

視点としては、主に明治以降。

例えば三等郵便局や、「据置郵便貯金碑」。
ある店の床に残された鉤十字。
門構えにつけられた「誉之家」というプレート。
それぞれに、明治から昭和にかけて、日本の歩みが刻み込まれている。

これらを見つけた著者は、人々が何を思い、何を願ったのかに思いを馳せる。
著者と共に旅を楽しむようなつもりで、一日一章読むのもいいだろう。

一応アクセスも記載されているが、多く取り上げられているのは、小さな商店。
本書を手に訪ねるような人も少ないだろう。
むしろ本書を参考に、自身の旅を充実させていきたい。

それにしても、香川が無かったのが残念。
下記のうちに、ご自身の町があれば、ぜひ。

北海道・札幌市/宮城県・蔵王町平沢/神奈川県・横浜市/埼玉県・秩父市/長野県・軽井沢町
愛知県・有松/石川県・金沢市/京都府・中書島/兵庫県・福崎町/愛媛県・西条市/宮城県・石巻市
栃木県・黒磯/群馬県・桐生市/東京都・八王子市恩方/山梨県・長坂/新潟県・浦佐/奈良県・奈良市中
兵庫県・高砂市/山口県・下関市/鹿児島県・指宿/宮城県・白石市/茨城県・結城市/東京都・浅草・鷲神社
静岡県・静岡市丸子/山梨県・富士吉田市/愛知県・豊橋市/長野県・駒ヶ根市/滋賀県・水口町/三重県・関
北海道・名寄市/福島県・柳津/群馬県・川原湯/東京都・旧品川宿/山梨県・河口湖/長野県・須坂
新潟県・塩沢町/兵庫県・神戸市/鳥取県・若桜町/福岡県・香春町

【目次】
1 影法師たち
2 三等郵便局
3 祭礼指南
4 値切り方
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世界 伝説と不思議の物語  

世界 伝説と不思議の物語



こんな一瞬があるのか、と思うほど「絵にかいたように」美しいノイシュヴァンシュタイン城が表紙である。

世界各地の美しい風景・建築物は、近年テレビや書籍など様々な媒体で紹介されており、
多くの方の「人生の100のリスト」を見ていると、行きたい場所として良くウユニ塩湖が多い。
これも、メディアで良く流れるからだろう。

本書もその流れの一つ。ただ「不思議と驚き、逸話がつづる」と副題にあるものの、メッカやイースター島、モアイ像など歴史的にも有名な地も含んでおり、エピソード面ではそれほど新しい驚きはない。

しかし、収録された各地の美しい写真は、疲れた日々に、眼と心を休めるのに最適である。

本書に収録された地を、自分がいつか行くべき場所として「人生の100のリスト」に追加するのもいいと思う。


【目次】
第1章 遺跡と歴史の名所
第2章 伝説と逸話の名所
第3章 不思議と驚きの名所

▼「人生の100のリスト」っ何? という方は、この本を。レビューはこちら

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ファーブル昆虫記の旅  

ファーブル昆虫記の旅
奥本 大三郎、今森 光彦



7月、NHKの「100分de名著」で、「ファーブル昆虫記」が取り上げられた
僕は、ファーブル昆虫記をじっくり読んだことがないので、「さわりだけでも」と、この番組を見ていた。
そうして「ファーブル目」になっていたところ、、見つけたのが本書である。
取り上げられているエピソードは、このNHK番組で取り上げられた程度なので、内容的に密度が高い本ではない。

むしろ本書は、ファーブルが暮らしたフランスやコルシカの風景を、美しい写真で楽しむことを目的とすべきだろう。
今森氏の写真は、相変わらず優しい眼差しであり、気持ち良い。

ファーブル自身の人生は苦難に満ちていたとしても、この風景の中で昆虫を追い続け、
そして死後、こうして評価される人生というのは、やはり幸せだったのではないだろうか。

なお、本書後半は、奥本大三郎氏による本書撮影旅行時の紀行文である。
特にファーブル的に深いものではないが、
フランス等の郊外を旅する雰囲気が楽しく、読み物として楽しめる。

なお、ファーブル的な観察を読書で追体験するならば、
例えば「ファーブルが観た夢 地球生命の不思議な迷宮」をお勧めする(レビューはこちら)。

【目次】
南仏「昆虫記」の故郷
ファーブル博物館
「昆虫記」あれこれ
奥本大三郎、ファーブルの居た場所へ
南仏で出会った虫たち
今森光彦、南仏の風に誘われて
イヴ・ドゥランジュさんとファーブルを語る
虫の詩人の館ファーブル昆虫館



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