ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ダーウィンのミミズの研究  

ダーウィンのミミズの研究
新妻 昭夫



本書、児童書のカテゴリに入れられており、どうも小学6年生の教科書にも取りあげられているようだ。
しかし、子どもの本にしておくのはもったない。

進化論のダーウィンは、一方でイギリスの白亜の崖は、サンゴを食べた魚によって砕かれたサンゴの砂が積み上がったもの、という仮説を持っていた(実際はチョーク(堆積岩)、微生物の遺骸が化石化したもの)。
それを証明する手掛かりとして、同様に生物が地質学的に影響を与える事例として、
ミミズが草を食べて排泄したものが土となって積み上がる、という事実を研究することにした。

そのきっかけは、「10年前に石灰を牧草地に撒いた場所を掘ったら、地下7.5cmの場所に石灰の層があった」こと。

そこで「ミミズが土を積み上げる」ことを実証するため、改めて牧草地に白亜の破片を撒き、その上に土が積み上がる様子を観察することにした。
1842年12月20日、ダーウィン33歳の時である。

ダーウィンは、ミミズの生態や、個体密度、年間に出す糞の量などを調査しながら、何と62歳になって、ようやく白亜の破片を撒いた場所を掘った。
1871年末、ダーウィン62歳の時である。なんと29年後である。

白亜の層があったのは、地上から17.5cmの深さ。約6mm/年のペースで、ミミズは土を作り、地表に堆積させると結論付けた。

そして、1881年(着手から39年後!!)、ダーウィンが死ぬ半年前、ようやくその研究の成果を「ミミズの作用による肥沃土の形成とミミズの習性の観察」として刊行したのである。

この研究の過程が、なかなか楽しい絵で紹介されているのだが、本書の面白さはここからだ。

「じゃあ、今はダーウィンが撒いた白亜の層は、地下何cmにあるのか?」

そんな疑問を抱いた筆者は、実際にダーウィンの庭を掘るべく、イギリスへ飛ぶ。
そして「ダーウィン博物館」(ダーウィンの家=ダウン・ハウス)」の館長の許可を得て、実際にダーウィンの庭を掘ったのだ。
その結果は、意外なものだった。

ここから先は、ぜひ本書を確認していただきたい。

40ページの本ながら、調べるって面白いなあ、と実感する一冊である。

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深海生物学への招待 (NHKブックス)  

深海生物学への招待
長沼 毅
【わくわく度】★★★☆

深海生物学への招待 (NHKブックス)深海生物学への招待 (NHKブックス)
(1996/08)
長沼 毅

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ちょっと前に「ナダールの穴」というTV番組でも有名になってしまった、
「科学界のインディ・ジョーンズ」こと、
深海生物というか極限生物の研究者である長沼氏の著書である。

本書では、特に深海生物のチューブワームとりあげる。
長沼氏らしく、随所に様々な生物学的知見が散りばめられており、
楽しめる一冊である。
もう1冊、「形態の生命誌―なぜ生物にカタチがあるのか 」の方が、
かなり生物としては普遍的なテーマを扱っており面白いのだが、
こちらもいつか紹介したい。

【目次】
はじめに 深海に新たな生命観を求めて
第1章 深海アナザーワールド
第2章 深海の多様な住人たち―深海砂漠での生き残り戦略
第3章 謎の深海生物チューブワーム
第4章 熱水性生物の楽園「深海オアシス」
第5章 化石となったチューブワーム
終章 チューブワームは時空を越えて
付章 深海へのあくなき挑戦の物語

【メモ】
【P20】
日本語の「赤い・黒い」は「明るい・暗い」に源があるというが

【P20-21】
■深海で赤い生物が多い理由
海では深いほど青の優先度が高くなる。海が青いのではなく、海の中が青い。
赤色の物体は青色光を吸収するので、青い世界では、赤い物体は黒く見える。
→深海では、エビ、カニ、ナマコ、イソギンチャクなど赤い生物が多い。
また、黒色も多い。
いずれもできるだけ黒くなり、暗い世界に隠れるためのカムフラージュ。

■生物発光(バイオルミネッセンス)
海中では光が散乱する。入射光より散乱光の方が優勢。
深いところでは、入射方向にかかわらず、天頂が一番明るく、周囲が暗い。
このような場所で物体を下から見ると、明るい背景上でシルエットができ、目立つ。
これを隠すため、
ある生物は体を透明に近づけ、
ある生物は下方に発光器を備えた。生物発光(バイオルミネッセンス)。

■生物発光による餌探し
海中では青色光がよく透過する。よって、生物発光も青色光が多い。
しかし、生物発光をサーチライトとして餌を探す場合、青色光では赤い物体が見えない。
そこでエソの仲間は、発光器に赤色化フィルターを備え、眼も赤色をよく感知するよう発達している。

【P77】
■カラヌス類が赤い理由
■生物にとっての赤いカロチン系色素
海の代表的な動物プランクトンであるカラヌス類(エビを真っ直ぐにして体長1mm以下にしたようなもの)
→赤いものが多い →青い世界への適応
また、
カラヌスの赤はカロチン系色素の赤。
これは青色(波長450~470ナノメートル)をよく吸収する。
「生物にはこの波長に感受性のある(何らかの悪影響を受ける)種類が多く、
カロチン系の色素で「青い光」をブロックするような工夫をしている。」

【P78-79】
■紫外線 ニューストン
紫外線は海中では急速に減少し、水深数十メートルでほぼ無影響になる。
ただし表面は別。
水の表面張力が問題になるような表層にいる種々の生物を総称して、「ニューストン」という。
ニューストンには波長310ナノメートルの紫外線を吸収する物質が多かった。

■紫外線 貝
海洋バイオテクノロジー研究所の丸山正博士らによると、
浅いところの二枚貝=紫外線ブロッカーをもつ
深いところのシロウリガイ=もたない

【P79】
■食う-食われるものの大きさの関係

1/10 10倍
餌 天敵
珪藻 カラヌス ヤムシ、小魚
0.01~0.1mm 0.1~1mm 1cm~数cm


比重で考える
餌 人間(体重60kg)
直径5cm 直径 50cm程度の球

【P104】
■共生バクテリアの伝播 ミトコンドリアの母系遺伝
チューブワームには共生バクテリアがいる

・卵や精子にバクテリアがいて、親から子に伝播
→「上下伝播」
・幼生初期には口や消化管があるので、生後にイオウ酸化バクテリアを得る
→「水平伝播」

チューブワームの卵等にバクテリアは観察されていない
だから水平伝播と考えられるが、決め手もない

シロウリガイも共生バクテリアをもつ
卵細胞内にバクテリアがいる上下伝播
これが母系遺伝、→ミトコンドリア、葉緑素

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ミミズのいる地球―大陸移動の生き証人  

ミミズのいる地球―大陸移動の生き証人

中村 方子
【やや古い話である度】★★★☆

ミミズのいる地球―大陸移動の生き証人 (中公新書)ミミズのいる地球―大陸移動の生き証人 (中公新書)
(1996/04)
中村 方子

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ナメクジ、ダニ、プラナリア、ミジンコと来てミミズである。

とは言っても、本書は結構昔に読んだことがあり、今回再読した。
時点が古いためか、ミミズの同定が難しい、という著者のなげきが多く、
分子遺伝学を応用した系統解析などは全く未来の話である。
日本におけるミミズ研究の黎明期に、研究者が世界各地でミミズを採集している話、というふうに
捉えるのが良いかもしれない。
ハッタミミズの移入など、やはりミミズでも外来種の話がある。
ミミズコンポスト系の本はいくつか入手しているが、
生物としてのミミズを詳しく掘り下げた本を読んでみたいものだ。


【目次】
ミミズと地球-はじめに
第1章 庭のミミズ
第2章 動物学的にみたミミズ
第3章 ミミズの生態学
第4章 ミミズを追って
・ポーランドでの生態学研究
・富士川河川敷での調査
・ケニアのサバンナにて
・ハワイに行く
・パプア・ニューギニア
・パプア・ニューギニア再訪
・オーストラリア、そしてパプア・ニューギニア
・モンゴルと小笠原諸島
・ガラパゴス諸島でのミミズの研究
・タヒチ島、モーレア島
第5章 ミミズをあなどるなかれ

【メモ】 

p5
ミミズ:環形動物門
生体が自己と非自己を識別する準免疫学的機能を示す動物の中では一番原始的な仲間
4億年以上前から存在

p8
ハワイ:ミミズが自力で到達できなかったため、固有種はいない

p11
ポントドリルス属とミクロスコレックス属Microscolexのミミズ:ガラパゴスでも発見
海水に二次的に適応したらしい

p20
雨後にミミズが大量死=畑井(1931)では、ミミズの坑道中に、大気中を通過する間に多量の炭酸ガスを溶解した雨水が入り、炭酸ガスに弱いミミズが這い出る。それが昼間、紫外線に当たって動けなくなり、日光で乾燥して死亡する、と推測している。
ただし、前夜が雨でないにも関わらず、地表にミミズが大量に出て死亡する場合の理由は不明

p29
ミミズの類の系統と分類[B.G.M.Jamieson,1988]の識別図掲載
※受精嚢、精巣、卵巣その他の器官の位置(解剖学的位置)で分類

p30
日本にはフトミミズ科に属するものが多く、少なくとも155種生息しているといわれる
(口のあるほうから見て、14~16体節目に肥厚した環帯)

石川県八田村のジュズイトミミズ科ジュズイトミミズ属ハッタミミズ
加賀の豪商である錢屋五兵衛(1773-1853)による海外貿易(インド、ジャワ、フィリピン方面)によって持ち込まれたらしい。現在は石川県河北潟と滋賀県近江八幡市で採取。この二地方はかつて交通が頻繁だった地域。
このミミズは畦に穴をあけるため、広がらないよう注意されていた。ただし八田村ではウナギ養殖の餌とするため大事にされていたらしい。

ツリミミズ科:日本で数種あるが、サクラミミズ(固有種)のほかは外来種

p33
世界のミミズ約3,000種

p49
ダーウィン「ミミズの習性に関する観察と、ミミズの働きを通しての有機土壌の形成」
(邦題「ミミズと土」)1881年に出版

p104
サバンナのような乾燥地帯:ミミズのかわりにシロアリが植物遺体の分解を行なう

p144
通常のミミズは一つの体に雌雄の生殖器を有するが、交尾して他個体の精子を得て初めて卵胞を産生できる。しかし汎熱帯性のミミズは交尾せずに単為生殖で繁殖できる。
そのため、熱帯地域の森林は表層が薄くやせているため、人が手を加えると、
たちまち汎熱帯性のミミズが増加し、固有種は駆逐されてしまう。

p168
ミクロスコレックス属Microscolexのミミズ
海水に耐性があり、広い海洋の隔たりを越えられる。

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